育休から復帰する際、「いきなりフルタイムに戻るのは不安」「子どもの保育園送迎に対応できるか心配」という声は多く聞かれます。そんな方にとって心強いのが、時短勤務で段階的復帰しながら給付金を受け取れる制度です。
2025年現在、育児時短就業給付金という新たな仕組みが整備され、復帰後も一定の給付金を受け取りながら時短勤務を続けることが可能になりました。政府のこども未来戦略に基づいた制度として、育休と職場復帰の間にあった「給付の空白」を埋めることが目的とされています。この記事では、対象者の条件・給付金額の計算方法・申請書類・手続きの流れを、最新の法改正情報も踏まえてわかりやすく解説します。
育休後の段階的復帰で使える「時短勤務給付金」とは?
育休後の職場復帰には、大きく分けて「フルタイム復帰」と「時短勤務での段階的復帰」の2つのパターンがあります。後者を選んだ場合に活用できるのが、育児時短就業給付金です。
育児時短就業給付金とは、3歳未満の子を養育するために時短勤務を行っている労働者に対し、時短分の賃金減少を補う形で支給される給付金です。雇用保険法の改正によって2025年4月から本格的に施行され、「育休が終わったら給付金がなくなる」という不安を解消する制度として注目されています。
制度が創設された背景には、政府の「こども未来戦略」があります。育休取得率の向上だけでなく、復帰後のキャリア継続支援が重要課題として位置づけられ、育休と時短勤務の間にあった「給付の空白」を埋めることが目的とされました。
育児休業給付金と育児時短就業給付金の違いをわかりやすく解説
「育休中の給付金」と「復帰後の時短勤務中の給付金」は、名称が似ているため混同しがちです。以下の比較表で違いを整理しましょう。
| 項目 | 育児休業給付金 | 育児時短就業給付金 |
|---|---|---|
| 支給タイミング | 育児休業中 | 時短勤務で復帰後 |
| 法的根拠 | 雇用保険法 第61条の4 | 雇用保険法 第61条の8(2025年施行) |
| 給付率 | 休業開始時賃金月額の67%(180日まで)、以後50% | 時短勤務中の賃金月額の10% |
| 子の年齢要件 | 原則1歳未満(延長あり) | 2歳未満(2025年4月時点) |
| 就業要件 | 就業日数が月10日以下 | 時短勤務で実際に就業していること |
| 手続き窓口 | ハローワーク(事業主経由) | ハローワーク(事業主経由) |
最も重要なポイントは、育児休業給付金は休業中に支給されるものであり、復帰と同時に終了するという点です。一方の育児時短就業給付金は、復帰後に時短勤務を開始した時点から対象になります。両者は受給期間が重複しないため、「どちらが得か」ではなく、「段階ごとに受け取る給付金が変わる」という理解が正確です。
2025年法改正で何が変わった?最新情報まとめ
2025年は育児支援制度に関わる重要な法改正が実施された年です。主な変更点を以下に整理します。
育児・介護休業法の改正(2025年4月施行)
- 従業員数にかかわらず、すべての企業に育児休業取得状況の公表が義務化(中小企業には段階的適用)
- 「育休を取得しやすい職場環境整備」の義務範囲が拡大
- 子の看護休暇が小学3年生修了まで延長(従来は小学校就学前まで)
雇用保険法の改正(2025年4月施行)
- 育児時短就業給付金が新設:時短勤務中に賃金月額の10%を支給
- 育児休業給付金の給付率に関する見直し(一定条件のもと実質的な手取り補填が強化)
- 申請手続きのオンライン化が推進され、マイナポータル経由の申請が可能に
2025年4月以前から時短勤務中の方への経過措置
すでに時短勤務で復帰していた方については、2025年4月以降の勤務分から育児時短就業給付金の申請が可能です。ただし、遡及して以前の期間に適用されるわけではないため、早めに事業主へ確認・申請手続きを依頼することが重要です。
育児時短就業給付金の対象者と支給条件
「自分はもらえるのか?」という疑問に正面から答えます。育児時短就業給付金を受給するためには、以下のすべての条件を満たす必要があります。
支給を受けるための主な要件
① 雇用保険の被保険者であること
雇用保険に加入している労働者が対象です。正社員のほか、一定の条件を満たすパートタイマーや契約社員も対象になります。
② 3歳未満の子を養育していること(2025年4月時点では2歳未満)
育児時短就業給付金の子の年齢要件は、制度導入当初は「2歳未満」からスタートし、段階的に「3歳未満」へと拡大される予定です。最新の適用年齢については、ハローワークまたは厚生労働省の公式情報を確認してください。
③ 時短勤務(所定労働時間の短縮)を行っていること
