育休給付金の就業時間計測と80時間基準の計算方法【2025年最新版】

育休給付金の就業時間計測と80時間基準の計算方法【2025年最新版】 育休給付金

育児休業中に少しだけ仕事をしても、育休給付金はもらえるのか——そんな疑問を持つ方は少なくありません。育休給付金には「月80時間」という就業時間の基準があり、この基準を超えると給付金が減額されるしくみになっています。しかし、「80時間のカウント方法がわからない」「残業や休憩はどう扱うのか」「複数の職場で働いている場合はどう計算するのか」といった具体的な疑問を持つ方も多いでしょう。

この記事では、育休給付金における就業時間の正確な計測方法と80時間基準の計算方法を、法的根拠・具体例・計算式を交えながら徹底的に解説します。正確な知識を身につけることで、育児と仕事を両立しながら給付金を適切に受け取ることができます。


育休給付金の「80時間基準」とは何か?制度の全体像を理解しよう

育休給付金の支給調整を理解するうえで、まず「80時間基準」という概念を正確に把握することが重要です。この基準は育児・介護休業法と雇用保険法に基づいており、育休中の働き方と給付金の受給額を直結させる重要なルールです。

育休中に働くと給付金が減る?支給調整の仕組みを図解

育休給付金は、育児休業期間中に仕事をまったくしない場合でも、就業しながら育休を取得する場合でも受給できます。ただし、就業した時間数に応じて、受給できる給付金の金額が変わります。

支給調整の基本的なルールは、次のとおりです。

月間就業時間 給付金への影響
0時間(就業なし) 満額支給(給与の67%または50%)
1〜80時間 原則として満額支給(ただし賃金との合計が基準を超えた場合は調整あり)
80時間超 支給停止(不支給)

つまり、「月80時間以内であれば給付金は減額されない(賃金との合計額が一定水準を超えない場合)」というのが基本ルールです。80時間を超えてしまうと、給付金が不支給となります。

この「80時間」という数字は単純な上限ではなく、制度上の支給停止基準として設定されており、働き方の柔軟性を確保しながらも一定の育児専念を求めるというバランスの取れた設計になっています。

また、就業時間が80時間以内であっても、就業によって受け取った賃金と育休給付金の合計額が、育休前の賃金の80%を超える場合には、超過分が給付金から差し引かれる「賃金との調整」が行われます。これは就業時間の基準とは別の調整ルールです。

制度の法的根拠:雇用保険法と厚労省告示のポイント

育休給付金の就業時間に関するルールは、以下の三層構造の法令に基づいています。

第一層:雇用保険法(基本法)
– 第61条:育児休業給付金の支給要件
– 第63条:育児休業給付金の額の算定方法

第二層:雇用保険法施行規則(省令)
– 第101条〜第109条:育児休業給付金の具体的な申請・支給に関する細目
– 就業日数・就業時間の計測方法や支給調整の基準が規定されています

第三層:ハローワーク告示・通達(運用指針)
– 育児休業給付の支給に関する細目(厚生労働省告示)
– 雇用保険関係業務取扱要領(育児休業給付金編)

この三層構造を理解しておくと、制度の解釈に迷ったときにどの文書を参照すべきかが明確になります。実務的には、ハローワークの担当者が業務取扱要領に基づいて判断を行うため、申請時に疑問が生じた場合は管轄のハローワークに確認することが推奨されます。


就業時間の正確な計測方法|含まれるもの・含まれないもの

育休給付金の支給調整において最も重要なのが、「就業時間」の正確な計測です。何を「就業時間」に含めるのか、何を含めないのかを誤ると、実際より多く就業しているとみなされ、給付金が減額・不支給になるリスクがあります。

まず、全体像を一覧で確認しましょう。

カテゴリー 就業時間への算入
実際の作業時間 ✅ 含む
残業(時間外労働) ✅ 含む
直行直帰の移動時間(業務命令による) ✅ 含む
休憩時間 ❌ 含まない
通勤時間 ❌ 含まない
待機時間(業務が発生しない手待ち時間) ❌ 含まない(原則)
研修・教育訓練時間 ケースによる(使用者の指示による場合は含む)

就業時間に「含まれる」項目の具体例(残業・直行直帰など)

① 残業時間(時間外労働)

