2025年4月、育休給付金の支給率が大きく変わります。これまで最大50%だった支給率が最大80%へと引き上げられ、子育て世帯の育休中の手取り収入が大幅に改善されます。
しかし「自分は対象になるのか」「いつから適用されるのか」「配偶者の育休状況は関係するのか」といった疑問を抱える方も多いでしょう。本記事では、2025年の制度変更に関する対象者の条件・段階的移行スケジュール・申請手続きを完全解説します。
2025年4月から育休給付金の支給率が80%に引き上げ
支給率引き上げの背景と目的
今回の支給率引き上げは、日本が直面する少子化問題の深刻化と男性育休取得率の低迷という二つの課題に対応するための政策的決断です。
日本の合計特殊出生率は2023年に過去最低の1.20を記録し、政府は「異次元の少子化対策」として育休制度の実質的な拡充に踏み込みました。その中核が育休給付金の支給率引き上げです。
育休取得をためらう最大の理由のひとつが「育休中の収入減少」です。従来の支給率50%(社会保険料免除を考慮すると手取りベースで約67%)では、住宅ローンや生活費をまかなうには不十分と感じる世帯が多く、特に男性が育休を取得しにくい環境を生み出していました。
2023年に改正された育児・介護休業法および改正雇用保険法に基づき、2025年4月から育休給付金の支給率が段階的に引き上げられます。法的根拠となる主な条文は以下のとおりです。
| 法律名 | 関連条文 | 内容 |
|---|---|---|
| 雇用保険法 | 第61条の4、第61条の5 | 育児休業給付金の給付基本規定 |
| 育児・介護休業法 | 第2条、第5条 | 育児休業の定義・取得要件 |
| 雇用保険法施行規則 | 第107条〜第120条 | 給付金支給の詳細基準 |
| 改正育児・介護休業法 | 2023年改正(段階的施行) | 給付率引き上げの法的根拠 |
現行制度(50%)との違いを比較表で確認
現行制度と2025年4月以降の変更点を一覧で整理します。
| 比較項目 | 現行制度(〜2025年3月) | 変更後(2025年4月〜) |
|---|---|---|
| 支給率(育休開始〜180日) | 67%(雇用保険法上の特例) | 80%(引き上げ) |
| 支給率(181日〜) | 50% | 50%(変更なし) |
| 80%適用期間(第1子・第2子) | 最初の180日のみ | 1歳6ヶ月まで継続 |
| 80%適用期間(第3子以降) | 最初の180日のみ | 2歳まで継続 |
| 配偶者要件 | なし | 第1子・第2子は要件あり |
| 手取りベースの実質支給率 | 約67%(社保免除含む) | 約80%(社保免除含む) |
注: 育休開始から180日間は現行でも67%の支給がありますが、2025年4月以降はこの期間の定義・適用が拡大され、80%として長期間維持される形になります。社会保険料(健康保険・厚生年金)が育休中は免除されるため、実質的な手取りは支給率よりも高くなります。
80%支給率の対象者条件
育休給付金を受け取るための基本4条件(変更なし)
80%の引き上げを受けるためには、まず育休給付金の一般要件をすべて満たしている必要があります。2025年の改正後も、この基本要件に変更はありません。
- ✅ 雇用保険の被保険者であること(正社員・契約社員・パートタイム労働者問わず雇用保険に加入していること)
- ✅ 育児休業開始日前2年間に、雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あること(各月11日以上の就業が必要)
- ✅ 育児休業期間中の就業日数が月10日以下であること(10日を超える場合は80時間以下)
- ✅ 育休中に支払われる賃金が休業前の賃金月額の80%未満であること
これらのうち一つでも満たさない場合、給付金自体を受け取ることができません。まず自身の雇用保険加入状況を確認しましょう。雇用保険被保険者証または給与明細の「雇用保険」欄で確認できます。
80%適用のための追加条件とは
基本4条件を満たしたうえで、2025年4月以降の80%支給率の適用を受けるには以下の条件が加わります。
育休開始日が2025年4月1日以降であることが原則ですが、2025年4月1日時点ですでに育休を取得中の方も対象となる経過措置が設けられています。
| 育休の状況 | 80%支給の適用 |
|---|---|
| 2025年4月1日以降に育休開始 | 原則として適用対象 |
