育児休業中に「今月は給付金が振り込まれなかった」「支給額が思ったより少ない」という経験をした方は少なくありません。育休給付金は毎月一律に支給されるわけではなく、月ごとに支給条件が審査されます。そのため、特定の月だけ支給額が0円になることがあります。
この記事では、育休給付金が一部の月だけ0円になる4つの主な理由を、具体的な計算例・ケースシミュレーション・対応策とあわせて詳しく解説します。手続き前に必ず確認しておきましょう。
育休給付金が「一部の月だけ0円」になる仕組みとは?
| 0円になる理由 | 条件 | 対応策 |
|---|---|---|
| 就業日数超過 | 月10日を超える就業 | 勤務日数を10日以内に調整 |
| 賃金上限超過 | 月給の50%超の賃金支給 | 育休延長検討または勤務日数削減 |
| 賞与・臨時給与支給 | 支給月の給付金は全額停止 | 支給時期の変更申請(雇用主へ相談) |
| 開始月・終了月 | 育休初月または最終月の特殊ルール適用 | ハローワークに支給要件確認 |
育休給付金(正式名称:育児休業給付金)は、雇用保険法第61条の4に基づいて支給される給付金です。育児休業中の収入減少を補うことを目的としており、原則として休業開始時賃金月額の67%(育休開始から180日間)または50%(181日目以降)が支給されます。
支給の単位は「支給単位期間」と呼ばれ、育休開始日から1か月ごとに区切った期間ごとに支給の可否と金額が判定されます。たとえば育休を4月15日から開始した場合、「4月15日〜5月14日」「5月15日〜6月14日」……というように1か月ごとのブロックで審査されます。
この月ごとの審査がポイントです。ある月は支給条件を満たし、別の月は満たさないという状況が起きるため、「一部の月だけ0円」という事態が発生するのです。
| 用語 | 内容 |
|---|---|
| 支給単位期間 | 育休開始日を起点とした1か月ごとの区切り |
| 休業開始時賃金月額 | 育休開始前6か月の賃金を平均した月額 |
| 給付率 | 180日以内:67%、181日以降:50% |
| 支給判定 | 支給単位期間ごとに就業日数・賃金を確認 |
毎月の支給額が一律でない理由は、育休中の就業状況や収入の変化を反映させるための仕組みにあります。次の章では、0円になる具体的な原因を4つに分けて解説します。
支給が0円になる4つの主な理由
育休給付金の支給額が0円になる理由は、大きく以下の4パターンに分類されます。それぞれを詳しく見ていきましょう。
理由①:就業日数が月10日を超えた場合
育休中に就業できる日数には上限が設けられており、1つの支給単位期間(1か月)において就業日数が10日を超えると、その月の給付金は支給されません。これが「月10日ルール」です。
就業日数のカウント方法
就業日数は「実際に働いた日数」で数えます。1日に4時間だけ働いた場合でも、「1日」としてカウントされます。また、在宅勤務(テレワーク)も就業日数に算入されるため、「会社に行っていないから大丈夫」という誤解に注意が必要です。
【就業日数と支給の関係】
就業日数 0〜10日 → 支給対象(条件を満たせば支給)
就業日数 11日以上 → その月は支給0円(不支給)
2024年改正による緩和措置
2024年4月の育児・介護休業法改正に伴う見直しにより、就業時間が1日あたり4時間以下の短時間就業については、従来より緩やかに扱われるようになりました。具体的には、就業日数が10日を超えていても、就業時間の合計が月80時間以下であれば支給対象として認められるケースがあります。
| 就業状況 | 支給への影響 |
|---|---|
| 月10日以下の就業(フル勤務含む) | 支給対象 |
| 月11日以上の就業(フル勤務) | 支給0円 |
| 月11日以上・1日4時間以下の短時間就業 | 月80時間以内なら支給対象(2024年改正) |
| 在宅勤務(テレワーク) | 就業日数に算入(原則として) |
育休中に会社から「少し手伝ってほしい」と依頼されるケースは珍しくありません。その際は就業日数をしっかり記録しておき、10日(または時間換算で80時間)を超えないよう管理しましょう。
