育休中に「実際いくらもらえるの?」と不安を感じる方は多いはずです。育休給付金は正しく計算すれば休業前給与の最大80%を受け取れる制度ですが、計算方法や申請手続きを知らないと損をすることもあります。本記事では、計算式・支給額・申請手続き・必要書類をすべて一気に解説します。
育児休業給付金とは|法律根拠と制度概要
育児休業給付金は、育児休業中の所得を補償するために雇用保険から支給される給付金です。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 根拠法令 | 雇用保険法 第61条の4〜第61条の7 |
| 休業根拠 | 育児・介護休業法 第5条(育児休業の権利) |
| 支給機関 | ハローワーク(公共職業安定所) |
| 支給期間 | 原則:子が1歳になるまで / 延長:最長2歳まで |
| 財源 | 雇用保険料(事業主・労働者の折半負担) |
育休給付金は「受け取るための申請」が必要な申請型給付です。何もしなければ自動的に振り込まれないため、申請のタイミングを正確に把握することが重要です。
育児休業給付金の役割と支給目的
育休給付金には3つの社会的役割があります。
- 所得補償:育休中の無給期間における生活費の補填
- 育児離職の防止:経済的不安による離職を減らし、雇用継続を促進
- 男性育休の推進:パパ育休・産後パパ育休の取得奨励
📌 出産手当金との違い
出産手当金は健康保険から支給され、産前42日〜産後56日が対象です。育休給付金は産後休業が終わった後の育児休業期間から支給が始まります。両制度は重複受給不可のため、時系列の把握が重要です。
最新改正内容(2025年改正対応)
2025年4月施行の改正により、育休給付金制度が大きく変わりました。
| 改正ポイント | 旧制度 | 新制度(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 支給率(育休開始〜180日) | 67% | 最大80%(手取り実質約10割相当) |
| 適用条件 | 単独取得 | 両親ともに育休取得の場合に適用 |
| 支給率(181日以降) | 50% | 50%(変更なし) |
| 延長要件の緩和 | 保育所入所不可 | 申請書類の簡素化 |
⚠️ 重要:80%支給は「父母ともに育休取得」が条件です。片方のみ取得の場合は従来通り67%が適用されます。最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認ください。
育休給付金の対象者|受給条件を完全チェック
受給資格の基本要件
以下のすべての要件を同時に満たす必要があります。
| 要件 | 詳細条件 |
|---|---|
| 雇用保険加入 | 育児休業開始日時点で雇用保険被保険者であること |
| 被保険者期間 | 育休開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること |
| 休業期間 | 1ヶ月以上の育児休業を取得すること |
| 就労制限 | 休業中の就労日数が支給単位期間の10日以下(または就労時間が80時間以下)であること |
| 給与制限 | 休業中の賃金が休業前賃金の80%未満であること |
対象外となるケース
育休給付金の対象外となる方は以下の通りです。
- 自営業者・フリーランス:雇用保険に加入できないため対象外
- 公務員:共済組合の独自制度が適用される(雇用保険対象外)
- 被保険者期間不足:2年間で12ヶ月に満たない場合
- 育休開始日に退職済み:雇用関係が消滅しているため不支給
被保険者期間と就業日数の確認方法
「過去2年間」の起算点は育児休業開始日の前日です。
【被保険者期間の計算例】
育児休業開始日:2025年6月1日
起算期間:2023年6月1日〜2025年5月31日
この2年間に「賃金支払基礎日数が11日以上ある月」が
12ヶ月以上あれば受給資格あり
転職・退職がある場合の特例:前職の被保険者期間も通算できる場合があります。前職を辞めてから1年以内に再就職している場合、前職期間を合算して12ヶ月の要件を満たせます。
雇用保険加入状況の確認(企業と労働者向け)
雇用保険の加入状況は複数の方法で確認できます。
| 確認方法 | 手順 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者証 | 入社時に企業から交付される。記載の「被保険者番号」で管理 |
| マイナポータル | 雇用保険加入履歴をオンライン確認可能 |
| ハローワーク窓口 | 「被保険者資格確認請求書」を提出し照会 |
| 企業の社会保険担当 | 労務部門・人事部に直接問い合わせ |
育休給付金の計算方法|支給額の算定式
基本計算式
育休給付金の計算は「休業開始時賃金日額」を基準に行います。
【STEP 1】休業開始時賃金日額の計算
休業開始時賃金日額 = 休業開始前6ヶ月の賃金総額 ÷ 180日
【STEP 2】支給単位期間(1ヶ月)あたりの給付金額
給付金額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 支給率
・育休開始〜180日目:支給率 67%(父母ともに育休取得で最大80%)
・181日目以降:支給率 50%
