企業計画書2025年改正|育休取得計画書の作成義務と手順

企業計画書2025年改正|育休取得計画書の作成義務と手順 育休法改正

2025年4月、育児・介護休業法の改正が施行され、企業は労働者の育休取得に関する「育休取得計画書」を作成する義務(一部経過措置あり)を負うことになりました。男性育休取得率の目標50%達成に向けた国の本気度が、この改正から読み取れます。

「うちの会社は対象なのか」「どんな書類を作ればいいのか」「いつまでに対応が必要なのか」——人事担当者が抱えるこれらの疑問に、本記事では法的根拠から具体的な手順まで、順を追って丁寧に解説します。2026年4月の完全義務化に間に合うよう、今すぐ準備を始めましょう。


2025年改正で何が変わった?育休取得計画書の義務化を3分で理解する

時期 企業規模 育休取得計画書 対応義務の性質
2025年4月 1,000人超の大企業 作成・公表が必要 努力義務
2025年4月 300~999人の中堅企業 作成・公表が必要 努力義務
2025年4月 300人以下の小企業 不要(経過措置) 準備期間
2026年4月 全企業(規模問わず) 作成・公表が必須 完全義務化

育児・介護休業法 第5条の2とは何か

今回の改正の核心は、2023年法律第65号によって新設された育児・介護休業法第5条の2にあります。この条文が定めるのは、企業が育休取得対象となる労働者ごとに「育休取得計画書」を作成し、本人に交付しなければならないという新たな義務です。

従来の法令では、企業は育休制度の「周知」と「意向確認」を行うことが求められていました(2022年改正で導入)。しかし、周知・確認をしても実際の取得率が上がらないという課題が残り、「計画書」という形式で取得を見える化・確約化するステップが追加されたのです。

計画書には以下の内容が盛り込まれます。

  • 育休の開始予定日・終了予定日
  • 育休中の業務の引き継ぎ方針
  • 勤務復帰後の働き方の方向性
  • 育休取得に関して労使で確認した事項

この計画書は、企業と労働者が対等な立場で協議し、合意した上で作成するという点が重要です。企業が一方的に交付するものではなく、個別面談を通じて双方が内容を確認・合意するプロセスが前提となっています。

なお、この改正は男性育休の取得促進を強く意識したものです。2022年の男性育休取得率は17.13%(厚生労働省「雇用均等基本調査」)にとどまっており、政府目標の2025年までに50%という数値との乖離が大きい状況を受けて、計画書という具体的なアクションが義務として課されることになりました。

努力義務(2025年4月)→完全義務化(2026年4月)のタイムラインを確認

2025年改正には経過措置があり、すべての企業が即座に「義務」を負うわけではありません。以下のタイムラインで整理してください。

時期 内容
2025年4月1日〜2026年3月31日 常時10人以上の事業所:努力義務
2026年4月1日〜 常時10人以上の事業所:義務化(違反時は指導・勧告の対象)
常時10人未満の事業所 引き続き努力義務(現時点では義務化の予定なし)

「努力義務だから今は対応しなくていい」という発想は危険です。2026年4月の義務化まで1年を切っている現時点で、計画書の様式整備・面談フローの構築・就業規則の改定といった準備には最低でも数ヶ月を要します。特に複数拠点を持つ企業や人事部門のリソースが限られる中小企業は、今すぐ着手することが強く推奨されます。

また、行政指導(助言・指導・勧告)の対象となった場合は企業名が公表されるリスクもあります。採用広報における「育休取得しやすい職場」のアピールが重要になっている現代において、コンプライアンス違反は大きなレピュテーションリスクとなります。


【対象確認】自社は義務化の対象?企業・労働者の適用要件一覧

企業規模別の対応義務まとめ

まず「自社が対象か」を判断するための企業規模要件を確認します。

企業規模 2025年4月〜 2026年4月〜
常時10人以上の事業所 努力義務 義務化
常時10人未満の事業所 努力義務 努力義務(変更なし)

ここで注意が必要なのは、「企業全体の従業員数」ではなく「事業所単位の常時使用労働者数」で判定するという点です。本社に100人いても、地方の営業所に9人しかいない場合、その営業所単独では適用対象外になる可能性があります(ただし、グループ会社全体での対応方針を統一することが実務上は望ましい)。

「常時使用する労働者」には、正社員だけでなく、契約社員・パートタイム労働者も含みます。派遣労働者については、派遣元事業所の従業員数でカウントされるため、派遣先企業は自社に受け入れている派遣社員を自社の員数に含める必要はありません。

