男性育休の促進施策【2025年改正】企業義務と手続きを徹底解説

育休法改正

2025年4月、育児・介護休業法の改正が施行され、男性育休に関する企業義務と取得制度が大きく変わりました。「制度はあるけれど取りにくい」という現場の声に応えるべく、分割取得の拡大・個別周知義務の強化・給付金の充実など、実効性のある施策が一気に整備されています。

本記事では、育休取得を検討している男性労働者と、制度整備を急ぐ人事担当者の双方に向けて、改正ポイント・申請手続き必要書類・給付金計算までをすべて網羅して解説します。



1. 男性育休の取得率が低い理由と2025年改正が必要とされた背景

男性育休取得率の現状(最新データ)

厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」によると、男性の育児休業取得率は30.1%(2023年度)で、前年の17.1%から大幅に上昇しました。一見すると改善が進んでいるように見えますが、実態をよく確認すると課題が残っています。

指標 数値
男性育休取得率(2023年度) 30.1%
女性育休取得率(2023年度) 80.2%
男性の平均取得日数 約46.5日(中央値はさらに短い)
取得日数5日未満の割合 約28%

取得率は上昇しているものの、取得日数が5日未満の「形だけの育休」が約3割を占めます。政府は2025年までに男性育休取得率「50%」、2030年までに「85%」という数値目標を掲げており、実効性のある取得を促すための法改正が不可欠となりました。


取得を阻む3つの壁(収入・職場・制度理解)

男性育休が普及しない根本的な原因は、次の3つに集約されます。

壁①:収入減少の不安

育児休業給付金は、休業開始から180日間は休業前賃金の67%、181日目以降は50%が支給されます。社会保険料免除を加味すると手取りベースでは約80%前後をカバーできますが、住宅ローンや子育て費用を抱える家庭には、依然として「収入が減る」という心理的ハードルが残ります。

壁②:職場の空気感(職場風土)

「自分が休むと同僚に迷惑がかかる」「上司が育休を取らせてくれる雰囲気ではない」——こうしたインフォーマルな圧力(パタニティ・ハラスメント)が取得を妨げています。育休を申し出たことで不利益な扱いを受けるケースも報告されており、法改正によって企業側への義務強化が急務となりました。

壁③:制度理解の不足

「産後パパ育休って何?」「分割できるって聞いたけど詳しくは知らない」——制度の存在自体を知らない労働者も少なくありません。企業が制度の内容を個別に伝えない限り、自ら調べる労働者はごく一部に限られます。個別周知の義務化はこの課題に直接対応する施策です。


2. 2025年4月施行|育児・介護休業法の主要改正ポイント一覧

2025年4月1日施行の改正内容を一覧で確認しましょう。

改正項目 改正前 改正後(2025年4月〜)
育休の分割取得回数 2回まで 最大4回まで
出生時育児休業(産後パパ育休) 2回まで分割 柔軟な取得パターンに拡充
企業の個別周知・意思確認 努力義務 法的義務(義務化)
社会保険料免除 月末時点で休業している月 対象期間の拡充
育児休業給付金の受給要件 雇用保険加入12ヶ月以上 条件の見直し(一部緩和)
職場環境整備 努力義務 措置の実施が義務

法的根拠: 育児・介護休業法第5条(育児休業)・第9条の2(出生時育児休業)、雇用保険法第61条の4(育児休業給付金)


分割取得が最大4回に拡大——柔軟な休業パターンの活用法

2025年4月の改正により、育児休業は最大4回に分割して取得できるようになりました(産後パパ育休の2回分を含む)。これまでは2回の分割取得が上限でしたが、より細かな時間単位での取得が可能になり、職場への負担分散と育児参加を両立させやすくなっています。

分割取得の活用スケジュール例

【4回分割の活用イメージ】

子の誕生
  │
  ├─▶ 第1回(産後パパ育休①):出生直後〜2週間
  │     ✔ 出産直後のサポート・手続き対応
  │
  ├─▶ 第2回(産後パパ育休②):1ヶ月健診の前後・2週間
  │     ✔ 配偶者の産後ケア・育児ルーティンの確立
  │
  ├─▶ 第3回(育児休業①):3〜4ヶ月頃・1ヶ月程度
  │     ✔ 育児の主担当を経験・復職前準備
  │
  └─▶ 第4回(育児休業②):保育園入園直前・2〜4週間
        ✔ 慣らし保育・環境変化への対応

