配偶者控除が喪失される仕組みと税務申告ガイド|育休給付金受給時の対応

配偶者控除が喪失される仕組みと税務申告ガイド|育休給付金受給時の対応 育休給付金

育休給付金を受け取っている配偶者がいる場合、「配偶者控除はそのまま使えるの?」と不安を感じる方は少なくありません。育休給付金は非課税ですが、育休前の給与や復職後の収入との合算によって、配偶者控除の喪失条件を満たしてしまうケースがあります

本記事では、配偶者控除が喪失される仕組みから、いつ・どのように税務申告すべきかを、最新制度(2024年対応)に基づいてわかりやすく解説します。


配偶者控除が喪失される仕組み|育休給付金との関係

配偶者控除の基本要件(4つの条件)

配偶者控除は、配偶者がいる納税者が一定の所得控除を受けられる制度です。適用を受けるには、以下の4要件すべてを満たす必要があります。

要件 内容
① 納税者の所得制限 合計所得金額が1,000万円以下
② 生計同一 配偶者と生計を一にしていること
③ 配偶者の所得制限 配偶者の合計所得金額が48万円以下
④ 専従者でないこと 青色申告者の事業専従者に該当しないこと

この中で育休給付金受給時に問題になるのが、③ 配偶者の合計所得金額が48万円以下という条件です。

法的根拠は所得税法第83条(配偶者控除)および同法施行令第252条(合計所得金額の算定)に定められています。


育休給付金は「非課税」でも控除喪失になる理由

多くの方が誤解しやすいポイントを整理します。

育休給付金(雇用保険法第61条の4に基づく育児休業給付金)は非課税所得であり、配偶者の「合計所得金額」には算入されません。

つまり、給付金そのものが原因で配偶者控除が喪失されることはありません

では、なぜ控除喪失が問題になるのでしょうか?それは以下のケースで発生します。

  • 育休前に得た給与収入が48万円を超える合計所得金額となる場合
  • 育休中に副業・事業所得がある場合
  • 産休中の給与や手当が支払われている場合
  • 復職後の給与との合算が年間で48万円超になる場合

つまり、給付金以外の所得が判定基準を超えるかどうかが核心です。


2020年の制度改正で基準が38万円→48万円に変更

2020年(令和2年)の税制改正により、配偶者控除の所得要件が引き上げられました。

改正前(2019年以前) 改正後(2020年以降)
合計所得金額が38万円以下 合計所得金額が48万円以下
給与収入に換算して約103万円以下 給与収入に換算して約103万円以下

※給与所得控除の最低額が65万円から55万円に引き下げられたことで、合計所得金額の上限が38万円から48万円に変更されましたが、給与収入ベースでは依然として103万円ラインが目安です。


配偶者控除を喪失する所得要件|48万円ボーダーライン

給与所得者の場合の48万円判定(給与所得控除の仕組み)

給与収入がある配偶者の「合計所得金額」は、以下のように計算します。

合計所得金額 = 給与収入 ー 給与所得控除額

給与所得控除額は収入金額に応じて決まっており、収入162.5万円以下の場合は一律55万円が控除されます。

計算例:

給与収入 給与所得控除 合計所得金額 配偶者控除
80万円 55万円 25万円 ✅ 適用可
103万円 55万円 48万円 ✅ 適用可(ぎりぎり)
110万円 55万円 55万円 喪失
130万円 55万円 75万円 喪失

育休中に給与が支払われていない期間が長ければ問題ありませんが、年初や年末に在職している場合は注意が必要です。


事業所得がある配偶者の控除喪失ケース

育休中にフリーランス・副業など事業所得がある場合は、以下の計算が必要です。

合計所得金額 = 事業収入 ー 必要経費

必要経費を差し引いた後の所得が48万円を超えると、配偶者控除は喪失します。経費計上が少ない場合は特に注意が必要です。


複数所得がある場合の合計所得金額の計算

給与所得と事業所得が両方ある場合は合算します。

計算例:
– 給与収入80万円 → 給与所得25万円
– 副業(事業所得)30万円(経費差引後)
合計所得金額:55万円 → 配偶者控除❌喪失

このように、それぞれ単独では問題がなくても、合算すると48万円を超えるケースがあります。


パート・アルバイト収入での控除喪失事例

産休直前・育休復帰後にパート勤務をしている場合、年間の給与収入が103万円を超えると配偶者控除が喪失します。

月収換算の目安:
– 月平均85,000円 × 12ヶ月 = 約102万円 → ✅ ギリギリ適用可
– 月平均90,000円 × 12ヶ月 = 約108万円 → ❌ 超過して喪失

