育休中に子どもの急な看病が必要になった——そんなとき、「育休を継続していいのか」「給付金はどうなるのか」と不安を感じる方は少なくありません。
結論からお伝えすると、育休中に子どもの看病をしても育休は継続できます。ただし、状況によっては「子の看護等休暇」や「傷病休職」への切り替えが選択肢となり、それぞれ給付金・社会保険料の取り扱いが異なります。
この記事では、育休継続の可否・給付金への影響・代替制度の選び方を、育児・介護休業法・雇用保険法・労働基準法に基づいて徹底解説します。
育休中に子どもの看病が発生した場合の法的立場と3つの選択肢
育児休業中に子どもの看病が必要になった場合、法的には以下の3つの選択肢があります。それぞれの制度は根拠法が異なり、給付金・社会保険料の扱いも大きく変わります。
| 選択肢 | 根拠法 | 給付金 | 社会保険料免除 |
|---|---|---|---|
| 育休継続 | 育児・介護休業法 第5条 | 継続受給 | 免除あり |
| 子の看護等休暇 | 育児・介護休業法 第16条の2 | なし(有給可) | 状況により異なる |
| 傷病休職へ変更 | 健康保険法 第99条 | 停止 | 免除なし |
看病の理由や期間、職場の就業規則によって最適な選択肢は異なります。以下で各パターンを詳しく説明します。
育休継続を選んだ場合のメリット・デメリット
育休継続できる理由:看病は「私的事由」として扱われる
育児休業は「子を養育するための休業」です(育児・介護休業法 第2条)。育休中に子どもの看病をすることは、子どもを養育するという育休の目的の範囲内であり、育休を中断・終了する理由にはなりません。
企業は「看病をしたから育休を打ち切る」という措置を取ることはできず、育休継続を拒否することは法律上禁止されています。
育休継続のメリット
育児休業給付金を継続受給できる
育休開始から180日(約6ヶ月)以内:休業前賃金日額の67%、181日以降:休業前賃金日額の50%が支給されます。給付金は非課税で受け取ることができます。
社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除が継続される
育休中は申請により社会保険料が全額免除(労使双方)されます(健康保険法 第159条、厚生年金保険法 第81条の2)。この免除は看病をしていても変わりません。
勤続年数のカウントが継続される
育休期間中も在籍扱いのため、退職金算定や昇給・昇進の年数計算に影響しません。
有給休暇の付与日数への影響なし
育休期間は出勤日数として取り扱われるため、有給休暇の比例付与でも不利になりません。
育休継続のデメリット
育休中は基本的に無給のため(給付金で補填される形)、看病による追加出費が家計を圧迫する可能性があります。
子育てと看病の両立による身体的・精神的な負担が大きくなることが想定されます。
職場への連絡や手続きが増える場合があります。
実例イメージ
月給30万円(標準報酬月額)の方が育休180日以内の場合、給付金は約201,000円/月受け取ることができます。看病で追加費用がかかっても、育休継続を選べばこの給付金は途切れません。
子の看護等休暇(2025年法改正対応)への切り替え
制度の概要
子の看護等休暇は、育児・介護休業法 第16条の2に基づく制度で、育休とは独立した別制度です。育休中であっても、職場に申し出て一時的に復帰した上でこの休暇を利用することが可能ですが、育休を一度終了する必要があるケースもあるため、事前に人事担当者への確認が不可欠です。
2025年4月法改正による主な変更点
| 項目 | 改正前 | 2025年4月改正後 |
|---|---|---|
| 対象となる子の年齢 | 未就学児(小学校入学前) | 小学3年生まで(9歳未満)に拡大 |
| 取得日数 | 年5日(子が2人以上で10日) | 年10日(子が2人以上で15日) |
| 取得単位 | 日・半日・時間単位 | 日・半日・時間単位(継続) |
| 対象となる事由 | 疾病・負傷・予防接種・健康診断 | 感染症による学級閉鎖等も追加 |
※2025年4月改正内容は施行時期・政令により変更される場合があります。最新情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
