育休給付金の計算に含まれる時間外手当【一覧表付き】

育休給付金の計算に含まれる時間外手当【一覧表付き】 育休給付金

育休給付金の金額は、育休開始前の「賃金日額」をもとに計算されます。この賃金日額に何の手当が含まれるか・含まれないかで、受け取れる給付金額が大きく変わります。

特に残業が多い方や複数の手当が付いている方は、時間外勤務手当が計算対象に含まれることを正確に把握しておくことが重要です。本記事では、社会保険労務士監修のもと、計算に含まれる手当・含まれない手当を一覧表でわかりやすく整理し、具体的な計算式や法的根拠まで詳しく解説します。


育休給付金の「賃金日額」とは何か-計算の出発点を理解する

育休給付金(正式名称:育児休業給付金)は、雇用保険から支給される給付金です。その金額を求めるには、まず「賃金日額」を算出することが必須です。

賃金日額とは、育休開始前の賃金実績をもとに1日あたりの賃金を算出した数値であり、ここに給付率(67%または50%)を掛けることで、1日あたりの給付金額が決まります。

この賃金日額を正確に計算するためには、「何を賃金に含めるか」の判断が不可欠です。手当の種類によって算定対象か否かが異なるため、自分の給与明細に記載されている手当がどちらに該当するかを確認しておきましょう。

賃金日額の基本計算式(休業開始前6ヶ月÷180日)

賃金日額は、以下の計算式で算出されます。

賃金日額 = 育休開始前6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180日

「育休開始前6ヶ月間」とは、育休が始まる日の前日を起点として遡った6ヶ月分の賃金支払い実績を指します。ただし、産前産後休業(産休)中に支払われた賃金は除外されます。

法的根拠: 雇用保険法施行規則第29条において、「賃金日額は、原則として被保険者期間として計算された最後の6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180で除して得た額」と規定されています。

賃金総額には、基本給だけでなく各種手当も含まれますが、含まれる手当と含まれない手当が明確に区分されています。この区分の詳細については次章で一覧表として整理します。

なお、賃金日額には上限額と下限額が設定されています(2024年度基準)。

区分 金額
上限額 15,430円
下限額 2,869円

※上限・下限額は毎年8月1日に見直されます。最新情報はハローワークまたは厚生労働省のWebサイトでご確認ください。

給付率67%・50%が適用される条件とざっくり試算

賃金日額が確定したら、給付率を掛けて1日あたりの給付金額を算出します。

育休期間 給付率
育休開始から180日目まで 67%
育休181日目以降 50%

ざっくり試算例

  • 育休前6ヶ月の賃金総額:1,620,000円(月平均27万円)
  • 賃金日額:1,620,000円 ÷ 180日 = 9,000円
  • 給付率67%適用時:9,000円 × 67% = 6,030円/日
  • 月額換算(30日):6,030円 × 30日 = 180,900円/月

残業代(時間外勤務手当)が月4万円上乗せされている場合は、賃金総額が1,860,000円に増加し、賃金日額は10,333円に上がります。給付率67%では6,923円/日=207,690円/月となるため、約2.7万円の差が生じます。この試算からも、時間外手当が計算に含まれるかどうかがいかに重要かがわかります。


【一覧表】計算に「含まれる手当」と「含まれない手当」の全分類

育休給付金の賃金日額を算定する際に使用する賃金には、算定対象になるもの(含まれる)算定対象外になるもの(含まれない)があります。以下の一覧表で自分の給与明細と照合してみてください。

含まれる手当リスト(時間外・休日・深夜・交替)

「含まれる手当」は、実際の労働の対価として支払われる実績払いの賃金が基本です。

手当の種類 具体的な内容 備考
基本給 月給・日給・時給による基本賃金 算定の中心
時間外勤務手当(残業手当) 所定労働時間または法定労働時間を超えた勤務への割増賃金 実績分が対象
休日勤務手当 法定休日・所定休日の勤務に対する手当 実績分が対象
深夜勤務手当 午後10時〜午前5時の勤務に対する割増賃金 実績分が対象
交替勤務手当 シフト制・交替制勤務に対する手当 実績ベースで算入
職務手当・役職手当 担当業務・役職に応じた固定手当 毎月支給される場合
資格手当 保有資格に対して毎月支給される手当 固定支給の場合
地域手当・勤務地手当 勤務地に応じて毎月支給される手当 固定支給の場合

