試用期間中の育休は取れる?対象判定基準と給付金条件【2025年版】

試用期間中の育休は取れる?対象判定基準と給付金条件【2025年版】 育児休業制度

試用期間中に妊娠・出産が重なったとき、「自分は育休を取れるのだろうか」と不安になる方は少なくありません。また、人事担当者側も「試用期間中の社員から育休申請が来たらどう対応すべきか」と頭を抱えるケースがあります。

本記事では、育児・介護休業法を根拠に、試用期間中であっても原則として育児休業の取得が可能であることを法的背景とともに詳しく解説します。同時に、給付金の「1年以上」条件の計算方法・申請書類・不利益取扱い禁止ルールまで、企業担当者と従業員の双方が理解しておくべき実務的なポイントをまとめました。


試用期間中でも育休は取得できる?結論を先に解説

結論:試用期間中であっても、原則として育児休業を取得できます。

育児・介護休業法は「労働者は育児休業を取得できる」と定めており、試用期間中かどうかを区別していません。試用期間はあくまで「雇用契約のなかの一段階」であり、法的には入社初日から雇用関係が成立しています。

ただし、以下のような例外ケースでは取得できない・または給付金を受け取れない場合があります。

  • 有期雇用契約で継続雇用の見込みがない
  • 入社から1年未満で育休を開始する(給付金のみ対象外)
  • 試用期間中に解雇が決定している

これらの条件を正確に理解することが、従業員・企業担当者どちらにとっても重要です。以下では、「対象になる条件」と「対象外になるケース」を順番に詳しく解説します。


育休の対象になる試用期間中社員の3つの条件

育児・介護休業法第5条および労働契約法第16条の解釈に基づき、試用期間中の社員が育休対象となるためには、次の3つの条件を満たす必要があります。

条件①|雇用契約が存在していること

試用期間中であっても、会社と労働者のあいだには「労働契約(雇用契約)」がすでに成立しています

この点について、最高裁平成11年9月16日判決は、「試用期間付き雇用は、解約権留保付きの労働契約である」と位置づけています。つまり、会社側に本採用を拒否する権限(解約権)が留保されているものの、雇用契約そのものは入社日から有効に成立しているとされます。

育児・介護休業法第5条が定める育休取得の要件は「労働者であること」であり、試用期間中もこの要件を満たします。よって、試用期間中の社員も育休申請の法的根拠を持ちます。

ポイント(企業担当者向け):
「試用期間だから育休申請を受け付けなくてよい」という対応は誤りです。申請を拒否した場合、育児・介護休業法違反となる可能性があります。


条件②|試用期間終了後に雇用継続の合理的期待があること

試用期間は本採用の可否を判断するための期間ですが、通常のケースでは試用期間終了後も雇用が継続されることが期待されています

労働契約法第16条は「解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当と認められない場合、その権利を濫用したものとして無効とする」と定めており、試用期間中であっても恣意的な本採用拒否は無効となります。

すなわち、「妊娠を理由とした本採用拒否」「育休申請を理由とした解雇」は不利益取扱いの禁止(育児・介護休業法第10条)に抵触するため、法律上認められません。

合理的な継続雇用の期待がある状態(つまり、業務上の重大な問題がなく通常の試用期間を経ている社員)であれば、条件②を満たすと判断されます。


条件③|試用期間も継続雇用期間に算入される

育児休業給付金の受給には、育休開始日前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上あることが要件です(雇用保険法第60条の2、雇用保険法施行規則第77条)。

重要なのは、試用期間中も雇用保険に加入していれば、その期間は「継続雇用期間」としてカウントされるという点です。本採用後の期間だけではありません。

以下のパターンで具体的に確認しましょう。

パターン 内容 給付金受給
パターンA 試用期間3ヶ月→本採用→6ヶ月後に育休開始(合計9ヶ月) ❌ 受給不可(12ヶ月未満)
パターンB 試用期間3ヶ月→本採用→9ヶ月後に育休開始(合計12ヶ月) ✅ 受給可能(試用期間含め12ヶ月以上)
パターンC 試用期間中(6ヶ月)に育休申請→その後本採用(合計1年超) ✅ 法的に申請受理・給付金は勤務月数次第