理由②:その月の賃金が月給の50%を超えた場合
育休中に賃金が支払われた場合、その金額が休業開始時賃金月額の50%を超えると、給付金が減額または支給0円になります。これが「賃金50%ルール」です。
計算の基本式
【支給調整の計算式】
支給対象賃金 = 休業開始時賃金月額(A)とする
① 賃金が A × 13% 以下 → 給付金全額支給
② 賃金が A × 13% 超〜50% 以下 → 給付金が部分的に減額
③ 賃金が A × 50% 超〜80% 未満 → 給付金が一部支給(80%に達しない分だけ)
④ 賃金が A × 80% 以上 → 支給0円
※給付金+賃金の合計が月給の80%を超えると0円になります
月給制の場合の具体例
休業開始時賃金月額が30万円の方が、育休中に会社から10万円の賃金を受け取った月を想定します。
賃金10万円 ÷ 月給30万円 = 33.3%(13%超〜50%以下の範囲)
→ 支給される給付金は調整あり(減額)
給付金の目安額 = (30万円 × 80%)- 10万円 = 14万円
一方、同じ月に20万円の賃金(特別手当含む)を受け取った場合は次のようになります。
賃金20万円 ÷ 月給30万円 = 66.7%(50%超)
給付金+賃金の合計 = 給付金(仮に20万円)+ 20万円 = 40万円
月給の80%(24万円)を超過
→ その月の給付金は0円
時給制・日給制の場合
月によって賃金が変動する場合も、同様に「休業開始時賃金月額の50%」を基準に判定されます。休業開始時賃金月額はハローワークが過去6か月の賃金をもとに算出した固定値のため、実際の月給とは異なる場合もある点に注意が必要です。
理由③:賞与・臨時給与が支給された月
賞与(ボーナス)が支給された月は注意が必要です。賞与の金額が大きい場合、その月の賃金合計が月給の50%を超えて支給0円になることがあります。
多くの方が見落とすポイントは、「賞与の支給日」ではなく「賞与の支給対象月」で判定されるという点です。たとえば12月の業績に対する賞与が翌年1月に支払われた場合でも、賞与が「いつの支給単位期間に計上されるか」はハローワークへの申告内容に基づいて判断されます。実際には支給された月(1月)の賃金として扱われるケースが一般的です。
【賞与受給月の計算例】
休業開始時賃金月額:40万円
育休中の6月に賞与25万円を受給
25万円 ÷ 40万円 = 62.5%(50%超)
給付金+賞与の合計が月給の80%を超えるため
→ 6月の給付金は0円
また、賞与が支給0円の判定になった場合でも、育休給付金の受給資格そのものが失われるわけではありません。翌月以降に就業日数や賃金が条件を満たせば、通常どおり支給が再開されます。
理由④:育休の開始月・終了月の特殊ルール
育休の最初の月(開始月)と最後の月(終了月)は、支給単位期間が1か月に満たないため、計算方法が通常と異なります。
開始月のルール
育休開始月は、育休開始日から月末(または次の支給単位期間の開始前日)までの期間が1か月に満たないため、就業日数の上限も日数按分されます。
【開始月の就業日数計算例】
育休開始日:6月20日(月末まで11日間)
1か月(31日)に対する比率 = 11 ÷ 31 ≒ 0.355
就業日数の上限 = 10日 × 0.355 ≒ 3.5日 → 3日が上限
開始月に4日以上就業すると、開始月は支給0円になる可能性があります。月の後半から育休を開始する方は特に注意が必要です。
終了月のルール
育休終了月も同様に、育休期間が1か月に満たない場合は日数按分で計算されます。さらに終了月の給付金額も、実際の育休日数に応じて日割り計算されます。
【終了月の給付金計算例】
育休終了日:8月10日(その支給単位期間の育休日数 = 10日)
支給単位期間の日数 = 31日
給付金 = 休業開始時賃金月額 × 給付率 × (10 ÷ 31)
= 30万円 × 67% × 0.323 ≒ 64,900円
よくある誤解:月末に育休を終了すれば全額もらえる?