ポイント: 時間外・休日・深夜の各手当は「割増賃金」として労働基準法で定められた賃金であり、労働の対価として認定されるため、賃金日額の算定対象に含まれます。

含まれない手当リスト(皆勤・通勤・家族・住宅)

「含まれない手当」は、労働の対価ではなく、特定条件への補助・報奨金的な性格を持つ手当です。

手当の種類 具体的な内容 除外される理由
通勤手当 交通費・通勤費用の補助 実費補填であり賃金ではない
家族手当(扶養手当) 家族の人数に応じて支給される手当 家族構成への補助であり労働対価ではない
住宅手当 住宅費用の補助として支給される手当 生活補助であり労働対価ではない
皆勤手当 無欠勤・皆勤に対する報奨金 出勤結果への報奨であり労働対価ではない
勤続手当 在籍年数に応じた手当 継続勤務への報奨
賞与(ボーナス) 年2回等の一時金 3ヶ月を超える期間に1度支払われる賃金は除外
結婚祝い金・出産祝い金 慶弔関連の一時金 福利厚生費であり賃金ではない
退職金 退職時の一時金 雇用期間中の定期的な賃金ではない

注意点: 毎月の賃金明細に記載されていても、「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」(賞与・期末手当など)は算定対象から除外されます。

判断が難しいグレーゾーン手当の見分け方

実際の給与明細には、上記の分類だけでは判断しにくい手当も存在します。以下の基準を参考に判断してください。

グレーゾーン手当の例と判断基準

手当名 判断のポイント 含まれるか否か
営業手当(固定残業代) 固定額で時間外労働の対価として支給されている場合 含まれる(割増賃金の性質)
精皆勤手当 皆勤に対する報奨金的性格なら除外 含まれない(報奨金の性質)
特別業務手当 毎月固定で職務遂行の対価として支給される場合 含まれる
物価手当・生活手当 生活補助として支給される場合 判断がわかれるケースあり
調整手当 給与体系変更に伴う調整名目の場合 実態が基本給補填なら含まれる

💡 判断に迷ったら: 手当の名称ではなく「その手当が何に対して支払われているか(支払い目的)」を確認することが重要です。労働の提供そのものへの対価であれば算定対象に含まれ、生活補助・通勤費補助など労働以外の目的であれば除外されます。判断が難しい場合はハローワークまたは社会保険労務士に確認することをおすすめします。


時間外勤務手当が計算に「含まれる」理由と法的根拠

時間外勤務手当が育休給付金の計算対象に含まれることには、明確な法的根拠があります。

雇用保険法施行規則第29条の規定

雇用保険法施行規則第29条では、育休給付金の算定基礎となる「賃金」の範囲について定めています。同条に基づく厚生労働省の解釈指針では、賃金として算定対象に含まれるものと除外されるものを以下のように整理しています。

算定対象に含まれる賃金の定義:

「労働の対償として事業主が労働者に支払うすべてのもの」(労働基準法第11条の賃金定義を準用)

時間外勤務手当は、所定労働時間または法定労働時間を超えて労働した対価として支払われる割増賃金(労働基準法第37条)であり、まさに「労働の対償」に該当します。したがって、賃金日額の算定対象に含まれると規定されています。

標準報酬月額(健保)との大きな違い

混同しやすいポイントとして、健康保険の出産手当金・傷病手当金との違いがあります。

項目 育休給付金(雇用保険) 出産手当金(健康保険)
算定基礎 賃金日額(実際の支給賃金) 標準報酬月額
時間外手当の扱い 含まれる(実績分) 反映されにくい
賞与の扱い 含まれない(3ヶ月超の賃金) 標準賞与額から別途算定
算定期間 育休開始前6ヶ月 直近の標準報酬月額

健康保険の「標準報酬月額」は、4〜6月の報酬を等級で区切って決定するため、月によって変動する時間外手当が必ずしも正確に反映されません。一方、育休給付金の賃金日額は実際に支払われた賃金の合計額をもとに計算するため、残業の多い月があればその分がしっかり反映される仕組みになっています。


具体的な計算例で理解する-時間外手当ありとなしの比較

実際の給与明細に近い数字を使って、時間外手当の有無による給付金額の違いをシミュレーションします。

ケース①:時間外手当なし(月給のみ)

