育休給付金の計算基礎|含まれる手当・含まれない手当の完全リスト【2026年版】

育休給付金の計算基礎|含まれる手当・含まれない手当の完全リスト【2026年版】 育休給付金

育休給付金はいくら受け取れるのか。計算してみると「思ったより少ない」「手当の扱いが分からない」という声は非常に多く聞かれます。その原因のほとんどは、給付金計算の基礎となる賃金に「何が含まれ、何が含まれないか」を正確に把握していないことにあります。

本記事では、雇用保険法・育児介護休業法・厚生労働省令の法的根拠に基づき、計算に含まれる手当と含まれない手当を完全リスト形式で解説します。給付金の正確な算出方法、2026年の制度改正ポイント、申請書類まで網羅しています。人事担当者の実務チェックにも、取得予定者の事前確認にも活用いただける内容です。


育休給付金とは|制度の全体像と法的根拠

育休給付金(育児休業給付金)は、雇用保険に加入している労働者が育児休業を取得した際に、雇用保険から支給される給付金です。育児・介護休業法と雇用保険法の両輪で成り立っており、休業中の所得を補填する役割を担います。

給付金の支給額は、以下の基本式で算出されます。

育休給付金 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
  • 給付率:休業開始から通算180日まで67%、181日以降は50%
  • 支給日数:原則30日(月単位で計算)
  • 休業開始時賃金日額:育休開始前の6か月間の賃金合計 ÷ 180日

この「休業開始時賃金日額」の計算基礎に、どの手当が算入されるかが給付金額を大きく左右します。

主要な法的根拠

法律・省令 条文 内容
雇用保険法 第61条〜第66条 育休給付金の支給要件・支給額
育児・介護休業法 第2条・第3条 育児休業の定義・対象者
雇用保険法施行規則 第117条〜第125条 給付金の計算方法申請手続き
平成11年 厚生労働省通知 職発第696号 賃金の範囲に関する確定通知
労働基準法 第11条 賃金の定義(含否判断の基準)

賃金の定義については、労働基準法第11条「賃金とは、賃金、給料、手当、賞与その他名称のいかなるものを問わず、労働の対償として使用者が労働者に支払うすべてのもの」が基本的な判断基準となっています。この「労働の対償」という概念が、手当の含否を分ける核心です。

育休給付金と育児休業手当の違い

「育休給付金」と「育児休業手当」は混同されやすいですが、別々の概念です。

  • 育休給付金(育児休業給付金):雇用保険から支給。ハローワークを通じた申請が必要。
  • 育児休業手当:企業が独自に上乗せして支給する手当。法律上の義務はなく、就業規則・労働協約による任意設定。

本記事で解説するのは雇用保険法に基づく「育休給付金」の計算ルールです。企業独自の育児休業手当については、各社の就業規則をご確認ください。

2026年改正による制度変更点

2025年4月に施行された育児・介護休業法の一部改正の影響を受け、2026年には以下の点が実務上の重要ポイントとなっています。

  • 育休取得率の公表義務の拡大:従業員300人超の企業から100人超の企業へ公表対象を拡大
  • 給付率67%の延長措置の継続:父母ともに14日以上の育休取得を条件に、一定期間は給付率80%相当(社会保険料免除との合算)が維持される「パパ・ママ育休プラス」的な優遇措置
  • 非正規労働者への適用要件の緩和:有期雇用労働者の取得要件が「引き続き1年以上」から「引き続き6か月以上」へ変更される動向に注意

⚠️ 法改正は随時行われます。最新情報は厚生労働省の公式サイトおよびハローワークへお問い合わせください。

給付金計算の基本ルール

計算の基礎となる賃金は、育休開始日前の直近6か月間の賃金合計が使われます。ただし、「6か月すべての月」が対象になるわけではなく、完全に勤務した月が対象です。産前休業に入る前の6か月が基準となるため、実際の計算対象期間は入念に確認する必要があります。

賃金日額の上限・下限(令和6年度)の目安:
上限:賃金日額15,670円(年齢区分により異なる)
下限:賃金日額2,746円


給付金計算に「含まれる手当」完全リスト

給付金計算の基礎に含まれるのは、「労働の対償」として使用者が労働者に支払うものです。名目上「手当」と呼ばれていても、実質的に基本給と一体化していれば算入されます。

