育休復帰の段階的勤務とは?企業の義務と対応手順【2025年最新】

育休復帰の段階的勤務とは?企業の義務と対応手順【2025年最新】 企業の育休対応

育休から復帰する社員のために「段階的勤務スケジュールを提示しなければならない」という話を耳にした人事担当者は少なくないかもしれません。しかし結論からいえば、現行の育児・介護休業法に、企業が育休復帰時に段階的勤務スケジュールを提示することを義務づける明文規定は存在しません

では、企業には何も義務がないのでしょうか。そうではありません。法律が企業に課している「短時間勤務制度の整備」「始業・終業時刻変更等の措置」は厳然とした法的義務であり、これらを適切に運用することが育休復帰支援の本質です。本記事では、混同されやすい「段階的勤務スケジュール提示」の実態を整理したうえで、人事担当者が2025年時点で押さえておくべき法的義務と実務手順を体系的に解説します。


育休復帰時の「段階的勤務スケジュール提示」は法的義務か?

育児・介護休業法が定める”実際の義務”とは

育児・介護休業法(以下「育介法」)は、育休復帰に関連して企業に複数の措置義務を課しています。代表的な条文を整理すると以下のとおりです。

条文 区分 内容
第23条第1項 義務 3歳未満の子を養育する労働者への短時間勤務制度の整備
第24条第1項 努力義務 3歳以降・小学校就学前の子を養育する労働者への育児支援措置
第24条第2項 努力義務 育休終了後の職場復帰支援(復帰前後の支援措置)
第9条の2 禁止規定 育休取得・申出に対する不利益取扱いの禁止

とくに重要なのは第23条第1項です。常時10人以上の労働者を雇用する事業所は、3歳未満の子を養育する労働者が希望した場合に短時間勤務制度を利用できるよう、就業規則等に制度を整備しておかなければなりません。これは「努力義務」ではなく明確な法的義務です。違反した場合、厚生労働大臣による勧告・公表の対象となります(育介法第56条の2)。

一方、「育休復帰後の段階的勤務スケジュールを書面で提示する」行為そのものを義務づける条文は存在しません。第24条第2項で職場復帰支援は「努力義務」とされており、段階的復帰プランの文書化・提示は企業の任意の取り組みに位置づけられます。

「スケジュール提示の義務」と混同されやすい理由

「段階的勤務スケジュール提示が義務」という誤解が広まる背景には、いくつかの実務慣行や制度が混在していることが挙げられます。

① 復帰前の連絡・情報提供の実務慣行

多くの企業では、育休中の社員に対して復帰予定日の1〜2か月前に連絡し、短時間勤務制度や育児支援措置の内容を説明しています。この「説明・案内」が積み重なることで、「企業はスケジュールを提示しなければならない」という認識が定着してしまうケースがあります。

② 厚生労働省の推奨ガイドラインとの混同

厚生労働省が公表している「育休復帰支援プラン策定マニュアル」では、復帰前に支援プランを作成することを強く推奨しています。このガイドラインは法的義務ではなく行政推奨ですが、「マニュアルに書かれているから義務」と受け取られることがあります。

③ 就業規則への記載と「義務」の混同

短時間勤務制度を就業規則に定める義務(育介法第23条)は実在します。このため「就業規則に復帰スケジュールを記載しなければならない」という義務があると誤解されることもあります。

重要な整理点は、「制度の整備義務」と「スケジュールの提示義務」は別物だということです。前者は法的義務、後者は法的義務ではありません。


企業が実施すべき「育休復帰支援措置」の全体像

法的な位置づけを踏まえたうえで、企業が育休復帰に際して行うべき措置を義務レベル別に一覧化します。

措置の内容 義務レベル 根拠条文 対象
短時間勤務制度の整備・運用 法的義務 第23条第1項 3歳未満の子を養育する労働者
不利益取扱いの禁止 法的義務(禁止) 第9条の2 育休申出・取得者全員
所定外労働の制限 法的義務 第16条の8 3歳未満の子を養育する労働者
時間外労働の制限 法的義務 第17条 小学校就学前の子を養育する労働者
子の看護休暇の付与 法的義務 第16条の2 小学校就学前の子を養育する労働者
復帰前後の支援措置(プラン作成等) 努力義務 第24条第2項 育休終了後の労働者
3歳〜小学校就学前への勤務軽減 努力義務 第24条第1項 当該年齢の子を養育する労働者
段階的勤務スケジュール提示 義務なし(推奨) 厚生労働省ガイドライン

