育休給付金の賃金月額|昇給・減給の反映時期と計算への影響【2026年版】

育休給付金の賃金月額|昇給・減給の反映時期と計算への影響【2026年版】 育休給付金

育休給付金の金額は「賃金月額」をもとに計算されます。この賃金月額は、育休開始前の一定期間の給与をもとに算定されるため、昇給や減給がいつ行われるかによって、受け取れる給付金の総額が大きく変わることがあります。

「育休に入る前に昇給があった場合、給付金に反映されるの?」「育休中に昇給・減給が決まったらどうなる?」——こうした疑問を持つ方のために、この記事では賃金月額の計算方法から昇給・減給の反映タイミング、具体的なシナリオ別のシミュレーションまで、社会保険労務士の監修に基づき詳しく解説します。


育休給付金の「賃金月額」とは?給付額を決める基本の仕組み

賃金月額の計算式と使われる期間(育休開始前6ヶ月)

育児休業給付金(育休給付金)の給付額は、次の計算式で求められます。

賃金月額 × 給付率(67% または 50%)= 1支給単位期間あたりの給付金額

この「賃金月額」とは、育児休業開始日の直前6ヶ月間に支払われた賃金の総額を180で割った額に、30を乗じた額(月換算)を指します。

具体的な計算式は以下のとおりです。

賃金月額 =(育休開始前6ヶ月間の賃金合計) ÷ 180 × 30

ここで重要なポイントがあります。

  • 「賃金」には基本給・通勤手当・住宅手当など毎月支払われる固定的賃金が含まれます
  • 賞与(ボーナス)は原則として算入されません
  • 残業代などの変動賃金は含まれますが、上限額の計算には影響します
  • 「6ヶ月間」とは、育休開始日前の完全な賃金支払期間6ヶ月を指します(詳細は次の章で解説)

雇用保険法上の根拠

賃金月額の算定方法は、雇用保険法第61条および雇用保険法施行規則第121条に規定されています。また、上限・下限額はハローワーク告示(毎年8月1日に改定)によって定められています。


給付金額の上限・下限と賃金月額の連動関係

賃金月額には、上限額・下限額が設けられています(毎年8月1日に改定)。

2025年8月1日改定後の目安(2026年版)

区分 賃金月額 1支給単位期間あたりの給付額(目安)
上限(給付率67%の場合) 約481,800円 約305,407円
下限(共通) 約80,020円 約53,613円(67%)

※上限・下限額は毎年8月に見直されるため、申請時点のハローワーク公表値を必ず確認してください。

給付率は育休開始から180日を境に変わります。

期間 給付率
育休開始から180日目まで 賃金月額の67%
181日目以降 賃金月額の50%

つまり、賃金月額が1万円高くなれば、給付率67%の期間中は月あたり6,700円の給付増につながります。育休期間を1年と仮定すると、180日間(約6ヶ月)だけで約40,200円の差が生まれます。昇給・減給の反映タイミングが「算定期間内か外か」で、こうした金額差が生じるのです。


賃金月額の「算定基準日」はいつ?昇給・減給が反映されるタイミング

算定期間の起算点——育休開始日前の「完全な賃金支払期間」6ヶ月

賃金月額の計算に使われる「6ヶ月」とは、単純にカレンダーで6ヶ月前を指すわけではありません。育児休業開始日前の「完全な賃金支払期間」(賃金締切日から次の締切日までの1期間が完全に含まれる期間)を6ヶ月分さかのぼったものが対象になります。

具体例で理解する算定期間

【例】月末締め・翌月25日払い、育休開始日:2025年4月1日の場合

  • 育休開始日(4月1日)の直前の賃金締切日は3月31日
  • そこから6ヶ月さかのぼると、2024年10月1日〜2025年3月31日の6ヶ月分が算定期間

この6ヶ月間に支払われた賃金(基本給+通勤手当等)の合計が計算の基礎となります。

ポイント:育休開始日が1日ずれるだけで、算定期間がまるごと1ヶ月シフトします。

たとえば育休開始日が4月1日から4月15日に変わると、「完全な賃金支払期間」の6ヶ月はそのまま同じ期間(2024年10月〜2025年3月)が使われます。しかし4月30日に育休を開始した場合は、4月分が新たに算定期間に含まれます。


昇給が算定期間内にある場合:反映される条件と具体例

昇給の賃金月額への反映は、昇給後の給与が算定期間(6ヶ月)の中に含まれているかどうかで決まります。

昇給が算定期間内に反映される例

【例】定期昇給日:2025年4月1日、育休開始日:2025年10月1日(月末締め)

