育休給付金の対象外手当リスト完全版|判定基準と計算例

育休給付金の対象外手当リスト完全版|判定基準と計算例 育休給付金

育休給付金の申請準備をしているとき、「自分の月収はいくらとして計算されるのか?」と疑問を持つ方は多いでしょう。給与明細にはさまざまな手当が並んでいますが、育休給付金の計算ベースとなる「賃金月額」には、含まれない手当が複数存在します

この対象外手当を見落としていると、給付額の見込みが大幅にずれてしまいます。本記事では、雇用保険法の法的根拠にもとづき、対象外手当を種類別に網羅的に整理し、判定基準・計算例・よくある疑問点まで徹底解説します。


育休給付金の「賃金月額」とは何か?計算の前提を整理する

育休給付金の支給額を理解するうえで、まず押さえなければならないのが「賃金月額」の概念です。多くの人が「月給=賃金月額」と思いがちですが、法律上の定義は異なります。

育休給付金の根拠法令は雇用保険法第61条の4(育児休業給付金)です。この条文では、給付金の算定基礎として「休業開始時賃金日額」を用いることが定められており、その計算に使う「賃金月額」の範囲が重要になります。

賃金月額とは、育休開始前6か月間に支払われた賃金の合計額を180で除した金額(日額)をもとに算出する指標です。ここで「賃金の合計額に何を含めるか」が、給付額に直結する重大なポイントとなります。


賃金月額の計算式と上限・下限(2025年度版)

賃金月額の計算式と基本構造は次のとおりです。

休業開始時賃金日額 = 育休前6か月の賃金合計 ÷ 180日
賃金月額(月ベース換算)= 休業開始時賃金日額 × 30日

2025年度(令和7年度)時点の上限額・下限額は以下のとおりです(毎年8月1日前後に改定)。

項目 金額(月額ベース)
賃金月額の上限 約450,600円(参考:日額15,020円×30日)
賃金月額の下限 約73,290円(参考:日額2,443円×30日)
給付上限(67%適用時) 約301,902円/月
給付上限(50%適用時) 約225,300円/月

⚠️ 上限・下限額は毎月勤労統計調査(毎勤統計)の結果を受けて毎年改定されます。申請前には必ずハローワークまたは厚生労働省の最新情報を確認してください。

計算例:月給30万円の場合

賃金月額:300,000円
67%給付:300,000円 × 67% = 201,000円/月
50%給付:300,000円 × 50% = 150,000円/月

この「月給30万円」に何を含めるかによって、実際の給付額は大きく変わります。対象外手当を除く前後で数万円の差が生じるケースも珍しくありません。


給付率50%と67%の切り替え条件も確認

育休給付金には、育休開始からの期間によって給付率が異なるルールがあります。

育休取得期間 給付率
育休開始〜180日目まで 賃金月額の67%
181日目以降 賃金月額の50%

また、2025年4月施行の法改正により、「育休取得促進給付」として一定条件を満たす場合に給付率が実質的に80%程度に引き上げられる措置が導入されました(社会保険料免除と組み合わせた実質給付率の向上)。

手当の有無が給付額に与える影響(試算例)

住宅手当3万円が賃金月額に含まれるかどうかで、次のような差が生じます。

【含まれる場合】
賃金月額:300,000円 → 67%給付:201,000円

【含まれない場合】
賃金月額:270,000円 → 67%給付:180,900円

差額:20,100円/月
6か月(180日間)で:20,100円 × 6 = 120,600円の差

この差は、育休期間が長くなるほど累積的に大きくなります。手当の判定は、決して小さな問題ではありません。


【絶対対象外】賃金月額に含まれない手当一覧(Aランク)

法令上、支給内容に関わらず無条件で賃金月額から除外される手当があります。これらは「臨時性」や「非労務対価性」を持つものとして、雇用保険法の規定・厚生労働省の支給要領によって明確に除外されています。

手当・給与の種類 除外理由 判定基準
賞与・ボーナス 通常の賃金ではなく特別支給 年1回以上の臨時的支給
退職金 雇用終了時の一時的給付 勤続年数に基づく一時金
結婚祝い金 福利厚生的な特別支給 臨時・不定期支給
出産祝い金 福利厚生的な特別支給 臨時・不定期支給
慶弔見舞金(一般) 相互扶助的性質 臨時・不定期支給
災害見舞金 相互扶助的性質 臨時・不定期支給
遺族見舞金 相互扶助的性質 臨時・不定期支給
特別褒賞・報奨金 業績報酬的な臨時支給 臨時的・不定期支給

