育休が終わって時短勤務で職場復帰したのに、もらえるはずの給付金を知らずに損している——そんな方が今も多くいます。
育児休業後短時間勤務給付金は、2022年の育児・介護休業法改正を契機に整備された比較的新しい制度です。育休中に受け取っていた育児休業給付金が終了した後も、時短勤務による賃金低下を国が一部補填してくれる仕組みですが、制度の存在自体を知らない方や、「自分は対象になるのか」と迷っている方が少なくありません。
この記事では、受給要件・申請手続き・必要書類・受給額の計算方法まで、2025年時点の最新情報をもとに体系的に解説します。育休後短時間勤務給付を正しく理解することで、時短復帰による経済的不安を大きく軽減できます。
育休後短時間勤務給付金とは?制度の概要と創設背景
| 項目 | 育児休業給付金 | 育休後短時間勤務給付金 |
|---|---|---|
| 支給対象期間 | 育児休業中(最大2年間) | 時短勤務復帰後(最大3年間) |
| 支給対象者 | 育児休業を取得している者 | 育休後に時短勤務で復帰した者 |
| 給付額の算定基準 | 休業前給与の67~50% | 時短勤務による賃金低下分の一部 |
| 受給申請手続き | 育休開始時にハローワーク申請 | 時短勤務開始時に改めて申請 |
| 制度創設 | 1995年~ | 2022年法改正、2023年本格運用開始 |
制度の基本情報
育児休業後短時間勤務給付金は、育児休業を終了して時短勤務に復帰した雇用保険被保険者に対し、育休前賃金との差額の一部を補填する給付制度です。雇用保険法第61条の2に基づき、ハローワークを窓口として運営されています。
本制度の法的根拠は以下のとおりです。
| 法令・通知 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険法第61条の2 | 育児休業給付金の支給根拠 |
| 育児・介護休業法第23条 | 時短勤務制度の義務化規定 |
| 雇用保険法施行規則第68条〜74条 | 給付条件・計算方法の詳細 |
| 厚生労働省施行通知 | 実務上の運用基準 |
給付の窓口はハローワーク(公共職業安定所)で、事業主(会社)を通じた申請が原則となります。個人で直接申請することはできません。
従来の育児休業給付金との違いを比較表で解説
育休中に受け取る「育児休業給付金」と、本制度は別の給付金です。混同しやすいため、以下の比較表で整理してください。
| 比較項目 | 育児休業給付金 | 育休後短時間勤務給付金 |
|---|---|---|
| 受給時期 | 育休期間中 | 育休終了・時短復帰後 |
| 給付率 | 休業開始後180日:67%、以降:50% | 時短による賃金低下分の一部 |
| 上限期間 | 子が原則1歳(最長2歳)まで | 子が3歳に達するまで |
| 申請主体 | 事業主経由でハローワーク | 事業主経由でハローワーク |
| 主な要件 | 育休取得・雇用保険加入 | 育休終了・時短復帰・賃金低下 |
最大のポイントは、育児休業給付金が終わった後も継続して給付を受けられる点です。育休給付金との「つながり」を意識して申請計画を立てることが重要です。
2022年法改正・2023年本格運用の経緯
2022年4月施行の改正育児・介護休業法では、育休取得の促進と復職後の両立支援が大きな柱となりました。従来は「育休を取得するか、フルタイムで復帰するか」という二択になりがちでしたが、時短復帰という第三の選択肢を経済的に後押しするために、本制度が整備されました。
2023年度から実務上の本格運用が始まり、2025年現在も継続して拡充・周知が進んでいます。多くの企業がハローワークと連携して対応体制を整えつつあります。
受給対象者の要件【チェックリスト付き】
「自分は対象になるか」を最短で確認できるよう、要件を整理しました。
5つの基本要件チェックリスト
以下のすべての項目にチェックが入る方が受給対象です。
- [ ] 雇用保険に加入している(被保険者期間が通算12ヶ月以上)
- [ ] 育児休業を取得し、その育休が終了している(子が2歳に達する日までの育休を修了)
- [ ] 育休終了後、同一の事業主のもとで時短勤務に復帰している
- [ ] 時短後の所定労働時間が、育休前の所定労働時間の75%以下に短縮されている
- [ ] 時短勤務後の賃金が、育休前賃金の75%未満に低下している
1つでも満たさない項目がある場合は、対象外となる可能性があります。次のセクションで具体例を確認してください。
