育休給付金に所得税はかかる?非課税の理由と注意点を解説

育休給付金に所得税はかかる?非課税の理由と注意点を解説 育休給付金

育休給付金を受け取る予定の方や、現在受給中の方の中には「給付金から所得税が引かれるのでは?」「税金の申告が必要になるの?」と不安に感じている方も多いのではないでしょうか。

結論から言えば、育休給付金から所得税が引かれることはありません。受け取った金額がそのまま手元に残る「非課税給付」です。育休給付金は所得税法第9条第1項第20号および所得税法施行令第23条によって、明確に非課税所得と規定されており、所得税はもちろん住民税も一切かかりません。

この記事では、育休給付金が非課税となる法的根拠や非課税の対象範囲、関連する税務手続きの注意点まで、受給前・受給中に知っておくべき税金の基礎知識をわかりやすく解説します。


育休給付金に所得税は引かれる?結論を先にお伝えします

育休給付金(正式名称:育児休業給付金)に所得税は一切かかりません。給付金の全額が非課税となり、支給額がそのまま振り込まれます。「高額になると課税される」「一部だけ非課税になる」といった仕組みは存在せず、受給額の大小にかかわらず全額が課税対象外です。

受給を前にして税金の心配をしていた方は、まずこの点をしっかりと押さえておきましょう。

育休給付金は雇用保険から支払われる社会保障給付金

育休給付金は、会社が支払う「給与」ではありません。雇用保険法に基づいて国(ハローワーク)が支給する社会保障給付金です。

給与はいわゆる「給与所得」として所得税・住民税の課税対象になりますが、育休給付金は性質がまったく異なります。雇用保険の被保険者が育児休業を取得した際に、収入減少を補うために支給される社会保障制度であり、給与とは別の法律体系に基づく給付です。

この「社会保障給付金である」という性質が、非課税とされる根拠の出発点になっています。

所得税も住民税も一切かからない

よくある誤解として「所得税は非課税だが住民税はかかる」と思い込んでいるケースがあります。しかし実際には、所得税と住民税のどちらもゼロです。

住民税の課税は前年の所得を基に計算されますが、育休給付金は「所得」としてカウントされません。そのため、育休給付金を受給しても翌年の住民税が増えることもなく、給付金受給中に住民税の追加負担が発生することもありません。

また、後述する社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)も、育児休業中は免除申請によって徴収されなくなります。つまり育休期間中は、給付金から税金・社会保険料が差し引かれることなく、受給額の全額を受け取ることができます


育休給付金が非課税となる法的根拠

「非課税と聞いたけれど、本当に大丈夫なの?」と心配な方のために、法律に基づいた根拠を確認しておきましょう。育休給付金の非課税は、明確な法律の条文によって定められており、解釈の余地なく保証されています。

所得税法第9条第1項第20号とは

所得税法第9条は「非課税所得」を列挙した条文で、その第1項第20号に次のような規定があります。

「雇用保険法の規定による給付金で政令で定めるもの」は所得税を課さない

この条文が、育休給付金を非課税とする直接の根拠です。雇用保険法に基づいて支給される給付金のうち、政令(所得税法施行令)で指定されたものは所得税を課さないと定めており、育休給付金はまさにこの「政令で定めるもの」に該当します。

法律で明示的に非課税と規定されているため、「給付金額が増えたら課税される」「特定の条件を満たすと課税対象になる」といったことは起こりません。

政令(所得税法施行令第23条)で明示された非課税給付の範囲

所得税法第9条第1項第20号の「政令で定めるもの」に該当する給付は、所得税法施行令第23条によって具体的に列挙されています。

この施行令の中に、育児休業給付金介護休業給付金が明示されています。政令レベルで給付の名称が明記されているため、「育休給付金が非課税の対象に含まれるかどうか」に解釈の余地はなく、すべての受給者に対して確実に適用されます。

まとめると、非課税の根拠は次の2段階の法令によって担保されています。

法令 内容
所得税法第9条第1項第20号 「雇用保険法の規定による給付金で政令で定めるもの」を非課税所得と規定
所得税法施行令第23条 育児休業給付金・介護休業給付金を非課税給付として明示

国が定めた法律と政令の両方で明確に規定されているため、育休給付金が非課税であることは制度的に完全に保証されています。


非課税の対象範囲と受給額に上限はあるか

育休給付金が非課税であることはわかった。しかし「受給額が多いと一部課税されるのでは?」「育休期間が長いと課税対象になるの?」といった疑問を持つ方も少なくありません。ここでは対象範囲について詳しく整理します。

受給額に関わらず育休給付金は全額非課税

育休給付金の支給額は、休業前の賃金日額に応じて計算されるため、人によって受給額は異なります。休業開始から180日目までは休業前賃金の67%相当、181日目以降は50%相当が支給されます。

