ボーナス・賞与を除いた賃金日額計算「育休給付金」完全ガイド

ボーナス・賞与を除いた賃金日額計算「育休給付金」完全ガイド 育休給付金

育児休業給付金(以下「育休給付金」)の受給額を正確に把握するには、賃金日額の計算ルールを理解することが不可欠です。なかでも「ボーナス・賞与は賃金日額計算から除外される」というルールは、給付金額に大きく影響するにもかかわらず、見落とされがちなポイントです。

本ガイドでは、法的根拠・計算方法・申請書類・実例をステップごとに解説します。育休取得を検討している方はもちろん、人事担当者が社員をサポートする際にも役立つ内容です。


育休給付金における「ボーナス・賞与除外」の基本ルール

区分 賞与あり 賞与なし
計算対象の給与 月給×12ヶ月(賞与は除外) 月給×12ヶ月
賃金日額 年間給与÷365日 年間給与÷365日
給付金額 賃金日額×50%×休業日数 賃金日額×50%×休業日数
例)年間給与360万円の場合 賃金日額:約9,863円 賃金日額:約9,863円
6ヶ月休業時の給付金 約888,000円(賞与除外で減額) 約888,000円

育休給付金の支給額は「賃金日額」を基準として計算されます。この賃金日額を算出する際、ボーナス・賞与など一定の賃金は計算対象から除外されます。なぜ除外されるのか、制度設計の背景と法的根拠から確認しましょう。

除外ルールが設けられた理由

育休給付金は「休業前の賃金水準を一定程度補償する」ことを目的とした制度です。賞与・ボーナスは支給時期が偏っており、支給月と非支給月で毎月の賃金に大きな差が生じます。

もし賞与を含めた賃金で日額計算を行うと、賞与支給月に育休を開始した人と非支給月に育休を開始した人との間で、給付金額に大きな不公平が生じてしまいます。この不公平を防ぎ、安定した給付水準を保つために、賞与・ボーナスは除外されるよう制度設計されています。

法的根拠となる法律・施行規則

育休給付金の賃金日額計算における賞与除外ルールは、以下の法令に基づいています。

法令名 条文 主な内容
雇用保険法 第61条の4 育児休業給付金の支給要件・算定基準
雇用保険法施行規則 第101条の11 賃金日額の算定方法
雇用保険法 第17条第4項 賃金日額算定における除外賃金の定義

雇用保険法第17条第4項(賃金日額の算定)では、次のように規定されています。

「賃金日額の算定に当たっては、臨時に支払われた賃金及び3箇月を超える期間ごとに支払われる賃金は、算入しない。」

この規定により、ハローワークが育休給付金の賃金日額を計算する際は、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(=賞与・ボーナス等)を除いた金額を使用することが法律上義務付けられています。

ポイント: 「3か月を超える期間ごと」という基準が重要です。月1回支給の皆勤手当などは除外されませんが、年2回支給のボーナスは除外対象となります。

「賞与・ボーナス」の定義範囲

除外対象となる賃金の範囲を正確に理解しましょう。

✅ 除外対象(賃金日額計算に含まれない)

  • 夏季賞与(年1回・年2回支給)
  • 冬季賞与(年1回・年2回支給)
  • 決算賞与(年1回支給)
  • 業績連動型インセンティブ(3か月超の間隔で支給されるもの)
  • 期末手当(3か月超ごとの支給の場合)

✅ 除外対象外(賃金日額計算に含まれる)

  • 毎月支給の基本給
  • 住宅手当(毎月支給)
  • 家族手当(毎月支給)
  • 通勤手当(毎月支給)
  • 残業手当・時間外手当(毎月精算・支給)
  • 資格手当・役職手当(毎月支給)

判定のポイントは「支給周期が3か月を超えるか否か」です。名称が「手当」であっても3か月超の間隔で支給されれば除外対象となり、「賞与」という名称であっても毎月支給されていれば原則として除外対象外となります。実際の判定はハローワークが給与明細書をもとに行います。


