育休給付金の計算方法【時給+月給の複数給与形態対応版】

育休給付金の計算方法【時給+月給の複数給与形態対応版】 育休給付金

時給と月給が混在するなど、複数の給与形態を受け取っている方が育休給付金を申請しようとすると、「自分の場合はいくらもらえるの?」「どの給与が計算に含まれるの?」という疑問が生じやすいものです。

この記事では、複数給与形態がある方を対象に、賃金日額の算定方法・支給額シミュレーション・申請手続き必要書類を、具体的な計算例を交えながら網羅的に解説します。複数の給与形態がある場合、対象となる給与と除外される給与を正確に区分し、6か月の賃金実績に基づいて育休給付金を正しく計算することが重要です。


育休給付金における「複数給与形態」とは何か

育休給付金(育児休業給付金)は、雇用保険法第61条の4に基づき、育児休業中に支給される給付金です。支給額の土台となるのが「休業開始時賃金日額」であり、この算定に育休開始前6か月間の給与合計が使われます。

ここで問題になるのが、同一企業内で時給・月給・日給など複数の給与形態が混在しているケースです。どの給与を合算し、どの給与を除外するかによって、給付金の受取額が大きく変わります。

複数給与形態が生じる典型的なケース

複数給与形態が発生する状況は、職場でよく見られます。代表的なパターンを以下に整理します。

パターン① 本業が月給、兼務業務が時給
正社員として月給で基本給をもらいながら、同じ会社内で別部門のヘルプ業務を時給換算で追加支給されるケースです。小売業・飲食業・医療機関などで多く見られます。

パターン② 固定給+出来高給(歩合給)
月給制の基本給に加え、営業成績や生産量に応じた出来高払い部分が毎月変動して支給されるケースです。保険営業・製造業・不動産業で典型的です。

パターン③ 月給制の正社員が、同一会社で短時間勤務シフトにも入る
育休前の産前休暇取得に向けた勤務調整期間中に、一部業務を時給制パートタイム扱いで追加勤務するケースです。

パターン④ 日給制と時間外手当が別計算
日給制の基本給に加え、残業・深夜・休日労働の割増賃金が時間単価から別途計算されて支給されるケースです。

これらはいずれも同一の雇用保険被保険者資格のもとで発生している給与であり、育休給付金の算定において適切に合算する必要があります。

対象となる給与・対象外となる給与の違い

複数の収入があっても、育休給付金の計算に含めてよいもの含めてはいけないものがあります。

対象となる給与(算定に含める)

給与の種類 具体例
基本給(月給・日給・時給) 雇用契約書に記載された正規給与
固定手当 役職手当・資格手当・職種手当
出来高払い・歩合給 同一雇用契約内の成果連動報酬
所定内割増賃金 深夜労働・休日労働の法定割増分

対象外となる給与(算定に含めない)

給与の種類 理由
通勤手当 実費補填であり労働の対価ではない
臨時的・一時的な手当 結婚祝い金・見舞金・臨時賞与など
別の雇用保険被保険者としての収入 別会社のパート・副業
社会保険上の報酬外支給 現物支給のうち一部例外
3か月未満の短期雇用分 臨時アルバイト等

ポイント: 「同一の雇用保険被保険者番号のもとで支払われた給与かどうか」が判断の基本軸です。雇用契約書や給与明細を確認し、疑わしい項目はハローワークに事前照会することをおすすめします。


複数給与形態がある場合の賃金日額の算定方法

育休給付金の支給額を計算するには、まず「休業開始時賃金日額」を正確に算出することが不可欠です。

賃金日額とは

賃金日額とは、育児休業開始前の賃金を日割り換算した金額です。雇用保険法施行規則第73条に基づき、以下のように算定します。

休業開始時賃金日額 = 育休開始前6か月間の賃金合計 ÷ 180(日)

「6か月間の賃金合計」とは、育児休業開始日の前日から遡って6か月分の賃金(毎月支払われる賃金の合計)です。賞与・一時金は含みません。

月給+時給が混在する場合の計算ステップ

具体的な数値を使って、計算の流れをステップ形式で説明します。

前提条件(例)
– 月給(基本給):300,000円(固定)
– 時給業務:時給1,200円 × 月平均20時間 = 24,000円
– 役職手当:15,000円(固定)
– 通勤手当:10,000円(※対象外)


STEP 1:毎月の算定対象賃金を集計する

月給          :300,000円
時給分        : 24,000円
役職手当      : 15,000円
─────────────────────
月合計(対象):339,000円
※通勤手当10,000円は除外

STEP 2:育休開始前6か月分を合算する

時給業務の月ごとの時間数が変動する場合は、各月の実績をそれぞれ集計します。

月給+手当 時給業務分 月合計
1か月前 315,000円 24,000円 339,000円
2か月前 315,000円 21,600円 336,600円
3か月前 315,000円 26,400円 341,400円
4か月前 315,000円 19,200円 334,200円
5か月前 315,000円 24,000円 339,000円
6か月前 315,000円 22,800円 337,800円
合計 2,028,000円