ただし、支給額がいくら高くなっても、非課税の適用に変わりはありません。所得税法施行令第23条は受給額の上限を定めていないため、受給額の全額が非課税となります。

支給額の計算式は以下のとおりです。

【育児休業給付金の支給額】

  • 休業開始〜180日目:賃金日額 × 支給日数 × 67%
  • 181日目以降:賃金日額 × 支給日数 × 50%

なお、賃金日額には上限額が設定されており(毎年8月1日に改定)、上限を超える部分については計算の基礎には含まれませんが、これは受給資格の問題であり、非課税の取り扱いとは別の話です。いずれにせよ、支給された育児休業給付金は全額非課税です。

育休期間の長さや受給回数も非課税の対象に影響しない

育休の取得期間(最長2年)や、第1子・第2子と複数回育休を取得した場合も、非課税の適用には何ら影響しません。育休給付金として支給される限り、期間・回数・受給額を問わず全額が非課税です。

また、パパ・ママ育休プラス制度や出生時育児休業給付金(産後パパ育休に対応した給付)も同様に非課税の扱いを受けます。

育休給付金以外の関連給付の課税状況

育休・産休に関連する給付金は育休給付金だけではありません。混同しないよう、主な関連給付の課税状況を一覧で確認しておきましょう。

給付名 支給元 所得税 住民税
育児休業給付金 ハローワーク(雇用保険) 非課税 非課税
出産手当金 健康保険組合・協会けんぽ 非課税 非課税
出産育児一時金 健康保険組合・協会けんぽ 非課税 非課税
育休中に受け取った給与 会社 課税 課税

出産手当金・出産育児一時金も非課税ですが、育休中に一部でも給与を受け取った場合(短時間就労による給与など)は、その給与部分は通常の給与所得として課税対象になります。また、育休給付金との調整(減額)が行われる場合もあります。


育休中の税務手続きと注意点

育休給付金自体は非課税ですが、育休期間中の税務に関してはいくつか注意すべきポイントがあります。

確定申告は原則不要

育休給付金は非課税所得であるため、確定申告の対象にはなりません。育休中に他の収入(給与・副業・不動産収入など)がない場合、育休給付金だけを受け取っていれば確定申告は不要です。

ただし、次のケースでは確定申告が必要になることがあります。

  • 育休中にアルバイトや副業で一定以上の収入を得た場合
  • 医療費控除・住宅ローン控除などを申告する場合
  • 育休開始前に在籍していた会社で年末調整が完了していない場合

不明な点がある場合は、居住地の所轄税務署に相談することをお勧めします。

年末調整における取り扱い

育休中に年末を迎えた場合、年末調整は在籍する会社が行います。育休給付金は非課税所得のため年末調整の対象にはなりませんが、その年に受け取った給与(育休前の給与・短時間就労による給与など)については通常どおり年末調整が行われます。

育休中であっても、会社から年末調整の書類(給与所得者の扶養控除等申告書など)が送付されてきた場合は、漏れなく提出するようにしましょう。

翌年の住民税に注意が必要なケース

育休給付金は所得として扱われないため、給付金を受け取るだけでは翌年の住民税が増えることはありません。ただし、育休前に働いていた期間の給与は所得としてカウントされます

たとえば1月から6月まで働き、7月から育休を開始した場合、1〜6月分の給与をもとに翌年の住民税が計算されます。育休中に住民税の通知が届いた場合、「なぜ住民税がかかるの?」と驚く方も多いですが、これは育休前の給与に対して課税されているものであり、育休給付金に税金がかかっているわけではありません。

住民税は毎月給与から天引きされる「特別徴収」が一般的ですが、育休中は給与がないため、自宅に「普通徴収」の納付書が届くことがあります。納付書が届いた場合は期限内に忘れず納付しましょう。

社会保険料の免除申請も忘れずに

育休給付金は非課税ですが、社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)についても育休期間中は免除を受けることができます。これは非課税とは別の制度で、育休中の社会保険料免除として申請が必要です。

免除の申請は事業主が年金事務所または健康保険組合に対して行います。申請が通れば、育休期間中の社会保険料が労働者・事業主の双方について免除されます。免除期間中も社会保険の加入資格は継続されるため、将来の年金額に大きく影響することもありません。

育休取得が決まったら、会社の人事・総務担当者に社会保険料免除の申請を忘れずに確認しましょう。


育休給付金の申請手続きと必要書類

育休給付金の非課税の仕組みを理解したところで、実際の申請手続きも確認しておきましょう。申請は基本的に事業主(会社)がハローワークに対して行いますが、労働者側の準備も必要です。

申請の流れ

育休給付金の申請は、以下の流れで進めます。

ステップ1:事業主へ育休取得の申出

育休開始予定日の原則1ヶ月前までに、事業主に育休の取得を申し出ます。育休申請書の様式は会社所定のものを使用することが多いですが、法律上は書面または口頭での申出でも可能です。

ステップ2:受給資格確認申請(育休開始から2ヶ月以内)

育休開始後、事業主がハローワークに「育児休業給付受給資格確認申請」を行います。これが給付金受給の第一歩となります。原則として育休開始から2ヶ月以内に申請が必要です。

