月20日以内判定の誤り事例と正確な計算方法【有給休暇のカウント方法】

月20日以内判定の誤り事例と正確な計算方法【有給休暇のカウント方法】 育休給付金

育児休業給付金(以下「育休給付金」)を受け取るためには、育休中の就業日数が「月20日以内」でなければなりません。しかし、この「20日」のカウント方法を誤っている企業・申請者が非常に多く、結果として給付金を受け取れなくなるケースが後を絶ちません。

特に多いのが「有給休暇を取得した日はカウントしなくてよい」という誤解です。実際には有給休暇を使用した日も「就業した日」として算入されるため、月20日の上限をオーバーしてしまう事例が続出しています。

本記事は、厚生労働省の雇用保険法施行規則に基づいた法的根拠をふまえたうえで、カウント誤りの具体的な事例と正確な計算方法を徹底解説します。企業の人事担当者・これから育休を取得する労働者のどちらにとっても必読の内容です。


育休給付金「月20日以内」ルールの法的背景

法的根拠となる3つの法律

育休給付金の「月20日以内」ルールは、複数の法律・告示によって規定されています。それぞれの役割を以下の表で確認してください。

法律・告示 条文・番号 主な内容
雇用保険法 第61条の4 育児休業給付金の支給要件全般を規定。就業日数制限の根拠法
雇用保険法施行規則 第94条の4 「就業した日」の定義を具体的に規定。有給休暇の算入を含む
育児・介護休業法 第23条 育児休業の定義・申出要件を規定。育休中の就業可能範囲を規定
厚生労働省告示(雇用保険関係業務取扱要領) 各年度版 月20日判定の詳細な運用基準・具体例を提示

この4つの法律・告示が組み合わさって、「育休中にどれだけ働いてよいか」というルールが構成されています。特に雇用保険法施行規則第94条の4は「就業した日」の定義を定めており、カウントの正確さを左右する最重要条文です。

「月20日以内」が設定された背景と目的

このルールが設定された背景には、育児休業の「実質性」を担保するという制度設計の理念があります。

育休給付金は「育児のために就業していない期間」を経済的に支援するための制度です。もし育休中に通常勤務に近い形で就業してしまうと、「実質的に育児休業をしているとはいえない」とみなされます。そのため、就業日数の上限として「月20日以内」という基準が設けられました。

また、「育休を取得しながら収入も確保する」という形での制度利用を防ぐ意味合いもあります。育休給付金は雇用保険財源から拠出されており、給付の公平性・財政的持続性の観点からも、就業制限を設けることは合理的な設計です。

ポイント: 月20日以内のルールは「育休中の就業を禁止する」ものではありません。育児と仕事の両立を一定範囲で認めつつ、「育児のために休業している」という実質を維持するためのルールです。


「就業した日」の正確な定義と5つの判断基準

「就業した日」に算入される5つのケース

雇用保険法施行規則第94条の4では、「就業した日」を次のように定義しています。以下の5つのケースはすべて就業日としてカウントされます。

① 実際に勤務した日

最も基本的なケースです。育休中であっても会社の求めに応じて出社し、通常業務を行った日はカウント対象になります。

② 出張・社外での就業日

育休中に会社の指示でセミナー参加・顧客訪問・取材対応などのために外出した日も、「勤務場所以外での就業」として算入されます。「職場に行っていない=カウントしなくてよい」というのは誤りです。

③ 有給休暇を使用した日

これが最も多くの誤解を生んでいるケースです。有給休暇を取得した日も「就業した日」としてカウントされます。 詳細は次のセクションで徹底解説します。

④ 有給休暇を取得したうえで実際の勤務もある日

1日のうちに「有給休暇+実勤務」が重なるケースです。この場合、有給休暇の日と実勤務の日で合計2日としてカウントされるケースがあります(厚生労働省の業務取扱要領による)。

⑤ 在宅勤務(テレワーク)で就業した日

新型コロナウイルス禍以降、在宅勤務での育休中就業が増えています。場所が自宅であっても、実際に就業した日はカウント対象です。「会社に行っていないから働いていない」という解釈は誤りです。


