試用期間は平均賃金の算定から除外?育休給付金の計算方法【2025年最新版】

試用期間は平均賃金の算定から除外?育休給付金の計算方法【2025年最新版】 育休給付金

試用期間中の給与が、育休給付金の計算にどう影響するか正確に把握できていますか?「試用期間があったから給付額が下がるのでは」と不安に思っている方や、人事担当者として正確な説明を求めている方も多いでしょう。

この記事では、育休給付金の平均賃金算定における試用期間の取り扱いについて、法的根拠・ケース別の計算例・ハローワークへの申請手順まで体系的に解説します。試用期間が平均賃金の算定に与える影響を理解することで、受給額を最大化できる可能性があります。


1. 試用期間と育休給付金の平均賃金算定|基本ルールを理解しよう

試用期間のパターン 給与支払い状況 平均賃金算定への影響 育休給付金への影響
パターンA 給与支払いあり 試用期間の給与は除外対象 給付額が上がる可能性
パターンB 給与支払いなし 算定対象期間に影響なし 標準的な計算方式で算定
パターンC 試用期間中に昇給あり 昇給前給与のみ除外 本採用後の給与で算定

育休給付金の受給額を正確に把握するには、まず「平均賃金がどのように計算されるか」を理解する必要があります。試用期間の扱いはその中でも特に判断が分かれやすいポイントです。

1-1. 平均賃金(賃金日額)とは何か

育児休業給付金の支給額は、育児休業開始前6ヶ月間の賃金をもとに算出した「賃金日額」から計算されます。

具体的な計算式は以下のとおりです。

賃金日額 = 育児休業開始前6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180日

ここでいう「育児休業開始前6ヶ月」とは、産前産後休業(産休)や育休の直前に就業していた6ヶ月を指します。賞与・臨時手当は原則として含まれず、毎月支払われる通常の給与(基本給・各種手当)が対象です。

算出した賃金日額に対して、以下の給付率が適用されます。

育休取得期間 給付率
育休開始から180日目まで 67%
181日目以降 50%

育休給付金の給付額は「賃金日額 × 給付率 × 支給対象日数」で算出され、この計算の基礎となる賃金日額がいかに正確に計算されるかが、最終的な受給額を大きく左右します。

1-2. 試用期間が「除外」される法的根拠

試用期間の取り扱いについての根拠となる法令は雇用保険法施行規則第15条です。同条では、平均賃金の算定にあたり、賃金支払いの基礎となる日数が11日未満の月は原則として算定対象から除外すると定めています。

また、試用期間中に給与が全く支払われない場合は、その期間が「賃金支払い実績のない期間」と判断され、算定の基礎から外れます。

法的根拠まとめ
雇用保険法施行規則 第15条:賃金日額の計算方法と除外期間の定義
雇用保険法 第13条:被保険者期間の算定原則
育児・介護休業法 第2条・第12条:育児休業の定義と取得条件

試用期間が除外されることで「算定に使える月数が減り、計算対象となる賃金総額が変わる」ため、給付額に影響が生じます。ただし、除外によって必ずしも給付額が下がるわけではなく、低賃金の月が除かれることで賃金日額が上がるケースもあります。これが多くの労働者が誤解している重要なポイントです。


2. 試用期間の3パターン別|算定への影響と計算例

試用期間の扱いは、給与の支払い状況によって3パターンに分かれます。自分のケースに当てはめて確認してください。

2-1. 【パターンA】試用期間中に給与支払いがある場合

試用期間中であっても、通常の給与が支払われており、賃金支払いの基礎日数が11日以上ある月は算定対象に含まれます

▼ 計算例

  • 試用期間:入社月のみ(月途中入社で基礎日数が11日以上)
  • 試用期間中の月給:25万円(満額支給)
  • 正規雇用後の月給:28万円

この場合、試用期間の月も含めた6ヶ月の賃金合計で賃金日額を算出します。

賃金日額 =(25万円 + 28万円×5ヶ月)÷ 180日
        =(25万円 + 140万円)÷ 180日
        = 165万円 ÷ 180日
        ≒ 9,167円