基本給・給与体系に組み込まれた手当

最も基本的なカテゴリーです。毎月固定的に支払われ、勤務の有無にかかわらず支給される給与はすべて計算基礎に含まれます。

手当の種類 含否 含まれる理由 留意点
基本給 ✅ 含まれる 労働の対償の核心 全額対象
職能給 ✅ 含まれる 職務能力に対する固定報酬 等級制でも可
家族手当 ✅ 含まれる 家族状況に基づく固定支給 後述の注意事項あり
扶養手当 ✅ 含まれる 扶養人数に応じた固定支給 家族手当と同様
住宅手当 ✅ 含まれる(固定の場合) 固定額支給の場合は算入 実費弁済は除く

家族手当・扶養手当の注意点:家族手当や扶養手当は「含まれる」手当の代表的な誤解事例です。「福利厚生的な支給だから含まれないだろう」と思われがちですが、毎月定額で支給されている場合は「賃金」として計算基礎に含まれます。ただし、支給が恒常的でない場合や、実費精算型の場合は除外されることがあります。

地域・勤続・職能に基づく手当

勤務地・勤続年数・職位に応じた手当は、いずれも雇用契約上の固定的な報酬として扱われ、計算基礎に含まれます。

手当の種類 含否 含まれる理由 法的根拠
地域手当 ✅ 含まれる 勤務地に応じた賃金調整 H11厚労省通知
勤続手当 ✅ 含まれる 勤続年数に対する評価 同上
役職手当 ✅ 含まれる 管理職等の職位に対する報酬 同上
資格手当 ✅ 含まれる 特定資格保有に対する固定支給 同上
技能手当 ✅ 含まれる 技術・スキルに対する評価 同上

これらの手当に共通するのは、「特定の条件を満たしている限り、毎月固定的に支給される」という点です。支給条件が変わらない限り減額されない性質のものは、給付金計算の基礎となります。

勤務実績に関連する手当(残業代・深夜勤務手当)

残業代や深夜手当は「変動するから含まれない」と誤解されやすいですが、育休前6か月間に支払われた実績があれば、その平均額が計算基礎に算入されます

手当の種類 含否 算入の条件 注意点
時間外勤務手当(残業代) ✅ 含まれる 6か月間の支給実績の平均 ゼロの月も平均に含む
深夜勤務手当 ✅ 含まれる 恒常的な深夜勤務実績がある場合 単発の場合は除外される可能性あり
休日出勤手当 ✅ 含まれる 定期的な休日出勤がある場合 恒常性の有無で判断
法定外休日手当 ✅ 含まれる 支給実績がある場合 6か月平均で算入

「恒常性」の判断基準:深夜手当・休日手当については、「恒常的」かどうかが算入の鍵です。実務上は、6か月間に継続的に(3か月以上)支給実績がある場合は恒常的な手当とみなされるケースが多いです。ただし、ハローワークの担当者や社会保険労務士への確認を推奨します。

特殊な業務による手当(宿直・交代勤務)

特殊業務に就く労働者には固有の手当がつきます。これらも「労働の対償」として計算基礎に含まれます。

手当の種類 含否 算入の条件
宿直手当 ✅ 含まれる 継続的な宿直業務の実績がある場合
交代勤務手当 ✅ 含まれる 交代制勤務に固定的に就いている場合
夜勤手当 ✅ 含まれる 夜勤シフトが恒常的な場合
出張手当(固定額) ✅ 含まれる(固定の場合) 定額支給の場合のみ算入
危険手当 ✅ 含まれる 業務上の危険に対する固定支給

給付金計算に「含まれない手当」完全リスト

含まれない手当を「含まれる」と誤って計算すると、給付金の見込み額が過大になり、家計計画に狂いが生じます。以下のリストを使って正確に除外項目を把握してください。

福利厚生・実費弁済に当たるもの

「実費を補填するもの」は労働の対償にあたらず、計算基礎から除外されます。

手当の種類 含否 除外される理由 法的根拠
通勤手当(交通費) ❌ 含まれない 実費弁済であり賃金に非該当 労基法11条
出張旅費・宿泊費 ❌ 含まれない 業務経費の実費補填 同上
社宅・寮費補助(現物) ❌ 含まれない 現物給与で評価が困難 同上
慶弔見舞金 ❌ 含まれない 恩恵的給付。任意支給 同上
退職金 ❌ 含まれない 将来の給付であり経常的賃金でない 同上

住宅手当の扱いに注意:住宅手当は「実際の家賃に応じて支給額が変動する場合」は実費弁済とみなされ除外されますが、「固定額で毎月一律支給される場合」は賃金とみなされ算入されます。就業規則の文言を確認することが重要です。

