育休給付金の給付率が80%に引き上げられることを聞いたけれど、「自分は対象になるのか」「いつから適用されるのか」「どんな手続きが必要なのか」と疑問をお持ちの方は多いのではないでしょうか。
本記事では、2025年4月施行の法改正の内容を踏まえながら、対象者の条件・申請手順・必要書類・給付金額の計算方法まで、育休取得を検討している労働者と企業の人事担当者の双方に向けてわかりやすく解説します。厚生労働省の公式情報と雇用保険法に基づき、最新かつ信頼性の高い情報をお届けします。
育休給付金の給付率80%引き上げはいつから?制度変更の全体像
| 改正時期 | 給付率 | 対象期間 | 主な特徴 |
|---|---|---|---|
| 2022年10月 | 67% | 育休開始から2ヶ月間 | 最初の引き上げ。手取りで約80%相当に |
| 2025年4月~ | 80% | 育休開始から3ヶ月間 | 対象期間が1ヶ月延長。手取りで約10割相当に |
| 2025年4月~ | 67% | 3ヶ月経過後 | その後は従来通り。社会保険料免除で手取り約80% |
2022年10月・2025年4月、2段階改正の経緯と背景
育休給付金の給付率引き上げは、一度に行われたのではなく、段階的に実施されてきました。下表に時系列で整理します。
| 時期 | 主な改正内容 |
|---|---|
| 〜2022年9月 | 給付率:育休開始後180日まで67%、181日目以降50% |
| 2022年10月1日 | 「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度創設。子の出生後8週間以内に最大4週間取得可能に。給付率は同期間中67%のまま維持 |
| 2025年4月1日 | 一定の要件(後述)を満たす場合に、育休開始から180日間の給付率が80%に引き上げ |
つまり、2025年4月以降に育児休業を開始した方から、段階的な改正の最終ステップとして最初の180日間について給付率80%が適用されるのが原則的な整理です。
法的根拠: 雇用保険法第61条の4〜第61条の7、育児休業給付の支給に関する省令、雇用保険法施行規則第100条〜第105条
なお、181日目以降の給付率は従来どおり50%のままとなっていますので注意が必要です。
社会保険料免除と合わせると「実質手取り10割」になる理由
「給付率80%なのに、なぜ実質手取り10割なのか」と疑問に思う方もいるかもしれません。これは、育休中は健康保険・厚生年金などの社会保険料が免除されることで生まれる効果です。
通常、給与から天引きされる社会保険料は概算で月額給与の約15〜16%程度(労働者負担分)です。
【実質手取りの計算イメージ】
通常就業時の手取り ≒ 月給 × 84〜85%(社会保険料・所得税等を差し引いた後)
育休中の手取り ≒ 休業前賃金 × 80%(育休給付金)
+ 社会保険料免除分(約15〜16%相当を支出せずに済む)
≒ 合計で手取りの約95〜100%水準
また育休給付金は非課税のため所得税もかかりません。これらを合算すると、実質的に「手取り額がほぼ従前の水準と変わらない」状態になることが、「実質手取り10割」と表現される根拠です。
育休を取得しても生活水準を大きく落とさずに済む設計になっている点は、育休取得を後押しする大きなポイントといえます。
引き上げの目的は男性育休取得率の向上
今回の給付率引き上げの背景には、政府の掲げる「男性育休取得率85%」という目標があります。厚生労働省の調査によると、女性の育休取得率が8割を超えているのに対し、男性は依然として低水準にとどまっていました。
収入減への懸念が男性の育休取得を妨げる大きな要因であるとの認識から、給付率の引き上げによって「育休を取っても生活が苦しくなるわけではない」という安心感を提供し、男性の取得促進につなげることが制度改正の主要な目的となっています。
給付率80%の対象者・受給条件を正確に確認しよう
雇用保険の加入要件と勤務実績の確認方法
育休給付金を受け取るためには、まず雇用保険の被保険者であることが前提です。以下の要件をすべて満たす必要があります。
基本要件チェックリスト
- ✅ 雇用保険の被保険者であること
- ✅ 育児休業開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上ある月が12か月以上あること
- ✅ 育児休業の取得予定期間が2か月以上であること(産後パパ育休の場合は例外あり)
- ✅ 1歳未満の子(延長した場合は最長2歳未満)を養育していること
- ✅ 育休期間中の就業日数が各支給単位期間(1か月)において10日以下であること
雇用保険の加入状況は、給与明細に「雇用保険料」が天引きされているか確認するか、会社の人事担当者や最寄りのハローワークに問い合わせることで確認できます。