育休給付金(月30日換算・67%適用)

        = 9,167円 × 30日 × 67%
        ≒ 184,341円/月

ポイント: 試用期間中も正規雇用と同水準の給与が支払われていれば、実質的な影響はほとんどありません。むしろ試用期間の月も算定に含まれるため、給付額の計算がシンプルです。


2-2. 【パターンB】試用期間中に給与支払いがない場合

試用期間中に給与が全く支払われない場合、その月は算定対象から除外されます。6ヶ月分の算定期間を確保するために、除外した月数分だけ遡って賃金を算定します。

▼ 計算例

  • 試用期間:2ヶ月(給与支払いなし)
  • 正規雇用後の月給:30万円
  • 育休開始前2年間に被保険者期間が12ヶ月以上ある

除外される2ヶ月分を遡り、実際に給与が支払われた直近6ヶ月(計8ヶ月前まで遡及)で計算します。

賃金日額 = 30万円×6ヶ月 ÷ 180日
        = 180万円 ÷ 180日
        = 10,000円

育休給付金(月30日換算・67%適用)

        = 10,000円 × 30日 × 67%
        = 201,000円/月

ポイント: 無給期間が除外されるため、算定に使われるのは実際の正規給与のみ。給付額が不当に低くなる心配はありません。むしろ低い賃金月が含まれないことで、給付額が上昇する傾向があります。


2-3. 【パターンC】試用期間中に給与が減額されている場合

試用期間中に給与が減額されていても、支払い実績があり基礎日数が11日以上であれば、減額された金額そのままで算定に含まれます

▼ 計算例

  • 試用期間:3ヶ月(月給 18万円に減額)
  • 正規雇用後の月給:28万円
賃金日額 =(18万円×3ヶ月 + 28万円×3ヶ月)÷ 180日
        =(54万円 + 84万円)÷ 180日
        = 138万円 ÷ 180日
        ≒ 7,667円

育休給付金(月30日換算・67%適用)

        = 7,667円 × 30日 × 67%
        ≒ 153,340円/月

ポイント: 試用期間中の減額が平均を引き下げます。この場合、試用期間なしの場合(月給28万円で6ヶ月計算)と比較すると、月あたり約1万円以上の給付額減少が生じる可能性があります。不当な賃金減額については労働基準法違反の可能性もあるため、疑問がある場合は労働基準監督署に相談することを推奨します。


3. 育休給付金の受給額シミュレーション|試用期間除外の影響を数字で確認

実際に試用期間の「除外あり」と「除外なし」でどの程度の差が出るか、具体的な数字で確認しましょう。

3-1. 賃金日額の計算式と上限・下限額(2025年度版)

賃金日額には法令で上限・下限が設けられており、算出した数値がその範囲を超える場合は上限または下限の額が適用されます。

項目 2025年度の金額
賃金日額の上限額(30歳未満) 13,890円
賃金日額の上限額(30〜44歳) 16,380円
賃金日額の上限額(45〜59歳) 18,090円
賃金日額の下限額 2,869円
育休給付金の1日あたり上限(67%・30歳未満) 9,307円
育休給付金の1日あたり上限(67%・30〜44歳) 10,974円
育休給付金の1日あたり上限(67%・45〜59歳) 12,127円

※上記は2025年8月時点の情報に基づきます。毎年8月に改定されるため、最新情報はハローワークまたは厚生労働省の公式サイトでご確認ください。


3-2. 試用期間除外あり・なしの給付額比較シミュレーション

以下は、試用期間3ヶ月(月給15万円)・正規雇用後月給30万円を前提とした比較です。

【除外なしの場合】(試用期間の低賃金月を含めて計算)

賃金日額 =(15万円×3 + 30万円×3)÷ 180日
        =(45万円 + 90万円)÷ 180日
        = 135万円 ÷ 180日
        ≒ 7,500円

