この記事でわかること
– 児童扶養手当と育休給付金が「同時に受け取れる」理由と法的根拠
– 育休給付金が所得計算に算入される仕組みと減額リスク
– 令和6年度の所得制限基準と具体的な計算シミュレーション
– 申請の流れと手続き上の注意点
育休給付金と児童扶養手当は併給できるか?【結論】
結論:制度上は「同時受給可能」です。ただし、育休給付金は児童扶養手当の所得計算に算入されるため、手当が減額・停止になるケースがあります。
シングルマザー・シングルファーザーが育児休業を取得した際、「育休給付金をもらうと児童扶養手当が止まるのでは?」と不安に思う方は少なくありません。しかし法律上、両制度の支給を同時に受けることは禁止されていません。
重要なのは「禁止されていないこと」と「受け取れる金額が変わる可能性があること」を区別して理解することです。
併給が可能な理由(制度の目的が異なる)
両制度は目的・根拠法・支給元がまったく異なります。
| 項目 | 育休給付金 | 児童扶養手当 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 雇用保険法第67条の5~第67条の11 | 児童扶養手当法(昭和36年法律第238号) |
| 制度目的 | 育児休業中の所得保障 | ひとり親家庭等の児童養育支援 |
| 支給元 | 雇用保険(ハローワーク) | 都道府県・市区町村 |
| 対象者 | 雇用保険加入の労働者全般 | 母子・父子家庭等の養育者 |
| 課税区分 | 課税所得 | 非課税所得 |
目的が異なる2つの制度であるため、法律上の「併給禁止規定」は存在しません。
ただし育休給付金は「所得」扱いになる重要性
ここが最大の注意点です。
育休給付金は雇用保険の保険給付であり、所得税法上は課税所得として扱われます。児童扶養手当法第3条の3に基づく所得制限の計算においても、育休給付金は「所得」として算入されます。
つまり、
- 育休給付金を受け取っている年の所得が増える
- 所得制限ラインを超えると児童扶養手当が減額または全額停止になる可能性がある
という二段階の理解が必要です。
育休給付金が児童扶養手当の所得制限に影響する仕組み
育休給付金は課税所得に該当する理由
育休給付金(育児休業給付金)は、所得税法上「雇用保険の保険給付」として扱われ、課税所得に分類されます。
📌 法的根拠
所得税法第9条は、失業等給付のうち一部を非課税列挙していますが、育児休業給付金は同条の非課税列挙に含まれていません。支払時点での源泉徴収は行われませんが、住民税の課税対象として扱われます。
児童扶養手当の所得審査は「前年の所得(1月〜12月分)」をベースとするため、育休給付金を受け取った年の翌年8月から所得制限計算に影響が出ます。
児童扶養手当の所得制限基準(令和6年度版)
児童扶養手当の所得制限は扶養親族の数によって変動します。以下は令和6年度の基準額です。
【受給者本人(ひとり親)の所得制限限度額】
| 扶養親族等の数 | 全額支給(所得制限額) | 一部支給(所得制限額) |
|---|---|---|
| 0人 | 49万円未満 | 192万円未満 |
| 1人(児童1人) | 87万円未満 | 230万円未満 |
| 2人 | 125万円未満 | 268万円未満 |
| 3人 | 163万円未満 | 306万円未満 |
※「所得」とは、給与収入から給与所得控除・社会保険料相当額控除等を差し引いた金額です。
※扶養親族に「対象児童」は含みません。
ポイント:育休給付金は上記「所得」の計算に加算されます。
実際の減額計算例
【ケース例】子ども1人を養育するシングルマザーが育休を取得した場合
前年の給与収入(育休前):200万円
育休給付金の年間受給額:90万円(月約7.5万円 × 12ヶ月)
合計収入:290万円
→ 給与所得控除(200万円の場合):約68万円
