育児休業中でも職場から「少し手伝ってほしい」と頼まれたり、自分のペースで慣らし復帰を始めたいと考える方は少なくありません。しかし、月の就業日数が20日を超えると、その月の育休給付金は全額不支給になるというルールがあります。
「知らなかった」では済まされない金銭的損失を防ぐために、本記事では月途中から復帰するケースを中心に、日数カウントの仕組み・申請書類・計算方法・注意点を社労士監修のもと、わかりやすく解説します。
育休給付金と就業日数の基本ルールをおさらい
育児休業給付金(以下「育休給付金」)は、雇用保険に加入している労働者が育児休業を取得した際に、ハローワーク(公共職業安定所)から支給される給付です。給付率は、育休開始から180日目まで休業開始時賃金日額の67%、181日目以降は50%となります。
育休中は原則として就業しないことが前提ですが、条件を満たせば一定範囲内での就業が認められています。その条件の核心が「月の就業日数20日以下」というルールです。
| 月の就業日数 | 育休給付金の扱い |
|---|---|
| 0日 | 満額支給 |
| 1〜20日以下 | 満額支給(ただし一定額の賃金支払いがある場合は減額あり) |
| 20日超 | 全額不支給 |
この「月」とは暦月(1日〜末日)ではなく、育児休業給付の支給単位期間を指します。支給単位期間は、育児休業開始日を起算日として1か月ごとに区切られた期間です。たとえば育休開始日が4月10日であれば、最初の支給単位期間は「4月10日〜5月9日」となります。
📌 ポイント:「月途中から復帰した」場合も、支給単位期間内の就業日数の合計で判定されます。暦月の日数ではないため注意が必要です。
就業日数「20日」の基準はどう決まるか
この20日ルールの法的根拠は、雇用保険法第61条の4および雇用保険法施行規則第103条に定められています。具体的には、支給単位期間中に「就業していると認められる日数が10日(令和4年改正後の経過措置を含む)を超え、かつ支給単位期間の日数の3分の2超」となる場合、または「就業日数が20日を超える場合」のいずれかに該当すると不支給となるルールが設けられています。
実務上、多くの方に関係する基準として覚えておくべきは「20日超で全額不支給」という点です。ハローワークの審査においても、この日数がボーダーラインとして機能します。
カウントの基本原則は以下のとおりです。
- 1時間でも就業した日は「1日」としてカウントされる
- 就業時間の長短(2時間でも8時間でも)は給付可否に影響しない
- 実際に働いた日のみが対象(休日・休暇日は原則カウントされない)
「就業日数」と「就業時間」の違いに注意
育休給付金の支給可否を決めるのは「日数」であり、「時間」ではありません。この点が多くの方の誤解を招きやすいポイントです。
たとえば、短時間勤務制度を使って1日2時間だけ出勤した場合でも、その日は「就業1日」としてカウントされます。週2回・1日3時間の勤務を繰り返した場合も、出勤した日数がそのままカウント対象です。
【誤った認識の例】
「1日2時間しか働いていないから、フルタイム換算では0.25日分で
80時間分たまるまでカウントされない」→ ✗ 誤り
【正しい認識】
「1時間でも出勤した日は1日カウント」→ ✓ 正しい
この原則を理解していないと、短時間勤務で少しずつ慣らし復帰しているつもりが、気づかないうちに就業日数20日を超えて給付金が全額不支給になる、という事態を招きます。
月途中から復帰した場合の日数カウント方法
月途中から就業を開始するケースでは、「その支給単位期間内の累計就業日数が20日を超えるかどうか」が支給判定の基準になります。ここでは具体的なシミュレーションで確認しましょう。
具体例①|月15日から復帰した場合(残り16日)
前提条件
– 育休開始日:4月1日(支給単位期間:4月1日〜4月30日)
– 復帰開始日:4月15日
– 4月15日〜4月30日まで毎日出勤(土日除く平日のみ)
日数計算
| 期間 | 就業日数 |
|---|---|
| 4月1日〜4月14日 | 0日(育休中) |
| 4月15日〜4月30日(平日のみ) | 12日 |
| 合計 | 12日 |
判定結果:12日 ≤ 20日 → 給付金は支給