| 2025年4月1日時点で育休継続中 | 経過措置により一部適用対象 |
| 2025年3月31日以前に育休終了済 | 対象外(遡及適用なし) |
経過措置の詳細については、所轄のハローワーク(公共職業安定所)または会社の人事担当者に確認することをお勧めします。適用条件が個々の状況によって異なるためです。
配偶者要件の詳細【4つのパターン別に解説】
第1子・第2子が80%の支給率を受けるには、配偶者の育休状況に関する要件をクリアする必要があります。これは「両親ともに育休を取得しやすくする」という政策意図を反映したものです。
以下の4つのパターンのいずれかに該当すれば、配偶者要件を満たします。
パターン①:配偶者が現在育休を取得中
最も典型的なケースです。夫婦が同時期に育休を取得している場合、両者ともに80%の支給率が適用されます。男性育休の取得促進という政策目標と最も合致したパターンです。
具体例: 妻が2025年5月から育休を開始。同時期に夫も育休を取得している場合、妻の育休給付金は80%が適用される。
パターン②:配偶者が育休取得後に職場復帰した
配偶者がすでに育休を終えて復職している場合も要件を満たします。「配偶者も育休を取得した実績がある」ことが重要です。
具体例: 夫が子の出生後2ヶ月の育休を取得して復職。その後も妻が育休を継続している場合、妻の給付金に80%が適用される。
パターン③:配偶者が出産予定日前後8週間以内の期間にある
出産直後の特別な期間として、配偶者が産前産後休業(産休)を取得している状況も配偶者要件として認められます。
具体例: 出産後8週間以内の産後休業中に、配偶者(夫)も出生時育児休業(通称「パパ育休」)を取得している場合が典型です。
パターン④:出産者本人であり、配偶者が非常勤・フリーランス等で育休が取得できない場合
雇用されていない配偶者(自営業・フリーランスなど)や、非常勤雇用で雇用保険未加入の配偶者を持つ方は、配偶者が育休を「取得できない事情」があると認められるため、配偶者要件が免除される形で80%が適用されます。
具体例: 夫がフリーランスで育休制度の対象外。妻(会社員)が育休を取得する場合、夫の育休取得がなくても妻の給付金80%が適用される。
第1子・第2子と第3子以降で異なる支給期間
第1子・第2子の場合:1歳6ヶ月まで80%
第1子または第2子の育休を取得する場合、2025年4月以降は出生日から1歳6ヶ月になるまでの期間にわたって80%の支給率が適用されます。
| 時期 | 支給率 | 社保免除後の実質手取り率 |
|---|---|---|
| 出生〜1歳6ヶ月 | 80% | 約80〜85% |
| 1歳6ヶ月〜育休終了 | 50% | 約67% |
従来は育休開始から180日間(約6ヶ月)のみ67%の支給率が適用され、その後は50%でした。改正後は1歳6ヶ月まで延長された80%の高い支給率が継続されます。
なお、配偶者要件を満たさない場合は、80%が適用される期間が短縮される可能性があります。詳細はハローワークにご確認ください。
第3子以降の場合:2歳まで80%が適用
第3子以降を育てる場合、支給率80%の対象期間がさらに拡大し、出生日から2歳になるまでが80%適用となります。
| 子の順番 | 80%適用期間 | 配偶者要件 |
|---|---|---|
| 第1子・第2子 | 出生〜1歳6ヶ月 | あり(4パターンのいずれか) |
| 第3子以降 | 出生〜2歳 | なし |
第3子以降については、配偶者要件が不問となっている点も重要です。多子世帯への支援を手厚くするという政策判断により、配偶者の雇用形態や育休取得状況にかかわらず、80%の支給率が2歳まで継続されます。
段階的移行スケジュールと時系列整理
2025年4月の制度移行は段階的に行われます。自分がいつから何%の支給を受けられるのかを、以下のスケジュールで確認してください。
| 時期 | 対象 | 支給率 | 適用対象期間 |
|---|---|---|---|
| 〜2025年3月 | 全育休取得者 | 最大67%(〜180日)、以降50% | 〜1歳(延長の場合は1歳6ヶ月・2歳) |
| 2025年4月〜 | 第1子・第2子(配偶者要件あり) | 80%(1歳6ヶ月まで) | 出生〜1歳6ヶ月 |
| 2025年4月〜 | 第3子以降(配偶者要件なし) | 80%(2歳まで) | 出生〜2歳 |