→ 育休給付金への控除:限定的(雇用保険特有の算定)
概算所得 ≒ 200万円 − 68万円 + 育休給付金相当分
≒ 132万円 + α
子ども1人・扶養親族0人の場合、所得192万円未満であれば一部支給の対象となりますが、育休給付金分が加算されることで全額支給ライン(87万円)を超える可能性が高まります。
⚠️ 注意:所得計算は給与収入だけでなく、事業所得・不動産所得なども合算されます。正確な計算は市区町村窓口へご確認ください。
令和6年度の児童扶養手当所得制限基準を徹底解説
全額支給の所得制限ライン
全額支給を受けるには、受給者本人の所得が「全額支給限度額」を下回る必要があります。
育休期間中は給与が支払われないケースが多いですが、育休給付金が所得算入されることにより、実際の「所得」はゼロにはなりません。
全額支給を維持するために育休給付金が影響するケース
- 前年に育休給付金を受け取った金額が大きいほど、翌年8月改定時に全額支給から一部支給へ移行するリスクが高まります。
- 例:扶養親族0人の場合、所得49万円未満が全額支給の条件。育休給付金が月5万円(年60万円)あれば、それだけで超過する可能性があります。
一部支給の所得制限ライン
一部支給は段階的な減額方式です。所得が増えるにつれて手当額が少なくなる仕組みになっています。
令和6年度・一部支給の手当額(子ども1人の場合)
| 所得区分 | 児童扶養手当月額(概算) |
|---|---|
| 全額支給 | 約45,500円/月 |
| 一部支給(所得低め) | 約45,490円〜 |
| 一部支給(所得中程度) | 約30,000円前後 |
| 一部支給(所得上限付近) | 約10,740円/月 |
| 所得制限超過 | 支給なし |
※手当額は毎年4月に物価スライド改定されます。最新額は市区町村窓口または内閣府公式サイトをご確認ください。
給与所得控除と所得計算のポイント
児童扶養手当における「所得」の計算式は以下の通りです。
所得 = 収入金額 − 給与所得控除額 − 各種控除(社会保険料等相当額 80,000円)
主な控除項目
| 控除種別 | 控除額 |
|---|---|
| 給与所得控除 | 収入に応じて55万円〜195万円 |
| 社会保険料等相当額 | 一律80,000円 |
| 障害者控除 | 270,000円(該当者のみ) |
| 勤労学生控除 | 270,000円(該当者のみ) |
| 医療費控除 | 実支出額から10万円控除 |
💡 育休給付金に適用される控除:育休給付金は「雇用保険の保険給付」として収入に含まれますが、給与所得控除の計算対象となる「給与等の収入金額」には含まれないため、控除額が少なくなる点に注意が必要です。実質的に所得計算上は不利になるケースがあります。
申請手続きの流れと必要書類
育休給付金の申請手続き
育休給付金の申請は原則として事業主(会社)が行います。
STEP 1|育児休業開始前
→ 会社の人事・総務部門に育児休業取得を申告
→ 育児休業申出書を提出(育児・介護休業法に基づく)
STEP 2|育児休業開始後(開始日から約1.5ヶ月以内を目安に)
→ 事業主がハローワークへ「育児休業給付受給資格確認票・申請書」を提出
STEP 3|ハローワーク審査
→ 受給資格の確認・認定
STEP 4|初回支給
→ 育児休業開始から約2~3ヶ月後に2ヶ月分まとめて振込
STEP 5|以降2ヶ月ごとに継続申請・支給
必要書類(事業主経由)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・申請書 | ハローワーク所定様式 |
| 母子健康手帳(写し) | 出生確認用 |
| 賃金台帳・出勤簿(写し) | 賃金支払い状況確認用 |
| 被保険者の通帳写し | 振込先口座確認 |
| 育児休業申出書 | 会社内規定書類 |
児童扶養手当の申請・現況届の手続き