ただし、この場合でも注意が必要です。就業によって賃金が支払われている場合、賃金額によっては給付金が減額されることがあります(後述の計算式を参照)。
具体例②|月10日から復帰した場合(残り21日)
前提条件
– 育休開始日:4月1日(支給単位期間:4月1日〜4月30日)
– 復帰開始日:4月10日
– 4月10日〜4月30日まで毎日出勤(土日除く平日のみ)
日数計算
| 期間 | 就業日数 |
|---|---|
| 4月1日〜4月9日 | 0日(育休中) |
| 4月10日〜4月30日(平日のみ) | 15日 |
| 合計 | 15日 |
判定結果:15日 ≤ 20日 → 給付金は支給
では、土日も含めてほぼ毎日出勤した場合はどうなるでしょうか。
日数計算(毎日出勤の場合)
| 期間 | 就業日数 |
|---|---|
| 4月1日〜4月9日 | 0日(育休中) |
| 4月10日〜4月30日(毎日出勤) | 21日 |
| 合計 | 21日 |
判定結果:21日 > 20日 → 全額不支給 ⚠️
月の10日前後から復帰する場合、残り日数が21日以上あるため、意図せず20日超過になるリスクが高いパターンです。会社から「慣らし復帰として毎日少し来てほしい」と言われた場合でも、この日数ルールを必ず会社の人事担当者と共有しておくことが大切です。
土日・祝日・有休取得日はカウントされるか
読者が特に混乱しやすいポイントを一問一答形式で整理します。
Q1:土日・祝日に出勤しなかった日はカウントされますか?
→ されません。 実際に就業した日のみがカウント対象です。休日に出勤しなければその日はカウントされません。
Q2:有給休暇を取得した日はカウントされますか?
→ されません。 有給休暇取得日は「就業した日」には該当しません。ただし、有給休暇は育児休業期間中に取得することが原則として認められていないケースもあるため、会社の規定を確認しましょう。
Q3:テレワーク・在宅勤務で働いた日はカウントされますか?
→ されます。 就業場所が自宅であっても、実際に就業した日は1日としてカウントされます。
Q4:研修・会議にだけ参加した日はカウントされますか?
→ されます。 労働の提供があったとみなされる場合は就業日としてカウントされます。会議や研修への参加も「就業」に該当します。
Q5:月をまたいで就業した場合、カウントはどうなりますか?
→ 支給単位期間ごとに独立してカウントされます。前の期間の就業日数が翌期間に持ち越されることはありません。
育休給付金の計算方法と減額の仕組み
月の就業日数が20日以内であっても、就業によって賃金が支払われた場合は、給付金が減額される場合があります。給付金の仕組みを正確に理解しておきましょう。
基本的な給付額の計算式
育休給付金(1支給単位期間)
= 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
給付率:
育休開始から180日まで → 67%
181日目以降 → 50%
「休業開始時賃金日額」の求め方
休業開始時賃金日額
= 育休開始前6か月間の賃金合計 ÷ 180日
賃金が支払われた場合の減額ルール
就業によって賃金が支払われると、支給される育休給付金が以下のルールで調整されます。
| 就業中の賃金額(休業開始時賃金月額との比率) | 給付金の扱い |
|---|---|
| 13%以下 | 給付金は満額支給 |
| 13%超〜80%未満 | (80% – 賃金額の比率)分を給付金として支給 |
| 80%以上 | 給付金は全額不支給 |
ここで基準となる「休業開始時賃金月額」は次の式で計算します。
休業開始時賃金月額 = 休業開始時賃金日額 × 30
【計算例】
- 休業開始時賃金日額:1万円
- 休業開始時賃金月額:30万円
- 就業による賃金受取額:6万円(20%相当)
この場合、(80% – 20%) = 60%分が給付されます。
給付金 = 30万円 × 60% = 18万円
(通常の給付金:30万円 × 67% = 約20.1万円)
申請手続きの流れと必要書類
手続きフロー
STEP 1【育休開始前〜開始後すぐ】
事業所がハローワークに
「育児休業給付受給資格確認票」を提出
↓
STEP 2【毎月の申請】
事業所が「育児休業給付金支給申請書」を
ハローワークに提出(原則として事業所経由)
↓
