育休を取得中のひとり親の方から、「育児休業給付金と児童扶養手当は同時にもらえるのか」という疑問を多くいただきます。結論から言えば、原則として併給は可能です。ただし、児童扶養手当の所得計算に育児休業給付金が影響するため、受給額が変わる場合があります。
この記事では、2025年最新の制度情報をもとに、ひとり親が知っておくべき給付調整の仕組み・申請手順・必要書類を徹底解説します。
育休中に児童扶養手当は受け取れる?まず結論から確認しよう
「育休中は無収入だから児童扶養手当が増えるのでは」「育児休業給付金をもらうと児童扶養手当が止まるのでは」——こうした誤解が多く見られます。正確な理解のために、まず2つの制度の関係を整理しましょう。
育児休業給付金と児童扶養手当、それぞれの制度を30秒で確認
2つの給付は、目的・支給元・根拠法律がまったく異なる制度です。以下の表で違いを確認してください。
| 項目 | 育児休業給付金 | 児童扶養手当 |
|---|---|---|
| 目的 | 育休中の収入補填 | ひとり親家庭の生活支援 |
| 法的根拠 | 雇用保険法 第61条の4〜第61条の8 | 児童扶養手当法 第1条・第2条 |
| 支給元 | ハローワーク(雇用保険) | 市区町村(福祉行政) |
| 支給対象 | 雇用保険被保険者の育休取得者 | ひとり親・監護者(所得制限あり) |
| 支給期間 | 原則子が1歳になるまで(最長2歳まで延長可) | 子が18歳の3月31日まで(障害児は20歳未満) |
| 所得制限 | なし | あり(扶養人数・所得で変動) |
この2つは別々の窓口に別々の申請をする必要があります。どちらか一方を申請したからといって、もう一方が自動的に処理されるわけではありません。育休を取得したら、両方の手続きを個別に行うことが重要です。
「給付調整」とは何か?混同しやすいポイントを整理
「給付調整」という言葉を聞くと、「どちらかが止まってしまうのでは」と不安になる方も多いでしょう。しかし給付調整とは、「もらえなくなる」ことではなく「支給額の計算方法が変わる」ことです。
具体的には、児童扶養手当の支給額は前年の所得をもとに計算されます。この所得計算において、育児休業給付金が「みなし収入」として扱われるため、計算上の所得が上がり、手当額が変わる可能性があります(詳しくは後述します)。
一方、支給停止とは、一定の条件下で手当の支給そのものが一時的に止まることを指します。給付調整と支給停止は別の概念であり、育休中に支給停止になるケースは限定的です。
ポイントまとめ
– 給付調整=支給額が変わる可能性がある
– 支給停止=支給そのものが止まる(育休中は通常該当しない)
– 2つの給付は別制度・別窓口なので、別々に申請が必要
ケース別に見る|育休給付金と児童扶養手当を併給できる条件
自分が併給の対象になるかどうか、ケース別に確認しましょう。
ひとり親が育休を取得した場合(併給OK)
最も典型的な併給ケースです。たとえば次のような状況が該当します。
具体例:Aさんのケース
– 離婚後、第1子を育てながら正社員として働いていた
– 第2子を出産し、育児休業を取得
– 育休前から児童扶養手当を受給していた
このケースでは、Aさんは育児休業給付金と児童扶養手当の両方を受給できます。ひとり親として第1子を監護しているという事実は育休取得中も変わらないため、児童扶養手当の受給資格は継続します。
ただし、前述の給付調整により、育休中に受け取る育児休業給付金が所得計算に影響することがあります。具体的な計算方法は後述します。
配偶者の所得超過などで児童扶養手当の対象になる場合(条件付きで併給OK)
ひとり親でない場合でも、以下の状況では児童扶養手当の受給対象となる可能性があります。
- 事実婚(内縁)の解消後:戸籍上の離婚と同様に扱われる場合がある
- 配偶者が障害年金を受給している:配偶者が政令で定める障害の状態にある場合
- 配偶者が1年以上行方不明:DV被害などで配偶者と別居状態にある場合
- 配偶者が拘禁中:刑務所等に継続して1年以上服役中の場合
これらのケースでは、通常のひとり親と同様に児童扶養手当の受給資格が認められ、育休中でも両給付を受け取れます。ただし、個々の状況によって判断が異なるため、必ず市区町村の窓口に相談してください。