対象になる人の具体的なパターン3例
例1:フルタイムから6時間勤務へ(典型的なケース)
育休前:所定労働時間8時間・月給30万円
育休後:所定労働時間6時間(8時間×75%=6時間)・月給22万円
→ 勤務時間75%以下 ✅ / 賃金75%未満 ✅
→ 受給対象
例2:正社員からパート的な勤務形態への転換
育休前:フルタイム正社員・月給25万円
育休後:週3日・1日5時間勤務・月給12万円
→ 勤務時間・賃金ともに大幅短縮 ✅
→ 受給対象
例3:すでに時短勤務中で制度を知らなかった場合
育休終了後、時短勤務を開始したが申請していなかった
→ 時効(2年)以内であれば遡及申請が可能 ✅
→ 受給対象(申請忘れは早急に確認・手続きを)
対象外になるケース5例
例1:育休後フルタイムに復帰した
時短勤務の要件を満たさないため、本制度は非対象となります。ただし、育児休業給付金の終了後に賃金が低下した場合は、別途の支援制度がないか確認してください。
例2:時短勤務だが賃金が75%以上維持されている
時給制などで実働時間に見合った賃金が支払われ、低下率が25%未満の場合は非対象です。この場合、時短勤務手当などの社内制度で対応している企業も多くあります。
例3:育児休業を取得していない
制度の前提となる育休取得がないため、非対象です。育休を取得していない短時間勤務については、本制度ではなく各企業の独自制度をご確認ください。
例4:自営業者・フリーランス・個人事業主
雇用保険の被保険者でないため、非対象です。自営業者むけの両立支援制度については、地域の商工会議所やハローワークへお問い合わせください。
例5:育休終了から3年以上経過してから時短勤務を開始した
給付対象期間(子が3歳まで)を超えているため、非対象となります。育休終了後は速やかに時短復帰の手続きを進めることが重要です。
勤務時間75%・賃金75%の計算方法を具体的に説明
勤務時間75%の計算
育休前の所定労働時間 × 75% = 上限ライン
例)育休前が1日8時間の場合
8時間 × 75% = 6時間
→ 復帰後の所定労働時間が6時間以下であれば要件を満たす
賃金75%の計算
育休前の月額賃金 × 75% = 上限ライン
例)育休前の月給が30万円の場合
30万円 × 75% = 22.5万円
→ 復帰後の月額賃金が22.5万円未満であれば要件を満たす
⚠️ 注意点: 「育休前賃金」の算定基準は、育休開始前6ヶ月間の賃金をもとにした休業開始時賃金日額が用いられます。賞与・時間外手当などの取り扱いはハローワークに確認してください。育休前の実績給として計算されるため、企業によって判断が異なる場合があります。
受給金額の目安と計算方法
「実際にいくらもらえるか」は、多くの方が最も気になる部分です。
給付率と計算式
育休後短時間勤務給付金の給付額は、以下の計算式で求めます。
支給額 = 育休前賃金日額 × 支給日数 × 給付率
給付率の目安は、育休前賃金に対する時短後賃金の低下率によって変動します。時短による賃金低下分の一部(おおむね低下額の10〜25%相当)が補填されます。
⚠️ 重要: 給付率の詳細な算定ロジックおよび上限額は、厚生労働省・ハローワークが定める最新の支給基準に基づきます。申請前に必ず管轄ハローワークまたは社会保険労務士に確認してください。制度は継続的に改正が行われており、2025年時点での正確な数値はハローワーク公式情報をご参照ください。
月収30万円のシミュレーション例
【条件】
育休前月収:30万円(所定労働時間:1日8時間)
時短復帰後月収:22万円(所定労働時間:1日6時間)
賃金低下額:月8万円
【給付の考え方】
低下した賃金8万円の一部が給付金として補填される
→ 具体的な給付額はハローワークでの個別試算が必要
実際の給付額を知るためには、ハローワークの給付担当窓口で試算を依頼することをお勧めします。給与形態や勤務パターンによって給付額が異なるため、個別相談が最も正確です。
支給単位期間と支払いタイミング
- 支給単位期間: 原則1ヶ月ごと
- 支払い: 申請後、ハローワークが認定した後に指定口座への振込
- 支給上限期間: 子が3歳に達する日の前日まで(時短勤務が継続している間)
支給は月単位で行われ、ハローワークの認定後、指定した銀行口座に振り込まれます。初回の支払いまでには2〜4週間程度要する場合があります。
申請手続きの流れ【ステップ別解説】
STEP 1:社内での時短勤務申請・復職手続き