この表からも明らかなように、企業がまず整備・遵守すべきは短時間勤務制度と所定外労働制限の2本柱です。

短時間勤務制度(対象条件・選択肢一覧)

短時間勤務制度は、育介法第23条第1項によって常時10人以上の労働者を雇用するすべての事業所に整備が義務づけられています。

適用条件

項目 内容
対象児童の年齢 3歳未満
対象労働者 育休から復帰した労働者を含む、3歳未満の子を養育するすべての労働者
勤続要件 日雇労働者を除く(勤続期間の要件は2025年時点で法定なし)
事業所規模 常時10人以上の労働者を使用する事業所
申出方法 労働者が書面・口頭等で使用者に申し出る(様式は法定なし)

選択肢として提供すべき措置(少なくとも1つ)

法律上、企業は以下のいずれかの措置を制度として整備しなければなりません。複数を組み合わせて提供することも可能です。

選択肢 具体的内容 備考
1日の勤務時間の短縮 所定労働時間を1日6時間に短縮するのが標準 最低限の基準として6時間以上確保が原則
始業・終業時刻の変更 出勤・退勤時刻を繰り上げ・繰り下げ 保育園の送迎に対応しやすい
育児休業に関する制度に準じる措置 フレックスタイム制・テレワーク等 就業規則への記載が必要
保育施設の設置運営その他の措置 事業所内保育施設の提供等 大企業で採用されることが多い

なお、1日の所定労働時間が6時間以下の労働者は適用除外となる場合があります(育介法施行規則第34条)。また、以下の労働者も労使協定で適用除外とすることができます。

  • 週の所定労働日数が2日以下の労働者
  • 業務の性質上、短時間勤務制度が困難な業種・職種の労働者(ただし代替措置が必要)

育休復帰支援プランの策定(努力義務・推奨措置)

法的義務ではありませんが、厚生労働省が強く推奨する「育休復帰支援プラン」は、複数の助成金要件にも関連するため、実務上は整備しておく価値があります。

育休復帰支援プランの主な記載内容

項目 内容例
復帰予定日 年月日を明記
復帰後の配属先・業務内容 変更がある場合は事前に説明
短時間勤務の適用期間・勤務時間帯 開始日〜終了予定日
テレワーク・フレックスの利用可否 利用条件と申請方法
業務の引き継ぎ計画 復帰前の情報共有スケジュール
子の看護休暇の案内 取得日数・申請方法
復帰後のフォローアップ面談予定 復帰後1か月・3か月・6か月

手続きの流れ:育休復帰に向けた人事の実務ステップ

育休復帰を円滑に進めるための標準的な手続きフローを解説します。

復帰の2〜3か月前:事前準備フェーズ

ステップ1:企業から育休取得者への連絡

復帰予定日の2〜3か月前を目安に、人事または直属の上司が育休取得者へ連絡します。この連絡で確認すべき主な事項は以下のとおりです。

  • 復帰予定日の確認または調整
  • 希望する勤務形態(短時間勤務・フレックス等)の意向確認
  • 子の保育状況(保育園入所の有無など)
  • 復帰後の業務・配属に関する希望や懸念事項

ステップ2:利用可能な支援措置の説明

連絡時または別途面談の場で、企業が提供できる育児支援措置を書面・メール等で案内します。口頭だけの説明では後日トラブルになりやすいため、制度概要を記載した書面の交付が望ましいです。

案内すべき制度の例:

  • 短時間勤務制度(育介法第23条)
  • 所定外労働の制限(育介法第16条の8)
  • 時間外・深夜業の制限(育介法第17条・第19条)
  • 子の看護休暇(育介法第16条の2):小学校就学前の子1人につき年5日、2人以上で年10日
  • フレックスタイム制・テレワーク(就業規則に規定がある場合)

ステップ3:労働者からの短時間勤務申請の受付

労働者が短時間勤務等を希望する場合、申請書を提出してもらいます。申請書の様式は法定されておらず、企業が独自書式を作成して構いません。一般的な記載事項は以下のとおりです。

  • 申出者の氏名・所属
  • 子の氏名・生年月日
  • 希望する措置の種類(短時間勤務・始業終業時刻変更等)
  • 適用開始予定日・終了予定日
  • 希望する勤務時間帯(例:9:00〜16:00)