「就業した日」に算入されない4つのケース

就業日としてカウントされないケースも正確に把握しておく必要があります。

カウントされないケース 理由
傷病休暇・特別休暇 実際の就業を伴わないため
無給の休暇(無給休暇) 給与支払いが発生しておらず、就業実態なしとみなされるため
雇用契約上の非就業日(所定休日) そもそも就業義務がない日のため
育休給付金の「待期期間」と判定された日 給付対象期間の算定から除外されるため

これらの日は就業日に算入されません。ただし、「無給だからカウントしなくてよい」という判断を有給休暇にも当てはめるのは誤りです。有給休暇は給与が支払われる日として「就業扱い」になります。


有給休暇のカウント誤りが最多発生する理由

なぜ有給休暇が誤解されやすいのか

有給休暇を育休中に使用した場合のカウントについて、多くの企業担当者や申請者が「休んでいるのだから就業日にカウントされないはず」と考えます。

この誤解が生まれる原因は主に3つあります。

原因① 「休暇」という言葉のイメージ

「有給休暇」という名称には「休む」という意味が含まれているため、「就業していない日」に分類されると感じやすくなっています。しかし法的には、有給休暇は「給与を支払うことを条件に取得できる休暇」であり、給与支払いの実態があることから「就業扱い」になります。

原因② 育休中に有給休暇を使用するケースが増加

育休開始直後の「待期期間(2週間)」を利用するために有給休暇を充てるケースや、育休中に部分的に職場復帰する際に有給休暇を組み合わせるケースが増えています。このような複合的な運用が、カウント誤りをより複雑にしています。

原因③ 企業の人事担当者も誤解している

厚生労働省が発行する「雇用保険に関する業務取扱要領」は専門的な内容で、実務担当者が完全に把握することが難しい。そのため、企業側の確認漏れや誤った指導が、申請者のカウント誤りにつながるケースがあります。


カウント誤りの具体的な事例と正しい判定

ここでは、実際に起こりやすい具体事例を取り上げ、正しい日数カウントと誤ったカウントを比較します。

事例1:有給休暇日を就業日としてカウントしなかったケース

状況

Aさんは育休中に、月に5日間の育休中就業(部分復帰)を行いました。そのうち3日間は有給休暇を取得したうえで職場に出向き業務を行いました。残り2日間は有給休暇なしで出社しました。

内容 正しいカウント Aさんの誤ったカウント
5日 有給休暇取得+出社 2日(有給+実勤務) 1日
10日 有給休暇取得+出社 2日(有給+実勤務) 1日
15日 有給休暇取得+出社 2日(有給+実勤務) 1日
20日 出社(有給なし) 1日 1日
25日 出社(有給なし) 1日 1日
合計 9日 5日

Aさんは「5日しか働いていない」と思っていましたが、正しくカウントすると9日でした。この誤解が積み重なると、翌月以降に月20日の上限を超えるリスクが生じます。


事例2:有給休暇のみを取得した日をカウントしなかったケース

状況

Bさんは育休中に通院のため2日間の有給休暇を取得しました。通院日に職場で業務は行っていません。「職場に行っていないから就業日ではない」と判断し、この2日間をカウントしませんでした。

内容 正しいカウント Bさんの誤ったカウント
8日 有給休暇(通院のみ) 1日 0日
22日 有給休暇(通院のみ) 1日 0日
その他18日 育休中就業 18日 18日
合計 20日(ギリギリ可) 18日

この例では20日ちょうどで上限内に収まっていますが、もし有給休暇がさらに1日多ければ21日となり、給付対象外になっていました。

重要: 「有給休暇を取得した日に実際の業務は行っていない」という事実は、カウント対象かどうかに影響しません。給与が支払われた有給休暇の取得日は、実務の有無にかかわらず就業日として算入されます。