業績・成果・出勤率に連動するもの

支給額や支給の有無が成果・出勤状況によって変動するものは、恒常的な賃金とはみなされず、計算基礎から除外されます。

手当の種類 含否 除外される理由 注意点
賞与・ボーナス ❌ 含まれない 賃金支払期が特定されている3か月以内の手当を除く 年3回以下は除外
業績給・成果給 ❌ 含まれない 実績次第で変動する報酬
歩合給 ❌ 含まれない 実績連動のため恒常性なし
皆勤手当 ❌ 含まれない 出勤率により変動 後述参照
精勤手当 ❌ 含まれない 皆勤手当と同様
インセンティブ手当 ❌ 含まれない 業績・目標達成連動

皆勤手当・精勤手当について:これらは「欠勤しなかったことへの報酬」であり、出勤状況によって支給の有無が変わります。そのため、育児休業中は当然支給されず、休業前の賃金計算基礎にも含まれません。ただし、企業によっては「月額固定で支給し、欠勤時に控除する」形式を取っているケースがあり、その場合は実態に応じた判断が必要です。

社会保険・税金に関する控除項目

これらはそもそも賃金の「支払い額(グロス)」から差し引かれるものであり、給付金計算の基礎には含まれません。

項目 含否 説明
健康保険料(個人負担分) ❌ 含まれない 控除項目。賃金から除外
厚生年金保険料(個人負担分) ❌ 含まれない 同上
雇用保険料(個人負担分) ❌ 含まれない 同上
所得税・住民税 ❌ 含まれない 控除項目

💡 給付金計算の基礎となる賃金は、税引き前(グロス)の「支給額」を使います。ただし、通勤手当など除外項目を差し引いた後の金額です。「手取り額」で計算するのは誤りです。

判断が難しいグレーゾーンの手当

実務上、担当者が迷いやすい手当を整理します。

手当の種類 含否の判断 ポイント
営業手当(固定額) ✅ 含まれることが多い 固定額支給なら算入。実費弁済型は除外
住宅手当(固定額) ✅ 含まれる 固定額支給に限る
住宅手当(変動額) ❌ 含まれない 家賃連動型は除外
外勤手当 個別判断 固定か変動かによる
食事手当(現金) ✅ 含まれることが多い 現金支給で固定額の場合は算入
食事手当(現物) ❌ 含まれない 現物給与は除外
単身赴任手当 ❌ 含まれないことが多い 実費補填的性格が強い

給付金の具体的な計算例

実際の計算プロセスを事例で確認しましょう。

計算例:月給30万円のケース

【条件設定】
– 基本給:250,000円
– 役職手当:20,000円
– 通勤手当:15,000円
– 残業手当:20,000円(6か月平均)
– 賞与:なし(給付金計算対象外)

【ステップ1】計算基礎となる賃金の算出

基本給(250,000円)+ 役職手当(20,000円)+ 残業手当(20,000円)= 290,000円/月
※通勤手当15,000円は除外

【ステップ2】6か月間の賃金合計

290,000円 × 6か月 = 1,740,000円

【ステップ3】賃金日額の算出

1,740,000円 ÷ 180日 = 9,667円(1円未満切り捨て)

【ステップ4】給付金月額の算出(67%給付率)

9,667円 × 30日 × 67% = 194,467円/月(概算)

⚠️ 実際の計算では賃金日額の上限・下限額の確認が必要です。また、残業手当が月によって異なる場合は6か月間の実際の支給実績を合計して計算します。


申請手続きと必要書類

申請の流れ

  1. 育休開始前:事業主へ育児休業申出書を提出(原則1か月前)
  2. 育休開始後2か月後:初回の給付金申請(事業主経由でハローワークへ)
  3. 以降2か月ごと:継続支給申請(事業主が代行)

主要な必要書類

書類名 誰が用意するか 備考
育児休業給付受給資格確認票 事業主が作成 初回申請時のみ
育児休業給付金支給申請書 事業主が作成 2か月ごとに提出
母子健康手帳(写し) 本人 出生確認
賃金台帳(写し) 事業主が提出 給与計算の根拠
出勤簿・タイムカード(写し) 事業主が提出 勤務実績確認
雇用保険被保険者証 本人または事業主 被保険者確認

申請期限

各支給申請の支給対象期間の末日の翌日から2か月以内がハローワークへの提出期限です。期限を過ぎると給付が受けられなくなる場合があるため、事業主(人事担当者)は申請スケジュールを厳守してください。