| 2025年4月〜(経過措置) | 育休継続中の者 | 一部80%適用 | 2025年4月以降の期間に限る |
ポイント:育休開始日が判断の基準
80%適用の可否を決める最も重要な基準は育休の開始日です。2025年4月1日以降に育休を開始する場合は、原則として新制度が適用されます。
給付金の具体的な計算方法
賃金月額と給付金の計算式
育休給付金の支給額は、休業開始時の賃金月額を基準に計算されます。
【基本計算式】
育休給付金(月額)= 賃金月額 × 支給率(80%または50%)
賃金月額は「育休開始前6ヶ月の賃金の合計 ÷ 180日 × 30日」で算出されます。なお、賃金月額には上限・下限が設けられています(毎年8月に改定)。
2024年度の賃金月額の上限・下限(参考)
| 区分 | 金額 |
|---|---|
| 賃金日額の上限 | 15,190円(育休給付金の場合) |
| 賃金日額の下限 | 2,669円 |
| 月額換算の上限(30日) | 約455,700円 |
支給率80%の場合の具体的な受給例
例:月収30万円(賃金月額30万円)の場合
- 育休給付金(月額):30万円 × 80% = 24万円
- 社会保険料(健康保険・厚生年金):育休中は免除
- 所得税:育休給付金は非課税
- 実質的な手取り額:約24万円(在職時の手取りとほぼ同水準)
従来の50%支給(月15万円)と比べ、月9万円の増加となります。1歳6ヶ月まで80%が継続されると仮定すると、18ヶ月間で最大162万円の増加となる計算です。
申請手続きと必要書類
申請の流れ(会社経由での手続き)
育休給付金の申請は、原則として会社(事業主)がハローワークに代わって行うケースがほとんどです。以下の流れで手続きが進みます。
-
育休取得の意思表示・申出
会社の人事・総務担当者に育休取得を申し出る(遅くとも育休開始の1ヶ月前までに) -
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書の作成
会社が育休開始日の翌日から10日以内にハローワークへ提出 -
育児休業給付金支給申請書の提出(初回)
育休開始から約4ヶ月後に初回申請(2ヶ月分まとめて申請) -
2回目以降の支給申請(2ヶ月ごと)
指定された支給申請期間ごとに継続して申請 -
給付金の振込
申請後、約1〜2週間でハローワークが審査・支給決定し、指定口座に振込
必要書類一覧
申請に際して準備する書類は以下のとおりです。なお、会社が代理申請する場合は、多くの書類を会社側が作成・提出します。
| 書類名 | 作成者 | 備考 |
|---|---|---|
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 会社 | 育休開始翌日から10日以内 |
| 育児休業給付金支給申請書 | 会社(本人署名が必要な場合あり) | 2ヶ月ごとに提出 |
| 母子健康手帳(出生届出済証明のページ) | 本人 | 子の出生確認のため |
| 育児休業取得確認書類 | 会社 | 育休取得の事実確認 |
| 配偶者の育休取得証明書類 | 本人(配偶者の会社発行) | 配偶者要件の確認のため(第1子・第2子の場合) |
| 賃金台帳・出勤簿(タイムカード) | 会社 | 賃金月額の確認のため |
| 振込先口座情報 | 本人 | 初回申請時 |
配偶者要件の証明方法
2025年4月以降の改正で新たに加わる配偶者要件の証明は、以下の書類で行います。
- 配偶者が育休取得中の場合:配偶者の会社が発行する「育児休業取得証明書」または「育休取得期間を示す書類」
- 配偶者が育休から復帰済みの場合:育休期間と復帰日が確認できる書類(会社の証明書)
- 配偶者が非雇用者(フリーランス等)の場合:配偶者の就業形態が確認できる書類(確定申告書の写し・個人事業主登録証明など)
書類の具体的な形式については、所轄のハローワーク窓口またはハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)でご確認ください。
申請期限と注意事項
- 育休給付金の支給申請期間は2年間で時効があります(雇用保険法第74条)。申請忘れに注意しましょう。
- 支給申請期間(2ヶ月ごとの申請期限)を過ぎた場合でも、2年以内であれば遡及申請が可能です。
- 育休中にアルバイト等の就業を行った場合、就業日数・賃金によっては給付金が減額または不支給となります。
社会保険料免除と合わせた実質的な手取り計算