復帰の1か月前:社内調整フェーズ

ステップ4:配属先・業務分担の調整

人事担当者は、復帰者の配属先上司と連携して業務分担の見直しを行います。育休取得者の代替要員との引き継ぎ計画も、このタイミングで具体化します。

ステップ5:就業規則・システムの確認

短時間勤務の適用にあたっては、以下の社内システム・規程の整合性を確認してください。

  • 給与計算システムへの勤務時間変更の反映
  • タイムカード・勤怠管理システムの設定変更
  • 社会保険の月額変更届の要否(標準報酬月額が2等級以上変動する場合)
  • 育児休業給付金の終了処理(ハローワークへの届出は企業が行う)

復帰当日・復帰後:実施・フォローフェーズ

ステップ6:復帰当日のオリエンテーション

復帰当日には、短時間勤務の開始時刻・終了時刻の確認、緊急時の連絡体制、業務の優先順位などを上司から改めて伝えます。復帰後の不安を軽減するため、直近1週間の業務スケジュールを事前共有しておくと効果的です。

ステップ7:フォローアップ面談の実施

復帰後1か月・3か月・6か月を目安に、人事または上司が定期的な面談を実施します。面談では以下の点を確認します。

  • 現在の勤務形態で無理が生じていないか
  • 保育施設の送迎時間と業務スケジュールの整合性
  • 子の体調不良時の対応(子の看護休暇の活用状況)
  • 今後のキャリアプランに関する意向

必要書類チェックリスト

育休復帰支援に関連して企業が整備・準備すべき書類を一覧にまとめます。

書類名 用途 作成者 必須・任意
就業規則(育児支援措置の条文) 短時間勤務制度等の法的根拠 企業 必須(10人以上の事業所)
育児・介護休業規程 育休・短時間勤務の詳細ルールを規定 企業 必須
育休終了通知書(復帰日確認書) 復帰日の確認・記録 企業・労働者 推奨
支援措置案内書 利用可能制度の説明 企業(人事) 推奨
短時間勤務申請書 労働者の申請記録 労働者 必須(短時間勤務希望時)
育休復帰支援プラン 復帰支援計画の文書化 企業(人事) 任意(助成金申請時は必要)
月額変更届(社会保険) 標準報酬月額の変更届 企業 要件該当時は必須

ハローワークへの手続き

育休取得中の「育児休業給付金」は、企業がハローワークに代わって申請する仕組みです。育休が終了し、労働者が職場復帰した時点で、育児休業給付金の支給も自動的に終了します。企業側で特別な終了手続きは原則不要ですが、復帰日に誤りがないよう最終支給申請の期間管理を行う必要があります。

なお、復帰後に短時間勤務を開始したことによって新たな給付金が発生するわけではありません。育児休業給付金は育休期間中のみの給付であり、復帰後の短時間勤務に対する国からの直接給付制度は現行法上存在しません。


違反した場合のリスクと罰則

短時間勤務制度の整備義務(育介法第23条)を怠った場合、以下のリスクが生じます。

リスクの種類 内容
厚生労働大臣による勧告 是正措置を求める行政指導(育介法第56条)
企業名の公表 勧告に従わない場合、企業名が公表される(育介法第56条の2)
損害賠償請求 労働者から民事上の損害賠償を請求される可能性
不利益取扱いによる無効 育休・短時間勤務を理由とした降格・賃金減額は無効となる場合あり

また、不利益取扱いの禁止規定(育介法第10条)に違反した場合、裁判所が「不利益取扱いは無効」と判断した事例が複数存在しています。「段階的復帰を断ったから」「短時間勤務を利用したから」という理由での評価査定の引き下げ・降格は、法的に問題となるリスクが高い点に留意が必要です。


2025年の法改正ポイント:人事担当者が確認すべき変更事項

2025年時点で、育児・介護休業法の改正が順次施行されており、人事担当者は以下の点を確認してください。

改正内容 施行時期 概要
子の看護休暇の拡充 2025年4月 対象を「小学校3年生修了まで」に拡大。入園式・卒業式等の行事参加も取得事由に追加
育休取得状況の公表義務の拡大 2025年4月 常時300人超の企業に育休取得率等の公表を義務化(従来は1,000人超)
短時間勤務制度の対象拡大の検討 2025年以降 3歳以降・小学校就学前への短時間勤務制度を努力義務から義務化する方向で審議中
柔軟な働き方の選択肢提示の義務化 2025年4月 3歳〜小学校就学前の子を養育する労働者に対し、テレワーク等を含む複数の働き方選択肢を提示することを義務化

とくに2025年4月施行分は対応が急務です。子の看護休暇の対象年齢拡大に伴い、就業規則の改定・周知が必要になります。対応が済んでいない場合は、速やかに規程の見直しを行ってください。