児童扶養手当の申請は居住する市区町村の窓口(子育て支援課・福祉課等)で行います。
新規申請の必要書類(標準例)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 児童扶養手当認定請求書 | 市区町村所定様式 |
| 戸籍謄本(請求者・児童) | 発行後1ヶ月以内のもの |
| 住民票(世帯全員) | マイナンバー記載不可の場合は別途確認 |
| 前年分の源泉徴収票または確定申告書 | 所得確認用 |
| 預金通帳の写し | 振込先確認 |
| 年金手帳(または基礎年金番号通知書) | |
| 申請者・児童の個人番号確認書類 | マイナンバーカード等 |
📋 現況届(毎年8月):受給中の方は毎年8月に「現況届」を市区町村へ提出する必要があります。育休給付金を受給した年度の翌年8月に所得反映が行われるため、このタイミングで減額・停止になるケースがあります。
申請の順序と注意事項
推奨する申請の順序
① 育児休業開始と同時に会社経由で育休給付金申請(ハローワーク)
↓
② 児童扶養手当を現在受給中の方は市区町村へ「育休取得の旨」を相談
↓
③ 翌年8月の現況届時に育休給付金の受給額を所得として申告
↓
④ 所得審査の結果に基づき手当額が改定(8月~翌7月分に反映)
⚠️ 過払い・返還リスクに注意
所得変動を市区町村へ報告せずに児童扶養手当を受け取り続けると、過払い分の返還請求が来る場合があります。育休開始・終了・給付金の変動があった際は、速やかに窓口へ相談することを強くお勧めします。
パパママ育休プラスとひとり親家庭の特別ケース
ひとり親が育休延長した場合の注意点
育休給付金は原則「子どもが1歳になるまで」ですが、以下の条件で延長が可能です。
| 延長条件 | 延長期間 |
|---|---|
| 保育園の入所待機 | 最長1歳6ヶ月まで |
| さらに入所待機が継続 | 最長2歳まで |
| パパママ育休プラス(両親とも取得) | 最長1歳2ヶ月 |
ひとり親の場合、パパママ育休プラスは原則対象外(両親がいることが前提の制度)ですが、保育所の入所待機を理由とした延長は適用されます。
育休期間が長くなるほど、育休給付金の受給期間も長くなり、所得計算への影響期間が延びることに注意が必要です。
育休給付金受給中の児童扶養手当シミュレーション
【モデルケース】シングルマザー・子ども1人・育休中
条件
・育休前年収:240万円
・育休給付金:月額約11.4万円(休業前賃金の67%、6ヶ月まで)
月額約7.6万円(6ヶ月経過後50%)
・育休期間:1年間(1月~12月)
年間育休給付金総額(概算)
= 11.4万円 × 6ヶ月 + 7.6万円 × 6ヶ月
= 68.4万円 + 45.6万円
= 約114万円
所得計算(概算)
= 育休給付金114万円 − 給与所得控除に相当する控除(限定的)
≒ 約90~100万円(概算所得)
→ 扶養親族0人の場合、一部支給ライン(192万円未満)には収まるが、
全額支給ライン(49万円未満)は超過
⇒「一部支給」へ移行する可能性が高い
⚠️ 上記はあくまで概算シミュレーションです。実際の支給額・所得計算は市区町村窓口に必ずご確認ください。
よくある誤解と正しい理解
| よくある誤解 | 正しい理解 |
|---|---|
| 「育休給付金は非課税だから所得に含まれない」 | 育休給付金は課税所得のため所得計算に算入されます |
| 「育休中は無収入なので児童扶養手当は全額もらえる」 | 育休給付金が所得算入されるため全額支給とは限りません |
| 「会社経由の申請なので自分で何もしなくていい」 | 児童扶養手当の現況届は自分で市区町村へ提出が必要です |
| 「育休が終わったら自動的に元の手当額に戻る」 | 翌年8月の現況届後に改定。自動では戻りません |
FAQ:よくある質問
Q1. 育休給付金をもらっている期間中も児童扶養手当の申請はできますか?