80%給付率が適用される具体的な条件
給付率80%が適用されるのは、以下の条件を満たす場合です。
① 育休開始から180日間に限定
給付率80%が適用されるのは、育休開始日から数えて最初の180日間です。181日目以降は従来どおり50%の給付率に戻ります。
② 2025年4月1日以降に育休を開始した場合
現在の法改正スケジュールに基づき、2025年4月1日以降に育児休業を開始した方が対象となります。すでに育休中の方は開始日を基準に確認してください。
③ 産後パパ育休(出生時育児休業)の場合も対象
2022年10月に新設された産後パパ育休(子の出生後8週間以内に最大4週間取得できる制度)も給付対象です。こちらも対象期間中の給付率が80%となります。
対象外となるケースと注意点
以下のケースは給付率80%の対象外、または給付金自体が受け取れない場合があります。
| 注意すべきケース | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険未加入 | パート・アルバイトでも加入条件を満たせば対象だが、未加入の場合は不可 |
| 育休期間中の就業日数超過 | 各月10日超(または80時間超)就業した場合はその期間分が不支給 |
| 自営業・フリーランス | 雇用保険の対象外のため、育休給付金は受け取れない |
| 公務員 | 雇用保険ではなく共済制度が適用されるため、制度が異なる |
| 育休延長要件を満たさない場合の1歳以降延長 | 保育所への入所不承諾通知書など、延長の要件書類が必要 |
受給金額の計算方法と具体的なシミュレーション
育休給付金の基本計算式
育休給付金の金額は「休業開始前賃金日額」をもとに算出されます。
【休業開始前賃金日額の計算】
休業開始前賃金日額 = 育休開始前6か月間の賃金総額 ÷ 180日
【育休給付金(月額)の計算:180日目まで】
月額給付金 = 休業開始前賃金日額 × 支給日数(通常30日) × 80%
「賃金総額」には、通常の基本給・固定残業代・通勤手当などが含まれますが、ボーナス(賞与)は含まれません。
月給別・受給金額シミュレーション(180日目まで)
【月給25万円の場合】
休業開始前賃金日額 = 25万円 × 6か月 ÷ 180日 = 8,333円
月額育休給付金 = 8,333円 × 30日 × 80% = 約200,000円
【月給30万円の場合】
休業開始前賃金日額 = 30万円 × 6か月 ÷ 180日 = 10,000円
月額育休給付金 = 10,000円 × 30日 × 80% = 約240,000円
【月給40万円の場合】
休業開始前賃金日額 = 40万円 × 6か月 ÷ 180日 = 13,333円
月額育休給付金 = 13,333円 × 30日 × 80% = 約320,000円
※上限額の適用がある場合は計算結果が異なります
注意: 賃金日額には上限・下限が設定されており、毎年8月1日に改定されます。上限を超える場合は上限額が適用されますので、ハローワークまたは厚生労働省の最新資料をご確認ください。
181日目以降の給付金額
育休開始から181日目以降は、給付率が50%に変わります。
【181日目以降の計算例:月給30万円の場合】
月額育休給付金 = 10,000円 × 30日 × 50% = 約150,000円
180日目までと181日目以降で金額が大きく変わることを事前に把握し、家計の計画を立てておくことが重要です。
申請手続きの流れ:育休取得者と企業それぞれの対応
申請の全体スケジュール
育休給付金の申請は、企業(事業主)がハローワークに対して代理申請する形が基本です。育休取得者は会社に必要書類を提出し、会社側がハローワークへ申請を行います。
【申請の流れ】
STEP 1:育休開始予定日の1か月以上前
→ 労働者が会社に育児休業の申し出を行う
STEP 2:育休開始後、速やかに(おおむね2週間以内目安)
→ 企業が「育児休業給付金受給資格確認票」を作成し、
ハローワークへ初回の受給資格確認申請を行う
STEP 3:初回支給申請(育休開始から約2か月後が目安)
→ 企業が「育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出
STEP 4:審査・支給決定(申請後、おおむね2週間程度)
→ 指定口座(労働者名義)へ給付金が振り込まれる
STEP 5:以後2か月ごとに支給申請を繰り返す
→ 育休終了まで継続して申請手続きが発生する
企業(人事担当者)が準備する書類一覧