計算の基準日: 入社初日(雇用保険加入開始日)から育休開始日までの期間で判定します。「本採用日」を起点にする必要はありません。


育休対象外になる試用期間中社員のケース一覧

「試用期間中は育休を取れない」という誤解がある一方で、実際に対象外となるケースも存在します。以下の3つに該当する場合は注意が必要です。

対象外のケース 理由・根拠
試用期間中に解雇が決定済み 継続雇用の合理的期待がなく、育休取得の前提条件を欠く
有期雇用契約で1年以上の勤務見込みがない 育児・介護休業法第5条第1項の「継続雇用期間」要件を満たさない
クーリング期間該当(6ヶ月以上の離職後に再雇用) 雇用保険の被保険者期間がリセットされ「1年以上」の要件を満たさない可能性あり

有期雇用契約の場合の注意点

有期雇用契約(契約社員・パートタイムなど)で試用期間がある場合、育休取得の可否判定はやや複雑になります。

2022年の育児・介護休業法改正により、有期雇用労働者の育休取得要件が緩和されました。改正前は「1年以上継続して雇用されていること」が必須でしたが、現在は労使協定を締結している場合のみ「1年未満の有期雇用労働者を対象外にできる」という形に変わっています。

つまり、労使協定がなければ、有期雇用・試用期間中でも育休申請を受け付ける必要があります

有期雇用で育休を申請する際のチェックポイントは以下の通りです。

  • 雇用契約の残存期間が1年以上あるか、または更新見込みがあるか
  • 会社に「1年未満の有期労働者を対象外とする」労使協定があるか
  • 雇用保険の被保険者として12ヶ月以上加入しているか(給付金目的の場合)

有期雇用の方は申請前に、会社の就業規則・労使協定の有無を人事担当者に確認することを強くお勧めします。


育休申請の手続きと必要書類

試用期間中を含め、実際に育休を申請する際の手順と書類を整理します。

STEP1|育休開始予定日の1ヶ月前までに申請

育児・介護休業法第5条第3項により、育休開始予定日の1ヶ月前(産後パパ育休は2週間前)までに会社へ申し出る必要があります。

口頭でも申請は可能ですが、書面または電子メールでの申請が推奨されます(後日のトラブル防止のため)。


STEP2|会社への提出書類

書類名 備考
育児休業申出書 会社所定の様式、または厚生労働省モデル様式を使用
母子健康手帳のコピー(出生予定日の確認) 出産予定日・子どもの生年月日の証明
育児休業取得確認書(返戻書類) 会社から受け取る書類(申請受理の証明)

試用期間中の追加確認事項:
雇用保険の被保険者証番号・加入開始日を事前に確認しておきましょう。給付金申請時に必要となります。


STEP3|育児休業給付金の申請(ハローワーク経由)

育休開始後、給付金の申請は原則として会社(事業主)がハローワークに代行申請します。従業員が直接申請することは通常ありませんが、以下の書類を会社に提出する必要があります。

書類名 用途
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 ハローワーク所定の様式
賃金台帳・出勤簿のコピー 休業前の賃金額・勤務日数の証明
母子健康手帳(子の生年月日確認用)のコピー 支給対象児の確認

給付金の計算方法

育児休業給付金の支給額は以下の計算式で算出されます。

【育休開始から180日間(約6ヶ月)】
  休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%

【181日目以降】
  休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

「休業開始時賃金日額」は、育休開始前6ヶ月間の賃金を180で割った金額です。試用期間中の給与も算入されます(雇用保険加入期間中であれば)。

計算例:
月給25万円(試用期間含む)で育休前6ヶ月勤務した場合
– 賃金日額:250,000円 × 6 ÷ 180 ≒ 8,333円
– 月額給付金(最初の6ヶ月):8,333円 × 30日 × 67% ≒ 167,694円