育児・介護休業法第23条に基づく短時間勤務制度を利用していることが必要です。一般的には「1日6時間」の時短勤務が標準的な形態とされています。
④ 時短勤務による賃金が、休業開始前の賃金月額の80%未満であること
フルタイム時と比べて賃金が大きく変わっていない場合は、支給対象外となります。時短による収入減少があることが前提条件です。
⑤ 育児休業給付金の受給資格があった、または育児休業を取得していたこと
育休から時短勤務へ移行するという一連の流れを前提とした制度設計になっています。
⑥ 支給申請単位期間ごとに就業実績があること
実際に時短勤務で働いていることが必要です。支給単位期間(原則2か月ごと)における就業日数が確認されます。
対象外となる主なケース
- 育児休業給付金の受給要件(被保険者期間が育休開始前2年間で12か月以上)を満たしていない場合
- 時短ではなくフルタイムで復帰した場合
- 子が3歳(現行2歳)以上になっている場合
- 時短勤務の賃金が休業開始前賃金月額の80%以上ある場合
育児時短就業給付金の金額はいくら?計算方法を解説
給付金額の見当がつかないと、家計計画が立てにくいですよね。以下で計算の仕組みを詳しく説明します。
基本的な給付率と計算式
育児時短就業給付金の給付率は、時短勤務中の賃金月額の10% です。
給付金額(月額)= 時短勤務中の賃金月額 × 10%
ここでいう「時短勤務中の賃金月額」とは、実際に時短で働いた期間に支払われた賃金の総額を、支給単位期間の日数で日割り計算したものです。
計算例
例:育休前の月給が30万円で、時短復帰後の月給が24万円の場合
育休前賃金月額:300,000円
時短後賃金月額:240,000円
賃金の減少率:(300,000 - 240,000) ÷ 300,000 = 20%(80%未満の条件を満たす)
育児時短就業給付金:240,000円 × 10% = 24,000円/月
この場合、時短復帰後の手取りに毎月2万4,000円の給付金が上乗せされるイメージです。
上限額・下限額について
育児時短就業給付金には、雇用保険の「賃金日額」に基づく上限額と下限額が設定されています。
- 賃金日額の上限:適用される雇用保険の年齢別上限日額(毎年8月に改定)
- 最低給付額:支給単位期間に就業日数が一定以上あることが条件
具体的な上限額は毎年改定されるため、ハローワークや厚生労働省の最新資料で確認することを推奨します。2025年度の賃金日額上限は、厚生労働省の「雇用保険の基本手当日額等の変更」告示を参照してください。
育休給付金との受給額比較
段階的復帰における給付金の変化を時系列で確認すると、以下のようなイメージになります。
| 時期 | 給付の種類 | 給付率の目安 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日 | 育児休業給付金 | 休業前賃金の67% |
| 育休181日目以降 | 育児休業給付金 | 休業前賃金の50% |
| 時短復帰後 | 育児時短就業給付金 | 時短賃金の10% |
| フルタイム復帰後 | なし | ― |
時短復帰後の給付率は10%と小さく見えますが、実際には「時短勤務の賃金」+「給付金10%」という組み合わせになるため、育休中の給付金だけで生活していた状況より手取り総額は増えるケースがほとんどです。
育児時短就業給付金の申請手続きと必要書類
申請は事業主(勤務先)を通じて行います。労働者本人がハローワークへ直接申請することは原則できません。流れと書類を確認しておきましょう。
申請の流れ(ステップ別解説)
ステップ1:時短復帰前に職場へ申し出る
育休終了前に、上司や人事担当者に対して「時短勤務での復帰を希望する」旨を書面または口頭で申し出ます。育児・介護休業法では、時短勤務の申出は原則として復帰予定日の1か月前までに行うことが望まれています。
ステップ2:勤務先が育児時短就業給付金の支給申請を準備
事業主は、育児時短就業給付金の申請に必要な書類を整備します。申請は2か月ごとを1つの支給単位期間として行います。
ステップ3:必要書類をハローワークへ提出
事業主がハローワークへ書類を提出します。電子申請(マイナポータル等)も可能です。
ステップ4:給付金の振込
審査が完了すると、労働者の指定口座(雇用保険の受給口座)に給付金が振り込まれます。
必要書類一覧
| 書類名 | 準備する人 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児時短就業給付金支給申請書 | 事業主 | ハローワーク所定様式 |
| 育児時短就業給付金受給資格確認票 | 事業主・本人 | 初回申請時のみ |
| 出勤簿または賃金台帳(写し) | 事業主 | 時短期間の就業実績確認 |