「月末に育休を終了すれば終了月の給付金を全額受け取れる」と思われがちですが、実際には月末育休終了の場合でも支給単位期間の起算日によっては日割り計算になることがあります。育休開始日が月の途中の場合、支給単位期間は「育休開始日から1か月後の前日まで」となるため、暦上の月末と支給単位期間の末日が一致しない点に注意してください。
ケース別・支給0円になる計算シミュレーション
実際にありがちな状況を4つのケースに分けて、支給0円になる理由と給付金額を確認してみましょう。
| ケース | 状況 | 月の賃金 | 就業日数 | 支給額 |
|---|---|---|---|---|
| ケース1 | 育休中に月12日出勤 | 8万円 | 12日 | 0円 |
| ケース2 | 月給制で賞与25万円受給 | 月給40万円+賞与25万円 | 5日 | 0円 |
| ケース3 | 月8日の短時間就業(計64時間) | 4万円 | 8日 | 支給あり(減額) |
| ケース4 | 育休開始月(6月20日開始)に4日就業 | 2万円 | 4日 | 0円 |
ケース1の詳細:就業日数超過
休業開始時賃金月額:30万円
就業日数:12日(月10日を超過)
→ 就業日数超過のため、その月の給付金は0円
(賃金・その他の条件にかかわらず不支給)
ケース2の詳細:賞与による賃金超過
休業開始時賃金月額:40万円
賞与:25万円(この月に支給)
賃金総額25万円 ÷ 40万円 = 62.5%
給付金(40万円 × 67% = 26.8万円)+ 賃金25万円 = 51.8万円
月給の80%(32万円)を大幅に超過
→ 支給0円
ケース3の詳細:短時間就業(支給あり)
休業開始時賃金月額:30万円
賃金:4万円(短時間就業・月8日・合計64時間)
就業日数:8日(月10日以下)
賃金4万円 ÷ 30万円 = 13.3%(13%超〜50%以下の調整範囲)
給付金 = (30万円 × 80%)- 4万円 = 20万円
(通常の給付金上限は30万円 × 67% = 20.1万円のため、20万円を支給)
ケース4の詳細:開始月の就業日数超過
育休開始日:6月20日(6月の育休対象日数 = 11日)
就業日数:4日
按分後の就業日数上限 = 10日 × (11 ÷ 30)≒ 3.67日 → 3日が上限
実際の就業4日 > 上限3日
→ 開始月の給付金は0円
支給0円になったときの具体的な対応策
給付金が0円になったからといって、受給資格が消えるわけではありません。状況ごとに適切な対応を取ることで、翌月以降の支給を確保できます。
対応①:就業日数を月10日以内に抑える計画を立てる
会社から育休中の就業を打診された場合は、あらかじめ月10日(または就業時間80時間)を超えない範囲で調整することを会社と合意しておきましょう。就業日数を記録する日誌や勤怠管理ツールを活用し、上限に近づいたら出勤を控えることが重要です。
対応②:賞与支給月を事前に把握しておく
会社の賞与支給時期と育休の支給単位期間を事前に照合し、賞与受給月の給付金が0円になることを織り込んだ家計計画を立てておきましょう。賞与支給月が0円になることは制度上やむを得ないため、その月分は貯蓄や他の収入で対応する準備が必要です。
対応③:ハローワークへの事前相談・申告を確実に行う
育休中に就業した場合や賃金を受け取った場合は、「育児休業給付金支給申請書」に必ず就業日数・賃金額を正直に記載する必要があります。申告漏れや虚偽申告は不正受給にあたり、給付金の返還命令(最大3倍返還)の対象になります。不安な点はハローワークの育児休業給付担当窓口に事前相談することを強くお勧めします。
対応④:産後パパ育休(出生時育児休業)の活用を検討する
2022年10月に導入された産後パパ育休(出生時育児休業)では、育休中の就業について労使協定の締結を前提に、本人が合意した範囲での就業が認められる仕組みになっています。通常の育休と比べると就業に関する取り扱いが異なるため、制度の違いを正しく理解したうえで申請することが大切です。
対応⑤:不支給通知が届いた場合の確認手順
支給0円の場合、ハローワークから「不支給通知」が届きます。通知を受け取ったら以下の手順で確認しましょう。
① 不支給理由(就業日数・賃金超過・その他)を確認する
② 申請書類の記載内容に誤りがないか再確認する
③ 誤りがある場合は、ハローワークに訂正申請を行う
④ 不支給理由に納得できない場合は、審査請求(不服申立て)が可能
(審査請求期限:処分を知った日の翌日から3か月以内)
申請時に必要な書類と提出先
育休給付金の支給申請に必要な書類は以下のとおりです。支給0円になった月の翌月以降も、申請書の提出は継続が必要です(申請を怠ると受給権が消滅する場合があります)。
| 書類名 | 詳細 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | 2か月ごとにハローワーク所定の様式で提出 |
| 賃金台帳・出勤簿 | 就業日数・賃金額の証明 |
| 育児休業取得確認通知書 | 初回申請時に必要(会社経由で取得) |
| 母子健康手帳(写し) | 子の出生証明として |
| 振込先口座情報 | 初回申請時に必要 |
申請のタイミング
育休給付金の申請は、原則として2か月に1回、育休開始から4か月後ごろからまとめて申請するケースが多いですが、会社(事業主)を通じてハローワークに申請するため、会社の手続きスケジュールを事前に確認しておきましょう。
支給0円月も申請が必要
支給0円になる月であっても、申請書の提出自体は必要です。申告を省略することはできず、就業日数・賃金額を記載した申請書を通常どおり提出する必要があります。
よくある質問
Q1. 育休中にリモートワークをした場合、就業日数に含まれますか?
