育休中に少し働いたら給付金が止まってしまった——そんな経験をした方は少なくありません。育児休業給付金は、一定以上就業すると「支給停止」となりますが、就業状況が変わった場合は再度申請することで給付を再開できます。
本記事では、支給停止の仕組みから再開条件の判断基準、実際の申請手続きまでをステップごとに詳しく解説します。ハローワークへの提出書類・記入のポイントも網羅していますので、手続きを確実に進めたい方はぜひ最後まで読んでみてください。
育休給付金が「支給停止」になるとは?再開できるケースを確認しよう
支給停止が発生する3つの主な原因
育児休業給付金の支給停止には、いくつかの原因があります。まずは自分がどのケースに該当するかを確認しましょう。
| 支給停止の原因 | 具体的な状況 | 再開の可能性 |
|---|---|---|
| 就業による停止 | 月10時間超または就業日数2日超の就労 | ✅ 再開できる |
| 育休終了 | 職場に復帰した・育休を自ら終了した | ❌ 再開できない |
| 給付期間の上限到来 | 子が1歳(延長時は最大2歳)に達した | ❌ 再開できない |
この表からわかる通り、再開できるのは「就業による停止」のケースのみです。育休を正式に終了していたり、給付期間の上限に達していたりする場合は、支給を再開することはできません。
自分の支給停止の原因が何かを把握することが、手続き開始の第一歩です。ハローワークから受け取った「支給停止通知」に原因が記載されているため、まず手元の書類を確認してください。
再開できるケース・できないケースの違い
支給停止後の再開可否は、次の判断軸で考えると整理しやすくなります。
再開できるケース(就業状況が変わった場合)
- 育休中に就業していたが、その就業が終了した
- 就業時間・日数を減らすことで、支給停止の基準を下回った
- 一時的に就業が多かった月を過ぎ、翌月から就業が減った
再開できないケース
- 育休期間を終了して職場に復帰した(育休期間中でなければ対象外)
- 子が所定の年齢(原則1歳、延長の場合は最大2歳)に達した
- 育休中に別の事由(離職等)で雇用保険の被保険者資格を喪失した
ポイント: 「就業による停止」とは、育休期間中でありながら就労したために一時的に止まった状態です。育休そのものは継続している必要があります。育休を終了している場合は再開申請の対象外となる点に注意してください。
支給停止が解除される条件とは?就業時間・日数の基準を徹底解説
月の就業時間・就業日数の判定基準(10時間・2日ルール)
育児休業給付金が支給停止となる基準(雇用保険法第61条の4第6項)は、支給単位期間ごとに判定されます。一般的に現場でよく使われる「10時間ルール」「2日ルール」は、産後パパ育休(出生時育児休業)に適用される判定基準です。通常の育児休業では異なる基準が適用されます。
支給停止となる条件(雇用保険法に基づく)
【通常の育児休業】
条件A:支給単位期間内の就業日数が10日を超える
条件B:支給単位期間内の就業時間が80時間を超える
条件C:支給単位期間内に就業があり、賃金が育休前賃金の80%以上に達する
【産後パパ育休(出生時育児休業)】
条件A:休業期間中の就業時間が10時間を超える
条件B:休業期間中の就業日数が2日を超える
条件C:就業による賃金が育休前賃金の80%以上に達する
| 育休の種類 | 支給停止となる就業基準 |
|---|---|
| 通常の育児休業 | 就業日数10日超、または就業時間80時間超、または賃金が育休前賃金の80%以上 |
| 産後パパ育休(出生時育児休業) | 就業時間10時間超、または就業日数2日超、または賃金が育休前賃金の80%以上 |
再開の条件は、上記の基準をすべて「下回ること」です。つまり:
- 通常の育児休業:就業日数が10日以内かつ就業時間が80時間以内かつ賃金が育休前賃金の80%未満
- 産後パパ育休:就業時間が10時間以内かつ就業日数が2日以内かつ賃金が育休前賃金の80%未満
重要: 「支給単位期間」とは育休申請の1か月ごとの区切り期間です。カレンダー上の月とは必ずしも一致しないため、自分の支給単位期間の始まりと終わりをハローワークに確認しておきましょう。初回申請時に受け取った「育児休業給付受給資格確認通知書」に記載されています。
「就業」の定義に注意!カウントされる働き方・されない働き方
「就業」に該当するかどうかの判断は、思ったよりも細かいルールがあります。特にテレワークや短時間勤務の場合、就業としてカウントされるかどうかが不明確になりやすいため、注意が必要です。
就業としてカウントされる働き方
| 働き方 | 取り扱い |
|---|---|
| 元の職場での短時間勤務 | 実労働時間がカウントされる |
| テレワーク・在宅勤務 | カウントされる(労働契約に基づく業務は就業) |