・支給日数:原則30日(月により変動あり)
具体的な計算例
ケース①:月給30万円の場合(育休開始〜180日)
休業開始前6ヶ月の賃金総額:300,000円 × 6ヶ月 = 1,800,000円
休業開始時賃金日額:1,800,000円 ÷ 180日 = 10,000円/日
【支給率67%の場合(単独取得)】
月あたり給付金額:10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円
【支給率80%の場合(父母ともに取得)】
月あたり給付金額:10,000円 × 30日 × 80% = 240,000円
ケース②:月給25万円の場合(181日目以降)
休業開始時賃金日額:(250,000円 × 6) ÷ 180日 ≒ 8,333円/日
月あたり給付金額:8,333円 × 30日 × 50% ≒ 125,000円
ケース③:賞与なし・月給20万円のパート社員
休業開始時賃金日額:(200,000円 × 6) ÷ 180日 ≒ 6,667円/日
【支給率67%の場合】
月あたり給付金額:6,667円 × 30日 × 67% ≒ 134,000円
支給額の上限・下限
| 区分 | 金額(2025年度) |
|---|---|
| 上限額(67%期間) | 約312,903円/月 |
| 上限額(50%期間) | 約233,510円/月 |
| 下限額 | 約50,340円/月 |
📌 賞与は含まれません:「休業前6ヶ月の賃金」は月例賃金のみが対象で、賞与・一時金は含まれません。
手取りとの関係
育休給付金には所得税がかかりません(非課税)。また、育休中の社会保険料は免除申請により事業主・本人ともに免除されます(要申請)。そのため、実質的な手取りは支給率よりも高くなります。
【実質的な手取り率の目安】
支給率67% → 実質手取り 約80%相当
支給率80% → 実質手取り 約90〜100%相当
育休給付金の申請手続き|必要書類と手順
申請の全体フロー
【育児休業開始の1ヶ月前まで】
↓
STEP 1:労働者が企業に育児休業申出書を提出
【育児休業開始後2ヶ月が経過した後】(初回申請)
↓
STEP 2:企業がハローワークに「育児休業給付金支給申請書」を提出
(※労働者が直接申請することも可)
【申請後2〜3週間程度】
↓
STEP 3:ハローワークが審査・支給決定通知を発行
【通常、申請から2〜4週間で振込】
↓
STEP 4:指定口座に給付金振込
【以降、2ヶ月ごとに繰り返し】
↓
STEP 5:支給対象月ごとに申請継続
(申請期限:支給対象月末日の翌日から起算して2ヶ月)
⚠️ 申請期限に注意:支給申請期限は「支給対象月末日の翌日から2ヶ月以内」です。期限を過ぎると不支給になる場合があります。
必要書類一覧(初回申請)
| 書類名 | 提出者 | 入手先・備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書 | 企業(代理申請) | ハローワーク窓口 / e-Gov電子申請 |
| 雇用保険被保険者証 | 労働者 | 企業保管または労働者本人 |
| 母子健康手帳(出生届出済証明欄) | 労働者 | 子の出生確認用 |
| 育児休業申出書の写し | 企業 | 自社作成書類 |
| 賃金台帳(直近6ヶ月分) | 企業 | 月例賃金が確認できるもの |
| 出勤簿・タイムカード | 企業 | 被保険者期間確認用 |
| 振込先口座確認書類 | 労働者 | 通帳の写し等 |
| マイナンバー確認書類 | 労働者 | マイナンバーカード等 |
2回目以降の申請書類
2回目以降は「育児休業給付金支給申請書」と「賃金台帳・出勤簿(当該支給対象期間分)」の提出が中心です。申請頻度は2ヶ月ごとが標準です。
電子申請の活用
2024年以降、e-Gov(電子政府の総合窓口)を使ったオンライン申請が普及しています。企業の社会保険担当者向けの主要な利点は以下の通りです。
- GビズID(法人共通認証)の取得により窓口申請不要
- 紙申請より審査が早い場合がある
- 書類紛失リスクの低減
支給期間と延長の条件
標準の支給期間
| 対象 | 支給期間 |
|---|---|
| 通常 | 子が1歳になる前日まで |
| パパ・ママ育休プラス | 父母ともに育休取得で最長1歳2ヶ月まで |
| 延長(1回目) | 保育所不承諾等の事由があれば1歳6ヶ月まで |
| 延長(2回目) | さらに事由がある場合は2歳まで |
延長申請の手順
育休給付金の延長を希望する場合は、以下の手順に従います。
- 保育所の入所不承諾通知書を取得(市区町村から発行)
- 延長申請書をハローワークへ提出
- 申請期限:子が1歳になる日(または1歳6ヶ月になる日)の2ヶ月前〜誕生日当日
育休給付金をシミュレーションで確認する方法
実際の受取額は、以下の公式ツールでも確認できます。
- ハローワーク公式サイト:育児休業給付金の計算シミュレーター掲載
- 厚生労働省「育休取得ガイドブック」:PDF版で詳細解説
- 社会保険労務士への相談:複雑なケース(転職・パート・育休の二度目取得等)に対応
複雑な状況にある場合は、専門家に相談することをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 産休中と育休中で給付金の種類は変わる?