分割取得の最大のメリットは、職場への影響を分散させながら、子どもの成長に合わせた育休設計が可能になる点です。一度に長期取得が難しい職場環境でも、「短期×複数回」という形で実質的な育児参加ができます。


出生時育児休業(産後パパ育休)の拡充内容

出生時育児休業(産後パパ育休)は、2022年10月に新設された制度で、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日間)取得できる制度です。2025年改正では、取得パターンがさらに柔軟になりました。

項目 内容
取得可能期間 子の出生後8週間以内
最大取得日数 28日間(4週間)
分割取得 2回まで分割可(事前に申し出が必要)
申し出期限 原則2週間前まで(労使協定で1週間前まで短縮可)
休業中の就業 労使協定がある場合に限り一部就業可能

⚠️ 通常の育児休業(最大2回)と産後パパ育休(最大2回)は別制度のため、合計最大4回の分割取得が可能となります。


企業への個別周知・意思確認の義務化(重要)

2025年改正で最も実務インパクトが大きいのが、個別周知・意思確認の「義務化」です。これまでは努力義務でしたが、法的な強制力を持つようになりました。違反が認められた場合、厚生労働大臣による指導・改善勧告を受ける可能性があります。

企業が行うべき周知事項(書面等で必須)

  1. 育児休業・産後パパ育休の制度内容
  2. 育児休業給付金に関する情報
  3. 社会保険料免除の仕組み
  4. 育休申請に必要な書類・手続き
  5. 育休中・育休後の待遇(賃金・評価など)

意思確認のポイント

  • 「申請するかどうか」を確認するのであって、「申請させる」のではありません
  • 労働者が「取得しない」と意思表示した場合、それを尊重する必要があります
  • 意思確認の結果は3年間保存が必要です
【意思確認の流れ(企業担当者用)】

妊娠・出産の報告を受ける
       ↓
書面等で制度を個別周知する
(出産予定日の1ヶ月前までが目安)
       ↓
取得意向を確認する(書面・メール等)
       ↓
「取得する」→ 取得日程・期間の調整へ
「取得しない」→ 意思を記録・保存する
       ↓
記録を3年間保管する

3. 対象者別 育休取得の要件チェックリスト

正規雇用労働者の要件

✅ 同一の事業主に引き続き雇用されている
✅ 育児休業を開始しようとする日前1年間に
   雇用保険に加入していた期間が通算11日以上ある
✅ 子が1歳6ヶ月に達する日までの間に
   労働契約が満了することが明らかでない

有期雇用労働者の要件(2021年改正で要件緩和済み)

✅ 同一の事業主に引き続き1年以上雇用されている
   ※2022年4月以降は「1年以上の雇用実績」要件も
    労使協定がない限り原則撤廃
✅ 週20時間以上の勤務実績がある
✅ 子の1歳の誕生日以降も雇用継続が見込まれる
✅ 子の2歳の誕生日の前々日までに労働契約が
   満了することが明らかでない

産後パパ育休の対象者

✅ 配偶者(事実婚・同性パートナー含む)が出産した男性
✅ 申し出時点で雇用されていること
   ※育児休業のような「1年以上の雇用実績」は不要
✅ 有期雇用の場合:子の出生日から8週間後の翌日から
   6ヶ月を経過する日までに労働契約が満了しないこと

4. 申請手続きの全ステップ(企業・労働者別に解説)

企業側が行う手続き(STEP 1〜3)

STEP 1:個別周知の実施(義務)

妊娠・出産の報告を受けたら、遅滞なく書面等で制度を周知します。2025年改正により、口頭のみでの説明は法的に認められなくなりました。

周知方法 可否
書面の交付 ✅ 可(推奨)
電子メール送付 ✅ 可
FAX送付 ✅ 可
口頭のみ ❌ 不可(2025年改正より)

STEP 2:意思確認の実施(義務)

制度周知後、育休取得の意思を確認します。出産予定日の1ヶ月前を目安に完了させることが推奨されます。書面またはメール等で「取得する」「取得しない」の両方の選択肢を提示し、労働者の選択を記録します。

STEP 3:取得する場合の社内手続き調整

取得意向を確認したら、以下を調整します。

  • 業務の引き継ぎ計画の策定
  • 代替要員の手配または業務分担の見直し
  • 休業期間中の連絡体制の確認(本人の同意が必要)
  • ハローワークへの「育児休業給付金支給申請」の準備

労働者側が行う手続き(STEP 1〜4)