賃金日額の計算方法|ボーナス・賞与を除く具体的計算ステップ

賃金日額の計算は「育休開始前6か月間の賃金総額(賞与除外)÷ 180日」という式が基本です。以下でステップごとに解説します。

計算対象期間と除外対象の明確化

STEP1:対象期間の特定

育休給付金の賃金日額は、育児休業開始日の直前6か月間の賃金をもとに計算します。

例:育休開始日が2025年4月1日の場合
→ 対象期間:2024年10月1日〜2025年3月31日(6か月間)

ただし、この6か月間に給与が支払われなかった月(傷病休暇・産前産後休業など)がある場合は、その月を除いて直前6か月分が確保できるよう期間を延長します。

STEP2:対象期間内の賃金から賞与を除外

対象6か月間の給与明細書を確認し、賞与・ボーナスが含まれていれば合計額から差し引きます。

【計算例】
毎月の基本給:300,000円
住宅手当:20,000円
毎月の合計:320,000円

対象6か月の賃金合計:320,000円 × 6か月 = 1,920,000円

→ この期間中に冬季賞与 500,000円が支給されていた場合も、
  賃金日額計算には含めない(除外)

賃金日額計算に使用する金額:1,920,000円

注意: 給与明細書に「賞与」「ボーナス」と明記された項目を除外するだけでなく、「特別手当」「決算手当」など名称が異なっても支給周期が3か月超のものは除外対象となります。不明な場合はハローワークに確認しましょう。

賃金日額と給付金額の計算式

STEP3:賃金日額を算出する

【賃金日額の計算式】

賃金日額 = 対象6か月の賃金合計額(賞与除外)÷ 180日

【上記計算例の場合】
1,920,000円 ÷ 180日 = 10,667円(賃金日額)

「180日」は6か月を一律30日換算した日数です。実際の暦日数ではありません。

STEP4:給付率を適用して1日あたりの給付金額を算出

育休給付金の給付率は、育休開始から一定期間で異なります。

育休開始からの期間 給付率 備考
開始〜180日目まで 67% 実質的な手取り補填率は約80%相当
181日目以降 50%
【1日あたりの給付金額】

育休開始〜180日目:10,667円 × 67% ≒ 7,147円/日

181日目以降:10,667円 × 50% ≒ 5,334円/日

STEP5:2か月分の支給額を試算する

育休給付金は原則として2か月ごとにまとめて支給されます(支給単位期間)。

【2か月分(60日)の支給額試算】

開始〜180日目の2か月分:7,147円/日 × 60日 = 428,820円

181日目以降の2か月分:5,334円/日 × 60日 = 320,040円

上限・下限額について: 賃金日額には上限額・下限額が設定されており、毎年8月1日に改定されます。2024年8月1日以降は上限30,887円、下限2,869円です。最新の金額は必ずハローワークや厚生労働省公式サイトで確認してください。


ボーナス除外が給付金額に与える具体的な影響

賞与ありと賞与なしのケース比較

賞与除外ルールが実際の給付金額にどれほど影響するか、比較で確認しましょう。

ケースA:育休開始前6か月間に賞与なし

月給(基本給+手当):350,000円
対象6か月の賃金合計:350,000円 × 6か月 = 2,100,000円

賃金日額:2,100,000円 ÷ 180日 = 11,667円

1日あたりの給付(67%):11,667円 × 67% ≒ 7,817円
2か月分(60日):約469,000円

ケースB:育休開始前6か月間に冬季賞与600,000円あり

月給:350,000円(ケースAと同額)
対象6か月の賃金合計(賞与を除外):350,000円 × 6か月 = 2,100,000円

※賞与600,000円は除外されるため計算には使用しない

賃金日額:2,100,000円 ÷ 180日 = 11,667円(ケースAと同額)

このケースBのポイント: 賞与が600,000円あっても除外されるため、賃金日額・給付金額はケースAとまったく変わりません。賞与が高額であっても低額であっても、育休給付金の受給額には影響しないことがわかります。

ケースC:毎月の賃金が高い場合(賞与なし)

