産前休業の取得を検討しているとき、「6週間っていつから休めるの?」「土日や祝日はカウントに含まれるの?」と疑問に思う方は多いものです。結論から言えば、産前休業の6週間(42日)は土日・祝日を含む暦日で計算します。カレンダーをそのまま42日遡った日が休業開始日です。
この記事では、産前休業の日数計算における土日祝日の扱い、出産予定日からの正確な逆算方法、具体的な計算例、多胎妊娠(14週間)への対応まで、実務で迷わないよう詳しく解説します。労働基準法に基づいた正確な計算方法を習得することで、会社への申請手続きもスムーズに進めることができます。
産前休業の「6週間」は何日?土日祝日の扱いを一言で確認
| 項目 | 通常妊娠 | 多胎妊娠 |
|---|---|---|
| 休業期間 | 6週間 | 14週間 |
| 日数(暦日) | 42日 | 98日 |
| 土日祝日 | 含む | 含む |
| 計算方法 | 出産予定日から遡る | 出産予定日から遡る |
結論:産前休業の6週間は「42日間」であり、土曜日・日曜日・国民の祝日をすべて含む「暦日計算」です。
よくある誤解として「土日は休みだから42日のカウントから除くのでは?」という考え方がありますが、これは誤りです。産前休業期間の計算は、カレンダー上の連続した日数をそのまま数える方式を採用しています。平日だけを数えると42日より大幅に長い期間になってしまうため、混同しないよう注意が必要です。
6週間=42日、暦日で計算する理由
産前休業の根拠法令は労働基準法第65条第1項です。条文には次のように定められています。
「使用者は、6週間(多胎妊娠の場合にあっては、14週間)以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合においては、その者を就業させてはならない。」
この「6週間」の計算方法について、労働基準法は「暦日」によることを前提としています。暦日(れきじつ)とは、カレンダー上の実際の日付を1日ずつ数えていく方法のことです。平日・休日の区別をせず、1月1日から12月31日まで連続して数える考え方です。
1週間=7日ですから、6週間=42日、多胎妊娠の場合は14週間=98日となります。
この暦日計算の考え方は労働法全体に共通するものであり、年次有給休暇や育児休業の計算にも同じ原則が適用されています。「働いている日だけ数える」という誤解が生じやすいのですが、休業期間の計算においては就業・非就業の区別なく日数を数えるのが基本です。
土曜日・日曜日・祝日はカウントから除外される?
除外されません。土曜日・日曜日・国民の祝日はすべてカウントに含まれます。
厚生労働省の産前産後休業に関する解釈では、次のように明示されています。
「6週間は暦日で計算し、土曜日、日曜日、国民の祝日を含めて計算する。これらの日が休業中に含まれることになっても、給付金の減額対象にはならない。」
つまり、42日のカウント中に土日や祝日が何日含まれていても、それは問題なく、給付金の計算にも不利益は生じません。
たとえば、出産予定日が9月の場合、シルバーウィーク(敬老の日・秋分の日周辺の3連休)が産前休業期間中に入ることがあります。このような祝日連休も当然42日のカウントに含まれます。年末年始・ゴールデンウィーク・お盆期間中も同様です。
この点を誤って「祝日は除外して42営業日を数える」と計算してしまうと、休業開始日が実際よりもずっと後ろにずれてしまいます。企業の人事担当者も含め、この誤解は実務上よく見られるため、特に注意してください。
産前休業開始日の正確な計算手順【3ステップ】
出産予定日から産前休業の開始日を求めるには、次の3ステップで計算します。初めて計算する方でも順序通りに進めれば確実に開始日を割り出せます。
ステップ1|出産予定日を起算点に設定する
まず、産婦人科・医師から告げられた出産予定日を起算点(カウントのスタート地点)として設定します。
ここで重要なのが、出産予定日当日は「42日のカウントに含めない」という点です。
法律上の解釈では、出産予定日は「産前休業の終了日」に位置づけられるため、産前休業の期間計算は出産予定日の前日(予定日の1日前)から逆算して始めます。
たとえば出産予定日が10月15日であれば、10月14日が産前休業の最終日(42日目)であり、そこから42日を逆算していくことになります。
✅ポイント:出産予定日はカウントに含めず、その前日(42日目)から逆算する
