育休を取得しながら上の子を保育施設に預けたい、認可外保育施設の利用料を少しでも補助してほしい——そのような場面で気になるのが「育児休業給付金と託児料助成を同時にもらっていいのか」という疑問です。
結論からお伝えすると、育児休業給付金と託児料助成制度は原則として併用できます。ただし自治体ごとに条件が異なるため、手続き前に確認すべきポイントがあります。本記事では法的根拠から具体的な申請手順まで、実務に即した形で解説します。
育休給付金と託児料助成制度は併用できる【基本原則】
なぜ二重給付にならないのか?法的根拠の違い
「二重給付」とは、同一の目的に対して同一の法律・制度から複数回給付を受けることを指します。育児休業給付金と託児料助成は、支給目的・法的根拠・財源のすべてが異なるため、二重給付には該当しません。
| 制度名 | 法的根拠 | 支給目的 | 財源 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 雇用保険法第104条・第105条 | 休業中の所得補償 | 雇用保険料(国) |
| 産後パパ育休給付金 | 雇用保険法第104条・第105条(2022年改正) | 出生直後の所得補償 | 雇用保険料(国) |
| 託児料助成制度 | 自治体条例・補助金(地域により異なる) | 保育費用の負担軽減 | 自治体予算・地方交付税 |
| 保育料無償化 | 子ども・子育て支援法第11条の2 | 保育へのアクセス支援 | 国・都道府県・市区町村 |
つまり、育児休業給付金は「休業中の本人の生活費補填」、託児料助成は「子どもの保育費用への支援」と目的が明確に分離しています。これが「二重給付ではない」と判断される法的根拠です。
育児休業給付金と託児料助成の支給元が異なる点
育児休業給付金はハローワーク(公共職業安定所)が窓口となり、雇用保険の財源から支給されます。申請は事業主経由が原則で、支給期間は子どもが原則1歳(最長2歳)になるまでです。
一方、託児料助成制度は市区町村が独自に設計・運営する制度です。申請窓口は住所地の市区町村役場(子育て支援課・保育課等)となり、財源も国の雇用保険とは全く別です。
財源も窓口も異なる二つの制度を利用することは、制度の趣旨に沿った正当な活用です。
併用可能の最新法改正対応(2024年改正含む)
2022年の育児・介護休業法改正で導入された産後パパ育休(出生時育児休業)も、同様に雇用保険法に基づく給付であるため、託児料助成との併用制限はありません。
2025年4月施行予定の改正では育児休業給付金の給付率が手取りで実質10割相当(休業開始後28日間、一定要件あり)に引き上げられる方向で議論されており、助成との併用価値はさらに高まる見込みです。最新情報は厚生労働省のウェブサイトや最寄りのハローワークで随時確認してください。
育休と託児料助成の併用が可能な5つの典型パターン
パターンA:第2子出産で育休取得時(第1子の保育利用)
最も多い併用シーンです。
第2子出産 → 育児休業取得(育児休業給付金の受給開始)
↓
第1子(例:3歳)を認可保育園・認可外保育施設に継続利用
↓
第1子分の託児料助成を市区町村に申請
↓
【結論】育児休業給付金 + 第1子の託児料助成→ 併用可能
注意点: 認可保育園は「保育の必要性」の認定が必要です。育休中の親がいる場合、自治体によっては第1子の保育継続が「育児専従」とみなされ、利用調整で優先度が下がるケースがあります。退園を求められる自治体もゼロではないため、育休取得前に必ず自治体の保育課に確認しましょう。
パターンB:育休前後で異なる保育施設を利用
育休開始前:認可保育園利用 → 3〜5歳は保育料無償化適用
↓
育休中:認可外保育施設・一時預かり利用 → 認可外の託児料助成を申請
↓
育休終了後:認可保育園に復帰 → 再び保育料無償化適用
↓
【結論】時期ごとに適用制度が変わるが、いずれも育児休業給付金と併用可能
認可外保育施設を利用する場合、3〜5歳は月37,000円まで、0〜2歳の住民税非課税世帯は月42,000円まで保育料無償化の対象となります(子ども・子育て支援法に基づく)。これとは別に、自治体独自の上乗せ助成が受けられる地域もあります。
パターンC:認可外保育施設の託児料助成との組み合わせ