STEP 3:賃金日額を計算する

賃金日額 = 2,028,000円 ÷ 180日 = 11,266.66…円
     → 端数は切り捨て = 11,266円

端数処理の注意: ハローワークの公式計算では、賃金日額の1円未満は切り捨てです。計算途中の端数処理は行わず、最終値のみ切り捨てとするのが原則です。


STEP 4:上限額・下限額との照合

賃金日額には、雇用保険法で定められた上限・下限があります(毎年8月に改定)。

区分 2024年度の目安
賃金日額の上限 15,430円(30歳以上45歳未満の場合)
賃金日額の下限 2,869円

上記の例では11,266円となり、上限・下限の範囲内に収まっています。

計算上の注意点(対象外手当・端数処理)

複数給与形態の計算でミスが起きやすい項目をまとめます。

賃金日額に含めない主な支給項目一覧

項目 理由
通勤手当(全額) 実費補填のため
一時金・特別賞与 毎月支払われる賃金ではないため
社宅・住宅提供などの現物給与 原則として算定外
育休開始月から4か月超の賞与 育休給付金算定外
精皆勤手当(出勤しなかった月分) 支給実績がない場合は除く

重要: 「毎月支払われる賃金」に当たるかどうかの判断に迷う場合は、賃金台帳・給与明細・就業規則の3点を持参してハローワークに確認してもらうのが確実です。


育休給付金の支給額シミュレーション

賃金日額が算定できたら、次は実際の支給額を計算します。

支給率と支給額の計算式

育休給付金の支給率は、育休開始からの経過日数によって異なります。

支給期間 支給率 支給額計算式
育休開始から180日(6か月)まで 賃金日額の67% 賃金日額 × 67% × 支給単位期間の日数
181日目以降 賃金日額の50% 賃金日額 × 50% × 支給単位期間の日数

2025年改正の動向: 育児休業給付金については、段階的な給付率引き上げが検討されており、最新情報はハローワークまたは厚生労働省のウェブサイトで確認してください。

具体的な支給額シミュレーション

前述の例(賃金日額:11,266円)を使って計算します。

育休開始から180日間(67%支給期間)の1支給単位期間(約30日)の受取額

支給額 = 11,266円 × 67% × 30日
    = 11,266円 × 0.67 × 30
    = 226,445.4円 → 端数切り捨て = 226,445円(約22.6万円)

育休181日目以降(50%支給期間)の1支給単位期間(約30日)の受取額

支給額 = 11,266円 × 50% × 30日
    = 11,266円 × 0.50 × 30
    = 168,990円(約16.9万円)

就業した日がある場合の減額ルール

育休中に就業した場合、就業日数・就業時間に応じて支給額が減額・不支給になります。

就業状況 取り扱い
支給単位期間中の就業日数が10日以下(かつ就業時間が80時間以下) 支給対象(ただし就業して得た賃金との合計が休業前賃金の80%以下の場合のみ満額支給)
就業日数が10日超・80時間超 原則として支給対象外(不支給)
就業賃金 + 給付金が休業前賃金の80%超 超過分が給付金から差し引き

申請手続きの流れ

複数給与形態がある場合も、手続きの基本フローは通常の育休給付金申請と同様です。ただし、複数の給与形態を証明する書類が追加で必要になる点に注意が必要です。

育休給付金の申請ステップ

【育休開始前の準備】

育休予定日の1か月前までに勤務先へ育休申請
育児・介護休業法の規定に基づき、育休開始予定日の1か月前(出生後取得のパパ育休は2週間前)までに書面で申請します。

複数給与形態を人事・総務担当者に申告
時給部分・出来高給部分など、複数の給与形態が存在することを担当者に伝え、賃金台帳に正確に記録してもらいます。

ハローワークへの受給資格確認(事業主経由)
原則として事業主がハローワークに書類を提出します。労働者が直接持参する場合も認められています。


【育休開始後の申請】

初回支給申請(育休開始日から4か月以内が目安)
育休開始から2か月経過後の支給単位期間終了後に申請します。

2回目以降の申請(2か月ごと)
支給単位期間が終わるたびに2か月に1回のペースで申請します。

育休終了時の手続き
育休終了日の翌日から2か月以内に最終申請を行い、受給終了の報告をします。


必要書類チェックリスト

全員共通の基本書類

  • [ ] 育児休業給付受給資格確認票(初回支給申請書)(ハローワーク様式)
  • [ ] 育児休業給付金支給申請書(ハローワーク様式)
  • [ ] 子の出生証明書(戸籍謄(抄)本・住民票など)
  • [ ] 賃金台帳の写し(育休開始前6か月分)
  • [ ] 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書
  • [ ] 出勤簿または労働日数が確認できる書類
  • [ ] 本人の通帳またはキャッシュカードのコピー(振込先確認)

複数給与形態がある場合の追加書類

  • [ ] 雇用契約書(時給・月給それぞれの条件が記載されているもの)
  • [ ] 就業規則(複数の給与形態に関する規定が記載されているもの)
  • [ ] 各給与形態ごとの給与明細(育休前6か月分)
  • [ ] 時給業務の勤務記録(タイムカード・シフト表など)
  • [ ] 出来高給・歩合給の計算根拠書類(売上実績表など)