ステップ2|42日を暦日で逆算する(カレンダー確認)
42日目が出産予定日の前日に確定したら、そこからさらに残り41日を逆算して1日目を求めます。土日・祝日を一切除外せず、カレンダーをそのまま41日分遡った日が産前休業の開始日(1日目)です。
月をまたぐ計算になる場合でも、特別なルールはありません。30日の月・31日の月・2月(28日または29日)も、そのままカレンダー通りに数えます。
逆算のコツ:日付計算が苦手な方へ
手計算で迷いやすい場合は、次の方法が便利です。
- 出産予定日の月日から「42日」を引く
- 引いた結果が前の月に入った場合は、その月の末日から残りを引き続ける
- 年をまたぐ場合も同様に、前年12月から逆算する
なお、厚生労働省の「産前産後休業期間計算ツール」や各社会保険労務士事務所が提供するオンライン計算ツールを活用すると、入力するだけで自動的に開始日が算出されるため、確認手段として非常に便利です。
ステップ3|開始日の翌日が「就業可能な最終日」
計算で求めた産前休業開始日は、その日から休業に入る日を意味します。
したがって、産前休業開始日の「前日」が就業できる最終日となります。
たとえば産前休業開始日が9月4日(水)と計算できた場合、9月3日(火)が最後に出勤できる日(就業可能最終日)です。9月4日以降は産前休業期間中となります。
会社への申請タイミングの目安
産前休業は、労働者が「休業する」と請求することで取得できる権利です。会社側は請求があれば就業させることができません。一般的な実務では、出産予定日の1〜2か月前には人事担当者や直属の上司に申し出て、以下の手続きを進めておくことが推奨されます。
- 産前産後休業取得申請書の提出(会社所定の書式)
- 健康保険組合への産前産後休業届の提出(会社経由)
- 社会保険料免除の申請(産前産後休業期間中は社会保険料が免除される)
計算例で確認|出産予定日別・産前休業開始日
実際のカレンダーを使った計算例を複数示します。自分の出産予定日に近いケースを参考にしてください。
計算例①:出産予定日が2024年10月15日(火)の場合
出産予定日の前日(42日目):2024年10月14日(月)
ここから41日を逆算します。
- 10月中:10月1日〜10月14日=14日
- 9月中:30日(9月は30日間)
- 残り27日を9月から逆算 → 9月30日から27日遡ると9月4日
産前休業開始日:2024年9月4日(水)
就業可能最終日:2024年9月3日(火)
9月にはシルバーウィーク(9月21日・22日・23日の3連休)が含まれますが、これらもすべて42日のカウントに含まれます。土日を含む連休であっても、計算ルールは変わりません。
計算例②:出産予定日が2025年1月10日(金)の場合
出産予定日の前日(42日目):2025年1月9日(木)
ここから41日を逆算します。
- 1月中:1月1日〜1月9日=9日
- 12月中:31日(12月は31日間)
- 残り32日を12月から逆算 → 12月31日から32日遡ると11月30日
産前休業開始日:2024年11月30日(土)
就業可能最終日:2024年11月29日(金)
12月29日〜1月3日の年末年始もカウントに含まれます。「年末年始は除外するのでは?」と思われがちですが、暦日計算のため一切除外しません。
計算例③:出産予定日が2025年5月5日(月・こどもの日)の場合
出産予定日の前日(42日目):2025年5月4日(日・みどりの日)
ここから41日を逆算します。
- 5月中:5月1日〜5月4日=4日
- 4月中:30日(4月は30日間)
- 3月中:31日(3月は31日間)
- 合計:4日+30日+31日=65日(必要41日のため過剰)
- 3月から遡算:3月31日から7日遡ると3月25日
産前休業開始日:2025年3月25日(火)
就業可能最終日:2025年3月24日(月)
ゴールデンウィーク(4月27日〜5月6日前後)が産前休業期間中に含まれますが、これも通常通りカウントされます。祝日の多い時期でも計算方法は同じです。
出産予定日別・産前休業開始日早見表
| 出産予定日 | 産前休業開始日 | 就業可能最終日 |
|---|---|---|
| 2024年9月1日(日) | 2024年7月21日(日) | 2024年7月20日(土) |
| 2024年10月15日(火) | 2024年9月4日(水) | 2024年9月3日(火) |