育休給付金(月30日換算・67%適用)
        = 7,500円 × 30日 × 67%
        = 150,750円/月

【除外ありの場合】(試用期間の低賃金月を除外して計算)

賃金日額 = 30万円×6 ÷ 180日
        = 180万円 ÷ 180日
        = 10,000円

育休給付金(月30日換算・67%適用)
        = 10,000円 × 30日 × 67%
        = 201,000円/月
比較項目 除外なし 除外あり
賃金日額 7,500円 10,000円
月あたり給付額(67%) 約150,750円 約201,000円
差額 約+50,250円

このシミュレーションが示すとおり、試用期間中の低賃金月が除外されることで、月あたり約5万円以上の給付額差が生じる場合があります。6ヶ月間の育休を取得する場合、その差は約30万円に達する可能性があります。試用期間の取り扱いを正確に把握しておくことが受給額の最大化につながります。

また、算出された賃金日額が法定の下限額(2025年度:2,869円)を下回る場合は、下限額が適用されるため、給付額がゼロになることはありません。


4. ハローワークへの申請手続き|必要書類と手順

4-1. 申請の流れ

育休給付金の申請は、原則として事業主(会社)を通じてハローワークへ行います。以下の流れを確認してください。

【STEP 1】会社への育休申請
育休開始の1ヶ月前までに「育児休業申出書」を会社へ提出

【STEP 2】受給資格確認(育休開始後速やかに)
会社がハローワークに「育児休業給付受給資格確認票」を提出
試用期間を含む賃金支払い実績の記載が必須

【STEP 3】初回支給申請(育休開始から約2ヶ月後)
「育児休業給付金支給申請書」を会社経由で提出
賃金日額の計算根拠となる書類を準備

【STEP 4】2回目以降の支給申請(2ヶ月ごと)
支給単位期間ごとに継続申請

申請期限: 支給単位期間(2ヶ月)終了後の翌日から2ヶ月以内。期限を過ぎると不支給となる場合があるため注意が必要です。申請書の提出時期については、ハローワークから事業主へ通知されます。


4-2. 必要書類一覧

書類名 準備者 備考
育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書 会社 ハローワーク所定様式
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 会社 試用期間の月も記載が必要
賃金台帳(直近6〜8ヶ月分) 会社 試用期間分含む。月の賃金額と支払い基礎日数が明記されていることが重要
出勤簿またはタイムカード 会社 賃金支払い基礎日数の確認用。試用期間中の出勤日数が基準11日を満たしているか確認
母子健康手帳(出生届出済証明のページ) 本人 子の生年月日確認
育児休業申出書(写し) 会社 休業の事実確認用

試用期間に関する注意点: 賃金台帳や賃金月額証明書には、試用期間中の給与支払い状況(金額・支払い有無)が正確に記載されている必要があります。記載漏れや誤りがあると、算定結果が変わる場合があるため、人事担当者は慎重に確認してください。試用期間の月で基礎日数が11日未満の場合は、その旨を明記しておくとハローワークでの確認がスムーズです。


5. よくある誤解とQ&A

誤解①「試用期間があると育休給付金が受け取れない」

誤りです。 試用期間の存在そのものが給付の条件を満たさなくなる理由にはなりません。重要なのは「育児休業開始前2年間に雇用保険被保険者期間が12ヶ月以上あるか」という点です。試用期間中に被保険者期間がカウントされていれば問題ありません。

誤解②「試用期間中の低賃金はすべて算定から除外される」

誤りです。 除外されるのは「賃金支払い基礎日数が11日未満の月」または「賃金の支払いが全くない月」です。試用期間中でも月11日以上出勤して給与が支払われていれば、その月は算定に含まれます。試用期間という名目だけでは除外の根拠にはなりません。

誤解③「試用期間が長ければ長いほど給付額が増える」

一概には言えません。 試用期間中の給与水準によります。正規雇用後より高い給与が試用期間中に支払われているケース(例:高額な研修手当が含まれる場合)では、除外することで逆に給付額が下がる可能性もあります。重要なのは「試用期間の給与が正規後の給与より低いか高いか」です。


よくある質問と回答

Q1. 試用期間中に雇用保険に加入していない場合、育休給付金は受け取れますか?