月給:450,000円
対象6か月の賃金合計:450,000円 × 6か月 = 2,700,000円

賃金日額:2,700,000円 ÷ 180日 = 15,000円

ただし上限額(30,887円)の範囲内なので上限適用なし

1日あたりの給付(67%):15,000円 × 67% = 10,050円
2か月分(60日):603,000円

まとめ: 育休給付金の受給額を上げたい場合、毎月の給与(基本給・毎月支給の手当)を高く維持することが重要です。賞与・ボーナスがいくら高くても給付金額には反映されません。


申請手続きと必要書類

申請の流れ(フローチャート)

育休給付金の申請は、原則として事業主(会社)を通じてハローワークに提出します。

【申請手続きフロー】

STEP1:育児休業の開始(労働者が会社に申出)
  ↓
STEP2:会社が「育児休業給付受給資格確認票・
       育児休業給付金支給申請書(初回)」を作成
  ↓
STEP3:初回申請書類一式をハローワークへ提出
      (育休開始日から4か月以内が目安)
  ↓
STEP4:ハローワークが賃金日額を計算・給付金額を決定
      (賞与は自動的に除外して計算)
  ↓
STEP5:支給決定通知書の交付・初回給付金の振込
  ↓
STEP6:以後2か月ごとに支給申請書を提出・受給継続

申請期限の注意点: 支給申請書の提出期限は、各支給対象期間の末日翌日から2か月以内です。期限を過ぎると原則として受給できなくなるため、会社の人事担当者と連携して早めに対応しましょう。

申請に必要な書類一覧

初回申請時の必要書類

書類名 入手先 主な記載内容・注意点
育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書 ハローワーク・厚生労働省HP 育休開始日・子の生年月日・口座情報などを記載
母子健康手帳のコピー 本人が保有 出産日が確認できるページ(表紙+出産日記載ページ)
給与明細書(休業開始前6か月分) 会社が保管または本人保有 賞与を除いた月例賃金の確認に使用
雇用保険被保険者証のコピー 本人または会社が保管 被保険者番号の確認用
育児休業取扱通知書のコピー 会社が作成 会社が育休を承認したことを示す書類
賃金台帳(会社が作成) 会社が作成・提出 月例賃金・賞与を区別して記載

賞与の記載について: 賃金台帳・給与明細に賞与が含まれている場合も、ハローワークが自動的に除外して計算します。申請者側が自分で計算して除外した金額を記載する必要はありません。

2回目以降の申請時(2か月ごと)

  • 育児休業給付金支給申請書(ハローワーク所定様式)
  • 出勤簿または賃金台帳のコピー(支給対象期間分)

よくあるケースと注意事項

産前産後休業(産休)と育休が連続する場合

産休(産前6週・産後8週)と育休が連続する場合、産休中は育休給付金の対象外です。育休給付金の計算は育児休業の開始日から遡った6か月が基準となります。

産前産後休業中は給与が支払われないことが多く、この期間は「賃金が支払われなかった期間」として計算対象外に調整されます。賃金日額計算に使用する6か月の起算点が産休前の期間まで遡ることになるため、産休前の給与水準が育休給付金の額に反映されます。

育休中にボーナスが支給された場合

育休中(育児休業開始後)に賞与が支払われるケースもあります。これは賃金日額の計算とは別の問題です。

育休中に賃金が支払われた場合、支払われた賃金額が「賃金日額の80%以上」であれば給付金は支給停止、「80%未満」であれば支払われた賃金額に応じて給付金が減額されます。ただし、育休中の賞与支給については、就業規則・賞与規程の定めによって異なるため、会社の人事担当者に確認することが重要です。

パパ・ママ育休プラス適用時の計算

「パパ・ママ育休プラス」制度(両親がともに育休を取得する場合に育休期間が最大1歳2か月まで延長される制度)を利用する場合も、賃金日額の計算方法は変わりません。父親・母親それぞれが「自分の育休開始日前6か月の月例賃金(賞与除外)÷ 180日」で個別に計算されます。


FAQ:ボーナス・賞与除外ルールに関するよくある質問

Q1. 育休開始直前の月にボーナスが支給された場合でも除外されますか?

はい、支給時期にかかわらず、3か月を超える期間ごとに支払われる賃金(ボーナス・賞与)は賃金日額計算から除外されます。育休開始の前月に受け取った賞与であっても例外はありません。

Q2. 毎月支給される「月例賞与」は除外されますか?