| 副業・アルバイト(別の雇用先) | カウントされる |
| 自営業・フリーランスとしての就労 | カウントされる場合がある(要確認) |
| 時短勤務制度の利用 | 実労働時間がカウントされる |
就業としてカウントされない活動
| 活動内容 | 取り扱い |
|---|---|
| 電話対応・メール確認(指示なし自発的なもの) | 原則カウントされない |
| 研修・説明会への参加(任意参加のもの) | 一般的にカウントされない |
| 育休中の一時帰宅(手続きのみ) | カウントされない |
| 育休中の面接参加(転職活動) | 通常カウントされない |
注意点: テレワーク・在宅勤務は「就業なし」と誤解されがちですが、労働契約に基づいて業務を行う場合は明確に就業としてカウントされます。育休中に自宅で少し仕事をした場合でも、その時間は記録しておく必要があります。就業の該当性が不明確な場合は、ハローワークに直接確認することをお勧めします。
支給再開の申請手続き:ステップごとにわかりやすく解説
全体の申請フロー
【支給停止状態】
↓
STEP 1:就業状況が支給停止の基準を下回ることを確認
↓
STEP 2:事業主に就労実績の証明を依頼
↓
STEP 3:必要書類を準備する
↓
STEP 4:ハローワークに申請書類を提出
↓
STEP 5:審査・支給決定通知の受取
↓
【給付金の再開】
STEP 1:就業状況が再開条件を満たすか確認する
まず、支給停止が解消される月の就業実績を確認します。
- 出勤記録・タイムカード・業務日誌などで就業時間・日数を集計する
- 前述の基準(通常育休:10日以内かつ80時間以内かつ賃金が育休前賃金の80%未満 / 産後パパ育休:2日以内かつ10時間以内かつ賃金が育休前賃金の80%未満)を下回っているかチェックする
- 育休前の月額賃金を把握し、その80%未満であることを確認する
自分での判断が難しい場合は、ハローワークに事前相談することをおすすめします。支給単位期間の確認も同時に行えます。電話相談も可能です。
STEP 2:事業主(会社)に就労実績の証明を依頼する
育児休業給付金の申請は、原則として事業主(会社)経由でハローワークに提出します。支給停止の解除・再開申請も同様です。
- 人事・総務担当者に「育休給付金の支給再開を申請したい」旨を伝える
- 就労実績(日数・時間)の記録を会社側でも確認してもらう
- 会社が申請書類に記名・押印する必要があるため、早めに連絡を取ること
- 申請のタイミングについても事業主と調整する
STEP 3:必要書類を準備する
支給再開申請に必要な書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 入手先 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク / 電子申請 | 事業主が記入・押印(最新様式を使用) |
| 育児休業給付受給資格確認票 | ハローワーク | 初回申請時に取得済みの場合は不要 |
| 賃金台帳・出勤簿(タイムカード) | 会社が準備 | 支給単位期間の就労実績を証明 |
| 育児休業申出書(写し) | 会社に保管 | 育休継続中であることの確認用 |
| 振込先口座の確認書類 | 本人準備 | 初回再開時は通帳コピー等が求められる場合あり |
書類の注意点: 書類の様式はハローワークの窓口またはハローワークインターネットサービス(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)からダウンロードできます。様式は年度ごとに改訂される場合があるため、必ず最新版を使用してください。古い様式での申請は受理されない可能性があります。
STEP 4:ハローワークに申請書類を提出する
申請書類が揃ったら、管轄のハローワーク(事業所の所在地を管轄するハローワーク) に提出します。
提出方法は3種類
| 提出方法 | 詳細 |
|---|---|
| 窓口持参 | ハローワーク窓口に事業主または本人が持参 |
| 郵送 | 書留等の追跡できる方法で郵送 |
| 電子申請 | e-Gov(電子申請)を利用して事業主がオンライン提出 |
申請期限について
支給再開の申請は、支給停止が解消された支給単位期間の終了後から2年以内に行う必要があります(雇用保険法施行規則第99条)。ただし、申請が遅れると給付金の受取が遅くなるため、条件を満たした月の翌月以降、速やかに手続きを進めることを強くおすすめします。
STEP 5:審査・支給決定通知を受け取る
申請書類がハローワークに受理されると、審査が行われます。
- 審査期間の目安: 書類提出から概ね1〜2週間程度(書類に不備がない場合)