認可外保育施設(ベビーホテル・企業内保育所等)は保育料が高額になりがちですが、自治体によっては月額5,000〜30,000円程度の助成を行っています。育休中であっても「保育が必要な理由」(兄弟の保育継続、親の体調管理等)が認められれば、申請資格を得られる自治体もあります。
パターンD:ベビーシッター利用支援との併用
内閣府の「企業主導型ベビーシッター利用者支援事業」は、企業の福利厚生を通じて割引券(1枚2,200円のところ220円)を利用できる制度です。育休中の従業員も利用可能かどうかは企業・自治体によって異なるため、勤務先の総務・人事担当者に確認が必要です。育児休業給付金との法的な併用制限はありません。
パターンE:一時預かり保育と育休給付金
幼稚園や保育所の一時預かり事業も、育児休業給付金と同時利用が可能です。育休中の親のリフレッシュや、下の子の育児に集中するための上の子預かりとして活用できます。費用は1日1,000〜2,500円程度が相場で、自治体によっては一時預かりの費用補助も別途設けられています。
併用に注意が必要な4つのケースと対応策
ケース①:育休期間中の就業で給付金が減額される場合
育児休業給付金は、育休中の就業日数が支給単位期間(1か月)あたり10日以下(または80時間以下)であれば全額支給されます。就業日数・時間がこれを超えると給付金が減額または不支給となります。
就業が発生している場合、自治体の託児料助成の「利用者の就業状況要件」とも照合が必要です。「就業中の保護者のみ対象」という助成制度では、育休中の申請が認められない可能性があります。
対応策: ハローワークに就業状況を正確に報告しつつ、自治体の助成担当窓口に育休中の就業の有無を伝えて要件を確認しましょう。
ケース②:自治体の所得制限に育休給付金が含まれる場合
一部自治体の託児料助成には所得制限が設けられており、前年の世帯収入が一定額を超えると対象外になります。問題は「育児休業給付金が所得に含まれるか否か」です。
- 税法上の扱い: 育児休業給付金は非課税であり、所得税の課税対象外です(所得税法第9条第1項第15号)。
- 自治体の判定: 所得制限の算定基準は自治体ごとに異なり、「前年の課税所得」で判定する場合は育休給付金が除外されます。一方、「世帯の総収入」で判定する場合は含まれる可能性があります。
対応策: 必ず助成の申請窓口(市区町村の子育て支援課)に「育児休業給付金は所得算定に含まれますか?」と確認してから申請してください。
ケース③:自治体の助成対象施設の制限
待機児童対策として設けられた助成制度は、「特定の認可外保育施設のみ対象」「自治体が認定した施設のみ」といった施設要件が付いている場合があります。希望する施設が助成対象か否かは事前確認が必須です。
対応策: 施設に入園申し込みをする前に、自治体の助成対象施設一覧(市区町村HPまたは窓口で入手可能)を確認してください。
ケース④:「就業中・求職中」のみ助成対象とされている場合
最も注意が必要なケースです。自治体の保育支援制度は「保育の必要な事由」として「就労」「求職活動」「疾病」等を要件とするものが多く、「育休中」が明示的な対象理由に含まれていないことがあります。
対応策: 「育児休業中の保護者」が助成対象として認められるか、自治体窓口に文書(メール等)で照会し、回答を記録として残しておきましょう。第2子出産による育休の場合、第1子の保育継続として「兄弟在籍を理由とした継続入所」が認められる自治体もあります。
育休×託児料助成の申請手続きと必要書類
育児休業給付金の申請(ハローワーク)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 事業主(労働者本人も可) |
| 申請先 | 事業所管轄のハローワーク |
| 申請タイミング | 育休開始から2か月ごと(支給単位期間ごと) |
| 主な必要書類 | ①育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書(初回)、②賃金台帳・出勤簿の写し、③母子健康手帳の写し(生年月日確認用) |
| 給付金額の目安 | 休業開始から180日目まで:休業前賃金の67%、181日目以降:50% |
計算例:
休業前の月給が30万円の場合
– 開始〜180日:30万円 × 67% = 約20万1,000円/月