STEP 3【就業状況の報告】
月の就業日数・賃金額を申告書に記載
↓
STEP 4【ハローワークが支給可否を判定】
就業日数20日以下 → 満額または減額支給
就業日数20日超 → 全額不支給
↓
STEP 5【給付金の振込】
本人指定口座へ入金
必要書類一覧
初回申請時(育休開始時)
| 書類名 | 提出先 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク | 事業所が代理提出(原則) |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | ハローワーク | 初回のみ |
| 賃金台帳(直近6か月分) | 事業所保管 | 賃金日額算定用 |
| 出勤簿・タイムカード | 事業所保管 | 就業日数確認用 |
| 母子健康手帳(写し)など | 必要に応じ | 出産・育児実態の証明 |
| 本人確認書類 | ハローワーク窓口 | 免許証・マイナンバーカード等 |
2回目以降(毎月の申請)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | 就業日数・賃金額を正確に記載 |
| 出勤簿・タイムカード(写し) | 就業日数の証明 |
| 給与明細・賃金台帳(写し) | 賃金支払い額の証明 |
📌 事業所経由申請が原則:育休給付金の申請は、基本的に事業主(会社)を通じてハローワークに行います。書類の準備や提出スケジュールについて、早めに人事担当者と連携しておきましょう。
月途中復帰で損しないための確認ポイント
育休から月途中に復帰する際に、事前に確認しておくべきポイントをまとめます。
✅ チェックリスト
復帰前に確認すること
- [ ] 復帰開始日から月末(支給単位期間末日)までの日数を把握しているか
- [ ] その期間中に想定される出勤日数を計算し、20日以内に収まるか確認したか
- [ ] 会社の人事担当者と就業日数の上限ルールを共有したか
- [ ] テレワーク・研修・会議参加日もカウントされることを理解しているか
復帰後に確認すること
- [ ] 毎月の出勤記録(出勤簿・タイムカード)を正確に管理しているか
- [ ] 有給休暇と就業日のカウント区別が正しく行われているか
- [ ] 賃金が支払われる場合、減額計算の対象になっていないか確認したか
- [ ] 申請書類の提出期限を人事担当者と確認しているか
よくある失敗パターンと対策
失敗パターン①:「短時間だから大丈夫」という思い込み
→ 対策:就業時間ではなく就業日数でカウントされることを必ず確認する。短時間勤務での復帰でも、出勤日数そのものが給付金判定の対象になる点を理解してください。
失敗パターン②:会社側が育休給付金のルールを把握していない
→ 対策:人事担当者にこの記事や厚生労働省の最新パンフレットを共有し、双方で認識を合わせる。特に月途中復帰のリスクについては十分な説明が必要です。
失敗パターン③:支給単位期間を暦月と勘違いする
→ 対策:自分の育休開始日を確認し、支給単位期間の区切りを正確に把握する。1日のずれで20日超過になる可能性もあるため注意が必要です。
2024年改正・パパ育休への適用
2022年の育児・介護休業法改正(段階的施行、2023年4月完全施行)により、産後パパ育休(出生時育児休業)が創設されました。パパ育休(子の出生後8週間以内に最大4週間取得可能)においても、就業日数に関するルールは基本的に同様です。
パパ育休における就業日数の特則
パパ育休(出生時育児休業)中の就業については、労使協定が締結されていることを前提に、事前に労働者と事業主が合意した範囲内でのみ就業が可能です。この場合も、就業日数の上限は「休業期間の日数の半分」、かつ「就業日数が10日以下」というルールが適用されます(28日間取得の場合は14日以下)。
パパ育休(出生時育児休業)の就業上限:
休業期間の日数 × 1/2(小数点以下切り捨て)
かつ 就業時間数の上限は休業期間中の所定労働時間の1/2以下
通常の育休(子が1歳になるまで等の育児休業)とパパ育休では就業上限の計算方法が異なるため、取得する育休の種類に応じて確認することが重要です。
よくある質問(FAQ)
Q:育休給付金の申請をし忘れた月があります。遡って申請できますか?