育休取得後に離婚した場合(申請タイミングに注意)
育休取得中に離婚し、ひとり親になった場合も児童扶養手当の受給申請が可能です。この場合は、離婚成立後すみやかに市区町村窓口に申請しましょう。
注意点: 児童扶養手当は申請した月の翌月分から支給されます(遡及支給は原則ありません)。離婚後に申請が遅れると、その間の手当を受け取れなくなるため、速やかな申請が重要です。
両親ともに雇用されており、配偶者も育休中の場合(原則、児童扶養手当の対象外)
両親がそろっており、一方が育休を取得している一般的なケースでは、通常、児童扶養手当の受給対象にはなりません。児童扶養手当はひとり親家庭を対象とした制度であるため、婚姻関係(または事実婚)が継続している場合は原則として対象外です。
給付調整の計算方法|育休中の所得はどう扱われるか
ひとり親として育休を取得した場合に最も重要なのが、給付調整の計算方法の理解です。
児童扶養手当の所得計算における育児休業給付金の扱い
児童扶養手当の支給額は、前年(1〜12月)の所得をもとに毎年8月に更新されます。この所得計算において、育児休業給付金は以下のように扱われます。
児童扶養手当法施行令第7条・第8条の規定に基づき、育児休業給付金は「給与所得の収入金額」に算入されます。
つまり、育休中に育児休業給付金を受け取っていた場合、その金額が前年所得に加算されて計算されます。ただし、給付金額そのままが所得になるわけではなく、給与所得控除を適用した後の金額が所得として使われます。
計算のイメージ
育児休業給付金の総額(年間)→ 給与所得控除を適用 → 所得額として算定 → 扶養人数に応じた所得制限と照合 → 手当額を決定
2025年度の所得制限限度額(目安)
所得制限は扶養する人数によって異なります。以下は2025年度の目安です(自治体によって細部が異なる場合があります)。
| 扶養人数 | 全部支給(所得) | 一部支給(所得) | 支給停止(所得) |
|---|---|---|---|
| 0人(本人のみ) | 49万円未満 | 49万円〜192万円未満 | 192万円以上 |
| 1人(子ども1人) | 87万円未満 | 87万円〜230万円未満 | 230万円以上 |
| 2人(子ども2人) | 125万円未満 | 125万円〜268万円未満 | 268万円以上 |
※扶養人数が増えるごとに限度額が約38万円ずつ上がります。
2025年度の手当月額(目安)
| 区分 | 子ども1人の場合 |
|---|---|
| 全部支給 | 月額 45,500円 |
| 一部支給 | 月額 45,490円〜10,740円(所得に応じて変動) |
| 支給停止 | 0円 |
※2人目の加算額:月額10,750円(一部支給の場合は10,740円〜5,380円)
※3人目以降の加算額:月額6,450円(一部支給の場合は6,440円〜3,230円)
※金額は物価変動に応じて改定されます。最新額は市区町村窓口でご確認ください。
実際の影響をシミュレーションしてみよう
シミュレーション例:ひとり親(子1人)で育休を取得したBさん
- 育休前の月額給与:25万円
- 育児休業給付金(育休開始〜180日):休業前賃金日額×67%=月額約16.75万円
- 育休期間:10か月(うち前半6か月は67%、後半4か月は50%で計算)
前半6か月(67%支給): 16.75万円×6か月=約100.5万円
後半4か月(50%支給): 12.5万円×4か月=約50万円
育休中の育児休業給付金合計: 約150.5万円この約150.5万円を収入として給与所得控除を適用すると、所得は約87万円前後になる可能性があります。子ども1人を扶養している場合、全部支給の上限が87万円未満であるため、Bさんは一部支給または支給停止に近い状態になる可能性があります。
ただし、育休前に働いていた期間の給与収入、医療費控除、その他の控除も加算・控除されるため、実際の計算は市区町村窓口への確認が必須です。
申請手順と必要書類|両制度を確実に受け取るための手続き
育児休業給付金の申請手順
育児休業給付金は、勤務先(事業主)を通じてハローワークに申請するのが原則です。
STEP 1:育児休業開始前に会社へ申し出る
– 育児・介護休業法に基づき、原則として育休開始の1か月前までに申し出が必要
