育休中の住宅ローン控除:給与減少時の確定申告手続きと還付金計算【2024年最新】

育休中の住宅ローン控除:給与減少時の確定申告手続きと還付金計算【2024年最新】 育児休業制度

育児休業(育休)を取得すると、給与が大幅に減少します。そのため「住宅ローンを抱えているのに、今年は税金を払いすぎていないか?」「住宅ローン控除はきちんと受けられるのか?」と不安になる方は少なくありません。

本記事では、育休中の住宅ローン控除の仕組みから、確定申告の手続き、還付金の具体的な計算方法まで、2024年時点の最新情報をもとに実務的に解説します。育休取得者本人はもちろん、パートナーや人事担当者の方にも役立てていただける完全ガイドです。


育休中の住宅ローン控除とは|制度の基本理解

育児休業期間中における住宅ローン控除は、給与減少時に税負担を軽減する重要な制度です。所得税法第41条に基づく控除で、ローン名義人が実際に居住する住宅について、10年以上のローン返済期間で適用されます。2022年10月の法改正により、給与計算方法が大幅に変更され、育休による給与減少をより実態に即した形で反映できるようになりました。

住宅ローン控除の法的根拠(所得税法第41条・改正内容)

住宅ローン控除の正式名称は「住宅借入金等特別控除」といい、所得税法第41条に規定されています。住宅ローンの年末残高の一定割合を、毎年の所得税額から直接差し引くことができる強力な税制優遇措置です。

控除率や上限額は取得時期・住宅の種類によって異なりますが、2022年度税制改正により、2022年〜2025年入居の場合、控除率は年末残高の0.7%(改正前は1.0%)、最大控除期間は13年に設定されています。

2022年10月の所得税法施行令改正とは?

育休と住宅ローン控除の関係において、特に注目すべき改正が2022年10月の所得税法施行令の改正です。この改正は、育休取得者にとって大きなメリットをもたらしました。

項目 改正前 改正後
給与計算方法 暦年ベースで機械的に計算 給与減少の実態を反映した合理的計算方法が認められる
育休期間中の扱い 年間給与を単純合算 月次ベースで実態を考慮可能
実務上の影響 育休月の無給期間も含めて計算 育休中の無給・低給月を適切に反映できる

改正前は、育休で給与がゼロになった月も含めて「1年分の給与」として機械的に計算されていました。これでは、実態よりも所得が高く算出される可能性があり、控除しきれない税額が生じるケースがありました。改正後は、実際の給与支払い実態を反映した計算が認められるようになったため、育休取得者が正当な控除を受けやすくなっています。

育休と住宅ローン控除の関係性

育児・介護休業法に基づいて取得する育児休業中は、雇用保険から「育児休業給付金」が支給されます。この給付金には、税務上きわめて重要な特性があります。

育児休業給付金は非課税所得です。

これは、雇用保険法第61条の定めにより、育児休業給付金には所得税・住民税がかかりません。つまり、育休中に受け取る給付金は「所得」としてカウントされず、課税対象となる所得金額が大きく下がります。

この仕組みが育休と住宅ローン控除に与える影響は次の2点です。

  1. 課税所得が減るため、納める所得税が大幅に減少する
  2. 所得税が少なくなると、住宅ローン控除で引ける税額も少なくなる(控除しきれない可能性がある)

育休期間が長い場合、課税所得がほぼゼロになり、住宅ローン控除額が余ってしまうこともあります。ただし住民税からの控除で一部補完できるため、確定申告を適切に行うことが重要です。


育休中に住宅ローン控除を受ける対象者の条件

住宅ローン控除と育休両方の要件を満たす必要があり、単なる育休取得だけでは不充分です。本人のローン名義性、実居住要件、給与所得の有無が重要なポイントとなります。

住宅ローン控除の基本要件(居住要件・ローン要件)

住宅ローン控除を受けるには、以下の要件をすべて満たす必要があります。

【住宅側の要件】
– 床面積が50㎡以上(2024年現在。所得1,000万円以下の場合は40㎡以上に緩和措置あり)
– 取得した住宅に本人が実際に居住していること
– 新築・中古ともに対象(ただし中古は築年数等の条件あり)

【ローン側の要件】
– 金融機関等からの借入で、返済期間が10年以上
本人がローン名義人であること(共有名義の場合は持分に応じた控除)
– 借入金が住宅の取得・増改築のためのものであること