給付金・社会保険料との関係
子の看護等休暇は法定では無給ですが、就業規則により有給扱いとしている企業も多くあります。
法定の子の看護等休暇を取得した場合、育休給付金の支給対象にはなりません。ただし、取得中も在籍扱いのため勤続年数はカウントされます。取得を理由とした不利益取扱いは育児・介護休業法 第16条の4により禁止されています。
ポイント
育休中にわずかな期間だけ復帰して子の看護等休暇を取得するケースでは、給付金の受給状況が複雑になります。手続きを誤ると給付金の過払いや返還請求が生じる可能性があるため、ハローワーク・社会保険労務士への事前相談を強く推奨します。
傷病休職への変更と給付金への影響(重要)
傷病休職とはどのような場合か
「親の看病」という文脈では、自分自身が精神的・身体的に疲弊して就労不能になった場合に、医師の診断書を根拠に傷病休職(私傷病休職)へ切り替えるケースが想定されます。育休から傷病休職への変更は、育休給付金の受給に重大な影響を及ぼします。
給付金の比較:育休給付金 vs 傷病手当金
| 比較項目 | 育休給付金(雇用保険) | 傷病手当金(健康保険) |
|---|---|---|
| 根拠法 | 雇用保険法 第61条の4 | 健康保険法 第99条 |
| 支給額 | 休業前賃金の67%(180日以内)、50%(181日以降) | 標準報酬日額の3分の2(約67%) |
| 社会保険料免除 | あり(育休中は全額免除) | なし(通常通り発生) |
| 支給期間 | 子が原則1歳(最長3歳)になるまで | 支給開始から最長1年6ヶ月 |
| 課税 | 非課税 | 非課税 |
| 申請先 | ハローワーク(会社経由) | 健康保険組合・協会けんぽ |
傷病休職に切り替えた場合の注意点
育休給付金は原則として支給停止になります。傷病手当金との二重受給は認められません。
傷病休職中は社会保険料の免除が適用されないため、育休中と比較して手取り額が実質的に減少する可能性があります。
傷病休職から再び育休に戻ることができるかどうかは、就業規則の定めによります。育休残期間がある場合でも、会社の規則によっては育休へ復帰できないケースがあります。
育休給付金の受給資格の喪失:傷病休職への変更が「育休終了」と判断されると、子が1歳(または延長理由がある場合は最長3歳)になる前でも給付金の受給資格を失う可能性があります。
重要な判断基準
傷病手当金の支給額(標準報酬日額の2/3)は育休給付金の180日以内の支給額(67%)とほぼ同水準ですが、社会保険料免除がなくなる点で実質的な手取りが大きく下がります。切り替えは慎重に検討してください。
申請手続きと必要書類チェックリスト
育休継続の場合(追加手続き原則不要)
育休継続の場合、子どもの看病を理由とした追加の申請手続きは基本的に不要です。ただし以下を確認してください。
- 育休期間の延長申請が必要な場合は、子の1歳到達の2週間前までに申請する
- 給付金の支給申請(2ヶ月ごと)は会社経由でハローワークへ提出を継続する
- 育休中の就業(一時的な復帰)が10日超・または80時間超になると給付金に影響するため、看病中に一時就業する場合は人事担当者に確認する
子の看護等休暇を取得する場合
| 手続き | 提出先 | タイミング |
|---|---|---|
| 取得申請書 | 会社(就業規則の様式による) | 取得前日まで(緊急時は当日可) |
| 医療機関の受診記録(任意) | 会社が求める場合のみ | 取得後に提出を求められることがある |
傷病休職への切り替えを検討する場合
| 書類 | 取得先 | 提出先 |
|---|---|---|
| 傷病手当金支給申請書 | 協会けんぽ・健保組合のウェブサイト | 加入している健康保険組合 |
| 医師の診断書(療養担当者意見書) | 担当医 | 申請書に添付 |
| 育休終了届(必要な場合) | 会社所定様式 | 会社(ハローワーク経由) |
社会保険労務士・ハローワーク相談窓口の活用を推奨
傷病休職への切り替えは給付金に不可逆的な影響を与える可能性があります。手続き前に最寄りのハローワーク(雇用保険給付課)または社会保険労務士へ無料相談することを強くお勧めします。
制度選択のフローチャート
育休中に子どもの看病が発生した場合の制度選択フローです。
看病期間はどのくらいですか?