– 会社が雇用保険の申請手続きを代行します
STEP 2:会社がハローワークへ「育児休業給付受給資格確認票」を提出
– 育休開始後、最初の申請期間(育休開始から約2か月後)までに提出
STEP 3:2か月ごとに「育児休業給付金支給申請書」を提出
– 会社経由でハローワークに申請(多くの場合、会社が代行)
– 自分で申請する場合は、ハローワークの窓口または電子申請が可能
育児休業給付金申請に必要な書類(主なもの)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | 会社が準備・提出 |
| 賃金台帳(写し) | 育休前の賃金確認のため |
| 出勤簿・タイムカード(写し) | 就労日数の確認 |
| 母子健康手帳(子の出生を確認できるページ) | 写しでも可 |
| 育児休業申出書(写し) | 育休申請を証明する書類 |
申請期限の注意点: 育児休業給付金は2か月ごとに申請しますが、支給申請書の提出が遅れると未支給となる期間が生じます。会社の担当者と連携して、期限管理をしっかり行いましょう。
児童扶養手当の申請手順
児童扶養手当の申請は、居住地の市区町村役所(福祉課・子ども家庭支援課等)が窓口です。
STEP 1:必要書類を揃えて市区町村窓口へ
– 原則として、ひとり親になった時点(離婚成立日など)からすみやかに申請
STEP 2:審査(約1〜2か月)
– 提出書類をもとに所得・生活状況などを確認
STEP 3:認定通知と支給開始
– 認定された場合、申請月の翌月分から支給(年3回払い:4月・8月・12月)
児童扶養手当申請に必要な書類(主なもの)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 児童扶養手当認定請求書 | 窓口で入手 |
| 戸籍謄本(申請者・子どもの分) | 発行から1か月以内のもの |
| 住民票(世帯全員分) | マイナンバーで省略できる場合あり |
| 申請者の前年分の収入を証明する書類 | 源泉徴収票・確定申告書の写し等 |
| 健康保険証(写し) | |
| 通帳の写し(振込先確認) | |
| 離婚を証明する書類 | 離婚届受理証明書・調停調書等 |
| マイナンバー確認書類 | 申請者・子ども全員分 |
育休中の方への追加対応: 育休中の場合は、育児休業給付金の受給状況を確認できる書類(支給決定通知書など)の提出を求められる場合があります。窓口で事前に確認しましょう。
毎年の現況届が重要|忘れずに手続きを
児童扶養手当の受給を継続するためには、毎年8月に「現況届」を提出する義務があります。この現況届では、前年の所得・生活状況を申告し、翌年8月〜翌々年7月の支給額が決定されます。
育休中に現況届の時期を迎えた場合は、その年に受け取った育児休業給付金の額を正確に申告することが求められます。申告を怠ると手当の支給が止まるため、毎年確実に提出しましょう。
育休中の家計管理|実際にいくらもらえるかを把握しよう
育児休業給付金の計算式
育児休業給付金は、休業開始前の賃金日額をベースに計算されます。
賃金日額 = 育休開始前6か月の賃金総額 ÷ 180
支給額(育休開始から180日まで)= 賃金日額 × 支給日数 × 67%
支給額(181日目以降) = 賃金日額 × 支給日数 × 50%
例:月給25万円の場合
– 賃金日額:25万円×6÷180=約8,333円
– 前半(〜180日):8,333円×30日×67%≒約16.7万円/月
– 後半(181日〜):8,333円×30日×50%≒約12.5万円/月
なお、2025年4月の改正により、育休取得時の手取り収入を実質的に10割相当に引き上げる措置(社会保険料免除の活用) が継続されています。育休中は健康保険・厚生年金の保険料が免除されるため、手取りベースでは給付率よりも高い水準を確保できます。
両制度を合計した受給額のイメージ
ひとり親(子1人)で月給20万円・全部支給に該当するCさんの場合
給付の種類 月額(概算) 育児休業給付金(前半) 約13.4万円(20万円×67%) 児童扶養手当(全部支給) 約4.6万円 合計 約18万円 社会保険料免除により手取りベースではさらに実質的な負担軽減が見込まれます。ただし所得が一定を超えると児童扶養手当が減額されるため、実際には市区町村での試算が必要です。