- 支給が決定した場合、「育児休業給付金支給決定通知書」が事業主宛に届く
- 給付金は申請者本人の指定口座に振り込まれる
- 振込時期は支給決定後、概ね1週間〜10日程度
書類に不備がある場合は補正を求められ、その分処理が遅れます。記入漏れや押印忘れがないか、提出前に必ず確認してください。
支給再開後の給付金額はいくら?計算方法を確認しよう
基本的な給付率
育児休業給付金の給付額は、支給再開後も原則として変わりません。育休開始から180日(6か月)以内か以降かによって給付率が異なります。
| 育休開始からの期間 | 給付率 | 計算式 |
|---|---|---|
| 育休開始から180日(6か月)以内 | 67% | 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67% |
| 181日目以降 | 50% | 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50% |
給付額の計算に用いられる「賃金日額」は、育休開始時に決定された金額で固定されます。育休中の就業による賃金とは別に計算されるため、就業月であっても基本的な給付率は変わりません。
2025年の制度改正について: 2025年4月以降に育休を開始した方を対象に、育休給付の給付率や給付期間に関する制度改正が予定されています。最新の情報はハローワークの公式サイト(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)または厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
就業した月の給付額はどうなる?減額の計算方法
育休中に就業して賃金を受け取った場合、その賃金額によって給付金が一部または全額が支給されないことがあります。支給停止に至らない程度の就業でも、賃金額によって減額調整が行われます。
給付額の計算ルール(就業あり・支給停止未満の場合)
育休前賃金(月額換算)に対して受け取った賃金の割合によって以下のとおり調整される:
・賃金が育休前賃金の13%以下:給付金は全額支給
・賃金が育休前賃金の13%超〜80%未満:給付金が一部減額(超過分を給付から差し引く)
・賃金が育休前賃金の80%以上:給付金は支給停止
たとえば、育休前の月給が30万円の方が育休中に3万円(10%相当)の賃金を受け取った場合は、給付金は全額支給されます。一方、9万円(30%相当)の賃金を受け取った場合は、その分が調整されます。具体的な計算方法については、ハローワークの窓口で詳しく説明を受けることをお勧めします。
支給停止解除・再開申請で陥りやすい3つの注意点
注意点①:申請は事業主経由が原則
育休給付金の申請は、原則として事業主(会社)が代理で申請します。本人が直接ハローワークに申請するのは例外的な場合(事業主が倒産した等)に限られます。まず会社の人事・総務担当者に連絡し、申請スケジュールを調整しましょう。事業主が申請に協力しない場合は、ハローワークに相談してください。
注意点②:支給単位期間の区切りを正確に把握する
「今月は就業が少なかったから来月申請しよう」と考えていても、支給単位期間の区切りがカレンダーの月と異なる場合があります。支給単位期間は最初の育休申請時に設定されており、ずれて管理していると申請漏れや重複が起きる可能性があります。手元の「育児休業給付受給資格確認通知書」で期間を確認してください。
注意点③:支給停止が複数月続いた場合は月ごとに申請が必要
支給停止が2か月・3か月と続いた場合でも、支給を再開したい月ごとに申請を行う必要があります。まとめて一括申請できるわけではないため、就業状況が月によって異なる場合は、各月の就業実績を個別に確認・申請してください。
産後パパ育休(出生時育児休業)の支給再開手続きは異なる点に注意
2022年10月に創設された産後パパ育休(出生時育児休業) は、通常の育児休業と給付の仕組みが一部異なります。特に支給停止の基準と申請書類が異なるため、注意が必要です。
| 比較項目 | 通常の育児休業 | 産後パパ育休 |
|---|---|---|
| 対象期間 | 子が原則1歳まで(最大2歳) | 子の出生後8週間以内の最大4週間 |
| 支給停止の就業基準 | 就業日数10日超または就業時間80時間超 | 就業時間10時間超または就業日数2日超 |
| 申請書類の名称 | 育児休業給付金支給申請書 | 出生時育児休業給付金支給申請書 |
| 分割取得 | 原則1回(条件付きで分割可) | 2回まで分割取得可 |
| 給付率 | 67%(開始180日以内)→50%(181日以降) | 出生時育児休業給付 |