名称に「賞与」とあっても、毎月支給されている場合は「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」には該当しないため、原則として除外対象外(計算に含める)となります。ただし実態として不規則な支給になっていれば判定が異なる場合があるため、ハローワークに確認してください。

Q3. 育休中に前の期間分の賞与が後払いで支給された場合はどうなりますか?

賃金日額計算の基準日は育休開始前6か月の期間に「支払われた賃金」です。育休開始後に支給された賞与は賃金日額計算の対象期間外となりますが、育休中の給付金減額・停止のルール(賃金80%ルール)の対象として確認が必要です。詳細はハローワークへ相談することをお勧めします。

Q4. 申請書類に賞与額を記載する必要はありますか?

賃金台帳には賞与を含む実際の支払い実績を正確に記載する必要があります。ただし、賞与を除外した計算はハローワークが行いますので、申請者・会社が自分で除外後の金額を計算して記載する必要はありません。正確な賃金台帳を提出することが重要です。

Q5. 自分で給付金額の見込みを計算したい場合はどうすればよいですか?

「育休開始前6か月の月例賃金合計 ÷ 180日 × 67%(または50%)」が基本計算式です。月例賃金には毎月支給の基本給・各種手当(住宅・家族・通勤・残業など)を含め、賞与・ボーナスは含めません。厚生労働省の「育児休業給付金計算ツール」(公式サイト掲載)も活用できます。


まとめ:賃金日額計算のポイントを押さえて正確に受給準備を

育休給付金の賃金日額計算における「ボーナス・賞与除外ルール」のポイントを整理します。

チェック項目 内容
✅ 法的根拠の確認 雇用保険法第17条第4項・同法施行規則101条の11
✅ 除外対象の判定 3か月を超える期間ごとに支払われる賃金はすべて除外
✅ 計算期間の確認 育休開始前6か月の月例賃金合計 ÷ 180日
✅ 給付率の確認 開始〜180日目:67% / 181日目以降:50%
✅ 上限・下限額の確認 毎年8月1日改定(最新値をハローワークで確認)
✅ 申請期限の厳守 各支給対象期間末日翌日から2か月以内
✅ 書類準備 給与明細書・母子健康手帳コピー・賃金台帳など

育休給付金の受給額は、ボーナスではなく毎月の給与水準に左右されます。 育休取得を計画している方は、育休開始前6か月の月例賃金をもとに事前にシミュレーションしておくことで、育休中の家計計画をより正確に立てることができます。

申請手続きや受給額の詳細については、お住まいの地域を管轄するハローワーク(公共職業安定所)または会社の人事担当者にご相談ください。


免責事項: 本記事は2025年時点の法令・制度に基づいて作成しています。育休給付金の制度内容・給付率・上限額は改正されることがあります。最新情報は厚生労働省公式サイトまたはハローワークにてご確認ください。

よくある質問(FAQ)

Q. 育休給付金の計算で、ボーナス・賞与が除外される理由は?
A. 賞与は支給時期が偏り、支給月と非支給月で毎月の賃金に差が生じるため。これにより給付金額の不公平を防ぎ、安定した給付水準を保つためです。

Q. 毎月支給される手当は育休給付金の計算に含まれますか?
A. はい。住宅手当、家族手当、通勤手当など毎月支給される手当は、賃金日額計算に含まれます。除外対象は3か月を超える周期で支給される賃金です。

Q. 育休給付金の賃金日額の計算方法は?
A. 育休開始前6か月間の賃金総額(ボーナス除外)を180日で割ります。計算式:対象6か月の賃金合計÷180日=賃金日額

Q. 育休給付金の計算対象期間はいつからいつまで?
A. 育児休業開始日の直前6か月間です。例えば4月1日開始なら、前年10月1日~3月31日が対象期間となります。

Q. 期末手当や決算賞与は育休給付金の計算から除外されますか?
A. はい。3か月を超える周期で支給される期末手当や決算賞与は除外対象です。ハローワークが給与明細をもとに判定します。

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