大企業については、育休取得率の公表義務(2023年4月施行)との組み合わせで、計画書作成がより強固なコンプライアンス対応として機能します。常時1,000人超の企業はすでに育休取得率の数値開示が義務化されており、計画書との整合性も問われる可能性があります。

対象労働者の判定チェックリスト

計画書の作成対象となる労働者かどうかは、以下のチェックリストで確認してください。

必須要件(すべて該当する場合に対象)

  • ☑ 子が3歳未満である(出産予定日の前後を含む)
  • ☑ 当該事業所に継続して雇用されることが見込まれる(1年以上)
  • ☑ 育休取得の意向がある、または確認手続きの対象となっている
  • ☑ 労使協定で適用除外とされていない有期雇用労働者でない

雇用形態別の留意点

雇用形態 対象可否 主な条件
正社員 ◎対象 原則すべて
契約社員 △条件付き対象 子が1歳6ヶ月(または2歳)時点で雇用継続見込みがある場合
パートタイム △条件付き対象 契約社員と同様の継続雇用要件
派遣社員 ◎対象(派遣元) 派遣元企業が計画書作成義務者

対象外となるケース

  • 子が3歳以上の労働者
  • 日々雇用される労働者
  • 労使協定により育休取得の対象外とされた有期雇用労働者(継続雇用1年未満等)
  • 本人が明示的に育休取得しない意向を示している場合(ただし意向確認の記録保管は必要)

育休取得計画書の作成手順【STEPごとに解説】

育休取得計画書のプロセスは5つのステップで実施します。以下、各段階で何をすべきか、具体的に解説します。

STEP 1:育休対象者の把握(育休開始1ヶ月前を目安に)

育休取得計画書のプロセスは、労働者から妊娠・出産の申告を受けた時点からスタートします。企業には、この申告を受けてから速やかに(目安として2週間以内)、制度の周知と意向確認を行う義務が2022年改正から課されています。

この段階で人事担当者が確認すべき情報は以下のとおりです。

  • 出産予定日(または出産日)
  • 育休取得の意向(取得する・しない・検討中)
  • 希望する育休開始日・終了日のおおよそのイメージ
  • 産後パパ育休(出生時育児休業)の活用可能性

産後パパ育休(出生時育児休業)とは、2022年10月に創設された制度で、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)取得できる男性向け育休です。通常の育休と組み合わせると、男性でも長期の育休取得が可能になります。このオプションも含めて対象者に情報提供することが求められます。

STEP 2:個別面談の実施(計画書作成の前提)

次に、育休取得対象者との個別面談を行います。この面談は、2022年改正で義務化された「意向確認面談」とは別に、計画書の内容を協議する目的で行われます。

面談で確認・協議すべき主な内容は以下です。

確認事項 詳細
育休の期間 開始日・終了日・延長の可能性
業務の引き継ぎ 担当業務の整理・引き継ぎ先の決定
復職後の働き方 時短勤務・フレックスの希望
給付金・社会保険 育児休業給付金の受給見込み・保険料免除の説明
連絡手段 育休中の緊急連絡先・連絡頻度の合意

面談時に説明すべき育児休業給付金の概要

育休中の収入不安を解消するためにも、給付金の説明は面談の重要な要素です。

  • 給付額(育休開始から180日まで):休業開始前の賃金日額 × 67% × 休業日数
  • 給付額(181日目以降):休業開始前の賃金日額 × 50% × 休業日数
  • 2025年改正の注目点:一定要件を満たす場合、給付率が手取りで実質10割相当(約80%)に引き上げられる予定(両親ともに14日以上の育休取得が条件)
  • 申請窓口:ハローワーク(事業主経由で申請)
  • 申請タイミング:育休開始から2ヶ月ごとに申請(初回は育休開始後2ヶ月経過後から)

面談の記録は書面または電磁的方法で保管することが推奨されます。後日トラブルが生じた際の証拠にもなります。

STEP 3:育休取得計画書の作成

面談で合意した内容をもとに、育休取得計画書を作成します。厚生労働省が様式例を公開しており、それをベースに自社の実情に合わせてカスタマイズすることが可能です。

計画書に記載すべき必須項目

  1. 労働者の基本情報:氏名・所属部署・雇用形態
  2. 育休の期間:開始予定日・終了予定日
  3. 産後パパ育休の利用有無(男性の場合)
  4. 業務引き継ぎ計画:担当業務・引き継ぎ先・完了目標日
  5. 育休中の連絡体制:緊急連絡先・連絡の頻度と手段
  6. 復職後の勤務形態:時短勤務の利用予定・復帰部署の方向性
  7. 会社側の支援内容:代替要員の手配方針・復職サポートの概要
  8. 作成日・双方の署名(または記名押印)