【育休前6ヶ月の給与内訳】
基本給:      250,000円/月
役職手当:     20,000円/月
住宅手当:     15,000円/月(算定対象外)
通勤手当:      8,000円/月(算定対象外)
───────────────────────────
算定対象賃金:  270,000円/月(基本給+役職手当)

6ヶ月合計:270,000円 × 6 = 1,620,000円
賃金日額:1,620,000円 ÷ 180日 = 9,000円
給付額(67%):9,000円 × 67% = 6,030円/日
月額給付金(30日):181,000円(約)

ケース②:時間外手当あり(月4万円)

【育休前6ヶ月の給与内訳】
基本給:      250,000円/月
役職手当:     20,000円/月
時間外勤務手当: 40,000円/月(算定対象)
住宅手当:     15,000円/月(算定対象外)
通勤手当:      8,000円/月(算定対象外)
───────────────────────────
算定対象賃金:  310,000円/月

6ヶ月合計:310,000円 × 6 = 1,860,000円
賃金日額:1,860,000円 ÷ 180日 = 10,333円
給付額(67%):10,333円 × 67% = 6,923円/日
月額給付金(30日):207,700円(約)

→ 時間外手当の有無で月額約2.7万円の差が発生します。

ケース③:時間外手当が月によって変動する場合

時間外手当は月によって変動することがほとんどです。この場合も6ヶ月間の実績合計額をそのまま賃金総額に加算します。

【月別の時間外手当実績】
1ヶ月目:30,000円
2ヶ月目:55,000円
3ヶ月目:10,000円
4ヶ月目:48,000円
5ヶ月目:22,000円
6ヶ月目:35,000円
──────────
合計:200,000円

基本給等の6ヶ月分:1,620,000円
時間外手当6ヶ月分:  200,000円
賃金総額:        1,820,000円
賃金日額:1,820,000円 ÷ 180 = 10,111円

変動する手当でも月平均に換算する必要はなく、6ヶ月間の実際の支給額の合計をそのまま使います。


育休給付金の申請手続きと必要書類

計算の仕組みを理解したうえで、実際の申請手順も把握しておきましょう。

申請の流れ

育休給付金の申請は、原則として事業主(会社)経由でハローワークに提出します。

① 育休開始の1〜2ヶ月前
   └── 会社の人事・総務へ育休取得の意向を伝える

② 育休開始後
   └── 会社が「育児休業給付金支給申請書」を作成開始

③ 育休開始から約2ヶ月後(初回申請)
   └── 会社がハローワークに申請書類を提出

④ 以降2ヶ月ごとに申請
   └── 継続支給申請(会社が代行)

⑤ 給付金の支給
   └── 申請後、約1〜2週間で指定口座に入金

必要書類一覧

書類名 準備者 備考
育児休業給付金支給申請書 会社(社労士) ハローワーク所定の様式
賃金台帳(直近6ヶ月分) 会社 手当の内訳が確認できるもの
出勤簿・タイムカード 会社 時間外勤務の実績証明に使用
育児休業申出書の写し 労働者 育休の取得を証明する書類
母子健康手帳の写し(初回のみ) 労働者 子どもの生年月日確認
本人口座情報 労働者 給付金の振込先

申請期限: 各申請期間(2ヶ月ごと)の末日から起算して2ヶ月以内に申請が必要です。申請が遅れると支給が遅れるため、会社の担当者としっかり連携しましょう。

時間外手当の記録を正確に残すためのポイント

育休前の時間外手当が正確に賃金日額へ反映されるよう、以下の点を事前に確認・準備しておくことをおすすめします。

  1. 給与明細を6ヶ月分保管しておく 賃金台帳は会社が管理しますが、自分でも手当の内訳を記録しておきましょう。
  2. タイムカードや勤怠記録を確認 時間外手当の支給実績は勤怠記録と照合されます。記録に誤りがないか確認してください。
  3. 固定残業代(みなし残業)の場合の注意点 固定残業代として毎月定額で支払われている場合も、時間外勤務手当に該当するため算定対象に含まれます。ただし、給与明細での記載名称によっては判断が必要な場合があるため、会社に確認しましょう。