| 賃金支払状況を確認できる書類 | 事業主 | 給与明細等 |
| 母子健康手帳(写し)等 | 本人 | 子の生年月日確認 |
| 雇用保険被保険者証 | 本人 | 被保険者番号の確認 |
初回申請時には「受給資格確認票」が必要で、この書類によって労働者が支給要件を満たしているかがハローワークで確認されます。
申請期限
育児時短就業給付金の支給申請期限は、支給単位期間の末日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までです。申請が遅れると受給権が失効する可能性があるため、勤務先の人事担当者と連携して早めに手続きを進めてください。
時短勤務制度と給付金を最大限に活用するための注意点
企業の時短勤務制度の確認を忘れずに
育児・介護休業法第23条では、3歳未満の子を養育する労働者への短時間勤務制度(1日6時間勤務)の設置を事業主に義務づけています。ただし、企業が独自に設けている時短制度の内容や手当の有無は会社によって異なります。
給付金の受給資格を判断する「賃金月額の減少率」にも関わるため、復帰前に以下の点を人事担当者に確認しておきましょう。
- 時短勤務中の時給・月給の計算方法
- 賞与・各種手当の支給有無
- 社会保険料の扱い(標準報酬月額の変更申請など)
社会保険料の「育児休業等終了時月額変更届」を活用する
時短復帰後は給与が下がるため、社会保険料が実態と乖離する場合があります。育児休業等終了時月額変更届を提出することで、実際の給与に合わせた標準報酬月額への見直しができ、社会保険料の負担を軽減できます。こちらは年金事務所(または日本年金機構)への手続きとなり、ハローワークへの給付金申請とは別途必要になる手続きです。
「3歳から小学校就学前」の支援制度も確認する
育児時短就業給付金の対象は現在2〜3歳未満までですが、子どもが3歳以上になっても時短勤務を続けたい方は、引き続き企業の時短制度(法定外の努力義務期間)を利用できます。また、2025年の法改正により子の看護休暇が小学3年生修了まで延長されましたので、保育園・小学校の行事や体調不良時にも活用できる選択肢が広がっています。
パパ(父親)も育児時短就業給付金を受け取れる
育児時短就業給付金は母親だけでなく、父親(男性労働者)も対象です。パパ育休(産後パパ育休)を取得した後に時短勤務で復帰した場合にも、同様の要件を満たせば申請できます。夫婦それぞれが個別に申請することも可能です。
段階的復帰のプランニング:育休終了から時短復帰までのスケジュール例
実際にどのようなスケジュールで動けばよいか、標準的な流れを示します。
育休終了の2〜3か月前
- 保育所の入所申込・内定確認
- 職場の上司・人事担当者へ復帰希望時期と勤務形態(時短 or フルタイム)を相談
- 会社の時短勤務規定・申請様式の取り寄せ
育休終了の1か月前
- 時短勤務の申出書を会社へ提出(育児・介護休業法に基づく所定の手続き)
- 育児時短就業給付金の申請手続きについて人事担当者と打ち合わせ
- 社会保険の「育児休業等終了時月額変更届」の提出タイミングを確認
復帰直後(1か月以内)
- 時短勤務開始
- 育児時短就業給付金の「受給資格確認票」の提出(会社経由でハローワークへ)
復帰後2か月ごと
- 育児時短就業給付金の定期的な支給申請(事業主がハローワークへ提出)
- 勤務状況・賃金の変動があれば随時人事担当者へ連絡
職場復帰を会社に相談する際のポイント
育休後の時短復帰は、本人の意思だけでなく会社側の理解と協力が不可欠です。相談をスムーズに進めるためのポイントをまとめます。
相談は早めに、書面でも確認を
育休中であっても、育休終了2〜3か月前には復帰について職場と連絡を取り合うことが推奨されます。口頭だけでなく、メールや申出書の形で記録を残しておくと、後のトラブル防止につながります。
不利益取扱いは法律で禁止
育児・介護休業法第10条では、育児休業の申出や取得を理由とした解雇・降格・減給などの不利益取扱いが禁止されています。時短勤務の申出についても同様です(第23条の2)。もし不当な扱いを受けた場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談できます。
育児時短就業給付金の申請を会社に依頼する
給付金は会社経由での申請が必須です。「申請をお願いしたい」と早めに伝え、人事担当者が手続きに慣れていない場合はハローワークの説明資料を共有するなど、連携して進めましょう。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休を取らずに時短勤務だけ利用した場合、育児時短就業給付金は受け取れますか?