【所得側の要件】
– その年の合計所得金額が2,000万円以下(2022年改正後)
– 給与所得など、課税対象となる所得があること

⚠️ 育休中に特に注意すべき点:育休給付金は非課税のため「所得」にカウントされません。育休期間が長く、かつその年の給与支払いがほとんどない場合、課税所得がゼロ〜非常に少なくなり、住宅ローン控除の「控除しきれない分」が生じます。

育休取得者に固有の適用条件と注意点

育休を取得した場合に特有の条件として、以下を把握しておきましょう。

✅ 控除を受けられるケース
– 育休取得年に一定期間は給与が発生しており、課税所得がある
– 育休期間が年の途中から始まり、育休前の給与所得がある
– 配偶者と共有名義のローンで、配偶者が課税所得を持っている

❌ 控除が受けにくいケース・注意が必要なケース

状況 課題
1月から12月まで丸々育休で給与がゼロ 課税所得がなく所得税が発生しないため、控除自体が適用できない
住民税も非課税になるほど所得が低い 住民税からの補完控除も受けられない可能性がある
配偶者名義のみのローン 本人(育休取得者)は控除対象外
非正規雇用で育休制度の対象外 育児・介護休業法の保護を受けられないケースあり
海外赴任中(非居住者) 日本の所得税法上の居住者でないため対象外

配偶者控除・配偶者特別控除との関係

育休で所得が大幅に減少した場合、配偶者(育休取得者)が扶養に入れるかどうかも重要な検討ポイントです。

  • 育休取得者の合計所得が48万円以下(給与収入103万円以下に相当)の場合:配偶者控除の対象
  • 合計所得が48万円超133万円以下の場合:配偶者特別控除の対象

繰り返しになりますが、育児休業給付金は非課税所得のため所得に含まれません。したがって、育休中に給与の支払いが少なければ、配偶者(育休取得者)の合計所得が48万円以下となり、もう一方の配偶者が配偶者控除を受けられるケースも多くあります

これは世帯全体の税負担軽減につながるため、ぜひ確認してください。


確定申告の手続きフロー|ステップ別ガイド

手続きの全体像

育休中の住宅ローン控除手続きには、大きく「初年度(住宅取得年)」と「2年目以降(年末調整または確定申告)」の2つのフェーズがあります。育休取得年がどちらに該当するかで手続きが変わります。

【住宅取得年(初年度)】
 → 必ず確定申告が必要(年末調整では対応不可)

【2年目以降の通常年】
 → 会社の年末調整で対応可能(「住宅借入金等特別控除申告書」を提出)

【育休取得年(給与減少年)】
 → 状況によって確定申告が必要(下記参照)

育休取得年の確定申告が必要なケース

育休を取得した年に確定申告を行うべき主なケースは以下のとおりです。

ケース 理由
育休取得年が住宅ローン控除の初年度 初年度は確定申告必須
年の途中で退職・育休に入り年末調整が受けられなかった 会社での年末調整手続きが完結しない
給与減少により源泉徴収された所得税の還付が見込まれる 確定申告で還付を受けるため
前年よりも課税所得が大幅に変動した 住民税の計算基礎が変わるため申告推奨

💡 ポイント:年末調整が完結していても、育休による給与変動で「より多くの還付」が期待できる場合は、確定申告を行うことで有利になることがあります。

確定申告の手続きステップ(育休取得年)

ステップ1:必要書類の収集

書類名 入手先 備考
源泉徴収票 勤務先(年明け1月以降) 育休前の給与と源泉徴収額が記載
住宅ローン残高証明書 借入金融機関(年末時点の残高) 毎年10〜11月ごろ郵送される
住宅借入金等特別控除額の計算明細書 国税庁ウェブサイト・税務署 初年度以降の申告に必要
(初年度のみ)住宅取得関連書類 登記事項証明書、売買契約書等 法務局・不動産会社
マイナンバー確認書類 本人 マイナンバーカード等
育児休業取得証明書類 勤務先(必要な場合) 求められるケースは少ないが準備推奨

ステップ2:控除額の計算

住宅ローン控除額は以下の式で計算します。

住宅ローン控除額 = 年末のローン残高 × 0.7%(2022〜2025年入居の場合)