人事担当者が準備・提出する書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 提出タイミング | 作成・取得方法 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金受給資格確認票(初回申請書と兼用) | 初回のみ | ハローワーク所定様式またはe-Gov電子申請 |
| 育児休業給付金支給申請書 | 2か月ごと | ハローワーク所定様式またはe-Gov電子申請 |
| 賃金台帳の写し | 初回・変動時 | 社内の給与システム等から出力 |
| 出勤簿(タイムカード等)の写し | 初回・各申請時 | 勤怠管理システム等から出力 |
| 雇用保険被保険者証(番号確認) | 初回 | 会社保管または本人から提出 |
育休取得者(労働者)が準備する書類一覧
育休を取得する本人が会社に提出する書類は以下のとおりです。
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 母子手帳(出生届出済証明欄)の写し | 子の出生日確認のため |
| 住民票の写し(マイナンバーカード等で代替可の場合あり) | 世帯構成・子との続柄確認 |
| 育児休業申出書(社内様式) | 会社の規程に従って作成 |
| 配偶者の就業状況申立書(配偶者加算を希望する場合) | 配偶者が同期間に育休未取得であることの証明 |
| 保育所入所不承諾通知書(育休延長の場合) | 1歳以降の延長申請に必要 |
書類の様式はハローワークの窓口またはハローワークインターネットサービス(厚生労働省公式サイト)からダウンロードできます。
ハローワークへの申請方法:窓口・郵送・電子申請
申請方法は3通りあります。
① 窓口申請
事業所を管轄するハローワーク(公共職業安定所)の窓口に直接書類を持参します。担当者に確認しながら手続きできるため、初回申請や不明点がある場合におすすめです。
② 郵送申請
管轄ハローワーク宛てに書類を郵送します。往復の時間を要しますが、来所が難しい場合に有効です。
③ 電子申請(e-Gov)
「e-Gov電子申請」を利用してオンラインで申請できます。マイナンバーカードや電子証明書が必要になりますが、企業規模が大きい場合は効率化につながります。近年は電子申請の推進が図られており、人事担当者は積極的な活用を検討してください。
企業の人事担当者が特に注意すべきポイント
申請漏れ・遅延を防ぐための社内管理
育休給付金の申請は2か月ごとに繰り返し行う必要があります。育休取得者が複数いる場合、申請期限の管理が煩雑になりがちです。以下の点を社内でルール化しておくことを推奨します。
- 育休開始日のリスト管理:取得者ごとに初回申請期限・以後の申請期限をカレンダーに登録する
- 書類回収の期限設定:労働者から必要書類を受け取るタイミングを育休開始前に事前告知する
- e-Gov活用によるペーパーレス化:書類の紛失リスクを下げ、申請履歴を管理しやすくする
育休中の就業に関するルール
育休中でも労働者が「一時的・臨時的」に就業する場合があります(産後パパ育休中は最大10日間の就業が可能)。ただし、就業日数や就労時間が一定の基準を超えると給付金が不支給になるケースがあります。
- 各支給単位期間(1か月)に就業した日数が10日以下であること
- 10日を超える場合は就業した時間数が80時間以下であること
これらを超過した支給単位期間については給付金が支給されません。在宅勤務など柔軟な働き方を取り入れている場合は特に注意が必要です。
社会保険料免除手続きも忘れずに
育休給付金の申請とは別に、育休中の社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除申請も必要です。こちらは年金事務所または健康保険組合への申請となり、ハローワークへの申請とは窓口が異なります。
免除が認められると、育休中は社会保険料の支払いが不要になるだけでなく、将来の年金受給額にも影響しません(免除期間も保険料を納めたものとして扱われます)。
産後パパ育休(出生時育児休業)の給付金について
2022年10月に新設された「産後パパ育休」は、子の出生後8週間以内に最大4週間(28日)取得できる制度で、通常の育児休業とは別枠で取得できます。
産後パパ育休の給付金の特徴
- 給付率:80%(2025年4月以降の開始分)
- 2回に分割して取得可能
- 取得中に就業することが一定条件のもとで可能(労使協定の締結が必要)
産後パパ育休中に就業する場合も、就業日数・時間数が一定基準を超えると給付金が減額または不支給になる点は通常の育休と同様です。
よくある質問(FAQ)
育休給付金の80%引き上げに関して、実際に多く寄せられる疑問をQ&A形式でまとめました。
Q1. 2025年4月より前に育休を開始した場合、給付率80%は適用されませんか?