申請時に注意すべきポイント・よくあるミス
申請窓口を間違えない
育児休業給付金(ハローワーク・会社経由)と児童扶養手当(市区町村)はまったく別の窓口での手続きが必要です。市区町村役所に行けば両方まとめて手続きできるわけではないため、混同しないよう注意してください。
育休開始と同時に児童扶養手当の変更届が必要な場合がある
すでに児童扶養手当を受給中の方が育休を開始した場合、所得状況の変更として届け出が必要になる自治体もあります。育休開始後は市区町村窓口に問い合わせて、追加の手続きが必要かどうかを確認しましょう。
育休期間の延長が生じた場合は再確認を
保育所に入所できないなどの理由で育休が1歳6か月・2歳まで延長された場合、育児休業給付金の延長申請が必要です。また、延長に伴い育児休業給付金の受給期間が延びることで、翌年の児童扶養手当の所得計算に影響が出ることがあります。延長が確定した時点で、ハローワークと市区町村の両方に状況を連絡することをおすすめします。
所得証明書の発行タイミングを確認する
前年所得の証明書(課税証明書)は、通常6月頃から発行されます。現況届(8月)に間に合わせるためには、6〜7月のうちに証明書を入手しておくのが安全です。
法的根拠のまとめ
本記事で解説した内容の法的根拠を以下に整理します。
| 内容 | 根拠法令 |
|---|---|
| 育児休業給付金の支給要件 | 雇用保険法 第61条の4〜第61条の8 |
| 育休の申出・取得 | 育児・介護休業法 第5条・第65条 |
| 児童扶養手当の支給対象 | 児童扶養手当法 第1条・第4条 |
| 所得計算における給付金の算入 | 児童扶養手当法施行令 第7条・第8条 |
| 現況届の提出義務 | 児童扶養手当法 第28条 |
※法令は改正されることがあります。手続きの際は必ず最新の情報を確認してください。
よくある質問
Q1. 育休中に離婚した場合、すぐに児童扶養手当を申請できますか?
はい、離婚が成立した時点で申請できます。ただし、支給は申請月の翌月分からとなるため、離婚成立後はできるだけ早く市区町村窓口に申請することをおすすめします。戸籍謄本など離婚を証明する書類を持参してください。
Q2. 育児休業給付金は児童扶養手当の「収入」として扱われますか?
はい、児童扶養手当法施行令の規定により、育児休業給付金は所得計算の際に給与収入と同様に扱われます。ただし、給与所得控除が適用されたうえで所得額が計算されるため、受け取った給付金の全額が所得になるわけではありません。
Q3. 育休中でも現況届を提出しなければなりませんか?
はい、現況届は育休中であっても毎年8月に必ず提出しなければなりません。提出を怠ると手当の支給が一時停止されます。育休中の方は、育児休業給付金の受給状況も正確に申告してください。
Q4. ひとり親ではありませんが、事実婚を解消した場合に児童扶養手当を受け取れますか?
事実婚(内縁関係)を解消した場合も、法律上の婚姻の離婚と同様に扱われる場合があります。ただし、事実婚の解消を証明する書類の準備や、同居関係の有無の確認など、審査が複雑になることがあります。市区町村の窓口に詳細を相談してください。
Q5. 育休給付金と児童扶養手当を受給中に、パートやアルバイトをしてよいですか?
育休中に就労した場合、就労日数が一定の基準を超えると育児休業給付金が減額または不支給になる場合があります(育休中の就業は月10日以下または80時間以下が目安)。また、就労収入は児童扶養手当の所得計算にも影響します。就労を検討する際は、事前にハローワークと市区町村の両方に確認することをおすすめします。
Q6. 育児休業給付金の支給が終わった後も児童扶養手当はもらえますか?
はい、児童扶養手当はひとり親としての要件(子どもが18歳の3月31日まで)と所得要件を満たし続ける限り、育休終了後も受給を継続できます。職場復帰後は給与収入が所得として計算されるため、手当額が変わる可能性があります。毎年の現況届で収入状況を正確に申告してください。
免責事項: 本記事は2025年時点の情報をもとに作成しています。制度の詳細・金額は改正により変更されることがあります。実際の申請・手続きは、ハローワークおよびお住まいの市区町村窓口にて最新情報をご確認ください。