事例3:在宅勤務をカウントしなかったケース

状況

Cさんは育休中に週1〜2回、自宅でテレワーク形式の育休中就業を行いました。「会社に行っていないのでカウントしなくてよいと思った」と申告。1か月で実際には22日就業していたが、申告は18日でした。

このケースでは、ハローワークの調査によって実態が発覚し、育休給付金の返還請求(不正受給)の対象となりました。在宅勤務は場所にかかわらず就業日として算入されます。


事例4:月の途中で20日を超えたことに気づかなかったケース

状況

Dさんは育休中に週5日、月の半ばまで育休中就業を継続しました。月前半だけで15日を超えており、後半にわずか数日就業しただけで20日を超えてしまいました。

【Dさんの就業状況(1か月の例)】
第1週:5日就業
第2週:5日就業
第3週:5日就業(ここで累計15日)
第4週:3日就業(累計18日)
第5週:3日就業(累計21日 → 給付対象外!)

月単位での累計管理をしていなかったため、気づかずに上限を超えてしまいました。毎日・毎週のカウント管理が不可欠です。


正確な計算のための判定フローチャートと管理表

1日の就業状況を判定する手順

就業した日をカウントする際、以下のフローに沿って判定してください。

【判定フローチャート】

その日、何らかの仕事・連絡・業務を行ったか?
   ↓ はい
給与または有給休暇の支払い対象日か?
   ↓ はい
  →「就業した日」として1日カウント

さらに、同日に有給休暇の取得もあるか?
   ↓ はい
  → 有給休暇の1日 + 実勤務の1日 = 合計2日としてカウント

何もしていない、無給、雇用契約のない日か?
  →「就業した日」にカウントしない

月次管理表の活用方法

月の就業日数を正確に管理するため、以下のような月次管理表を活用することをおすすめします。

日付 就業内容 有給休暇の有無 カウント数 累計
3日 在宅テレワーク なし 1 1
7日 出社(通常業務) なし 1 2
10日 有給休暇+出社 あり 2 4
15日 有給休暇のみ(外出なし) あり 1 5
20日 出張対応 なし 1 6

この表を月初から毎日更新することで、月20日の上限に近づいたタイミングで就業を調整できます。


給付金を失う具体的な条件と影響

月20日を超えた場合の扱い

月の就業日数が20日を超えた場合、その月の育休給付金は全額不支給となります。21日ちょうどでも対象外です。給付単位期間ごとに判定されるため、翌月は改めてカウントが始まります。

不支給になった場合の給付金の試算例

条件 金額
休業開始前賃金月額 300,000円
育休給付金の支給率(初期6か月) 67%
通常の1か月分の給付額 約201,000円
月20日超過による不支給月の損失額 約201,000円

1か月の不支給で20万円超の損失が生じます。カウント誤りが1か月分でも大きな経済的損失につながるため、正確な管理は非常に重要です。

不正受給と判断される可能性

正確にカウントせず、実態より少ない就業日数で申告し給付金を受け取った場合、不正受給として返還請求の対象となります。不正受給が発覚した場合、受給額の返還に加えて最大2倍の延滞金が課せられるケースもあります(雇用保険法第10条の4)。申告内容には細心の注意が必要です。


企業担当者が行うべき3つの管理対策

対策① 申請前に「就業日数確認シート」を整備する

企業の人事担当者は、育休中就業の実施前に「就業日数確認シート」を整備し、有給休暇の取得日・テレワーク実施日・出社日を統合管理できる仕組みを作りましょう。Excelや勤怠管理システムに項目を追加することで対応可能です。

対策② 育休中就業の開始前に従業員へ説明会を実施する

育休中就業を行う従業員に対し、「月20日以内ルール」と有給休暇のカウント方法を事前に説明する機会を設けましょう。特に以下の点を重点的に伝えることが重要です。

  • 有給休暇を取得した日も就業日としてカウントされること
  • 在宅勤務も就業日に算入されること
  • 月累計で管理し、20日に近づいたら就業を停止する必要があること