産後パパ育休中に就業して給付が停止した場合も、就業状況が基準を下回れば再開申請が可能ですが、申請書類の様式が通常の育休とは異なります。ハローワークで正しい様式を入手してから手続きを進めてください。誤った様式での申請は受理されません。
ハローワークへ行く前に確認しておくべきチェックリスト
手続きをスムーズに進めるために、以下のチェックリストを活用してください。
□ 支給停止の原因が「就業による停止」であることを確認した
□ 支給単位期間の区切りを確認した
□ 再開を申請したい期間の就業日数・就業時間を集計した
□ 就業基準(日数・時間・賃金)を下回っていることを確認した
□ 会社の人事・総務担当者に申請の意向を伝えた
□ 最新の申請書類様式を入手した
□ 賃金台帳・出勤簿(タイムカード)のコピーを準備した
□ 育児休業申出書(写し)を準備した
□ 申請書に事業主の記名・押印があることを確認した
□ 管轄ハローワークの窓口受付時間・混雑状況を確認した
□ 育休の種類(通常育休 or 産後パパ育休)を確認した
□ 給付率の対象期間を確認した(育休開始から何日目か)
まとめ:支給停止後の再開申請は「就業状況の確認」から始めよう
育休給付金の支給停止解除・再開申請のポイントをまとめます。
- 再開できるのは「就業による支給停止」のみ。 育休終了・期間上限到来の場合は再開不可。
- 支給停止の解除条件は就業日数・就業時間・賃金の基準をすべて下回ること。 通常育休は10日以内かつ80時間以内かつ賃金が育休前賃金の80%未満、産後パパ育休は2日以内かつ10時間以内かつ賃金が育休前賃金の80%未満。
- 申請は事業主経由でハローワークへ。 書類は最新様式を使用し、会社の記名・押印が必須。
- 申請期限は支給単位期間終了後2年以内。 ただし早めの申請を強くおすすめします。
- 給付率は育休開始から180日以内が67%、181日目以降は50%。 就業による賃金がある場合は減額調整あり。
- 支給停止が複数月続く場合は、月ごとに申請が必要。 一括申請はできません。
手続きについて不明な点がある場合は、管轄のハローワークに直接問い合わせることが最も確実です。電話相談にも対応しているため、窓口に行く前に確認しておくと手続きがスムーズになります。
ご不明な点がございましたら、お気軽にハローワークへお問い合わせください。
よくある質問(FAQ)
支給停止中に育休期間は終了してしまいますか?
A. 支給停止はあくまで「給付金の支給が止まっている状態」です。育休期間そのものが終了するわけではありません。育休の終了には会社への別途手続きが必要であり、給付停止と育休終了は別のことです。支給停止中でも育休期間中であれば、再開申請の対象となります。
支給停止の通知が届いていないのですが、どうすれば停止されていることを確認できますか?
A. 支給停止の通知は原則として事業主宛に送付されます。本人に直接届かないケースも多いため、給付金の振込がなかった月があれば、まず会社の人事・総務担当者に確認してください。また、管轄のハローワークに問い合わせることでも支給状況を確認できます。
育休中にフリーランスや副業で収入を得ていますが、支給停止の対象になりますか?
A. 雇用契約に基づかない副業(フリーランス・自営業など)の場合は、就業の定義や賃金の扱いが異なる場合があります。ただし、就業実態がある場合は支給停止の対象となる可能性があります。自己判断せず、管轄のハローワークに具体的な状況を説明して確認することをおすすめします。実労働時間や賃金額を記録しておくと、相談時にスムーズです。
育休中に就業した事実を会社に報告していなかった場合、どうなりますか?
A. 育休給付金を不正受給した場合、支給された給付金の全額返還に加えて、返還額の2倍の納付命令(つまり給付金の3倍相当) が課されることがあります(雇用保険法第10条の4)。故意・過失を問わず厳しく対応されるため、就業した事実は必ず会社に報告し、適切な手続きを行ってください。もし申告漏れに気づいた場合は、速やかにハローワークに相談することが重要です。
申請書類に不備があった場合、再提出は可能ですか?
A. 可能です。ハローワークから補正の指示があった場合は、指定された書類を修正・追加して再提出してください。ただし、その分審査期間が延びて給付金の振込も遅くなります。提出前に書類の記入内容・押印・添付書類の過不足を入念に確認することが大切です。
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免責事項: 本記事は2025年時点の法令・制度に基づいて執筆していますが、制度は随時改正されます。最新の情報は厚生労働省の公式サイト(https://www.mhlw.go.jp/)またはハローワーク(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)でご確認ください。