署名は電子サインでも問題ありません(電子署名法に基づく場合)。ペーパーレス対応を進めている企業は積極的に活用してください。

育休取得計画書の雛形(構成例)

【育児休業取得計画書】

作成日:  年  月  日
対象者氏名:         所属:      
雇用形態:□正社員 □契約社員 □その他(   )

■ 育児休業の予定期間
 開始予定日:  年  月  日
 終了予定日:  年  月  日
 産後パパ育休:□利用する(期間:  〜  )□利用しない

■ 業務引き継ぎ計画
 主な担当業務:
 引き継ぎ先(担当者名):
 引き継ぎ完了目標日:

■ 育休中の連絡体制
 連絡先:
 連絡頻度の合意:□原則連絡なし □緊急時のみ □月1回程度

■ 復職後の勤務形態(予定)
 □通常勤務 □時短勤務( 時間/日)□フレックス □テレワーク

■ 会社のサポート内容
 代替要員:□手配済み □手配予定 □不要
 復職支援:□研修あり □上司面談あり

本計画書の内容について、労使双方で確認・合意しました。

対象者署名:         
会社(人事)署名:      

STEP 4:計画書の交付・保管

完成した計画書は、対象労働者に交付(1部)し、企業側でも原本を保管(1部)します。

保管期間については、育児・介護休業法に明示的な規定はありませんが、労働基準法第109条の「重要な書類は3年間保存」の原則に準拠し、育休終了後3年間の保管を目安とすることが実務上推奨されます。

電磁的記録(PDFファイル等)での保管も認められています。クラウド型の人事管理システムを活用すれば、検索・管理が容易になります。

STEP 5:育休取得後のフォローアップ

計画書の作成は「終わり」ではありません。育休期間中・復職前にフォローアップ面談を行い、計画書の内容通りに進んでいるかを確認することが重要です。

  • 育休開始後1ヶ月以内:引き継ぎ完了の確認・給付金申請のサポート
  • 育休終了1〜2ヶ月前:復職に向けた準備(職場復帰支援プランの策定)
  • 復職直前:職場環境・業務内容の確認・必要な研修の実施

厚生労働省が提供する「職場復帰支援プログラム」の5ステップも、この段階での参考になります。


就業規則の改定と社内周知の進め方

育休取得計画書の義務化に対応するためには、就業規則への反映が欠かせません。育児・介護休業法の改正に伴う就業規則の改定は、労働基準法第89条に基づき、常時10人以上の事業所では義務です。

就業規則に追記すべき主な内容

追記箇所 内容
育児休業規程 育休取得計画書の作成・交付に関する条項
育児休業規程 個別面談の実施に関する条項
懲戒規程(確認的) ハラスメント防止条項(マタハラ・パタハラ)
復職規程 職場復帰支援プランの策定に関する条項

改定後の就業規則は労働基準監督署への届出が必要です(10人以上の事業所)。また、改定内容は全労働者への周知義務があります(社内イントラ掲載・書面配布・掲示など)。

社内研修・管理職への周知

制度を形骸化させないためには、管理職向けの研修が不可欠です。特に以下の点を徹底します。

  • 育休取得を妨げる言動の禁止(パタハラ・マタハラに該当するNG事例の共有)
  • 計画書を用いた面談の進め方ロールプレイ
  • 代替要員確保・業務分担の調整スキルの習得
  • 育休中の不合理な連絡・呼び出しの禁止

管理職の意識・スキルが、計画書の実効性を大きく左右します。


両立支援等助成金を活用して対応コストを削減する

計画書作成・就業規則改定・研修実施にはコストが伴いますが、国の助成金を活用することで負担を軽減できます。

両立支援等助成金(育児休業等支援コース)の概要

項目 内容
支給対象 育休取得計画書(育休復帰支援プラン)を作成した中小企業
主な要件 ①育休取得予定者との面談実施 ②プラン・計画書の作成 ③育休取得・復職の実現
支給額(目安) 育休取得時:30万円 / 職場復帰時:30万円(1人あたり、初回)
申請窓口 都道府県労働局 雇用環境・均等部
申請タイミング 育休取得後・復職後それぞれに申請(各要件達成から2ヶ月以内)

注意点:助成金は予算の範囲内での支給となるため、申請は早期に行うことを推奨します。また、支給要件・金額は年度により変更になる場合があるため、最新情報は厚生労働省公式サイトまたは都道府県労働局に確認してください。