ステップ3:定期的な支給申請(2ヶ月ごと)

受給資格が確認された後、事業主が原則として2ヶ月ごとにハローワークへ支給申請書を提出します。申請に基づいて給付金が労働者の指定口座に振り込まれます。

初回申請に必要な書類

初回申請(受給資格確認申請)に必要な主な書類は以下のとおりです。

書類名 準備者 補足
育児休業給付受給資格確認申請書(様式第1号) 事業主 ハローワーク所定様式
雇用保険被保険者証(または被保険者番号) 労働者 会社が管理していることが多い
子の出生を証明する書類 労働者 出生証明書・母子手帳・戸籍謄本等
育児休業申請書 労働者 会社所定様式でも可
給付金振込先口座の情報 労働者 通帳またはキャッシュカードのコピー

定期支給申請に必要な書類

2ヶ月ごとの定期支給申請に必要な主な書類は以下のとおりです。

書類名 準備者 補足
育児休業給付金支給申請書(様式第3号) 事業主 ハローワーク所定様式
賃金台帳・出勤簿等 事業主 就労日数・就労時間の確認用

定期申請は事業主が中心となって進めますが、労働者側も支給申請のタイミングや入金日を確認しておくことで、受給漏れを防ぐことができます。

受給資格の主な要件

育休給付金を受け取るためには、以下の要件を満たす必要があります。

  • 雇用保険の被保険者であること
  • 育児休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月(もしくは就業時間が80時間以上の月)が12ヶ月以上あること
  • 育休期間中の就労日数が、支給単位期間(原則2ヶ月)ごとに10日以下(または就業時間が80時間以下)であること
  • 子どもが1歳(保育所未入所等の場合は最長2歳)になるまでの期間であること

非課税の対象はあくまでも「育児休業給付金として支給された金額」であるため、受給資格を正しく把握した上で申請することが重要です。


よくある質問(FAQ)

育休給付金の税金についてよく寄せられる疑問に回答します。

Q1. 育休給付金は確定申告に記載する必要がありますか?

育休給付金は非課税所得であるため、確定申告書への記載は不要です。育休中に他の課税所得(給与・副業収入など)がある場合は、そちらについて申告が必要になることがあります。

Q2. 育休給付金を受け取ると、翌年の住民税が上がりますか?

上がりません。育休給付金は所得として扱われないため、住民税の計算に影響しません。ただし、育休前に受け取っていた給与は課税対象のため、前年の給与額に基づいて翌年の住民税が計算されます。

Q3. 育休中にアルバイトをした場合、給与にも非課税が適用されますか?

アルバイトや短時間就労で受け取った給与には通常の所得税・住民税がかかります。育休給付金の非課税はあくまでも雇用保険から支給される「育児休業給付金」に限定されます。また、就労日数・時間が一定以上になると給付金が減額・不支給となる場合もあるため注意が必要です。

Q4. 出産手当金も非課税ですか?

はい、出産手当金も非課税です。出産手当金は健康保険法に基づく給付であり、所得税法第9条第1項第13号の規定により非課税所得とされています。所得として扱われないため、受給によって住民税が増えることもありません。

Q5. 育休給付金の受給中、年末調整はどうすればよいですか?

育休中でも在籍する会社で年末調整が行われます。会社から年末調整の書類(扶養控除等申告書など)が送付されてきた場合は、必要事項を記入して期限内に提出してください。育休給付金は非課税のため年末調整の対象にはなりませんが、その年に受け取った給与部分については年末調整が行われます。

Q6. 育休給付金の支給明細書は発行されますか?

育休給付金の支給にあたって、ハローワークから個別に明細書が発行されるわけではありませんが、事業主を通じて支給内容を確認することができます。振込履歴と合わせて記録として保管しておくとよいでしょう。また、不明な点があればハローワークの窓口に直接問い合わせることも可能です。


まとめ

育休給付金(育児休業給付金)は、所得税法第9条第1項第20号および所得税法施行令第23条によって非課税所得と明確に規定されており、所得税も住民税も一切かかりません。受給額の多寡や育休期間の長さに関わらず、支給された金額の全額がそのまま手元に残ります。

ただし、育休中に給与収入があった場合はその部分は課税対象となり、育休前の給与をもとにした翌年の住民税が発生することもあります。育休給付金の非課税の仕組みを正しく理解した上で、税務手続きに漏れがないよう準備を進めましょう。

また、社会保険料の免除申請や、ハローワークへの申請書類の提出など、会社と連携して進めるべき手続きも多くあります。疑問点があれば、早めに会社の人事・総務担当者やハローワーク、税務署に相談することをお勧めします。育休給付金を正しく理解し、安心して育休取得を進めてください。


参考法令・関連情報

  • 所得税法 第9条第1項第20号
  • 所得税法施行令 第23条
  • 雇用保険法 第61条の4〜第61条の7(育児休業給付)
  • 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続きについて」
  • ハローワークインターネットサービス(厚生労働省)

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