  • 算定期間:2025年4月1日〜2025年9月30日(6ヶ月)
  • 4月1日以降の昇給後の給与が6ヶ月すべてに反映
  • 昇給前月額20万円 → 昇給後月額21万円(+1万円)の場合
支払賃金
4月(4月分) 210,000円
5月(5月分) 210,000円
6月(6月分) 210,000円
7月(7月分) 210,000円
8月(8月分) 210,000円
9月(9月分) 210,000円
合計 1,260,000円

賃金月額 = 1,260,000円 ÷ 180 × 30 = 210,000円

給付金(67%期間)= 210,000円 × 67% = 月額 140,700円

昇給が算定期間の開始時点より前から発効していれば、6ヶ月分すべてに昇給後の賃金が反映されるため、給付金額も最大限に引き上げられます。


昇給が算定期間外(育休開始後)にある場合:給付金には影響しない

一方、昇給のタイミングが育休開始後であれば、その昇給分は賃金月額の算定に一切影響しません。

【例】育休開始日:2025年4月1日、定期昇給日:2025年4月1日(育休開始と同日)

  • 算定期間:2024年10月1日〜2025年3月31日(育休開始前の6ヶ月)
  • 2025年4月1日の昇給は算定期間外 → 給付金の賃金月額には反映されない

このパターンでは、育休中に昇給があっても育休給付金の額は増えません。ただし、育休復帰後の給与には当然反映されますし、育休後に取得する次の育休(第二子など)の給付金算定には影響します。

重要:「育休中に昇給があった=育休給付金も増える」は誤解です。給付金は育休開始前の賃金をもとに確定します。


ケース別解説|昇給・減給のタイミングで給付金はどう変わる?

比較表:昇給・減給タイミングと給付金への影響

ケース 昇給・減給の時期 算定期間への影響 給付金への影響
ケース① 育休開始の算定期間内に昇給 あり(昇給後の賃金が算定に含まれる) 増加する
ケース② 育休開始に昇給 なし 変化なし
ケース③ 育休開始の算定期間内に減給 あり(減給後の賃金が算定に含まれる) 減少する
ケース④ 算定期間の途中に昇給(月によって金額が異なる) あり(昇給前後の賃金が混在する) 一部反映(増加幅は限定的)

ケース①:育休前の算定期間中に昇給→給付金が増加

最もシンプルで有利なパターンです。

【具体例】月末締め、育休開始:2025年10月1日、定期昇給:2025年4月1日

  • 算定期間:2025年4月〜9月の6ヶ月
  • 全期間にわたって昇給後の給与が適用
  • 月給20万円→21万円(+1万円)の場合、賃金月額は21万円

給付金シミュレーション(180日間=約6ヶ月)

項目 昇給前(20万円ベース) 昇給後(21万円ベース) 差額
賃金月額 200,000円 210,000円 +10,000円
月額給付金(67%) 134,000円 140,700円 +6,700円
180日間の合計 約804,000円 約844,200円 +40,200円

育休前の昇給は、給付金にとって非常に有利に働きます。


ケース②:育休開始後に昇給→給付金に影響なし

育休開始と同日または育休中に昇給があっても、育休給付金の賃金月額は変わりません。育休給付金は育休開始時点で賃金月額が確定するためです。

ただし、復帰後の社会保険料(標準報酬月額)には影響します。育休復帰後に月額変更届(随時改定)が発生するかどうかは、健康保険・厚生年金の観点で別途確認が必要です。

注意:育休中の昇給が「さかのぼり昇給」として育休前に遡及適用される場合は、算定期間内の賃金とみなされるケースがあります(次のケースで解説)。


ケース③:育休前の算定期間中に減給→給付金が減少

管理職への昇進に伴う年俸制への移行・裁量労働制への切り替えなど、育休前に給与が下がるケースでは、減給後の賃金が算定期間に含まれ、給付金額も下がります。

【具体例】育休開始:2025年10月1日、管理職昇進による年俸見直し(実質的な月給減):2025年7月1日

  • 算定期間:4月〜9月の6ヶ月
  • 4〜6月:月給25万円(3ヶ月)
  • 7〜9月:月給22万円(3ヶ月、残業代込みでは減少)