申請に必要な主な書類

  • 育休取得計画書(育休復帰支援プラン)のコピー
  • 面談記録(実施日・内容・参加者を記載)
  • 就業規則(育児・介護休業規程)のコピー
  • 育休取得・復職を証明する書類(出勤簿、労働条件通知書 等)
  • 申請様式(厚生労働省指定様式)

違反した場合のペナルティと行政指導の流れ

2026年4月以降、育休取得計画書の作成義務に違反した場合、どのような措置が取られるのでしょうか。

育児・介護休業法に基づく行政対応は、以下の流れで進みます。

  1. 都道府県労働局からの報告徴収・助言・指導(第56条)
  2. 勧告(助言・指導に従わない場合)
  3. 企業名の公表(勧告に従わない場合。第56条の2)

過料や罰則の直接適用はありませんが、企業名の公表は採用活動・ブランドイメージへの深刻な打撃となります。特にSNS時代においては、公表情報が瞬時に拡散されるリスクがあります。

また、育休取得を理由とした不利益取り扱い(降格・解雇・雇止め等)は、育介法第10条違反として厳しく規制されており、こちらは損害賠償請求の対象となり得ます。


よくある質問

Q1. 計画書の様式は厚生労働省の書式を使わなければなりませんか?

厚生労働省が提供する様式はあくまで参考例(雛形)です。記載必須項目を満たしていれば、自社で独自に作成した様式を使用することができます。ただし、厚生労働省の雛形は法的要件を網羅しているため、特段の事情がなければベースとして活用することをお勧めします。

Q2. 労働者が育休取得計画書への署名を拒否した場合はどうすればよいですか?

計画書は「労使の合意書」ではなく、企業が「作成・交付する」性質の書類です。労働者の署名は記録として推奨されますが、法的に必須ではありません。拒否があった場合は、その旨を記録した上で、企業側が作成した計画書を交付することで対応可能です。ただし、拒否の背景に職場環境の問題がないか確認することも重要です。

Q3. 育休取得計画書は産休(産前産後休業)の期間も含めて作成しますか?

産前産後休業(産休)は育児休業とは別の制度です。計画書は育児休業の期間を対象に作成します。ただし、実務上は産休終了後に育休が始まる流れで計画を立てるため、産休期間も含めたスケジュール全体を面談で確認しておくことが、引き継ぎや復職計画の精度を高めます。

Q4. 男性社員が育休を取らないと言っている場合も計画書が必要ですか?

労働者本人が育休取得しない意向を明示している場合は、計画書の作成義務は発生しません。ただし、意向確認を行った事実と結果は必ず記録として残す必要があります。また、上司・同僚からの圧力によって「取らない」と言わざるを得ない状況(パタハラ)でないか、企業は積極的に確認する責任があります。

Q5. 派遣社員の育休取得計画書は派遣元と派遣先のどちらが作成しますか?

育児・介護休業法上の雇用主は派遣元企業です。したがって、計画書の作成義務は派遣元が負います。ただし、派遣先での業務内容・引き継ぎに関しては派遣先の協力が不可欠なため、派遣元・派遣先が連携して計画書の内容を検討することが実務上求められます。


まとめ:2026年4月の完全義務化に向けた今すぐの行動リスト

育休取得計画書の義務化は、単なるペーパーワークの追加ではありません。「計画書を作るプロセス」自体が、職場の育児支援文化を育てる機会です。

対応を急ぐ人事担当者のために、今すぐ取り組むべきアクションを整理します。

  • 【今月中】 自社の従業員数・雇用形態を確認し、義務化対象か判定する
  • 【今月中】 育休取得計画書の様式(厚生労働省の雛形)を入手・カスタマイズする
  • 【1〜2ヶ月以内】 就業規則(育児・介護休業規程)の改定原案を作成し、労働基準監督署へ届出準備を進める
  • 【2〜3ヶ月以内】 管理職向け研修を実施し、面談スキルと制度理解を高める
  • 【随時】 育休対象者が発生したらSTEP 1〜5のフローを速やかに実行する
  • 【随時】 両立支援等助成金の申請要件を確認し、積極的に活用する

2025年4月から2026年3月は「努力義務」の猶予期間ですが、この間に仕組みを整えた企業とそうでない企業では、2026年4月以降に大きな差が生まれます。育休が当たり前に取れる職場環境は、優秀な人材の採用・定着にも直結する経営戦略です。ぜひ本記事を参考に、実効性のある取り組みを進めてください。


本記事は2025年4月時点の法令・省令に基づいて作成しています。制度の詳細・最新情報は厚生労働省公式サイト(https://www.mhlw.go.jp/)または都道府県労働局にご確認ください。

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