ただし、控除できるのは「その年の所得税額」が上限です。育休で課税所得が少ない年は、控除しきれない分が住民税から控除されます(住民税からの控除上限:97,500円/年)。

ステップ3:確定申告書の作成

国税庁の「確定申告書等作成コーナー(e-Tax)」を利用すると、画面の指示に従って入力するだけで申告書が自動作成されます。

  1. 国税庁 確定申告書等作成コーナーにアクセス
  2. 「給与所得がある方」を選択し、源泉徴収票の内容を入力
  3. 「住宅借入金等特別控除」の入力画面でローン残高証明書の情報を入力
  4. 控除額と還付金が自動計算される
  5. e-Taxで電子申告、または印刷して郵送・窓口持参

ステップ4:申告書の提出と還付の受取

  • 申告期間:翌年の2月16日〜3月15日(還付申告のみの場合は1月1日から可能)
  • 還付金の振込:申告後おおむね1〜2ヶ月以内に指定口座へ入金

還付金の計算方法|具体的なシミュレーション

育休取得年の還付金計算の考え方

育休取得年の還付金は「源泉徴収で天引きされた所得税」から「本来の所得税額」を差し引いた金額です。住宅ローン控除はその所得税額からさらに差し引かれます。

還付金 = 源泉徴収税額 − (本来の所得税額 − 住宅ローン控除額)

具体的な計算シミュレーション

【ケース設定】
– 育休取得:4月〜12月(1月〜3月の3ヶ月分のみ給与あり)
– 月給:40万円(総支給)
– 1〜3月の給与収入:120万円
– 育児休業給付金:非課税のため所得にカウントしない
– 住宅ローン年末残高:3,000万円(0.7%控除率)
– 住宅ローン控除額:3,000万円 × 0.7% = 21万円

【所得税の計算】

項目 金額
給与収入(1〜3月) 1,200,000円
給与所得控除(概算) △550,000円(最低控除額)
給与所得 650,000円
基礎控除 △480,000円
課税所得金額 170,000円
所得税額(税率5%) 8,500円
住宅ローン控除額(上限:所得税額) △8,500円
最終的な所得税額 0円

【還付金の計算】

項目 金額
1〜3月に源泉徴収された所得税(概算) 約30,000円
本来の所得税額 0円(住宅ローン控除で相殺)
還付金 約30,000円

⚠️ 住宅ローン控除額21万円のうち、所得税から控除できたのは8,500円のみ。残りの201,500円は住民税から控除されます(上限97,500円)。控除しきれない分は翌年以降への繰越はできないため、育休が長期にわたる年は注意が必要です。

住民税からの控除(所得税で控除しきれない場合)

所得税から引ききれなかった住宅ローン控除額は、翌年度の住民税から控除されます。

  • 控除限度額:所得税の課税総所得金額等の5%(最大97,500円)
  • 手続き方法:確定申告書に必要事項を記入するだけで自動的に市区町村に通知される(特別な手続き不要)
  • 反映時期:翌年6月以降の住民税額に反映

年末調整と確定申告の使い分け

育休取得年に年末調整が完結するケース

育休取得年でも、以下の条件を満たす場合は会社の年末調整で住宅ローン控除の手続きが完結します。

  • 年末調整時点(12月)に在職している
  • 会社に「給与所得者の(特定増改築等)住宅借入金等特別控除申告書」と「住宅ローン残高証明書」を提出する
  • 初年度でない(2年目以降)

ただし、育休による給与変動で還付が見込まれる場合や、副業収入がある場合は、年末調整後でも確定申告を行うとよいケースがあります。

年末調整では対応できないケース(確定申告必須)

  • 住宅ローン控除の初年度
  • 育休中に会社を退職した場合
  • 医療費控除など他の控除も申告したい場合
  • 育休中に副業・フリーランス収入があった場合

配偶者・パートナーとの世帯最適化

夫婦それぞれの住宅ローン控除を最大化するには

夫婦ペアローンや共有名義の場合、それぞれが住宅ローン控除を申告できます。育休取得者の課税所得が少ない年は、もう一方の配偶者側での控除を確実に受けることが世帯全体の節税につながります。

世帯で検討すべきチェックリスト

  • [ ] 育休取得者の合計所得が48万円以下なら、配偶者控除の申告を忘れずに
  • [ ] ペアローンの場合、各自の年末残高証明書を取り寄せる
  • [ ] 育休取得者の住民税からの控除が97,500円の上限に達するか試算する
  • [ ] 育休翌年の課税所得回復に備えて繰越できない控除額を把握しておく

よくある疑問と注意点

育休中の住宅ローン控除に関する手続きは複雑に見えますが、正しく申告することで正当な還付を受けられます。以下のFAQを参考に、自身の状況を確認してください。

Q1. 育休中に給与がまったくゼロになった場合、住宅ローン控除はどうなりますか?