育休給付金の計算を自分で試算する手順まとめ

ここまでの内容を整理し、自分で試算するための手順をステップ形式でまとめます。

STEP 1:給与明細の手当を分類する

直近6ヶ月分の給与明細を用意し、各手当を「含まれる」「含まれない」に仕分けします。本記事の一覧表を参照してください。

STEP 2:6ヶ月間の算定対象賃金を合計する

含まれる手当のみを足し合わせ、6ヶ月間の賃金総額を算出します。通勤手当・家族手当・住宅手当は除外してください。

STEP 3:賃金日額を計算する

賃金日額 = 算定対象賃金6ヶ月合計 ÷ 180日

上限額(15,430円)・下限額(2,869円)の範囲内か確認します。

STEP 4:給付金額を計算する

1日あたりの給付金額 = 賃金日額 × 67%(または50%)
月額給付金目安 = 1日あたりの給付金額 × 30日

STEP 5:ハローワークまたは社労士に確認する

試算結果はあくまで目安です。グレーゾーンの手当がある場合や、複雑な給与体系の場合は、最寄りのハローワークや社会保険労務士に相談することで正確な金額が確認できます。


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よくある質問

Q1. 固定残業代(みなし残業手当)は育休給付金の計算に含まれますか?

はい、含まれます。固定残業代は、実際に支払われた時間外勤務手当に該当するため、賃金日額の算定対象に含まれます。給与明細上の名称が「固定残業手当」「みなし時間外手当」「業務手当(残業代込み)」などであっても、その実態が時間外勤務の対価として支払われているものであれば算定対象です。ただし、「業務手当」など名称が曖昧な場合は、会社の就業規則や雇用契約書の記載内容を確認し、必要に応じてハローワークに確認しましょう。

Q2. 育休前に産休を取得した場合、産休中の給与は含まれますか?

いいえ、含まれません。産前産後休業(産休)中に支払われた給与は、賃金日額の算定対象となる6ヶ月間から除外されます。産休前に働いていた期間(賃金支払い実績がある期間)を遡って6ヶ月分の賃金を集計します。

Q3. 時間外手当が月によって大きく異なる場合、どう計算されますか?

6ヶ月間の時間外手当の実績合計額をそのまま賃金総額に加算します。月平均に換算したり、ならしたりする処理は行いません。残業が多い月があれば、その分が正確に反映されます。

Q4. 賞与(ボーナス)は育休給付金の計算に含まれますか?

含まれません。賞与は「3ヶ月を超える期間ごとに支払われる賃金」として、雇用保険法施行規則の規定により算定対象から除外されます。年2回や年1回など、3ヶ月を超える間隔で支払われるボーナスはすべて対象外です。

Q5. 育休給付金の計算に使う「6ヶ月間」は、いつから遡りますか?

育休開始日の前日を起点として、賃金支払い実績がある月を6ヶ月分遡ります。月の途中で育休が始まった場合、その月(賃金支払い基礎日数が11日未満の月)は除外され、さらに前の月から6ヶ月分が対象となります。産休を経てから育休に入る場合は、産休開始前の月から遡ることになります。

Q6. 育休給付金はいつ振り込まれますか?

申請後、通常1〜2週間程度でハローワークから指定口座に振り込まれます。初回申請は育休開始から約2ヶ月後になることが多いため、育休開始直後は収入が途絶える期間が生じます。貯蓄や家庭の資金計画は事前に準備しておきましょう。


まとめ

育休給付金の賃金日額を算定する際、時間外勤務手当・休日勤務手当・深夜勤務手当・交替勤務手当は計算対象に含まれます。一方、通勤手当・家族手当・住宅手当・皆勤手当・賞与は計算対象から除外されます。

この区分は「労働の対価か否か」という原則に基づいており、雇用保険法施行規則第29条を法的根拠としています。残業が多い方ほど育休給付金の受給額が増える仕組みのため、自分の給与明細をもとに事前に試算しておくことをおすすめします。

判断が難しい手当がある場合や、試算結果に疑問がある場合は、最寄りのハローワーク(公共職業安定所)または社会保険労務士に相談することで正確な情報を得られます。育休取得前に制度をしっかり理解し、安心して休業に入れるよう準備を進めてください。


本記事は2024年度時点の法令・制度に基づいて作成しています。給付上限額・下限額は毎年8月に改定されるため、最新情報は厚生労働省またはハローワークの公式情報をご確認ください。

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