STEP 1:育休取得の申し出

種別 申し出期限
通常の育児休業 休業開始希望日の1ヶ月前まで
産後パパ育休 休業開始希望日の2週間前まで(労使協定で1週間前に短縮可)
緊急の場合 出産予定日より早く生まれた場合など、柔軟に対応

申し出方法: 書面(社内所定の育児休業申出書)またはメール等の電磁的方法

STEP 2:必要書類の準備と提出

書類名 入手先 備考
育児休業申出書 勤務先(人事部門) 会社所定の様式
出生を確認できる書類 役所・病院 母子手帳、出生届の写しなど
育児休業給付受給資格確認票 ハローワーク(企業経由) 企業がハローワークに提出
雇用保険被保険者証 企業または本人保管 給付申請に必要

STEP 3:ハローワークへの給付金申請(企業経由)

育児休業給付金の申請は、原則として企業がハローワークに代理申請します。申請タイミングは以下の通りです。

【申請タイムライン】

育休開始
  │
  ├─▶ 育休開始から2週間後:
  │   「育児休業給付受給資格確認票」を企業がハロワへ提出
  │
  ├─▶ 支給単位期間ごと(2ヶ月ごと):
  │   「育児休業給付金支給申請書」を企業がハロワへ提出
  │
  └─▶ ハローワーク審査後に労働者の口座へ振込

STEP 4:育休終了後の職場復帰手続き

  • 復職予定日の1ヶ月前までに企業へ復職予定を通知
  • 育休終了後は「育児のための所定労働時間の短縮措置(育児短時間勤務)」の利用も検討可能

5. 育児休業給付金の計算方法と受取スケジュール

給付金の計算式

育児休業給付金は雇用保険から支給されます。計算の基となるのは「休業開始時賃金日額」です。

【給付金額の計算式】

休業開始時賃金日額
= 育休開始前6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180日

給付金額(180日まで)
= 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%

給付金額(181日目以降)
= 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

計算例(モデルケース)

ケース 月収 育休期間 月額給付金(概算)
Aさん(月収30万円) 300,000円 〜180日 約201,000円/月
Aさん(月収30万円) 300,000円 181日〜 約150,000円/月
Bさん(月収50万円) 500,000円 〜180日 約335,000円/月(上限あり)

⚠️ 上限額: 2025年現在、賃金日額の上限は15,190円(変動あり)。高収入者は実際の賃金の67%より少なくなる場合があります。最新の上限額はハローワークで確認してください。

「手取り約8割」のカラクリ

育休中は社会保険料が免除されるため、給付金67%+保険料免除分を合算すると、実質的な手取りは休業前の約80%前後を確保できます。

給付金 67% + 社会保険料免除(約15%分) ≒ 実質 約80%の収入維持

6. 社会保険料免除の仕組みと2025年の拡充ポイント

免除の基本ルール

育児休業中は、健康保険料・厚生年金保険料の本人負担分と会社負担分の両方が免除されます(雇用保険料は免除なし)。

免除される保険料 免除されない保険料
健康保険料 雇用保険料
厚生年金保険料 住民税(翌年に課税)
介護保険料(40歳以上) 所得税

2025年改正による免除対象の拡充

改正前は「月末時点で育休を取得している月」が免除対象でしたが、2025年改正により、月途中の取得であっても一定の条件を満たせば免除対象に含まれるケースが拡大しました。これにより、短期の育休取得でも経済的メリットを受けやすくなっています。

実務上のポイント: 月末にかかる形で育休を取得すると保険料免除の恩恵を受けやすい点は変わりません。取得日程の設計時に担当の社会保険労務士や人事部門に確認することをお勧めします。

厚生年金への影響

育休中の厚生年金保険料は免除されますが、年金受給額への算定は休業前の標準報酬月額が使用されるため、将来の年金額に不利になりません。これも男性育休取得を後押しするポイントです。


7. 企業担当者が今すぐやるべき社内整備チェックリスト

2025年4月以降、義務違反が発覚した場合は厚生労働大臣による指導・公表の対象となります。以下のチェックリストで自社の対応状況を確認してください。

法的義務対応チェック

□ 育休制度の個別周知を「書面等」で実施できる仕組みがある
□ 取得意向を確認する書式・フローが整備されている
□ 意思確認の記録を3年間保存できる管理体制がある
□ 就業規則・育児休業規程が2025年改正に対応している
□ 分割取得(最大4回)に対応したスケジュール管理ができる
□ 産後パパ育休(2週間前申し出)に対応できる業務体制がある
□ 育休中の代替業務の対応方針が明文化されている

職場環境整備チェック(努力義務→義務化)