通常の所定労働時間を超えた残業時間も、就業時間として100%カウントされます。たとえば、1日の所定労働時間が6時間のところを8時間働いた場合、8時間すべてが就業時間に算入されます。

育休中に短時間だけ職場に戻るつもりで残業まで行うと、月の就業時間が想定より多くなるケースがあります。残業は必ず事前に確認し、可能であれば就業前に合計時間を見積もっておくことが大切です。

② 直行直帰の移動時間(業務命令による移動)

使用者(会社)の業務命令によって、自宅から取引先・現場に直接向かう「直行」や、現場から直接帰宅する「直帰」における移動時間が、業務の一部として指示されている場合は就業時間に含まれます。

ただし、これはあくまで「業務命令による移動」が前提です。自分の判断で直行直帰を選んだ場合や、通常の出退勤経路を変えただけの場合は、通勤時間として扱われ、就業時間には含まれません。

③ テレワーク・在宅勤務の実労働時間

育休中のテレワーク就業も、実際に業務を行っていた時間は就業時間としてカウントされます。「在宅だから」「少しだけだから」という認識は誤りで、実績時間をもとに計測する必要があります。テレワーク時は特に業務時間の記録を正確につけておくことを推奨します。

就業時間に「含まれない」項目(通勤時間・休憩時間の扱い)

① 通勤時間

自宅から職場までの移動にかかる時間は、就業時間には含まれません。これは労働基準法上の「労働時間」の定義に準じた考え方で、使用者の指揮命令下にない移動時間は労働時間とみなされないためです。

毎日1時間かけて通勤している場合でも、月20日出勤しても40時間の通勤時間は就業時間に算入されませんので、安心してください。

② 休憩時間(昼休みなど)

労働基準法第34条に基づく休憩時間は、就業時間に含まれません。昼食休憩・喫煙休憩・授乳休憩などの休憩時間は、いずれもカウント外です。

1日6時間以上の勤務では最低45分、8時間以上では最低60分の休憩が法律で義務付けられており、これらは就業時間から除外して計測してください。

③ 業務が発生しない待機時間(手待ち時間)

電話当番や来客対応のために席にいるが実際には業務が発生していない「手待ち時間」は、原則として就業時間に含まれません。ただし、使用者の指揮命令下に置かれていると判断される場合は含まれることもあるため、具体的な状況に応じてハローワークに確認することが必要です。


80時間を超えた場合の計算方法と給付金への影響

育休中の月間就業時間が80時間を超えた場合、その支給期間(1か月単位の支給単位期間)については育休給付金が支給停止(不支給)となります。

支給停止のしくみ|80時間超で給付金はどうなるか

就業時間が80時間を超えた月(支給単位期間)は、その月の育休給付金が全額不支給となります。「超えた分だけ減額される」のではなく、「その月は丸ごと不支給になる」という点が重要です。

たとえば、ある月の就業時間が81時間だった場合、80時間を1時間超えただけであっても、その月の育休給付金は0円となります。これは見落としやすい点なので、特に注意が必要です。

ただし、80時間を超えた月があっても、その前後の月々の給付については引き続き支給されます。支給停止はあくまで「超えた月のみ」が対象です。

賃金と育休給付金の合計額調整|80時間以内でも注意が必要なケース

就業時間が80時間以内でも、就業によって得た賃金が一定額を超えると、育休給付金が減額されます。この調整ルールは「賃金調整」と呼ばれ、以下の基準で行われます。

賃金調整の基準

育休前賃金(給付基礎日額 × 30日)の80% > 就業賃金 + 育休給付金 となるよう調整

具体的な計算式は次のとおりです。

調整後の育休給付金 = 育休前賃金の80% − 就業によって得た賃金

計算例:

  • 育休前の月収(給付基礎日額×30日):30万円
  • 育休中の就業で得た賃金:5万円
  • 通常の育休給付金(67%):30万円 × 67% = 20万1,000円

この場合、就業賃金5万円 + 育休給付金20万1,000円 = 25万1,000円となり、育休前賃金30万円の80%(24万円)を超えています。

調整後の育休給付金 = 30万円 × 80% − 5万円 = 24万円 − 5万円 = 19万円

この例では、育休給付金が20万1,000円から19万円に減額されます。

一方で、就業賃金が育休前賃金の80%以上(この例では24万円以上)になってしまうと、育休給付金は0円となります。

就業日数の制限にも注意|10日以下ルール

就業時間の80時間基準と並んで重要なのが、「就業日数10日以下」という別の基準です。

育休給付金を受け取るためには、支給単位期間中の就業日数が10日以下(または就業時間が80時間以下)であることが必要です。日数と時間、どちらか一方を満たせばよいのではなく、どちらかの条件を満たすと受給可能という「OR条件」になっています。