育休給付金と併せて活用できる重要な制度が社会保険料の育休中免除です(健康保険法第159条、厚生年金保険法第81条の2)。
育休期間中は、健康保険料・厚生年金保険料の本人負担分と事業主負担分の両方が免除されます。この免除額を含めて計算すると、実質的な手取りはさらに高くなります。
| 月収 | 育休給付金(80%) | 社保免除額(目安) | 実質手取り(月) |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 16万円 | 約3万円 | 約19万円 |
| 30万円 | 24万円 | 約4.5万円 | 約28.5万円 |
| 40万円 | 32万円 | 約6万円 | 約38万円 |
注: 上記はあくまでも目安です。社会保険料率は協会けんぽ・組合健保によって異なり、賞与月の取り扱い等も考慮が必要です。正確な金額は会社の人事担当者またはハローワークにお問い合わせください。
人事担当者が押さえておくべきポイント
企業の人事・総務担当者の方は、以下の対応が2025年4月以降に求められます。
- 在職中の育休取得予定者への周知:80%引き上げの対象者・条件を社内向けにわかりやすく案内する
- 配偶者要件の確認フロー整備:第1子・第2子の育休取得者について、配偶者の育休状況を確認する書類取得フローを新設する
- 支給申請書類の更新確認:2025年4月からハローワークが提供する様式が改訂される可能性があるため、最新様式を確認する
- 勤怠・賃金管理システムの確認:80%支給に対応した給付計算が正しく行えるよう、システムベンダーに確認する
- 2025年4月施行前の育休中社員への案内:経過措置の適用可能性があるため、個別にハローワークへ確認し、対象社員に案内する
よくある質問(FAQ)
Q1. 2025年3月末から育休を取得している場合、4月から80%に変わりますか?
経過措置により、2025年4月1日時点で育休継続中の方についても一部80%が適用される可能性があります。ただし、適用の可否や開始時期は個々の状況によって異なるため、所轄のハローワーク窓口に直接確認することを強くお勧めします。
Q2. 配偶者が専業主婦(主夫)の場合、80%は受けられますか?
専業主婦・主夫の方は雇用保険に加入していないため、育休制度の対象外となります。この場合、配偶者が「育休を取得できない事情がある」として認められるケースがあり、80%が適用される可能性があります。ただし要件の確認が必要なため、ハローワークへお問い合わせください。
Q3. 育休給付金の80%は、出生時育児休業(パパ育休)にも適用されますか?
出生時育児休業(子の出生後8週間以内に取得できる育休)に対応する「出生時育児休業給付金」も、2025年4月以降の改正で支給率が引き上げられます。こちらについても改正内容の詳細をハローワークまたは厚生労働省のホームページでご確認ください。
Q4. 育休中にアルバイトをすると給付金はどうなりますか?
育休中に就業した場合、就業日数が月10日以下(または80時間以下)であれば給付金は支給されますが、就業による賃金が発生した場合は給付金が減額されることがあります。休業前賃金の80%以上の賃金が支払われた場合は支給停止となります。
Q5. 第3子以降の判定は、何を基準にしますか?
「第3子以降」の判定は、申請者(育休を取得する親)の子の数を基準とします。法律上の子(実子・養子を含む)が対象となります。ただし、具体的な認定基準については制度の詳細が省令等で定められるため、ハローワークで確認することをお勧めします。
Q6. 給付金の申請を会社に頼まずに自分でできますか?
育休給付金の申請は原則として事業主(会社)を経由して行いますが、事業主が申請を行わない場合などは、被保険者本人がハローワークに直接申請することも可能です(雇用保険法施行規則第101条の19)。その場合はハローワーク窓口にご相談ください。
まとめ
育休給付金の2025年4月からの改正は、育児と仕事の両立をより現実的なものにする重要な制度変更です。第1子・第2子は配偶者要件を満たすことで1歳6ヶ月まで80%の支給が継続され、第3子以降は配偶者要件なしで2歳まで80%が適用されます。
制度の詳細は今後さらに政令・省令で具体化される部分もあるため、厚生労働省やハローワークの最新情報を定期的に確認することをお勧めします。特に配偶者要件の証明書類については、事業主と綿密に打ち合わせて遺漏がないようご注意ください。