はい、含まれます。在宅勤務(テレワーク)であっても、労働として業務を行った日は就業日数にカウントされます。会社のメールへの返信や書類作成など、業務に従事した日は1日とカウントされます。育休中の在宅勤務を認めるかどうかは会社との合意が必要で、かつ就業日数の上限(月10日)を守ることが前提です。
Q2. 支給0円になっても、育休給付金の受給期間は延長されませんか?
支給0円になった月も、育休給付金の受給期間(子が1歳になるまで、または延長の場合は1歳6か月・2歳まで)としてカウントされます。0円になっても受給期間が延びるわけではありませんので、育休期間全体のスケジュール管理が重要です。
Q3. 賞与支給月に0円になった場合、その賞与は育休給付の計算に影響しますか?
賞与(特別給与)は、休業開始時賃金月額の算出には原則として含まれません(賞与は月例賃金とは別に扱われます)。ただし、支給された月の賃金として給付金の支給調整(50%・80%ルール)の対象となります。
Q4. 就業日数が10日を超えてしまったことに後から気づいた場合、どうすればよいですか?
申請書に正確な就業日数を記載し、ハローワークに提出してください。もしすでに誤った内容で申請・受給している場合は、速やかにハローワークへ申し出てください。自主的な申し出による返還は、不正受給と比べてペナルティが大幅に軽減されます。
Q5. 育休開始月に0円になった場合、次の支給単位期間から通常の支給に戻りますか?
はい、開始月の0円はあくまでその支給単位期間のみの判定です。次の支給単位期間(育休開始日から1か月後〜2か月後)で就業日数・賃金の条件を満たしていれば、通常どおり給付金が支給されます。
Q6. 育休給付金が0円の月に会社から社会保険料の免除はありますか?
社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除は、育休の取得期間に基づいて判定されます。育休給付金の支給額(0円かどうか)とは別に判定されるため、給付金が0円でも社会保険料は免除されます。詳細は年金事務所または会社の担当者に確認してください。
まとめ
育休給付金が一部の月だけ0円になる主な理由は、①就業日数が月10日を超えた、②賃金が月給の50%を超えた(80%ルール)、③賞与受給月に賃金超過が発生した、④育休の開始月・終了月の日数按分計算——の4つです。
いずれも育休給付金制度の仕組みによるもので、受給資格が失われるわけではありません。翌月以降の支給を確保するためには、就業日数・賃金額を月ごとに把握し、上限を超えないよう管理することが最も重要です。
また、支給0円の月でも申請書の提出は必要であること、不支給通知が届いた場合は内容をしっかり確認したうえでハローワークへ相談することを忘れないでください。育休給付金制度は複雑なルールが多いため、不明点はハローワークや社会保険労務士に早めに相談することをお勧めします。
本記事の内容は2024年4月現在の法令に基づいています。法改正や制度変更により内容が変わる可能性があるため、最新情報はハローワークの公式サイトでご確認ください。
参考法令・資料
– 雇用保険法第61条の4(育児休業給付の支給要件)
– 雇用保険法施行規則第100条〜第105条(支給額の計算方法)
– 育児・介護休業法第2条(育児休業の定義)
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