条件 基準 結果
就業日数が10日以下 給付金受給可能
就業時間が80時間以下 給付金受給可能
就業日数が11日以上かつ就業時間が80時間超 支給停止

たとえば、月11日以上働いたとしても、合計就業時間が80時間以内であれば給付金を受け取ることができます。短時間の勤務を多日数行う場合は、時間数の管理が特に重要になります。


複数事業所勤務の場合の就業時間合算方法

育休取得者が複数の事業所(会社・職場)で就業している場合、すべての事業所における就業時間を合算して80時間基準を判断します。これは非常に重要なポイントです。

複数職場の合算ルール

たとえば、A社での就業時間が月50時間、B社での就業時間が月40時間の場合、合計90時間となり、80時間基準を超えるため、その月の育休給付金は不支給となります。A社だけ・B社だけの時間で判断するのではありません。

複数事業所の合算時の注意点

  1. 雇用保険の被保険者資格を有する事業所:育休給付金を管轄するハローワークに、すべての就業状況を申告する必要があります
  2. 副業・兼業の扱い:育休前から複数事業所で勤務していた場合も、育休中の就業はすべて合算の対象となります
  3. フリーランス・業務委託:雇用関係のある事業所での就業時間が対象ですが、フリーランスや業務委託の場合は扱いが異なる場合があるため、ハローワークへの確認が必要です

申告漏れは不正受給になるリスク

複数事業所での就業時間を合算せず、1か所分のみ申告して給付金を受け取った場合、不正受給と判断される可能性があります。不正受給が発覚した場合、受給した給付金の全額返還に加え、不正受給額の2倍の金額を返還しなければならない場合があります(雇用保険法第10条の4)。

正確に申告することが、自分を守ることにもつながります。


就業時間の記録と申請書類の書き方

育休給付金の支給申請では、就業時間を正確に記録・申告することが求められます。ここでは実務的な記録方法と申請書類の書き方を解説します。

就業時間の記録方法

就業時間は、以下の方法で記録することが推奨されます。

推奨される記録方法
– タイムカード・勤怠管理システムの記録
– 業務日報・作業ログ
– テレワーク時はPCのログイン・ログオフ記録
– 直行直帰の場合は業務命令書・出張申請書

記録は月単位でまとめて管理し、申請時にすぐ提出できるよう整理しておきましょう。

申請書類と手続きの流れ

育休給付金の申請は、原則として2か月ごとに「雇用保険被保険者育児休業給付金支給申請書」をハローワークに提出します。就業した月がある場合は、以下の情報を正確に記入する必要があります。

申請書に記載する主な項目(就業関連)

記載項目 具体的な内容
就業日数 支給単位期間中に就業した実際の日数
就業時間数 休憩を除く実績労働時間の合計
就業による賃金額 支給単位期間中に受け取った・受け取る予定の賃金総額

申請書類に加え、事業主が発行する「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」や、就業実績を証明する書類(賃金台帳、タイムカードの写しなど)の提出を求められる場合があります。

育休中の就業を会社に事前確認する重要性

育休中に就業する場合、会社(事業主)への事前申告と同意が必要です。育児・介護休業法の改正により、育休中の就業に関するルールが整備されており、会社側も就業状況をハローワークに報告する義務を負っています。

会社側が把握していない就業時間と自己申告の内容に差異があると、申請処理が滞ったり、再確認が必要になったりする場合があるため、会社の人事担当者とこまめに連絡を取ることをおすすめします。


就業時間計測に関するよくある誤解と注意点

80時間基準についての誤解は多く、うっかりミスが給付金の不支給につながることがあります。特に注意すべき誤解をまとめます。

「月80時間ちょうどならセーフ」は正しい

80時間ぴったりは超えていないため、支給停止の対象にはなりません。ただし、「80時間を超えた瞬間から不支給」となるため、80時間を超えない計画的な就業スケジュールを立てることが重要です。