A. 変わります。産前産後休業中は健康保険から「出産手当金」が支給され、育児休業中は雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。支給機関・申請先がそれぞれ異なります。
Q2. 育休中にアルバイトをすると給付金はなくなる?
A. 一定の範囲内であれば継続して受給できます。支給単位期間中の就労日数が10日以下(または就労時間が80時間以下)であれば支給対象です。ただし、就労による賃金が一定額を超えると減額または不支給となります。
Q3. 夫婦同時に育休を取った場合はどうなる?
A. 夫婦が同時に育休を取得した場合でも、それぞれが要件を満たしていれば両者が給付金を受給できます。また、2025年改正の「80%支給」適用条件(父母ともに育休取得)にも該当する可能性があります。
Q4. 育休給付金に税金はかかる?
A. 育休給付金は非課税です。所得税・住民税の課税対象になりません。ただし、育休明けに職場復帰した年の住民税計算には注意が必要です。
Q5. 申請期限を過ぎてしまった場合は?
A. 原則として申請期限(支給対象月末日翌日から2ヶ月以内)を過ぎると不支給となりますが、やむを得ない事情(入院・災害等)がある場合は期限延長が認められることがあります。速やかにハローワークに相談してください。
Q6. パートタイム労働者でも受給できる?
A. 受給できます。雇用形態に関わらず、雇用保険に加入しており、被保険者期間の要件(2年間で12ヶ月以上)を満たしていれば対象です。週20時間以上勤務のパート社員は通常、雇用保険に加入しています。
まとめ:育休給付金の計算ポイント
| チェック項目 | 内容 |
|---|---|
| ✅ 受給資格確認 | 雇用保険加入 × 被保険者期間12ヶ月以上 |
| ✅ 支給率の把握 | 開始〜180日:67%(父母両方取得で最大80%) / 181日〜:50% |
| ✅ 計算の基準 | 休業前6ヶ月の月例賃金 ÷ 180日 = 日額 |
| ✅ 申請タイミング | 育休開始後2ヶ月経過後に初回申請(期限厳守) |
| ✅ 必要書類準備 | 母子健康手帳・賃金台帳・出勤簿・被保険者証 |
| ✅ 延長の検討 | 保育所不承諾の場合は最長2歳まで延長可能 |
育休給付金は正しく申請すれば家計を大きく支える制度です。計算方法と手続きの流れを把握し、申請漏れや期限超過のないよう早めに準備を進めましょう。不明点があれば、最寄りのハローワークまたは社会保険労務士に相談することをお勧めします。
📋 参考・出典
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き」
– ハローワークインターネットサービス(公共職業安定所)
– 雇用保険法(昭和49年法律第116号)
– 育児・介護休業法(平成3年法律第76号)※ 本記事の情報は2026年版です。制度改正により変更される場合があります。最新情報は厚生労働省公式サイトをご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 育休給付金は最大いくらもらえますか?
A. 2025年4月以降、父母ともに育休取得の場合、支給開始から180日間は休業前給与の最大80%(手取り実質約10割相当)が支給されます。181日以降は50%です。
Q. 育休給付金を受け取るために必ずしなければいけないことは?
A. 育休給付金は申請型給付のため、申請手続きが必須です。何もしなければ自動的には振り込まれません。ハローワークへの申請書提出が必要です。
Q. 出産手当金と育休給付金は重複してもらえますか?
A. 両制度は重複受給不可です。出産手当金は産前42日~産後56日が対象で、産後休業終了後の育児休業期間から育休給付金が支給開始となります。
Q. 自営業やフリーランスは育休給付金の対象になりますか?
A. 自営業者やフリーランスは雇用保険に加入できないため、育休給付金の対象外です。公務員は共済組合の独自制度が適用されます。
Q. 転職直後に育休を取得する場合、受給資格はありますか?
A. 育休開始前の2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12ヶ月以上必要です。前職を辞めてから1年以内に再就職した場合は、前職期間を合算して要件を満たせることがあります。