育休期間中は無給でも、年初・年末の在職期間の収入が積み上がるため、年間トータルでの確認が不可欠です。


育休給付金受給時の控除喪失タイミング|いつから適用される

育休給付金受給開始月の判定基準

配偶者控除の適否は、その年(1月1日〜12月31日)の合計所得金額で判定します。月単位ではなく、年間の所得合計額で決まります。

したがって、育休を開始した月に控除が喪失するわけではなく、年末時点での年間合計所得が48万円を超えていたかどうかが判断基準となります。


年末調整での控除喪失の反映時期

年末調整は毎年12月に行われ、その年の所得確定後に配偶者控除の適否を確定させます。

【年末調整の流れ】
10〜11月:会社から「扶養控除等異動申告書」「配偶者控除等申告書」が配布される
     ↓
11〜12月:配偶者の年間所得見込みを申告
     ↓
12月:年末調整完了・源泉徴収票発行
     ↓
翌年1〜3月:実際の所得と異なる場合は確定申告で修正

育休中の配偶者がいる場合、年末調整時点では所得見込みを慎重に計算し、申告書に正確な金額を記載することが大切です。


月途中から育休開始の場合の計算

育休が月の途中から始まる場合でも、その月に支払われた給与は所得として計算に含まれます。

例:4月15日から育休開始の場合
– 1月〜4月15日:給与収入あり(例:月30万円 × 約3.5ヶ月 ≒ 105万円)
– 4月16日〜12月:育休給付金(非課税・所得不算入)
年間合計所得:105万円 − 55万円(給与所得控除)= 50万円 → 配偶者控除❌喪失

このように、育休前の給与だけで48万円の合計所得を超えることがあるため、要注意です。


控除喪失と手当支給のタイムラグ対応

会社から支給される「配偶者手当(家族手当)」は、所得税上の配偶者控除とは別の制度です。

制度 根拠 変更手続き
配偶者控除(税) 所得税法 年末調整・確定申告
配偶者手当(給与) 会社規程 会社への届出(控除喪失届)
健康保険の被扶養者 健康保険法 保険者への届出(年収130万円基準)

配偶者控除を喪失した場合は、会社に「控除喪失届」または「扶養異動届」を提出する必要があります。


税務申告の具体的な手続きと必要書類

年末調整で対応するケース

配偶者の所得が確定した年末に、以下の書類を会社(勤務先)へ提出します。

必要書類
1. 給与所得者の配偶者控除等申告書(会社から配布)
2. 配偶者の源泉徴収票の写し(復職している場合)
3. 育休給付金の支給通知書(参考資料として)

記載のポイント:
– 配偶者の合計所得金額の見込み額を正確に記載する
– 配偶者控除の適用可否を○×で選択する
– 所得が48万円超の場合は「配偶者特別控除」への切り替えを検討(38万円超〜133万円以下なら段階的に控除あり)


確定申告で修正するケース

以下の場合は、翌年2月16日〜3月15日の確定申告期間中に申告が必要です。

  • 年末調整後に配偶者の所得が確定し、控除適用を誤っていたことが判明した場合
  • 給与所得以外(副業・事業所得)がある場合
  • 年末調整を実施していない(フリーランスの納税者など)

確定申告の必要書類:

書類 取得先
確定申告書(第一表・第二表) 国税庁HPでダウンロードまたは税務署
配偶者の源泉徴収票 配偶者の勤務先
配偶者の所得証明書 市区町村役場
育休給付金の支給決定通知書 ハローワーク
マイナンバー確認書類 本人保管

申告方法:
e-Tax(電子申告):国税庁の確定申告書等作成コーナーから24時間対応
税務署窓口:管轄の税務署に持参(2月16日〜3月15日)
郵送提出:申告書に必要書類を同封して税務署宛に郵送


配偶者特別控除への切り替えを忘れずに

配偶者の合計所得金額が48万円を超えた場合でも、133万円以下であれば「配偶者特別控除」が適用できます。

配偶者の合計所得金額 配偶者特別控除額(納税者の所得900万円以下の場合)
48万円超〜95万円以下 38万円
95万円超〜100万円以下 36万円
100万円超〜105万円以下 31万円
105万円超〜110万円以下 26万円
133万円超 0円(控除なし)

「配偶者控除が使えなくなった」と焦らず、配偶者特別控除の申告に切り替えることで税負担を軽減できます。


社会保険(健康保険)の被扶養者判定との違い

税制上の配偶者控除と混同されやすいのが、健康保険の被扶養者(扶養認定)です。

比較項目 配偶者控除(税) 健康保険の被扶養者(社保)
判定基準 年間合計所得48万円以下 年収130万円未満(見込み)
育休給付金の扱い 算入しない(非課税) 算入する(収入とみなす)
判定タイミング 年末(年間合計) 随時(月収ベースで判定)
手続き先 税務署・会社 健康保険組合・協会けんぽ

特に注意すべきは、健康保険の被扶養者判定では育休給付金も「収入」として含めることです。月額の給付金が108,333円(年収130万円÷12ヶ月)を超えると、被扶養者から外れる可能性があります。育休給付金は休業前賃金の67%(最初の180日)または50%(181日以降)が支給されますので、元の月給が高い場合は特に確認が必要です。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休給付金は配偶者控除の所得計算に含まれますか?