原則として、育児時短就業給付金は育児休業給付金の受給資格があった方(育休を取得していた方)が対象となるよう設計されています。育休を取得せずに最初から時短勤務で働いている場合は対象外となるケースが多いため、ハローワークに個別に確認することをおすすめします。
Q2. 2人目の育休後に時短復帰する場合も申請できますか?
できます。第2子・第3子でも、支給要件(雇用保険の被保険者期間など)を満たしていれば申請可能です。なお、1人目の育休・時短期間中に2人目を妊娠・出産した場合の給付金の取り扱いは複雑になるため、ハローワークへの事前相談を強くおすすめします。
Q3. 時短勤務中に昇給・降格があった場合、給付金額は変わりますか?
変わります。給付金額は実際の賃金月額をもとに計算されるため、賃金の変動があれば給付金額も変動します。また、時短後の賃金が休業前賃金月額の80%以上になった場合は支給要件を満たさなくなるため、注意が必要です。
Q4. 育児時短就業給付金は確定申告が必要ですか?
育児時短就業給付金は非課税所得に該当するため、所得税・住民税の課税対象にはなりません。確定申告書への記載も不要です。ただし、時短勤務で受け取る給与は通常の課税対象所得となります。
Q5. 申請を会社がしてくれない場合はどうすれば良いですか?
事業主が申請手続きを怠っている場合、労働者本人がハローワークに直接相談することができます。ハローワークから事業主へ指導が行われるケースもあります。また、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談窓口があります。
Q6. パートタイムで週3日勤務の場合でも受給できますか?
雇用保険の被保険者であること(週20時間以上の勤務など)が基本要件を満たしていれば、正社員でなくても受給の可能性があります。ただし、勤務形態や労働時間によって要件の判断が異なるため、ハローワークでの個別相談が確実です。
まとめ:段階的復帰をスムーズに進めるために
育休後の段階的復帰と育児時短就業給付金について、ポイントを整理します。
- 育児時短就業給付金は2025年4月施行の新制度で、時短勤務中の賃金月額の10%が支給される
- 対象は3歳未満(現行2歳未満)の子を養育し、育休から時短復帰した雇用保険被保険者
- 給付金の申請は会社(事業主)経由でハローワークへ、2か月ごとに行う
- 復帰の2〜3か月前から職場との調整を開始することが手続きをスムーズにする鍵
- 社会保険料の月額変更届など、給付金申請以外の手続きも並行して確認する
制度の詳細は毎年改正される可能性があります。最終的な判断は必ず管轄のハローワークまたは都道府県労働局に確認の上、手続きを進めてください。
参考法令・参考資料
- 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
- 雇用保険法 第61条の4(育児休業給付金)、第61条の8(育児時短就業給付金)
- 雇用保険法施行規則 第104条〜第109条
- 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし(2025年版)」
- 厚生労働省「雇用保険事務手引き」
- こども未来戦略(令和5年12月閣議決定)