A:育休給付金の支給申請には期限があります。原則として、支給単位期間の末日の翌日から2か月以内に申請する必要があります(申請書提出期限)。ただし、正当な理由がある場合は一定期間の遡及申請が認められることがありますので、ハローワークに相談してください。
Q:月途中で復帰したのに就業日数が20日を超えてしまいました。既に申請した給付金は返還しなければなりませんか?
A:もし就業日数を誤って申告し、本来不支給となるべき月の給付金を受け取ってしまった場合は、原則として返還義務が発生します。また、故意の虚偽申告は不正受給として厳しく処罰される場合があります。誤りに気づいた場合は速やかにハローワークおよび会社の人事担当者に相談してください。
Q:育休中に会社の忘年会・懇親会に参加した場合も就業日数にカウントされますか?
A:業務命令ではなく任意参加の懇親会であれば、通常は就業日としてカウントされません。ただし、参加が業務上の義務とみなされる場合は就業日としてカウントされることがあります。判断が難しいケースはハローワークに確認することをおすすめします。
Q:育休給付金の受給中に転職した場合はどうなりますか?
A:育休給付金は、現在の雇用主のもとで育児休業を取得していることが前提です。転職(離職および再就職)した場合は給付の対象外となります。転職を検討している場合は、育休終了後に手続きを行うよう計画することをおすすめします。
Q:育休を延長した場合、就業日数のルールは変わりますか?
A:育休延長後も就業日数に関するルール(20日超で不支給)は変わりません。延長後の各支給単位期間においても、同様のルールが適用されます。なお、給付率は育休開始から通算180日目以降は50%となりますので、延長期間中の給付率に注意してください。
Q:育休給付金の申請は自分でハローワークに行って手続きできますか?
A:育休給付金の申請は原則として事業主(会社)を通じて行う「事業所経由申請」が基本です。ただし、事業主が手続きを行わない場合や特別な事情がある場合には、本人が直接ハローワークに申請することも可能です。詳しくは最寄りのハローワークに確認してください。
まとめ
育休給付金と就業日数に関するルールを改めて整理します。
| ポイント | 内容 |
|---|---|
| 不支給ライン | 支給単位期間中の就業日数が20日超 |
| カウント単位 | 就業時間に関係なく1時間でも出勤すれば1日 |
| 月途中復帰の注意 | 復帰日から期間末日までの日数次第で20日超リスクあり |
| 減額ルール | 賃金が支払われた場合、賃金額に応じて給付金が減額 |
| 申請 | 原則、事業所経由でハローワークに申請 |
| 法的根拠 | 雇用保険法第61条の4・施行規則第103条 |
育休給付金の受給中に就業を検討している場合は、事前に会社の人事担当者と就業日数の管理方法を明確にし、月の就業計画を立てることが最大の損失防止策です。ルールを正しく理解したうえで、安心して育児と仕事のバランスを調整していきましょう。
不明な点は最寄りのハローワーク(公共職業安定所)または社会保険労務士に相談することをおすすめします。育休給付金に関する最新情報は、厚生労働省の公式サイトでも随時更新されているため、あわせてご確認ください。
本記事は2024年時点の法令・制度に基づいて作成しています。制度は改正されることがありますので、最新情報は厚生労働省・ハローワークの公式サイトでご確認ください。