A. いいえ、含まれません。育休給付金(雇用保険の育児休業給付金)は非課税所得のため、配偶者の合計所得金額には算入されません。ただし、育休前の給与収入は含まれます。

Q2. 育休中に配偶者控除が喪失した場合、いつ申告すればいいですか?

A. 原則として年末調整(12月)で対応します。年末調整で処理できなかった場合や、申告内容に誤りがあった場合は翌年2月16日〜3月15日の確定申告で修正してください。

Q3. 配偶者の合計所得が48万円を超えたら控除はゼロになりますか?

A. ゼロにはなりません。配偶者の合計所得が48万円超〜133万円以下であれば、配偶者特別控除(最大38万円)が段階的に適用されます。133万円を超えた場合にはじめて控除額がゼロとなります。

Q4. 育休中に副業をした場合、配偶者控除に影響しますか?

A. はい、影響します。副業による事業所得や雑所得が給与所得と合算され、合計所得金額が48万円を超えると配偶者控除は喪失します。副業の収入がある場合は確定申告も必要になります。

Q5. 会社の「配偶者手当(家族手当)」は配偶者控除と同じ基準で失いますか?

A. 異なります。配偶者手当は会社の就業規則に基づく制度であり、基準は会社によって異なります。配偶者控除を喪失しても手当が継続される場合や、逆に手当の基準が異なる場合もあるため、勤務先の人事部門に確認してください。

Q6. 健康保険の扶養(被扶養者)も同時に外れますか?

A. 税制上の配偶者控除と健康保険の被扶養者認定は別制度です。健康保険の被扶養者は年収130万円未満(育休給付金を含む)が基準となり、給付金の受給額によっては被扶養者から外れる場合があります。保険者(健康保険組合・協会けんぽ)に確認してください。


まとめ

育休給付金受給中の配偶者控除については、以下のポイントを押さえておきましょう。

  1. 育休給付金自体は非課税であり、配偶者の合計所得金額に含まれない
  2. 配偶者控除が喪失するのは、育休前の給与や副業収入などの合計所得が48万円(給与収入換算で約103万円)を超えた場合
  3. 判定は年間合計で行われ、月単位ではない
  4. 控除喪失時は年末調整または確定申告で対応する
  5. 48万円超でも133万円以下なら配偶者特別控除が使える
  6. 健康保険の被扶養者判定とは別制度であり、育休給付金が収入に含まれる点に注意

不明点がある場合は、管轄の税務署または社会保険労務士・税理士に早めに相談することをおすすめします。制度の細かな適用は個人の状況によって異なるため、専門家のアドバイスを活用してください。


関連法令:
– 所得税法 第83条(配偶者控除)・第83条の2(配偶者特別控除)
– 所得税法施行令 第252条(合計所得金額)
– 雇用保険法 第61条の4(育児休業給付金)
– 所得税基本通達 34-3(非課税給付金の取扱い)

よくある質問(FAQ)

Q. 育休給付金を受け取っていても配偶者控除は使えますか?
A. 育休給付金は非課税のため配偶者の所得に含まれません。ただし育休前後の給与など他の所得が48万円を超えると、配偶者控除は喪失します。

Q. 配偶者控除の所得要件48万円と103万円の違いは何ですか?
A. 48万円は「合計所得金額」で、103万円は「給与収入」です。給与所得控除55万円を差し引くと、給与収入103万円≒合計所得金額48万円となります。

Q. 育休中に副業がある場合、配偶者控除はどうなりますか?
A. 副業の事業所得から必要経費を差し引いた金額が給与所得と合算され、合計が48万円を超えると配偶者控除は喪失します。

Q. 2020年の税制改正で配偶者控除の基準が変わったのですか?
A. はい、2020年から所得要件が38万円から48万円に引き上げられました。給与所得控除の改正に伴う変更です。

Q. 配偶者控除を喪失した場合、税務申告では何をすべきですか?
A. 確定申告書で配偶者控除欄を空白にするか、年末調整で扶養親族等申告書の配偶者控除欄に「控除対象外」を記載してください。

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