提出のポイント: 書類は原本持参のうえコピーを提出するのが一般的です。事前にハローワークの窓口または電話で「複数給与形態がある旨」を伝えると、担当者が追加確認書類を案内してくれます。


ハローワークでの申請時の注意事項

事前相談を強くおすすめするケース

以下に該当する方は、書類提出前にハローワークへ事前相談することを強くおすすめします。

  • 時給部分の月ごとの変動が大きい(月によって支給ゼロの月がある)
  • 出来高給・歩合給が給与の大部分を占めている
  • 育休前6か月以内に給与形態が変わった(月給から時給に変更など)
  • 同一企業で雇用契約書が複数存在する

賃金月額証明書の記載方法

「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」の記載では、複数給与形態がある場合に次のポイントを守ります。

  1. 各月の合算後の総支給額を記載する(時給分・月給分を合算した金額)
  2. 通勤手当などの対象外支給分は別欄に分けて記載する
  3. 出来高給は「変動する賃金」欄に月ごとの実績額を記載する

よくある記載ミスと対処法

ミスの内容 正しい対処法
通勤手当を賃金に含めて記載した 通勤手当欄に分けて記載し直す
時給業務分の一部が抜けている 給与明細と照合し、すべての支給分を合算する
変動給与の月を1か月分記載漏れ 賃金台帳で再確認し、訂正申告書を提出
臨時賞与を毎月賃金に含めた 臨時支給欄に移して再計算

法的根拠まとめ

この記事で解説した内容は、以下の法令・通達に基づいています。

根拠 条文・内容
雇用保険法 第61条の4 育児休業給付金の支給要件
雇用保険法施行規則 第73条~第76条 休業開始時賃金日額の算定方法
雇用保険法施行規則 第101条の19 支給単位期間・支給額の計算基準
育児・介護休業法 第2条・第5条 育児休業の定義・取得要件
厚生労働省 雇用保険業務取扱要領 複数給与の合算方法・対象外給与の取扱い

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よくある質問(FAQ)

Q1. 時給業務の時間数がゼロの月があった場合、その月はどう計算されますか?

支給が実際になかった月(時給分がゼロ)については、その月は「0円」として合計に含めます。ただし、その月の月給部分は通常どおり算定対象に含まれます。なお、完全に賃金が支払われなかった月(月給・時給ともにゼロ)がある場合は、その月を除いた直近6か月分で計算する場合があるため、ハローワークに確認してください。

Q2. 出来高給(歩合給)が月によって大きく異なります。高い月だけを使って計算できますか?

いいえ、任意の月を選択することはできません。育休開始前の直近6か月分を合算して180で割る計算が原則です。月ごとの変動が大きい場合でも、すべての月の実績額をそのまま使用します。

Q3. 育休開始の2か月前に月給から時給制に変更になりました。計算はどうなりますか?

給与形態が変更された月を境に、変更前は旧形態の金額、変更後は新形態の金額で計算し、6か月分を合算します。給与形態の変更を証明するために、変更前後の雇用契約書・給与明細を両方用意してください。

Q4. 育休給付金の申請は自分でできますか?それとも会社がやるものですか?

原則として事業主(会社)が代理申請するケースが多いですが、本人が直接ハローワークに申請することも可能です。ただし、賃金月額証明書の記載は会社の協力が必要なため、人事担当者との連携は必須です。

Q5. 複数給与形態の場合、給付金の振込先は1か所にまとめられますか?

はい、育休給付金は申請書に記載した1つの金融機関口座に振り込まれます。給与の支給口座が複数あっても、給付金の振込先は1か所にまとめて指定します。

Q6. 育休中にわずかでも時給業務をした場合、給付金はどうなりますか?

支給単位期間中の就業日数が10日以下かつ就業時間が80時間以下であれば、原則として支給対象となります。ただし、就業によって得た賃金と育休給付金の合計が育休前賃金の80%を超える場合は、超過分が給付金から差し引かれます。育休中の就業は事前に会社とハローワークに報告してください。


まとめ

時給と月給など複数の給与形態がある方の育休給付金計算を、以下のポイントで整理します。

  • 算定対象は「同一雇用保険被保険者としての給与全般」。通勤手当・臨時手当・別会社の副業は除く
  • 計算式の基本は「育休前6か月の対象賃金合計 ÷ 180 = 賃金日額」。各月の実績額を正確に集計することが重要
  • 支給率は前半180日が67%、後半は50%。就業日数によって減額・不支給になるケースあり
  • 書類は通常書類+各給与形態の雇用契約書・勤務記録・給与明細が必要
  • 迷ったら事前にハローワーク窓口へ相談するのが最も確実

複数給与形態の申請は書類の量が多くなりがちですが、事前に人事担当者・ハローワークと連携して準備を進めることで、確実に正しい金額を受け取れます。育休給付金をしっかり活用して、安心して育児休業を取得してください。

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