手当の種類別・含否早見表

計算に迷った際の参照用として、手当の含否を一覧でまとめます。

手当の種類 含否 カテゴリ
基本給 基本
職能給 基本
役職手当 職位
地域手当 地域
勤続手当 勤続
家族手当(固定) 属性
扶養手当(固定) 属性
資格手当 スキル
技能手当 スキル
残業手当 実績
深夜勤務手当 実績
休日出勤手当 実績
交代勤務手当 実績
宿直手当 実績
住宅手当(固定) 条件付き
食事手当(現金固定) 条件付き
通勤手当 実費
出張旅費 実費
賞与(年3回以下) 賞与
業績給・歩合給 変動
皆勤手当 変動
精勤手当 変動
慶弔見舞金 恩恵
退職金 将来給付
社会保険料(個人負担) 控除
住宅手当(変動) 実費
単身赴任手当 実費

よくある誤解と正しい理解

「通勤手当は毎月もらっているから含まれる」という誤解:通勤手当は「交通費の実費補填」であり、労働の対償ではありません。金額が固定であっても、性質上は実費弁済として扱われるため、計算基礎から除外されます。

「残業代はゼロになる月があるから含まれない」という誤解:残業代は6か月間の実支給額の合計を期間で割った平均で算入されます。ゼロの月があっても「除外」ではなく「ゼロとして平均計算に含める」のが正確な扱いです。

「賞与は年4回支給だから含まれる」という誤解:賃金支払期が3か月以内(年4回以上)の場合、賞与ではなく「賃金」として取り扱われ、計算基礎に含まれます。形式上「賞与」と呼んでいても回数が多い場合は要確認です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休前に残業が多かった月と少なかった月があります。残業手当の計算はどうなりますか?

育休開始前の直近6か月間に実際に支払われた残業手当の合計額を算出し、その金額を含めて6か月間の賃金総額を計算します。ゼロの月も「ゼロ円の月として」平均に組み込まれます。意図的に残業を増やすことで給付金を増やそうとする行為は認められていません。

Q2. 産前休業中の賃金は6か月の計算に含まれますか?

原則として、産前休業に入る前の期間が基準です。産前休業中に賃金(休業補償給付等)を受け取っていても、実際の「賃金」(給与)が支払われていない期間は原則として計算基礎の対象月から除外されます。正確な起算日はハローワークに確認してください。

Q3. 会社から独自の「育児休業手当」が支給された場合、給付金はどうなりますか?

会社から受け取る独自の育児休業手当は、休業中の賃金(就労の対価)ではないため、原則として給付金支給額への影響はありません。ただし、賃金として支払われた場合(一部就労)は、就労日数・金額に応じて給付金が減額または不支給となることがあります。

Q4. 人事担当者として、賃金台帳に記載する手当の区分はどのように整理すればよいですか?

賃金台帳には、「給付金計算基礎となる賃金」と「通勤手当等の除外項目」を明確に区分して記載することが推奨されます。曖昧な手当名(例:「諸手当」)を一括で記載している場合、ハローワークの審査で内訳の提出を求められることがあります。手当の性質ごとに内訳が分かる台帳設計を事前に整備しておきましょう。

Q5. 育休中に社会保険料が免除されると聞きましたが、給付金の計算とどう関係しますか?

育休中は健康保険料・厚生年金保険料が労使ともに免除されます(月末時点で育休取得中の月が対象)。これは給付金計算の基礎賃金とは別の制度ですが、「社会保険料免除+給付金(67%)」を合計すると、手取りベースで休業前賃金の約8割に相当するとされています。家計シミュレーションの際は社会保険料免除分も考慮してください。


手当計算時に活用できる実務ツール

正確な給付金計算を行うため、人事担当者が用意しておくべき実務資料を紹介します。

ハローワークの公式フォーマット
– 育児休業給付受給資格確認票(様式第8号)
– 育児休業給付金支給申請書(様式第8号の2)

これらはハローワークの公式サイトからダウンロード可能で、最新版を常に確認することが重要です。

賃金台帳の整備方法
賃金台帳の作成・保管義務は労働基準法で定められているため、多くの企業で既に実施されていますが、育休給付金の計算精度を高めるには、以下の項目を明確に区分することが有効です。

  • 基本給(控除前の支給額)
  • 含まれる各種手当(役職手当、地域手当など、カテゴリごとに列記)
  • 含まれない各種手当・控除項目(通勤手当、社会保険料など)
  • 支給額合計(グロス)
  • 控除額合計
  • 手取額

このように構成することで、給付金計算時に「含まれる賃金」がいくらかを迅速に確認できます。


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まとめ

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