この場合、賃金月額は「(25万×3)+(22万×3)= 141万円 ÷ 180 × 30 = 235,000円」と計算されます(純粋に月給のみで計算した場合)。

ポイント:減給が算定期間の後半に集中するほど、給付金への影響は大きくなります。


ケース④:さかのぼり昇給・遡及適用がある場合

労使交渉の長期化などにより、昇給の効力が過去にさかのぼって適用される(遡及昇給)ケースがあります。

このとき、遡及対象期間が算定期間内に含まれる場合は、差額分が支払われた賃金として賃金月額の計算に反映される可能性があります。

ただし、この判断はハローワークによるケースごとの確認が必要であり、遡及昇給の実態(就業規則の規定・実際の支払日・明細の記載内容)を丁寧に説明・提出することが求められます。

遡及昇給がある場合は、事前にハローワークまたは社会保険労務士に相談することを強くおすすめします。


産前産後休業(産休)中の昇給・減給との違い

産休(産前6週間・産後8週間の休業)と育休は、給付金の仕組みが異なります

制度 給付金の名称 算定基礎
産休(出産手当金) 出産手当金(健保給付) 標準報酬日額(月額÷30)の3分の2
育休 育児休業給付金(雇用保険給付) 賃金月額の67%または50%

出産手当金は健康保険の標準報酬月額に基づくため、月額変更届(随時改定)や定時決定(算定基礎届)のタイミングが昇給・減給の反映に影響します。

  • 定期昇給後に4・5・6月の3ヶ月間の報酬が上がれば、9月改定(定時決定)で標準報酬月額が上がり、翌年の出産手当金に有利に働く可能性があります
  • 随時改定(月額変更届)の対象となる固定的賃金変動(昇給・降給)があった場合は、2等級以上の変動があれば標準報酬月額が改定されます

育休給付金と出産手当金では「昇給が反映されるかどうかの判断基準」が異なります。両制度を混同しないよう注意してください。


申請手続きと書類|昇給・減給があった場合の注意点

申請の流れ

育休給付金の申請は原則として事業主(会社)がハローワークへ代理申請します。

ステップ1:育休開始予定日と昇給・減給の時期を整理する
  └→賃金台帳・給与明細で算定期間を特定

ステップ2:賃金月額算定のもとになる給与明細6ヶ月分を準備する
  └→昇給・減給前後が混在する場合は月別明細を全て揃える

ステップ3:育児休業給付金受給資格確認票・申出書を提出(初回のみ)
  └→育休開始から10日以内が目安

ステップ4:支給申請書を2ヶ月ごとにハローワークへ提出
  └→育児休業給付金支給申請書(様式第10号)

ステップ5:支給決定通知書の受領・給付額を確認する
  └→賃金月額・給付率・支給額が明記されている

必要書類一覧

書類名 提出者・備考
育児休業給付金支給申請書(様式第10号) 事業主がハローワーク指定様式で提出
育児休業給付受給資格確認票・申出書 初回のみ。被保険者番号・育休開始日を記載
賃金台帳(直近6ヶ月分) 昇給・減給が算定期間に含まれる場合は必須
給与明細書(直近6ヶ月分) 賃金台帳の補足として求められる場合あり
母子手帳の写し または 出生届受付済証 子の生年月日確認のため
就業規則(昇給規定のページ) 遡及昇給・特殊な給与体系の場合に提出を求められることがある
昇給通知書・辞令 ハローワークから提出を求められた場合

昇給・減給が算定期間にかかる場合は、給与明細だけでなく「昇給辞令」や「就業規則の昇給条項」も準備しておくと審査がスムーズです。


企業の人事担当者が確認すべきポイント

育休取得予定者から昇給・減給の相談を受けた場合、人事担当者は以下の点を確認・案内してください。

  1. 育休開始日はいつか? → 算定期間の起算点が確定する
  2. 定期昇給はいつか? → 算定期間に入るかどうかを確認
  3. 賃金変動の種類は何か? → 固定的賃金(基本給・通勤手当)か、変動賃金(残業代)かで影響の性質が変わる
  4. 遡及昇給・遡及改定はあるか? → ハローワークへの事前確認を推奨
  5. 健康保険の標準報酬月額の改定はあるか? → 月額変更届の要否と出産手当金への影響も同時確認

給付金額を最大化するための実務的な考え方

育休給付金の賃金月額を「有利にする」ために取れる手段は限られていますが、以下の点は事前に確認しておく価値があります。

育休開始日の調整

育休開始日を少し後ろにずらすことで、昇給後の給与が算定期間に多く入るようになります。

【例】昇給日:4月1日、産後8週間後(育休可能開始日):3月末

  • 3月末から育休開始 → 算定期間は昇給前の6ヶ月(給付金は低め)
  • 4月1日から育休開始 → 算定期間に昇給後の4月分が入る(給付金が増える可能性)