□ 管理職向けに育休制度の研修・説明を実施している
□ 育休取得者が不利益な評価を受けない人事制度になっている
□ 男性育休取得者の体験談を社内で共有する機会がある
□ 育休取得率を定期的に集計・社内公表している
□ 育休取得の数値目標を設定している(300人超企業は公表義務)

300人超企業の追加義務

常時雇用労働者が300人を超える企業は、男性の育児休業等の取得率または育児目的休暇の取得率を年1回公表する義務があります(育児・介護休業法第22条の2)。自社ウェブサイトや厚生労働省の「両立支援のひろば」への掲載が必要です。


8. よくある質問(FAQ)

男性育休は何日から「育休」としてカウントされますか?

A. 法律上は1日からでも育児休業として申請できます。ただし、育児休業給付金の支給要件は「支給単位期間(原則1ヶ月)に就業日数が10日以下であること」などの条件があるため、短期取得の場合は給付金が受け取れないケースもあります。取得日数は人事部門またはハローワークに確認してください。


産後パパ育休と通常の育児休業は同時に使えますか?

A. 同一期間に重複して使うことはできませんが、産後パパ育休(子の出生後8週間以内・最大4週間)を終了した後に、通常の育児休業を取得することは可能です。2025年改正後は産後パパ育休2回+育児休業2回の合計4回分割取得が可能で、子の状況に合わせた柔軟なプランが組めます。


育休中に仕事の連絡を受けたり、少し働いてもよいですか?

A. 通常の育児休業中は就業が認められていませんが、産後パパ育休中に限り、労使協定が締結されていることを条件に一部就業が可能です。ただし就業日数・時間には上限があり、給付金への影響もあるため、事前に会社・ハローワークに確認が必要です。通常の育児休業中に就業した場合は給付金が減額または不支給となるケースがあります。


育休取得を申し出たら、会社に断られることはありますか?

A. 原則として、育児休業の取得を会社が拒否することは法律上できません(育児・介護休業法第6条)。ただし、有期雇用労働者は継続雇用要件を満たす必要があります。もし取得を不当に妨げられた場合は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談できます。また、育休申請を理由とした不利益な取扱いは「育休ハラスメント(パタハラ)」として法律で禁止されています。


育休期間中も住民税は引き続き支払いが必要ですか?

A. はい、住民税は育児休業中も免除されません。住民税は前年の所得に基づき課税されるため、育休中でも前年分の住民税の支払いが続きます。通常、特別徴収(給与からの天引き)が一時中断され、普通徴収(自分で納付)に切り替わるか、会社が育休復帰後にまとめて徴収する形になります。入社後の対応方法は事前に会社の給与担当者に確認しておくと安心です。


育児休業給付金はいつ振り込まれますか?

A. 支給申請から振込まで通常2〜3週間程度かかります。申請は企業が支給単位期間(2ヶ月ごと)にハローワークへ行うため、休業開始直後すぐには振り込まれません。育休開始後初回の振込は2〜3ヶ月後になることが多いため、育休前に一定の貯蓄を確保しておくことをお勧めします。


配偶者が専業主婦(主夫)でも男性は育休を取れますか?

A. 取れます。育児・介護休業法には「配偶者が育児に従事していない場合は取得不可」という規定はありません。ただし、育休終了後に子を養育する予定がないことが明らかな場合などは例外があります。配偶者が専業主婦であっても、男性が育児に関わることは法的に保護されており、企業は取得を拒否できません。


まとめ|2025年改正で男性育休は「取りやすい時代」へ

2025年4月施行の育児・介護休業法改正によって、男性育休をめぐる環境は大きく変わりました。改正のポイントを改めて整理します。

ポイント 内容
分割取得 最大4回に拡大(産後パパ育休2回+育児休業2回)
企業義務 個別周知・意思確認が完全義務化(書面等必須)
職場環境 環境整備措置の実施が義務に強化
給付金 実質手取り約80%を育休中も確保可能
保険料 健康保険・厚生年金保険料が全額免除

制度の整備だけでなく、職場の文化・管理職の理解・業務体制の見直しが三位一体で進まなければ、男性育休の真の普及は実現しません。企業担当者は今すぐ社内整備を開始し、男性労働者は権利として堂々と育休を申し出られる環境をともに築いていきましょう。


参考法令・資料
– 育児・介護休業法(昭和63年法律第76号)
– 雇用保険法(昭和49年法律第116号)
– 厚生労働省「令和5年度雇用均等基本調査」
– 厚生

タイトルとURLをコピーしました