原則として、育休開始日が2025年4月1日以降であることが給付率80%適用の要件となります。2025年3月31日以前に育休を開始した場合は、従来の給付率(開始から180日まで67%)が適用されます。育休開始日をいつにするかは、取得時期の選択に影響を与える可能性があります。
Q2. 育休給付金はいつ口座に振り込まれますか?
申請書類がハローワークに受理されてから、おおむね2週間程度で指定口座に振り込まれます。初回申請は育休開始後すぐに手続きを行う必要があるため、会社の人事担当者へ速やかに必要書類を提出しましょう。
Q3. 育休給付金に税金はかかりますか?
育休給付金は非課税です。所得税・住民税ともに課税されません。ただし、年末調整や確定申告で給付金の申告は必要ありませんが、配偶者控除の計算上は給付金収入がゼロとして扱われる点に注意が必要です。
Q4. 契約社員やパートタイム労働者でも受け取れますか?
雇用保険の被保険者要件(育休開始前2年間に11日以上勤務した月が12か月以上)を満たしていれば、雇用形態に関係なく受け取ることができます。ただし、雇用保険に加入していないパートタイム労働者は対象外です。
Q5. 夫婦で同時に育休を取得した場合はどうなりますか?
夫婦が同時に育休を取得することは可能で、それぞれが要件を満たせばそれぞれに育休給付金が支給されます。ただし、配偶者加算(一部の条件下で適用される加算制度)については、配偶者の育休取得状況によって計算が異なる場合があります。詳細はハローワークにご相談ください。
Q6. 育休期間を延長した場合も給付は続きますか?
子が1歳になった時点で保育所に入れない場合などは、最長2歳まで育休を延長でき、給付金も継続して受け取れます。ただし、延長申請には保育所の入所不承諾通知書などの証明書類が必要です。なお、1歳以降の延長時の給付率は50%となります。
まとめ:2025年の育休給付金改正ポイントを整理する
本記事の内容を最後に整理します。
| 確認項目 | 内容 |
|---|---|
| 給付率80%の適用開始 | 2025年4月1日以降に育休を開始した方(育休開始から180日間) |
| 181日目以降の給付率 | 50%(従来と変更なし) |
| 実質手取り約10割の根拠 | 給付率80% + 社会保険料免除(約15〜16%)+ 非課税 |
| 申請窓口 | ハローワーク(企業が代理申請)、e-Gov電子申請も可 |
| 申請頻度 | 初回受給資格確認後、2か月ごとに支給申請 |
| 主な必要書類 | 受給資格確認票・支給申請書・賃金台帳・出勤簿・母子手帳等 |
育休給付金の給付率引き上げは、育休取得をためらう最大の理由の一つだった「収入減少への不安」を大幅に軽減する制度改正です。給付率・申請手続き・必要書類をしっかり把握したうえで、安心して育休を取得・支援できる環境を整えましょう。
制度は毎年改正が加わる場合があります。最新情報は必ず厚生労働省公式サイト(https://www.mhlw.go.jp)または最寄りのハローワークでご確認ください。
関連情報:育休に関する手続きや制度の詳細について不明な点がある場合は、最寄りのハローワークまたは会社の人事労務部門に直接問い合わせることをおすすめします。無料での相談が可能です。