その年の課税所得がゼロの場合、所得税が発生しないため所得税からの控除は受けられません。住民税も非課税になる水準であれば、住民税からの控除も受けられません。ただし、育休前の数ヶ月に給与収入があれば課税所得が生じるため、必ず計算してみましょう。翌年以降に通常の給与収入に戻れば、控除は再開されます。

Q2. 育休中は確定申告をしなくてもよいですか?

2年目以降で年末調整が完結している場合は、確定申告は必須ではありません。ただし、育休による給与減少で源泉徴収されすぎている場合、確定申告することで還付を受けられます。住宅ローン控除の初年度は必ず確定申告が必要です。

Q3. 育児休業給付金は住宅ローン控除の所得計算に含まれますか?

含まれません。育児休業給付金は雇用保険法により非課税所得とされており、所得税・住民税の課税対象外です。合計所得の計算にも算入しないため、給付金を受け取っていても課税所得を押し上げることはありません。

Q4. 住宅ローン控除で使いきれなかった分は翌年に繰り越せますか?

繰り越しはできません。その年の所得税・住民税から控除しきれなかった分は消滅します。これが育休で長期間無収入になる年に控除が無駄になる可能性がある理由です。育休のタイミングや期間を計画する際の参考にしてください。

Q5. 夫(妻)がローン名義人で、育休を取るのは妻(夫)です。手続きはどうなりますか?

住宅ローン控除はローン名義人が申告するものです。育休取得者がローン名義人でない場合、育休取得者は住宅ローン控除を申告できません。配偶者がローン名義人として通常どおり年末調整または確定申告を行います。育休取得者の収入減少により配偶者控除の要件を満たす場合は、ローン名義人の配偶者がその控除も申告できます。

Q6. 確定申告の期限を過ぎてしまいました。還付申告はできますか?

還付申告(税金が戻ってくる場合)は、申告期限の2月16日〜3月15日を過ぎても申告できる期間(5年間) があります。過去5年分の還付申告が可能なため、過去に住宅ローン控除の申告を忘れていた年がある方は、さかのぼって申告することをお勧めします。


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まとめ:育休中の住宅ローン控除手続きのポイント

育休中の住宅ローン控除は、正しく手続きを行うことで育休中の家計をサポートする重要な制度です。最後に重要なポイントを整理します。

確認事項 ポイント
育児休業給付金 非課税。所得にカウントされない
課税所得の確認 育休前の給与所得のみで計算する
控除のタイミング 初年度は確定申告必須。2年目以降は年末調整可
住民税からの控除 所得税で引ききれない分は住民税から(上限97,500円)
繰越不可 使いきれない控除額は翌年に持ち越せない
配偶者控除 育休取得者の所得が48万円以下なら配偶者の税負担が軽減
申告期限 翌年2月16日〜3月15日(還付のみは1月1日〜)

育休中は何かと忙しく、税務手続きが後回しになりがちです。しかし、確定申告をきちんと行うことで数万円単位の還付が受けられる場合もあります。国税庁のe-Taxを活用すれば、スマートフォンやパソコンから手軽に申告できますので、ぜひ活用してください。

また、計算が複雑な場合や、副業収入・ペアローンなど特殊な事情がある場合は、管轄の税務署(無料相談)税理士 に相談することをお勧めします。

住宅ローン控除の適用を受けるための要件や手続き方法については、国税庁公式ウェブサイト(https://www.nta.go.jp/)や税務署の窓口で最新情報を確認することが重要です。税制改正は定期的に行われるため、本記事作成時点(2024年)での情報に基づいていることをご理解ください。

本記事は2024年時点の法令・税制に基づいて作成しています。税制は改正される場合がありますので、最新情報は国税庁公式ウェブサイトでご確認ください。

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