賞与・ボーナスが対象外になる理由と注意点

賞与が賃金月額に含まれない最大の理由は、「毎月1回以上、定期的に支払われる賃金」という雇用保険法上の要件を満たさないからです。

雇用保険法では、給付基礎日額の算定ベースとなる賃金は「毎月勤労の対償として支払われるもの」に限定されています。年1〜2回支給の賞与は、この定義から外れます。

注意点①:年4回以上支給の賞与は要確認
「年4回以上」支給される賞与については、社会保険(健康保険・厚生年金)の標準報酬月額に算入される場合があります(健康保険法第3条)。ただし、育休給付金の賃金月額算定には含まれません。制度によってルールが異なる点に注意が必要です。

注意点②:賞与月に育休を開始した場合
育休開始月に賞与が支給されている場合でも、その賞与は賃金月額の計算から除外されます。ただし、賞与月の基本給など通常賃金は含まれます。


退職金が含まれないのは当然?みなし賃金との違い

退職金は「雇用契約終了時に支払われる一時金」であり、育休期間中の労務提供に対する対価ではありません。そのため、賃金月額から除外されることは法的に明確です。

一方、「みなし賃金」については注意が必要です。たとえば、裁量労働制のもとで「一定の残業代をみなしで含む」と定められている場合、その部分は通常の賃金として賃金月額に含まれます


【条件次第で対象外】実費弁償型手当の判定基準(Bランク)

最も判断が難しいのが、支給方法によって含まれるかどうかが変わる「条件付き対象外」の手当です。核心となる判定軸は「実費弁償か、それとも定額・一律支給か」です。

判定の基本ルール

【実費弁償型】→ 賃金月額に含まれない
   実際にかかった費用を補填するもの
   例:領収書を提出して支給される交通費

【定額・一律支給型】→ 賃金月額に含まれる
   費用の多寡に関わらず一定額が支給されるもの
   例:全員一律で毎月2万円支給される住宅手当
手当の種類 含まれない条件 含まれる条件
通勤手当・交通費 実費精算(領収書提出ベース) 定額支給・上限額設定の一律支給
住宅手当 実際の家賃・社宅費の実費補填 一律定額支給(全員2万円など)
食事代・食堂補助 実費弁償(利用分だけ精算) 定額補助・一律割引支給
出張手当(日当) 実費弁償の旅費・宿泊費 固定日当(出張1日3,000円など)
接待費・交際費 実費精算(領収書提出) 該当なし(原則実費)
研修費・教育費 受講料等の実費弁償 該当なし(原則実費)
医療費補助 実際の医療費の実費補填 福利厚生的な定額補助

通勤手当の判定:最も論点になりやすい手当

通勤手当は、最も判定に迷う手当の代表格です。

実費弁償として除外されるケース
– 定期代を実費で精算し、毎月金額が変わる
– 電車・バスの領収書を提出して支払われる

賃金月額に含まれるケース
– 交通費の実額にかかわらず「月2万円」と就業規則で固定されている
– マイカー通勤の場合に距離に関わらず「一律5,000円」支給される

実務上のポイント:就業規則や給与規程の「通勤手当」の定義文言を確認してください。「実費を支給する」と書かれていれば除外、「○○円を支給する」と固定額が書かれていれば含まれる可能性が高くなります。


住宅手当の判定:「一律支給」かどうかがカギ

住宅手当については、厚生労働省の行政解釈上、以下のように区分されています。

支給形態 賃金月額への算入
家賃の一部を補助する形で全員一律に支給 含まれる(算入)
社宅費・家賃の実額を会社が負担(実費弁償) 含まれない(除外)
賃貸住まいのみを対象に実費連動で支給 含まれない(除外)