数日〜2週間程度の場合は、育休継続を基本に選択して給付金・社保免除を維持します。
数週間以上で就業が困難な状態の場合、自分自身が病気・就労不能かどうかを判断します。
就労不能と判断される場合は傷病休職を検討し、医師の診断書が必要になります。就労不能でない場合は子の看護等休暇(年10日・有給か無給)を活用します。
いずれの場合でも、社労士・ハローワークに相談することをお勧めします。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休中に子どもが入院した場合、育休は続けられますか?
はい、継続できます。入院・手術などの重篤な状況でも、育休は中断されません。育休の目的が「子の養育」であるため、看護・付き添いも養育の一環とみなされます。給付金・社会保険料免除も維持されます。
Q2. 育休中に看病のために一時的に出勤した場合、給付金はどうなりますか?
育休中の就業は一定範囲で認められていますが、就業日数が10日超(または80時間超)になると給付金の支給が停止されます(雇用保険法施行規則 第101条の11の2)。看病の合間に職場に出る場合は、人事担当者に就業時間の記録と報告を欠かさず行ってください。
Q3. 子の看護等休暇は育休中にも取れますか?
育休と子の看護等休暇は別制度のため、育休中は原則として子の看護等休暇を「並行して」利用することはできません。一時的に育休を終了して復帰した上で取得するケースが考えられますが、その場合の給付金への影響が複雑になります。事前にハローワークへ確認してください。
Q4. 育休中の看病を理由に会社から育休を打ち切られた場合、どうすればよいですか?
育児・介護休業法違反となります。まず会社の人事担当者・労働組合に申し入れ、解決しない場合は都道府県労働局雇用環境・均等部(室)または労働基準監督署に相談してください。相談は無料で、匿名での問い合わせも可能です。
Q5. 2025年の法改正で子の看護等休暇の取得日数は増えましたか?
2025年4月施行の改正育児・介護休業法により、子の看護等休暇は対象年齢が小学3年生(9歳未満)まで拡大され、年間取得日数も増加しています(子1人の場合:年10日)。詳細は厚生労働省の公式サイト最新情報をご確認ください。
まとめ:育休継続が原則、切り替えは慎重に
育休中の子どもの看病に関する3つの選択肢を整理すると、次のとおりです。
| 状況 | 推奨選択肢 | 理由 |
|---|---|---|
| 看病期間が短期(数日〜2週間) | 育休継続 | 給付金・社保免除が維持され最も損失が少ない |
| 繰り返し看病が必要な場合 | 子の看護等休暇の活用(職場復帰後) | 2025年改正で日数が増え使いやすくなった |
| 自身が体調不良・就労不能になった場合 | 傷病休職を慎重に検討 | 社労士・ハローワークへ先に相談 |
最優先事項は「育休給付金と社会保険料免除の維持」です。制度の切り替えを検討する際は、必ず事前に会社の人事担当者・ハローワーク・社会保険労務士へ相談し、手続きを誤らないようにしてください。
参考法令・情報源
- 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
- 雇用保険法 第61条の4(育児休業給付金)
- 健康保険法 第99条(傷病手当金)
- 厚生労働省「育児・介護休業法 令和7年(2025年)4月1日施行について」
- ハローワーク育児休業給付 相談窓口(全国共通:0120-058-370)