| 2024年12月25日(水) | 2024年11月13日(水) | 2024年11月12日(火) |
| 2025年1月10日(金) | 2024年11月30日(土) | 2024年11月29日(金) |
| 2025年3月31日(月) | 2025年2月17日(月) | 2025年2月16日(日) |
| 2025年5月5日(月) | 2025年3月25日(火) | 2025年3月24日(月) |
| 2025年8月1日(金) | 2025年6月20日(金) | 2025年6月19日(木) |
※各自の出産予定日で正確に計算するには、カレンダーを使った逆算またはオンライン計算ツールの利用をおすすめします。
多胎妊娠(双子・三つ子)の場合は14週間(98日)
双子や三つ子などの多胎妊娠の場合、産前休業期間は14週間(98日)に延長されます。これは、多胎妊娠が単胎妊娠と比べて母体への負担が大きいことから、労働基準法第65条で特別に定められた措置です。
計算方法は単胎妊娠の場合と同じく、出産予定日の前日を98日目として、暦日で逆算します。出産予定日の前日から41日分さらに遡るのではなく、全体として98日を逆算するため、開始日がより早くなります。
| 妊娠種別 | 産前休業期間 | 日数換算 |
|---|---|---|
| 単胎妊娠(1人) | 6週間 | 42日 |
| 多胎妊娠(双子以上) | 14週間 | 98日 |
多胎妊娠であることが確認された時点で、早めに会社の人事担当者に伝え、産前休業の開始予定日を共有しておくことが大切です。なお、多胎妊娠の判定は医師から「多胎妊娠である」旨の診断書または母子健康手帳の記載によって会社に証明することが一般的です。
実際の出産が予定日より早まった・遅れた場合の扱い
出産は予定通りに進まないことも多く、早産や遅産のケースも珍しくありません。それぞれの場合に産前休業の扱いがどう変わるか確認しておきましょう。
予定日より早く出産した場合(早産)
産前休業開始日はあくまで出産「予定日」から計算されているため、仮に予定日より1週間早く出産した場合でも、産前休業の取得期間は計算上の開始日から実際の出産日の前日までとなります。産前休業の残り日数分は消化できなくなりますが、産後8週間の産後休業はその実際の出産日翌日からカウントが始まります。
予定日より遅れて出産した場合(遅産)
出産が予定日より遅れた場合、産前休業は計算上の開始日からスタートし、実際の出産日の前日まで延長されます。この「延長された産前休業日数」は健康保険の出産手当金の対象となるため、給付面での不利益はありません。
✅ポイント:産前休業の終了は「出産日の前日」。出産が遅れれば産前休業は自動的に延長されます。
パート・派遣社員の場合も同じ計算ルールが適用される
「パートや派遣社員は産前休業の計算が違う?」と疑問を持つ方もいますが、雇用形態に関わらず計算ルールは同一です。
労働基準法第65条は正社員に限らず、パートタイム労働者・有期契約社員・派遣社員にも等しく適用されます。週3日勤務のパート社員であっても、産前休業の6週間(42日)は暦日計算であり、土日祝日を含む点は変わりません。
ただし、派遣社員の場合は産前産後休業中の手続き窓口が「派遣元(派遣会社)」となる点に注意が必要です。派遣先企業ではなく派遣元に対して休業の請求・申請を行います。
また、産前産後休業中に受け取れる「出産手当金」については、健康保険の加入要件を満たしていれば正社員と同様に受給できます。パート・派遣社員でも健康保険(協会けんぽまたは健康保険組合)に加入していれば出産手当金の対象です。
産前休業中に受け取れる給付金の概要
産前休業中は、健康保険から出産手当金が支給されます。
出産手当金の基本情報
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 支給機関 | 健康保険(協会けんぽ・健康保険組合) |
| 支給期間 | 産前42日(多胎98日)+産後56日 |
| 支給額 | 1日あたり「標準報酬日額×2/3」 |
| 申請先 | 勤務先経由または本人が直接健康保険組合へ |
| 申請タイミング | 産後に一括または産前・産後で分割申請 |
計算式:
出産手当金(1日あたり)= 標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3