なお、上限額・下限額が毎年8月に改定されますので、最新額はハローワークまたは厚生労働省のウェブサイトで確認してください。


不利益取扱い禁止と試用期間中の保護

試用期間中の妊娠・育休申請に関して、企業が行ってはならない行為を明確にします。

禁止される行為(育児・介護休業法第10条)

  • 育休申請を理由とした解雇・本採用拒否
  • 育休申請を理由とした試用期間の不当な延長
  • 育休取得を理由とした降格・減給・不利な配置転換
  • 育休申請に対する上司からのハラスメント(マタハラ・パタハラ)

これらの行為は違法であり、会社は行政指導・公表・罰則の対象となります。

従業員側が取れる対応

不利益取扱いを受けた場合は、以下の機関に相談できます。

相談窓口 内容
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室) 育児・介護休業法違反の申告・相談
ハローワーク 給付金不支給・雇用保険に関する相談
労働基準監督署 解雇・賃金に関する問題
弁護士・社会保険労務士 個別案件の法的サポート

よくある質問(FAQ)

Q1. 試用期間が終わる前に育休を申請しても会社は拒否できますか?

A. 原則として拒否できません。試用期間中でも雇用契約は成立しており、育児・介護休業法上の「労働者」に該当するためです。ただし、有期雇用で「1年未満の労働者を対象外とする」旨の労使協定が締結されている場合は、例外的に申請を受け付けないこともできます。


Q2. 試用期間中に育休を申請したら本採用を拒否される心配はありますか?

A. 育休申請を理由とした本採用拒否は、育児・介護休業法第10条の「不利益取扱いの禁止」に該当し、違法です。もし本採用を拒否された場合は、都道府県労働局や弁護士に相談することをお勧めします。


Q3. 試用期間3ヶ月で入社後すぐに妊娠が発覚しました。給付金はもらえますか?

A. 育休開始日前の2年間に雇用保険の被保険者期間が通算12ヶ月以上ないと、給付金の受給要件を満たしません。入社3ヶ月で育休を開始した場合は12ヶ月に満たないため、育休自体は取得できても給付金は受け取れません。給付金を受け取るには、入社日(雇用保険加入日)から少なくとも12ヶ月以上経過した時点で育休を開始する必要があります。


Q4. 試用期間を「6ヶ月→1年」に延長することは許されますか?

A. 試用期間の延長自体は、就業規則に定めがあり客観的・合理的な理由がある場合に認められることがあります。ただし、妊娠・育休申請を理由とした試用期間の延長は不利益取扱いとして違法となります。不当な延長と思われる場合は、延長理由を書面で求め、記録を残した上で労働局等に相談しましょう。


Q5. 企業の人事担当者として、試用期間中の社員から育休申請があった際に注意すべき点は何ですか?

A. 以下の3点を必ず確認・対応してください。

  1. 申請を受理し、育休取得確認書を交付する(拒否は原則不可)
  2. 有期雇用の場合、労使協定の有無と雇用継続見込みを確認する
  3. 給付金申請に必要な雇用保険加入期間を確認し、不足する場合は従業員に丁寧に説明する

まとめ|試用期間中の育休取得に関する重要ポイント

確認事項 結論
試用期間中の育休取得可否 原則可能(雇用契約が成立しているため)
給付金の受給要件 育休開始前2年間に雇用保険被保険者期間12ヶ月以上(試用期間を含む)
試用期間は継続雇用期間に算入されるか される(入社初日からカウント)
有期雇用の場合 労使協定の有無・継続雇用見込みを確認
不利益取扱い 申請・取得を理由とした解雇・本採用拒否は違法

試用期間中であっても、育休に関する権利は法律でしっかりと守られています。給付金の受給要件を事前に確認し、必要な書類を早めに準備することで、スムーズな育休取得につながります。不明点は、ハローワークや都道府県労働局、社会保険労務士に相談することをお勧めします。


参考法令・資料
– 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第5条・第6条・第10条
– 雇用保険法第60条の2
– 雇用保険法施行規則第77条
– 最高裁判所平成11年9月16日判決(解約権留保付き労働契約に関する判例)
– 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」(2025年版)

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