育休終了の1ヶ月前を目安に、勤務先の人事部門へ時短勤務の申請を行います。育児・介護休業法第23条により、3歳未満の子を養育する従業員への時短勤務措置は事業主の義務です。
時短勤務の開始日・勤務時間・賃金支払い方法など、詳細を明確にしておくことが申請時のトラブル回避につながります。
STEP 2:事業主による準備と書類作成
会社(事業主)側が以下の書類を準備します。
- 育児休業後短時間勤務給付金支給申請書
- 賃金台帳(育休前・時短復帰後の記録)
- 出勤簿またはタイムカード
- 育休終了を示す書類
申請は事業主を通じてハローワークへ行うのが基本です。労働者が直接申請することはできないため、人事部門の対応が必須になります。
STEP 3:ハローワークへの申請
事業主がまとめてハローワークへ申請します。申請の主な窓口は、会社の所在地を管轄するハローワークです。オンライン申請の対応状況はハローワークにご確認ください。
提出から認定までの期間は通常2〜4週間程度ですが、書類不備がある場合は返戻となり期間が延びることがあります。
STEP 4:認定・支給
ハローワークが審査・認定を行い、指定口座に給付金が振り込まれます。給付額・支給期間などについてはハローワークから通知されます。
💡 申請期限(時効): 給付金の受給権は2年で時効となります。遡及して申請できる期間は2年以内ですので、制度を知らなかった方は早急に確認してください。育休終了から2年以内であれば遡及申請が可能です。
必要書類一覧
申請に必要な書類は、大きく「事業主が用意するもの」と「労働者が用意するもの」に分かれます。
事業主側が準備する書類
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 育児休業後短時間勤務給付金支給申請書 | ハローワーク所定の申請書 |
| 賃金台帳 | 育休前・時短復帰後の賃金が確認できるもの |
| 出勤簿またはタイムカード | 実際の労働時間を証明するもの |
| 育休終了証明書類 | 育休の開始・終了日が確認できる書類 |
| 時短勤務に関する就業規則または協定書 | 時短措置の根拠を示す書類 |
| 事業主証明 | 申請書内の事業主記載欄への署名・押印 |
労働者側が準備する書類(事業主経由で提出)
| 書類名 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険被保険者証 | 雇用保険加入を証明する書類 |
| 母子手帳(写し) | 子の生年月日を確認するもの |
| 振込先口座情報 | 給付金の受取口座 |
| マイナンバー関連書類 | 番号確認・本人確認書類(番号利用手続きによる) |
📋 注意: 必要書類はハローワークの窓口または公式サイトで最新版を確認してください。申請書様式は改定されることがあります。各都道府県のハローワークでも書類の詳細が異なる場合があるため、事前確認を強くお勧めします。
よくある疑問と注意点
パパ(男性)も受給できますか?
はい、受給できます。本制度は性別を問わず、育休を取得して時短復帰した雇用保険被保険者であれば対象です。男性育休取得者も積極的に活用してください。配偶者が育休中でも、一方が時短勤務で復帰すれば給付を受けられます。
育休を2回取得した場合はどうなりますか?
第1子・第2子それぞれの育休に対応する形で、要件を満たす期間について受給できる可能性があります。ただし、重複して受給することはできません。詳細はハローワークへ確認してください。子ごとの育休期間および給付対象期間の計算は複雑になるため、専門家への相談をお勧めします。
育休給付金と同時にもらえますか?
いいえ、育休給付金の受給期間中(育休中)は対象外です。本制度は育休が終了し、時短で復帰した後から適用されます。育休給付金と本制度は「つながり」を持つ別の給付であり、順序立てて活用することが重要です。
転職後でも受給できますか?
原則として、育休を取得した事業主(同一の職場)への復帰が条件です。転職先での時短勤務は、原則として本制度の対象外となります。転職を考えている場合は、育休終了前にハローワークへ相談することをお勧めします。
FAQ:育休後短時間勤務給付金でよく聞かれる質問
Q1. 申請はいつまでに行えばいいですか?
A. 時短勤務開始後、速やかに事業主経由でハローワークへ申請してください。受給権の時効は2年です。過去に遡って申請できる期間も2年以内ですので、気づいたタイミングで早急に手続きを進めましょう。育休終了から2年以内であれば申請が可能です。
Q2. 会社が申請手続きをしてくれない場合はどうすればよいですか?