対策③ ハローワークへの事前確認を活用する

判断に迷うケースは、管轄のハローワークに事前相談することをおすすめします。「育休中就業の日数が有給休暇と重なるがどうカウントするか」など、具体的な状況を提示すれば担当者から正確な回答が得られます。事前確認は無料で行えます。


育休給付金申請の必要書類と申請期限

主な必要書類

育休給付金の申請には以下の書類が必要です。

書類名 取得先
育児休業給付金支給申請書 ハローワークまたは厚生労働省ホームページ
母子健康手帳(子の生年月日確認用) 保護者保管
賃金台帳・出勤簿(直近2年分) 会社から取得
育児休業中の就業日数・賃金報告書 会社が作成
育児休業申出書 会社に提出済みのもの

申請期限

育休給付金の申請は、原則として支給単位期間(約2か月)ごとにまとめて申請します。

  • 初回申請: 育休開始から約2か月後
  • 2回目以降: 2か月ごとに繰り返し申請
  • 申請期限: 支給単位期間末日の翌日から2か月以内

この期限を過ぎると不支給になる可能性があります。人事担当者は申請スケジュールを事前にカレンダーに登録し、遅延しないよう管理することが不可欠です。


よくある質問

Q1. 有給休暇を取得したが、実際には何も仕事をしていない日もカウントされますか?

はい、カウントされます。有給休暇は給与が支払われる日であるため、業務の実態にかかわらず「就業した日」として算入されます。「業務をしていない」という事実はカウントの除外要件にはなりません。

Q2. 月20日を超えたら、その月の給付金はすべてもらえなくなりますか?

はい、月の就業日数が20日を超えた場合、その支給単位期間の育休給付金は全額不支給となります。21日でも22日でも同様です。翌月(次の支給単位期間)は改めてゼロからカウントが始まります。

Q3. 在宅勤務で育休中就業をしている場合、タイムカードがないとカウントの証明はどうなりますか?

在宅勤務の場合でも、業務記録・勤怠管理システムのログ・メール送受信の記録などが就業実態の証拠となります。企業側は在宅勤務の就業記録を適切に管理・保存することが求められます。申請時に申告した日数と実態が異なる場合は不正受給となるため、正確な記録管理が不可欠です。

Q4. 育休中に短時間勤務をした場合、「時間」のカウントも関係しますか?

はい、就業日数(月20日以内)に加えて、就業時間(月120時間以内)という要件もあります。どちらか一方でも超えると給付対象外となります。時間のカウントも日数と並行して管理してください。

Q5. 育休中に会社の懇親会や研修に参加した場合もカウントされますか?

業務命令として参加した懇親会・研修は就業に該当する可能性があります。任意参加の社内行事は就業日に当たらない場合もありますが、判断が難しいケースはハローワークに事前確認することをおすすめします。

Q6. 育休給付金の受給中に月20日を超えてしまった場合、申告はどうすればよいですか?

超過した事実は必ず正直に申告してください。申告した場合は該当月の給付金が不支給となりますが、虚偽申告で給付を受け取った場合は不正受給となり、返還請求に加えて延滞金が課される場合があります。超過に気づいた時点で、速やかに担当のハローワークに相談することが最善です。


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まとめ:正確なカウント管理が給付金を守る

育休給付金の「月20日以内」ルールにおけるカウント誤りは、有給休暇・在宅勤務・有給+実勤務の重複の3点に集中しています。これらを正確に算入しないと、受給資格を失うだけでなく不正受給と判断されるリスクもあります。

本記事で解説した内容を一言でまとめると、

「給与が支払われる日はすべて就業日としてカウントする」

という原則です。名称が「休暇」であっても、給与が支払われる有給休暇は就業日扱いです。この認識を徹底することで、カウント誤りの大部分は防ぐことができます。

企業の人事担当者・育休取得者のどちらも、月次管理表を活用しながら日数を正確に管理し、疑問があればハローワークに早めに相談することをおすすめします。厚生労働省の業務取扱要領に示された最新の判定基準に従うことで、育休給付金の安心な受給が実現できます。

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