助成金:両立支援等助成金の活用

育休復帰支援プランを策定・実施した企業は、厚生労働省の「両立支援等助成金(育休復帰支援プランコース)」の対象となる場合があります。

主な支給要件(2025年時点)

  • 常時雇用する労働者数が300人以下の中小企業であること
  • 育休取得者に対して育休復帰支援プランを作成・実施したこと
  • 育休復帰支援プランに基づく業務引き継ぎ・復帰前面談を実施したこと
  • 育休取得者が職場復帰後6か月以上継続雇用されていること

支給額の目安

対象 支給額(目安)
育休取得者1人目 最大60万円(取得時・復帰時に分割支給)
育休取得者2人目以降 最大40万円

※支給額・要件は年度ごとに変更される場合があります。最新情報は最寄りのハローワークまたは都道府県労働局にご確認ください。

この助成金の申請に際しては、育休復帰支援プランの書面が必須要件となります。法的義務ではなくとも、助成金活用の観点からプランを文書化する実益は十分にあります。


よくある質問

Q1. 段階的勤務スケジュールを文書で提示しなかった場合、違法になりますか?

段階的勤務スケジュールの文書提示そのものは法的義務ではないため、提示しなかったことだけで直ちに違法とはなりません。ただし、短時間勤務制度を整備・運用しないことや、労働者からの申請を拒否することは違法となります。文書提示は義務ではなくとも、紛争防止のために記録を残すことが実務上の最善策です。

Q2. 短時間勤務制度の申請を企業側が拒否できるケースはありますか?

原則として、適用条件を満たす労働者の申請を拒否することはできません。ただし、労使協定によって「週の所定労働日数が2日以下の労働者」などを適用除外とすることは認められています。また、業務の性質上どうしても困難な場合は代替措置(フレックス・テレワーク等)を講じる必要があります。一方的な拒否は育介法違反となりうるため注意が必要です。

Q3. 10人未満の事業所は短時間勤務制度の整備が不要ですか?

常時10人未満の事業所は、就業規則の作成自体が義務ではありませんが(労働基準法第89条)、短時間勤務制度の整備義務(育介法第23条)は事業所規模に関係なく適用されます。ただし、就業規則への記載が義務でない分、制度の周知方法が書面交付など別の形になります。規模を問わず制度整備は必須と理解してください。

Q4. 育休復帰後に短時間勤務を理由に賞与を減額することは許されますか?

短時間勤務による実際の労働時間の短縮に比例した賞与の調整は一定の合理性がある場合もありますが、短時間勤務を利用したこと自体を理由として不当に査定を下げることは、育介法第10条(不利益取扱いの禁止)に違反する可能性があります。賞与・評価への反映方法は、あらかじめ就業規則・賃金規程に明記し、合理的な基準を設けておくことが重要です。

Q5. 育休復帰後に会社都合で部署異動させることはできますか?

育休取得・短時間勤務の利用を「実質的な理由」とした異動は不利益取扱いとみなされる可能性があります。一方、業務上の合理的な理由に基づく通常の人事異動は一般的に許容されます。重要なのは、育休・短時間勤務の利用が「動機または原因」になっていないかどうかです。異動を行う場合は、業務上の根拠を明確にし、本人との十分な協議を経ることが紛争回避につながります。


まとめ:人事担当者が今すぐ確認すべき3つのポイント

育休復帰時の「段階的勤務スケジュール提示の義務」は現行法には存在しません。しかし、それは「何もしなくてよい」という意味では決してありません。企業が今すぐ確認・整備すべき事項は以下の3点です。

① 短時間勤務制度が就業規則に正しく規定されているか確認する

2025年4月施行の法改正も踏まえ、子の看護休暇の対象年齢拡大などを反映した就業規則の改定が必要な場合があります。現行の規程が最新の法律と齟齬がないか、速やかに点検してください。

② 復帰前の情報提供・面談を仕組みとして整備する

復帰の2〜3か月前に連絡・面談を行い、利用可能な措置を書面で案内するフローを社内ルールとして定めることで、対応の属人化を防ぎ、担当者が変わっても安定した支援が可能になります。

③ 育休復帰支援プランの活用で助成金も視野に入れる

300人以下の中小企業であれば、育休復帰支援プランの作成・実施を通じて両立支援等助成金(最大60万円)の申請が可能です。義務ではなくとも、助成金活用と社員定着率向上の両面でメリットが大きい取り組みです。

法的義務の範囲を正確に理解したうえで、それを超えた自主的な支援措置を講じることが、育休取得者の安心した復帰と、職場全体の信頼関係の構築につながります。

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