A. 試用期間中に雇用保険未加入だった場合でも、正規雇用後に加入し、育休開始前2年間に被保険者期間が通算12ヶ月以上あれば受給資格を満たします。ただし、試用期間は被保険者期間のカウントに含まれないため、育休取得のタイミングには注意が必要です。試用期間終了時点で被保険者になった場合、そこから12ヶ月後に育休を取得することが条件となります。

Q2. 試用期間が3ヶ月で給与が全額支払われていました。算定への影響は?

A. 基礎日数が各月11日以上あれば、その3ヶ月分はすべて算定対象に含まれます。試用期間中も正規と同じ給与水準であれば、実質的な影響はありません。実は試用期間という名目より、「実際の給与額と支払い実績」の方が重要な要素です。

Q3. 試用期間中の給与が減額されていたことを後から知りました。遡って修正できますか?

A. 賃金月額証明書の記載内容に誤りがある場合、ハローワークに対して訂正申請を行うことが可能です。ただし、すでに支給決定がなされた期間については遡及訂正の扱いが変わる場合があるため、早期にハローワークへ相談することをお勧めします。給付金を受け取った後の修正となった場合、返納を求められる可能性もあります。

Q4. 産前産後休業(産休)中に試用期間が重なる場合はどうなりますか?

A. 産前産後休業期間は育休給付金の算定対象外となります。算定の起点は産休前の実際の就業期間に遡ります。試用期間が産休中に該当する場合はさらに複雑な計算になるため、ハローワークまたは社会保険労務士に個別に相談されることをお勧めします。ケースバイケースで判断が分かれるため、書面での確認が重要です。

Q5. 試用期間の除外によって賃金日額が下限額を下回った場合はどうなりますか?

A. 算出された賃金日額が法定の下限額(2025年度:2,869円)を下回る場合は、下限額が適用されます。給付額がゼロになることはありません。この下限額の制度があるため、低賃金で働いていた労働者も基本的な給付額は保障されます。


まとめ

試用期間と育休給付金の平均賃金算定の関係を整理すると、以下のとおりです。

試用期間中の給与状況 算定への影響
通常給与を支払い(基礎日数11日以上) 算定に含まれる
給与支払いなし(無給) 算定から除外される
給与が減額されている(基礎日数11日以上) 減額後の金額で含まれる

重要なポイントの再確認:

  1. 試用期間の存在そのものは育休給付金の受給資格に影響しない
  2. 除外されるのは「無給または基礎日数11日未満」の月のみ
  3. 試用期間中の低賃金が除外されることで、給付額が上がる場合がある
  4. 申請は事業主経由でハローワークへ行い、期限内の提出が必須
  5. 賃金台帳や賃金月額証明書の正確な記載が給付額を左右する
  6. 試用期間中の給与が不当に低い場合は、労働基準法違反の可能性を検討

試用期間の扱いに不安がある場合は、ハローワークの育児休業給付担当窓口(全国544所)または社会保険労務士に相談することで、個別のケースに応じた正確な試算が得られます。相談は無料で行えます。早めに確認することで、安心して育休を取得できる環境を整えましょう。また、会社の人事部門にも正確な情報提供を求め、申請前の段階で賃金算定に関する質問や疑問を解消しておくことが重要です。


参考法令・資料
– 雇用保険法(昭和49年法律第116号)第13条
– 雇用保険法施行規則(昭和50年労働省令第3号)第15条
– 育児休業、介護休業等育児又は家族の介護を行う労働者の福祉に関する法律(平成3年法律第76号)第2条・第12条
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き」(2025年度版)
– ハローワーク「育児休業給付金に関するFAQ」

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