たとえば標準報酬月額が30万円の場合:
– 30万円 ÷ 30日 × 2/3 = 1日あたり6,667円
– 産前42日分:6,667円 × 42日 = 約28万円
– 産後56日分:6,667円 × 56日 = 約37万3,000円
– 産前産後合計:約65万3,000円
土日祝日が休業期間に含まれていても、出産手当金の支給日数(42日・98日・56日)は変わりません。これが先述した「給付金の減額対象にならない」の意味です。
申請手続きと必要書類の確認
産前産後休業の取得に必要な手続きと書類をまとめます。
会社への申請
必要なもの:
– 産前産後休業取得申請書(会社所定の書式)
– 母子健康手帳(出産予定日の確認用)
申請タイミング:休業開始日の1〜2か月前が目安
社会保険料の免除申請
産前産後休業期間中は、労使ともに社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されます。
- 申請書: 産前産後休業取得者申出書
- 申請先: 事業主(会社)が年金事務所または健康保険組合に提出
- 手続き者: 会社(人事・総務担当)が代行
出産手当金の申請
- 申請書: 出産手当金支給申請書(健康保険組合または協会けんぽの書式)
- 必要添付書類: 医師または助産師の証明(申請書に所定欄あり)
- 申請先: 健康保険組合または協会けんぽ(会社経由が一般的)
- 申請期限: 受給できる権利が生じた日の翌日から2年以内
よくある質問
Q1. 産前休業の6週間は、必ず取得しなければなりませんか?
いいえ、産前休業は労働者の「請求」があって初めて発生する権利です。会社は請求があれば就業させることができませんが、労働者が「産前休業を取らずに働き続けたい」という場合は、出産直前まで就業を継続することも可能です(ただし、産後8週間は原則として就業不可)。
Q2. 産前休業の開始日を後ろ倒しにして、予定日より短く休むことはできますか?
可能です。「産前6週間以内に出産する予定の女性が請求した場合」が法律の要件であり、最大42日(多胎妊娠98日)が保障されているだけです。「予定日の2週間前から休む」など、6週間より短い期間での請求も法律上は問題ありません。ただし産後の体調を考慮し、無理のない計画を立てることを推奨します。
Q3. 出産手当金は土日祝日分も支給されますか?
はい、支給されます。出産手当金は産前42日(多胎98日)・産後56日の暦日で計算されるため、その期間中の土日・祝日分も支給対象に含まれます。給付金が減額されることはありません。
Q4. 産前休業中に有給休暇を使うことはできますか?
有給休暇と産前休業を重複させることは一般的には認められていません。有給休暇は就業義務がある日に取得するものであり、産前休業中はすでに休業しているため、原則として有給休暇の取得はできません。産前休業前に有給休暇を消化してから休業に入るケースが多く見られます。
Q5. 派遣社員でも産前休業・出産手当金は受け取れますか?
はい、受け取れます。派遣社員でも健康保険に加入していれば出産手当金の対象となります。ただし、産前産後休業の申請手続きは「派遣先企業」ではなく「派遣元(派遣会社)」に対して行います。
Q6. 産前休業の開始日と出産予定日が変更になった場合はどうすればよいですか?
医師から出産予定日の変更(修正)があった場合は、速やかに会社の人事担当者に連絡し、産前休業の開始日を再計算・再申請します。健康保険への届け出も変更が必要な場合があるため、会社と連携して対応してください。
まとめ
産前休業の6週間(42日)に関するポイントを整理します。
| 確認事項 | 内容 |
|---|---|
| 計算単位 | 暦日(カレンダー通り) |
| 土日祝日 | カウントに含める |
| 起算点 | 出産予定日の前日(42日目) |
| 開始日 | 出産予定日から42日遡った日 |
| 多胎妊娠 | 14週間=98日 |
| 雇用形態 | 正社員・パート・派遣すべて同じルール |
| 出産が遅れた場合 | 産前休業が自動延長、給付金も延長分支給 |
産前休業は労働者に与えられた大切な権利です。「土日も含めた暦日で42日」というルールをしっかり押さえ、出産予定日が決まったら早めに開始日を計算して、余裕を持って申請手続きを進めましょう。不明点がある場合は、会社の人事担当者や最寄りの労働基準監督署・社会保険労務士にご相談ください。