– 181日目以降:30万円 × 50% = 15万円/月
託児料助成の申請(市区町村)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請者 | 保護者本人 |
| 申請先 | 住所地の市区町村役場(子育て支援課・保育課等) |
| 申請タイミング | 施設入所前または入所後1か月以内が多い(自治体により異なる) |
| 主な必要書類 | ①申請書(窓口またはHP入手)、②育児休業取得証明書(勤務先発行)、③施設との契約書・領収書、④世帯全員の住民票、⑤前年度の課税証明書(所得制限ある場合) |
| 助成額の目安 | 自治体により月額5,000〜30,000円程度(施設種別・子どもの年齢によって変動) |
自治体別の確認ポイント早見表
| 確認事項 | 確認先 | 確認方法 |
|---|---|---|
| 育休中の「保育の必要事由」認定 | 市区町村保育課 | 窓口・電話・メール |
| 所得制限の算定に育休給付金が含まれるか | 市区町村子育て支援課 | 書面で照会推奨 |
| 助成対象施設の一覧 | 市区町村HP・窓口 | 事前にリスト入手 |
| 育休中の就業と助成要件の関係 | 市区町村窓口 + ハローワーク | 双方に確認 |
| ベビーシッター割引券の育休中利用可否 | 勤務先人事・総務 | 社内規程を確認 |
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休中に保育料無償化と認可外の託児料助成は同時に使えますか?
A. 原則として、認可保育園に通っていて保育料無償化が適用されている場合は、別途「認可外施設の託児料助成」と重複することは通常ありません。ただし、認可外施設に通いながら自治体の認可外向け無償化(月額上限補助)を受けつつ、自治体独自の上乗せ助成を受けることは可能なケースもあります。利用する施設の種別と自治体の制度設計を確認してください。
Q2. 育休中の所得として育児休業給付金を申告する必要はありますか?
A. 育児休業給付金は所得税・住民税ともに非課税です(所得税法第9条第1項第15号)。確定申告や住民税申告に含める必要はありません。ただし、社会保険料の算定基準や、一部の奨学金・ローン審査では収入として扱われる場合があります。
Q3. 第2子の育休中、第1子が保育園を退園させられるケースはありますか?
A. 自治体によっては育休中の保護者がいる家庭の「保育の必要性」認定が下がり、退園を求められる場合があります。ただし、2023年以降は「育休中も継続入所できる」自治体が増加しています。育休取得前に保育課へ必ず相談し、継続入所の可否と条件を書面で確認しましょう。
Q4. パパが育休を取得した場合も、託児料助成との併用は可能ですか?
A. はい、可能です。育児休業給付金(および産後パパ育休給付金)はパパが取得した場合も同様の雇用保険給付であり、自治体の託児料助成との法的な二重給付には該当しません。ただし「保育の必要性」の判定は世帯単位で行われる場合があるため、配偶者の就業状況とあわせて確認が必要です。
Q5. 手続きはいつまでに行えばよいですか?
A. 育児休業給付金は育休開始日の翌日から2か月以内に受給資格確認・初回申請を行う必要があります。遅延すると不支給になる期間が生じる場合があります。託児料助成の申請期限は自治体ごとに異なりますが、施設利用開始後1か月以内を求めるところが多いため、早めの手続きを心がけてください。
まとめ
育児休業給付金と託児料助成制度は、法的根拠・財源・支給目的が異なる独立した制度であるため、原則として併用可能です。二重給付には該当しません。
ただし、自治体ごとに所得制限・対象施設・親の要件が異なるため、以下の3ステップで確認することをおすすめします。
- ハローワークに育児休業給付金の支給条件・就業制限を確認する
- 市区町村の子育て支援課・保育課に育休中の助成申請の可否・所得算定方法を書面で確認する
- 利用予定の施設が助成対象かどうかを自治体の一覧で照合する
制度は毎年改正されます。本記事の情報は執筆時点のものですので、最新情報は必ず各窓口・厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。