余裕を持って月70〜75時間程度を目安にしておくと、残業や予想外の就業時間増加があっても安全圏を保てます。

育休開始・終了月の「日割り計算」

育休の開始月や終了月は、1か月丸ごとの期間ではなく、育休の実際の期間分だけが支給単位期間となります。この場合、80時間基準も日割りで考えるのではなく、その支給単位期間全体の就業時間が80時間以下かどうかで判断されます。

短い支給単位期間でも80時間超になりうるため注意が必要です。

有給休暇取得中は「就業日」になる

育休中に有給休暇を取得して出勤した日は、就業日としてカウントされます。有給休暇は「休暇」ですが、その日に業務を行った場合は就業時間に含まれます。また、有給休暇を取得した日は「就業日数」にも算入されます。


よくある質問

Q1. 育休中にリモートで少し仕事をした場合も就業時間に含まれますか?

はい、含まれます。テレワーク・在宅勤務であっても、実際に業務を行った時間は就業時間としてカウントされます。業務の場所(オフィス・自宅)は関係なく、実績労働時間が基準となります。正確な記録をつけておくことをおすすめします。

Q2. 会社の研修・教育訓練に参加した時間は就業時間に含まれますか?

使用者(会社)からの指示・命令による研修・教育訓練への参加は就業時間に含まれます。一方、任意参加の自己啓発的な研修については含まれない場合が多いです。具体的な状況に応じてハローワークに確認することをおすすめします。

Q3. 育休中に副業を始めた場合、副業の時間も80時間に含まれますか?

育休前から行っていた副業(雇用関係のあるもの)で就業した時間は合算の対象となります。育休中に新たに始めた雇用関係のある副業も同様です。ただし、フリーランス・業務委託など雇用関係のない働き方については取り扱いが異なる場合があり、ハローワークへの確認が必要です。

Q4. 就業時間が80時間を超えた月の前後の給付金はどうなりますか?

80時間を超えた月(支給単位期間)のみが支給停止となり、その前後の月の給付金は通常どおり支給されます。支給停止はその月限りで、育休給付金の受給資格全体が失われるわけではありません。

Q5. 就業時間の申告を誤ってしまった場合はどうすればよいですか?

申告内容に誤りがあった場合は、速やかにハローワークに申し出てください。申告ミスによる過払いが生じた場合は返還が必要になりますが、自ら申し出ることで不正受給とは区別して取り扱われます。意図的な虚偽申告は不正受給となり、給付金の返還と追加の罰則が生じるため、正確な申告を心がけてください。

Q6. 育休中の就業について会社に知らせる必要はありますか?

はい、必要です。育休中の就業には事業主の同意が必要であり、育児・介護休業法の規定に基づいて会社に事前に申告する必要があります。また、事業主はハローワークへの申請書類に就業状況を記載・確認する役割を担っています。会社への事前連絡なく就業すると、後から問題が生じる可能性があります。


まとめ

育休給付金の就業時間計測と80時間基準について、重要なポイントを整理します。

押さえておきたい5つのポイント

  1. 月間就業時間が80時間を超えると、その月の育休給付金は全額不支給になります。超えた分だけ減額されるわけではない点を必ず確認してください。

  2. 就業時間のカウント対象は実績労働時間です。残業・直行直帰(業務命令による移動)は含まれますが、通勤時間・休憩時間は含まれません。

  3. 就業時間が80時間以内でも、賃金との合計が育休前賃金の80%を超えると給付金が減額されます。80時間基準だけでなく、賃金調整のルールにも注意が必要です。

  4. 複数事業所で就業している場合は、すべての就業時間を合算して80時間基準を判断します。一か所分のみ申告するのは不正受給につながるリスクがあります。

  5. 就業時間の記録は正確に残し、申請書類には漏れなく記載することが大切です。ハローワークや会社の人事担当者と連携しながら手続きを進めましょう。

育休給付金の制度は複雑ですが、就業時間の正確な計測と適切な申告を行うことで、育児と仕事を両立しながら給付金を正しく受け取ることができます。不明な点があれば、管轄のハローワークに相談することを強くおすすめします。


参考資料

  • 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き
  • ハローワークインターネットサービス「育児休業給付金」
  • 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第61条・第63条
  • 雇用保険法施行規則第101条〜第109条

🚪 育休中・復職後のお悩みをプロに相談

育休ハラスメント・退職強要など、退職代行サービスが安心サポート

退職代行サービス

タイトルとURLをコピーしました