A. 育児・介護休業法および雇用保険法の趣旨から、事業主には申請協力の義務があります。まず人事部門や上司へ制度の存在を示して依頼してください。それでも対応されない場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)や、ハローワークの給付課へ相談することができます。労働基準監督署での相談も可能です。
Q3. 時短勤務の時間数を途中で変えた場合、給付はどうなりますか?
A. 勤務時間が変わると、給付額の再計算が必要になる場合があります。変更が生じた場合は速やかに事業主へ報告し、ハローワークへの届出を忘れないようにしてください。勤務時間の大幅な変更によって、給付対象外になることもあります。
Q4. 育休前に在籍していた会社を退職して別の会社に転職した後に時短勤務をしています。対象になりますか?
A. 原則として対象外です。本制度は育休を取得した同一の事業主のもとへ復帰することが前提です。転職先での就業については適用されません。ただし、転職先での別の支援制度がないか確認してください。
Q5. 子が3歳を超えても時短勤務を続けています。給付は継続されますか?
A. 子が3歳に達した日の前日をもって給付は終了します。それ以降の時短勤務については本制度の対象外となります。なお、子が3歳以降の時短勤務支援については、他の制度(各種補助金・企業独自の手当等)を確認してください。一部の企業や自治体では独自の両立支援制度を設けている場合があります。
Q6. 給付金は課税されますか?
A. 雇用保険の給付金は、原則として非課税です。所得税・住民税の課税対象にはなりません。ただし、社会保険料の算定基礎(標準報酬月額)には時短勤務後の賃金が反映されますので、社会保険の取り扱いについては会社の人事担当者や社会保険労務士へ確認することをお勧めします。給付金受取時には税務上の証明書が発行されますので、確定申告時に提出すると良いでしょう。
Q7. 給付金の受け取り方法は?銀行口座への振込のみですか?
A. ハローワークでは指定した銀行口座への振込が標準となります。別の方法での受け取りについてはハローワークへお問い合わせください。振込手数料は原則として控除されません。
Q8. 申請から給付まで、どのくらいの期間がかかりますか?
A. 申請から認定までは通常2〜4週間程度、その後振込までさらに1〜2週間要するため、全体では1ヶ月程度が目安です。書類不備があると期間が延びるため、初回提出時に確認を徹底することが重要です。
育休後短時間勤務給付金の申請は、専門家への相談がおすすめです
本記事は2025年時点の一般的な情報をもとに作成していますが、制度の詳細や個別ケースの判断については、ハローワークまたは社会保険労務士への相談が不可欠です。
特に以下のような場合は、専門家のサポートを強くお勧めします。
– 賃金計算が複雑な場合(変動給・歩合給など)
– 複数回の育休取得がある場合
– 転職・配置転換を伴う場合
– 過去に遡って申請したい場合(時効判定)
各都道府県のハローワークの雇用保険課では無料で相談・申請サポートを行っていますので、お気軽にご利用ください。
まとめ:制度を正しく理解して、育休後の経済的不安を軽減しよう
育休後短時間勤務給付金は、育休後の「時短復帰 → 賃金低下」という現実的な課題に対応するために創設された制度です。多くの家庭がこの給付により、経済的な不安を軽減しながら仕事と育児の両立を実現しています。
受給のために押さえるべき3つのポイントを最後に整理します。
- 要件確認: 雇用保険加入・育休終了・時短復帰・勤務時間75%以下・賃金75%未満の5要件をすべて満たすか確認する
- 早期申請: 時効は2年。制度を知らなかった場合も、2年以内であれば遡及申請が可能。気づいたタイミングで手続きを開始することが重要
- 事業主との連携: 申請は事業主経由が原則。人事部門へ早めに相談し、必要書類の準備を進める
育休後短時間勤務給付金制度は、働く親の選択肢を広げ、仕事と育児を両立させるための重要な支援制度です。制度の詳細や個別ケースについては、管轄のハローワークまたは社会保険労務士へ相談することを強くお勧めします。特に、賃金の算定基準や給付率の計算は複雑なケースもあるため、専門家のサポートを活用してください。
厚生労働省およびハローワークの公式サイトでも、制度概要・申請書類・よくある質問が掲載されています。最新情報は必ず公式情報でご確認ください。
免責事項: 本記事は2025年時点の情報をもとに執筆しています。制度の内容・給付率・申請書類等は改正により変更される場合があります。最新かつ正確な情報は、厚生労働省公式サイトまたはハローワーク窓口でご確認ください。本記事の内容に基づく申請手続きについては、個人の責任において行い、不明な点は必ず専門機関へご相談ください。