A. はい、できます。ただし所得審査があるため、育休給付金の受給額によっては全額支給にならない場合があります。育休開始後に初めて申請する場合も、市区町村窓口で個別相談することをお勧めします。
Q2. 育休給付金と児童扶養手当、どちらを先に申請すべきですか?
A. 育休給付金は育児休業開始後に会社経由で速やかに申請します。児童扶養手当はすでに受給中の方は特別な申請不要ですが、毎年8月の現況届で所得を正しく申告することが重要です。新規申請の場合は出生後なるべく早く市区町村窓口へ行きましょう(遡及支給は申請月から)。
Q3. 育休給付金が児童扶養手当の所得に反映されるのはいつですか?
A. 児童扶養手当の所得審査は「前年(1~12月)の所得」をもとに行われ、毎年8月に改定されます。たとえば2024年中に育休給付金を受給した場合、2025年8月の現況届に反映され、2025年8月~2026年7月分の手当額が変わります。
Q4. 育休が終わって給与収入に戻ったら、児童扶養手当は元の額に戻りますか?
A. 育休終了後に所得が減少した場合、翌年8月の現況届にて所得が審査され直し、手当額が増加(または全額支給に復帰)することがあります。ただし自動ではなく、毎年8月の現況届の提出が前提となります。
Q5. 育休中に転職した場合、育休給付金と児童扶養手当に影響はありますか?
A. 育休給付金は育休中の転職(就職)が確認された時点で支給が停止されます。児童扶養手当は就労再開後の所得によって翌年8月に改定されます。転職・就職活動中は市区町村窓口およびハローワークへ早めに相談してください。
まとめ:制度調整のチェックリスト
- [ ] 育休給付金と児童扶養手当は「同時受給可能」と理解した
- [ ] 育休給付金は課税所得として児童扶養手当の所得計算に算入されることを把握した
- [ ] 令和6年度の所得制限ラインと自分の状況を照らし合わせた
- [ ] 会社経由で育休給付金の申請手続きを開始した
- [ ] 市区町村窓口に育休取得の旨を相談した
- [ ] 毎年8月の「現況届」提出を忘れないようカレンダーに登録した
- [ ] 所得変動が生じた際は速やかに市区町村窓口へ報告することを確認した
📞 相談窓口
– 育休給付金に関する相談:最寄りのハローワーク(公共職業安定所)
– 児童扶養手当に関する相談:お住まいの市区町村 子育て支援課・福祉課等
– 総合的な相談:都道府県の母子・父子福祉センター⚠️ 免責事項:本記事は2025年7月時点の情報に基づいて執筆しています。制度は改正される場合がありますので、最新情報は必ず公式窓口または専門家にご確認ください。
よくある質問(FAQ)
Q. 育休給付金と児童扶養手当は同時にもらえますか?
A. はい、制度上は同時受給可能です。ただし育休給付金は所得として計算されるため、児童扶養手当が減額・停止になるケースがあります。
Q. 育休給付金が児童扶養手当の所得制限に影響するのはなぜですか?
A. 育休給付金は課税所得として扱われ、児童扶養手当の所得制限計算に算入されるためです。所得が増えると手当が減額される可能性があります。
Q. 児童扶養手当の全額支給を受けるための所得制限額は?
A. 令和6年度は、子ども1人の場合87万円未満です。扶養親族の数により異なります。正確な基準は市区町村窓口にご確認ください。
Q. 育休給付金はいつから児童扶養手当の所得に影響しますか?
A. 育休給付金を受け取った年の翌年8月から所得制限計算に影響が出ます。前年の年間所得として算入されるためです。
Q. 育休給付金と児童扶養手当の支給元は同じですか?
A. いいえ、異なります。育休給付金はハローワークから、児童扶養手当は市区町村から支給されます。制度目的も異なる別の制度です。