たとえば「持ち家・賃貸問わず月2万円支給」のような住宅手当は、実費弁償ではなく賃金の一部とみなされ、賃金月額に含まれます。


出張手当の判定:実費精算か固定日当か

出張に関連する費用は2種類に分けて考える必要があります。

  • 交通費・宿泊費(実費精算):賃金月額に含まれない
  • 固定日当(例:出張1日につき2,000円):賃金月額に含まれる可能性あり

固定日当は「労務の対価」として支払われる性格を帯びるため、毎月定期的に発生している場合は賃金月額に算入されます。


対象外手当の判定フローチャート

自分の手当が含まれるかどうかを確認するための判定フローを示します。

【STEP1】その手当は毎月定期的に支払われているか?
     ↓ いいえ → 【除外】臨時的支給(賞与・慶弔金など)
     ↓ はい  → STEP2へ

【STEP2】その手当は実際にかかった費用の補填か?
     ↓ はい  → 【除外】実費弁償(実費通勤費・宿泊費など)
     ↓ いいえ → STEP3へ

【STEP3】その手当は金額が固定・一律か?
     ↓ はい  → 【含まれる】定額支給型(住宅手当・固定日当など)
     ↓ いいえ → 個別にハローワークへ確認を推奨

賃金月額に含まれる手当(対象内:Cランク)

対象外手当を理解するうえで、「何が含まれるのか」も正確に把握しておく必要があります。

手当・給与の種類 算入理由
基本給 労務の対価の中核
時間外手当(残業代) 実労働時間に対する対価
深夜勤務手当 実労働に基づく割増賃金
休日出勤手当 実労働に基づく割増賃金
職務手当・役職手当 職務・役職に対する定期的対価
一律定額の住宅手当 実費弁償でなく賃金の一部
一律定額の家族手当 毎月定期的に支払われる賃金
技能手当・資格手当 職務能力に対する定期的対価
地域手当・勤務地手当 勤務地に応じた定期的対価
みなし残業代(固定残業代) 毎月固定的に支払われる賃金

重要:残業代(時間外手当)は算入されますが、育休前6か月の実績に基づく金額が対象です。育休期間中の残業代は当然ゼロになりますが、過去6か月分の実績残業代が賃金月額の計算に反映されます。


計算例:手当の有無で給付額がどう変わるか

実際の給与明細を想定した計算例で、手当の算入・除外が給付額に与える影響を確認しましょう。

モデルケース:Aさん(育休前月給明細)

項目 金額 賃金月額算入
基本給 250,000円
役職手当 20,000円
時間外手当(残業代) 15,000円
通勤手当(定期代実費) 12,000円
住宅手当(一律定額) 20,000円
賞与(月割分) 50,000円
慶弔見舞金 10,000円
合計(月給明細上) 377,000円

賃金月額の計算

算入対象:250,000 + 20,000 + 15,000 + 20,000 = 305,000円
除外分  :12,000 + 50,000 + 10,000 = 72,000円

賃金月額:305,000円

育休給付金の試算

育休開始〜6か月(67%給付):305,000円 × 67% ≒ 204,350円/月
育休7か月目以降(50%給付):305,000円 × 50% = 152,500円/月

もし通勤手当が「定額支給(毎月12,000円固定)」であれば算入対象となり、月額317,000円をベースに計算されます(給付額は67%で約212,390円)。同じ手当でも支給方法によって給付額が変わることがわかります。


申請時の注意点と手続きの流れ

ハローワークへの申請で確認すべき書類

賃金月額の算定に疑問がある場合は、ハローワーク(公共職業安定所)への事前相談が有効です。申請時には以下の書類が必要になります。

書類名 確認ポイント
雇用保険被保険者証 被保険者番号の確認
育児休業給付金支給申請書 事業主が記載・捺印
賃金台帳(直近6か月分) 手当の項目・金額の確認
出勤簿・タイムカード 労働実績の証明
母子手帳(出生届出済証明) 子どもの生年月日の確認
育児休業取得通知書 事業主から交付された書類

手当の判定に迷ったときの相談先

  1. 勤務先の人事・総務担当者:就業規則・給与規程で支給方法を確認
  2. ハローワーク(管轄窓口):個別の手当が算入対象かどうかを確認
  3. 社会保険労務士(社労士):複雑なケースは専門家への相談を推奨