ただし、育休開始日は出産後の体調・保育園の都合・パートナーの育休との兼ね合いなど、多様な要素で決まります。給付金額だけで判断するのは難しいケースが多いことを念頭に置いてください。

算定期間を意識した賃金変動の確認

企業によっては毎年4月の定期昇給以外に、10月や1月に中間昇給・役割昇給がある場合があります。自分の給与体系の昇給時期を事前に把握しておくことで、育休給付金の見通しが立てやすくなります。

ハローワークへの事前相談の活用

「自分の場合、昇給はいつから賃金月額に反映されますか?」という疑問は、事前にハローワークや社会保険労務士に相談することで個別に確認できます。計算結果に不安がある場合は、申請前の段階で窓口に出向いて相談することをおすすめします。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休前に昇給があったのに、給付金の通知書の金額が低い。なぜ?

昇給があっても、その昇給後の給与が算定期間(育休開始前6ヶ月の完全な賃金支払期間)に含まれていない場合は、給付金額に反映されません。育休開始日のタイミングによっては、昇給日が算定期間の外になることがあります。まず支給決定通知書に記載された「賃金月額」と算定期間を確認し、疑問があればハローワークに問い合わせてください。


Q2. 産休中に昇給があった場合、育休給付金に影響しますか?

育児休業給付金の賃金月額は「育休開始前」の賃金をもとに計算します。産休中の昇給が育休開始前に実際に支払われていれば、育休開始前の算定期間に含まれる可能性があります。ただし、産休中は欠勤や無給になる場合があり、「完全な賃金支払期間」の判定が複雑になるケースもあるため、個別にハローワークへ確認することをおすすめします。


Q3. 育休中に管理職に昇進し、基本給が下がった(年俸制に変更)。育休給付金は変わりますか?

育休開始後の賃金変動は、現在進行中の育休給付金の賃金月額には影響しません。給付金はすでに確定した賃金月額をもとに計算されるためです。ただし、次の育休(第二子以降)を取得する際の賃金月額は、次の育休開始前の給与が算定基礎となるため、その時点での月給が低ければ給付金も低くなります。


Q4. 育休中に会社全体で賃金カットがあった場合は?

育休中の賃金カット(固定的賃金の変動)も、現在受給中の育休給付金には影響しません。育休給付金は育休開始時点の賃金月額で固定されているためです。なお、育休中の賃金カットについては、育休を理由とした不利益取扱いの禁止(育児・介護休業法第10条)に抵触しないか確認が必要です。


Q5. 遡及昇給があった場合、ハローワークへの申告は必要ですか?

遡及昇給が算定期間に及ぶ場合は、賃金月額の再計算が必要になる可能性があります。この場合、事業主はハローワークへ申告・修正申請が必要になることがあります。遡及昇給の差額が支払われた時点で、速やかに担当者(事業主側)がハローワークへ相談・申告することを推奨します。放置すると、不正受給と判断されるリスクがあります。


Q6. 育休給付金の賃金月額の計算期間に「給与ゼロの月」がある場合はどうなりますか?

算定期間中に賃金が支払われていない月(完全欠勤・無給月)がある場合、その月は算定から除外され、より以前の賃金支払期間にさかのぼって6ヶ月を計算します。これは産前休業中や病気・怪我による休職が算定期間にかかる場合に多く発生します。除外の要件はハローワークの判断によるため、該当する場合は申請前に確認してください。


まとめ

育休給付金の賃金月額と昇給・減給の関係を整理すると、次のとおりです。

状況 給付金への影響
算定期間(育休開始前6ヶ月)内に昇給 反映される(増加する)
育休開始後に昇給 反映されない
算定期間内に減給 反映される(減少する)
遡及昇給で算定期間内が対象 要ハローワーク確認
産休中の昇給 算定期間との重複次第

給付金額を正確に把握するには、自分の育休開始日と給与体系の昇給時期を照らし合わせることが最初のステップです。「算定期間はいつからいつか」「昇給はその中に入っているか」——この2点を確認するだけで、給付金の見通しが大きく変わります。

手続きに不安がある方は、ハローワークや社会保険労務士への事前相談を積極的に活用してください。正確な申請が、受け取れる給付金を最大化する最善の方法です。


【免責事項】 本記事は2026年版として作成していますが、給付金の上限・下限額・給付率は毎年改定される場合があります。最新情報は必ずハローワーク公式サイトまたは管轄のハローワーク窓口でご確認ください。

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