法改正2025年の影響と今後の動向

2025年(令和7年)の育児・介護休業法改正および雇用保険法改正により、以下の点が変更・拡充されました。

主な変更点

変更項目 内容
出生後休業支援給付 育休取得促進のため、手取り収入の実質80%水準を目指す新給付が導入
育休取得の申出義務 企業規模に応じた育休取得状況の公表義務が拡充
賃金月額の算定方法 基本的な算定方法に変更なし(手当の判定基準は継続)

法改正により給付額の計算に関する詳細は変更される可能性があります。最新情報は厚生労働省公式サイトまたは管轄ハローワークでご確認ください。


よくある質問(FAQ)

固定残業代(みなし残業代)は賃金月額に含まれますか?

A. 含まれます。固定残業代は「毎月定期的に支払われる賃金」として算入対象です。ただし、実際の残業時間が固定残業代の時間数を超えていた場合に追加支給されている差額分も、6か月の実績として含まれます。

育休前6か月のうち、欠勤があった月はどう計算されますか?

A. 賃金月額の計算は「休業前6か月の賃金合計÷180」で行われます。欠勤控除がある月も含め6か月分の実際の支給額を合計して計算します。欠勤が多い場合、実際の給付額が低くなる可能性があります。

通勤手当が「上限2万円まで実費支給」の場合はどちらに該当しますか?

A. 「実費支給(実際にかかった交通費を支給)」であれば、上限額が設定されていても実費弁償型と判断され、賃金月額に含まれない方向で解釈されます。ただし、実態として毎月ほぼ同額が支給されているケースはグレーゾーンとなるため、ハローワークへの確認を推奨します。

住宅手当が「賃貸のみ対象・家賃の50%を補助」の場合は?

A. 賃貸住まいであることを条件に、実際の家賃額に連動して支給される場合は「実費弁償的性格」として除外される可能性があります。一方、「賃貸者に一律3万円支給」のような形であれば定額支給として算入対象となります。具体的な規程内容と支給実態をハローワークに提示して確認することをお勧めします。

育休前に賞与をもらった場合、給付額は増えますか?

A. 増えません。賞与は育休給付金の賃金月額から除外されるため、賞与の多寡は給付額に影響しません。ただし、社会保険(健康保険・厚生年金)の標準報酬月額の計算では、年4回以上支給の賞与は算入されることがあるため、制度ごとにルールが異なる点に注意してください。

申請後に手当の判定が誤っていたと気づいた場合は?

A. ハローワークに申し出ることで、支給決定の変更・修正が可能な場合があります。ただし、時効(2年)を超えた分は修正が困難になるため、早めの確認・申し出が重要です。誤って少なく計算されていた場合は差額の追給を求めることができます。

パートタイム・短時間労働者でも同じ判定基準が適用されますか?

A. 基本的には同じ判定基準が適用されます。雇用保険の被保険者であれば、勤務形態に関わらず同じルールで賃金月額が算定されます。ただし、週の所定労働時間が短い場合、6か月間の賃金合計額が少なくなるため、給付額の絶対額は小さくなります。


まとめ:対象外手当を正確に把握して給付額を正しく見積もろう

育休給付金の賃金月額に含まれない手当は、大きく以下の3つに分類できます。

  1. 絶対対象外(Aランク):賞与・退職金・慶弔見舞金など「臨時性・非労務対価性」を持つもの
  2. 条件付き対象外(Bランク):通勤手当・住宅手当・出張手当など「実費弁償か定額支給か」で判定が分かれるもの
  3. 対象内(Cランク):基本給・残業代・役職手当・一律定額の各種手当

判定の基本軸は「毎月定期的に支払われる労務の対価かどうか」と「実費弁償か定額支給か」の2点です。

自分の給与明細を手元に置き、各手当の支給根拠(就業規則・給与規程)を確認したうえで、不明な場合はハローワークや社会保険労務士に相談することを強くお勧めします。育休中の家計計画を正確に立てるためにも、申請前の「賃金月額の見込み」は欠かせないステップです。申請時には本記事で紹介した判定基準を参考にしながら、正確な賃金月額を算定してください。


参考法令・資料
– 雇用保険法第61条の4(育児休業給付金)
– 育児休業給付金支給要領(厚生労働省・最新版)
– 令和3年厚生労働省告示第145号
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き

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