育休中に親族からお金をもらうと、育児休業給付金が減らされてしまうのではないか——そんな不安を抱えている方は少なくありません。結論を先にお伝えすると、親族からの生活費援助や仕送りは、原則として育児休業給付金に影響しません。
ただし、すべてのケースが「影響なし」とは限りません。援助の形態や内容によっては、就業とみなされて給付金に影響する可能性もあります。また、税務上の申告が必要になるケースもあるため、正確な知識を持っておくことが重要です。
この記事では、育児休業給付金の基本的な仕組みから、援助の形態別の影響、申告が必要なケース、よくある疑問まで、2025年時点の最新情報をもとに詳しく解説します。
育休中に親族から援助金をもらうと給付金はどうなる?【結論から解説】
育児休業給付金は、雇用保険法に基づいてハローワークから支給される給付金です。社会保険や生活保護とは異なり、世帯の収入や資産状況が審査されるような制度ではありません。
そのため、以下のようなケースでは給付金は原則として減額されません。
- 実家の両親から生活費を援助してもらった
- 配偶者が家計を補助するためにお金を渡してくれた
- 祖父母から仕送りをもらった
育児休業給付金の支給可否や金額は、あくまで「育児休業期間中の就業状況(就業日数・就業時間)」と「育休前の賃金額」によって決まります。個人間の私的な金銭のやり取りは、この判断基準とは無関係です。
ただし、「親族が経営する企業から給与を受け取る」などのケースは、就業とみなされる可能性があり注意が必要です。どのような援助が影響を及ぼす可能性があるのか、以降で詳しく整理していきます。
育児休業給付金の基本的な仕組みと受給要件
援助金の影響を正しく理解するためには、まず育児休業給付金がどのような制度なのかを把握しておく必要があります。
育児休業給付金は、雇用保険法第61条の4に基づく給付金であり、育児休業中の労働者が受け取れる経済的な支援です。雇用保険に加入している労働者が育休を取得した場合、一定の条件を満たすことでハローワーク(公共職業安定所)から支給されます。
主な受給要件は以下のとおりです。
- 雇用保険への加入: 育休開始前の2年間に、賃金支払いの基礎となった日数が11日以上ある月が12ヶ月以上あること
- 雇用形態: 正社員のほか、有期契約社員も対象(子が1歳6ヶ月までの間に労働契約が満了しないことが条件)
- 就業日数の制限: 育休中に就業した日数が1支給単位期間(原則1ヶ月)あたり10日以下(10日を超える場合は就業した時間が80時間以下)
- 育児休業期間: 原則として子が1歳になるまで(保育所に入れないなどの場合は最長2歳まで延長可能)
これらの要件を満たしていれば、親族から援助金を受け取っていても受給資格には影響しません。
受給できる金額と給付率の計算方法
育児休業給付金の支給額は、育休開始前の賃金をもとに計算されます。計算に使う「休業開始時賃金日額」は、育休開始前6ヶ月間の賃金合計を180日で割った金額です。
給付率の計算式
| 期間 | 給付率 | 計算式 |
|---|---|---|
| 育休開始〜6ヶ月間 | 67% | 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67% |
| 6ヶ月経過後 | 50% | 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50% |
なお、2025年4月からの制度改正により、「育児休業給付金の給付率引き上げ(手取り10割相当)」に向けた段階的な見直しが進められています。最新情報はハローワークまたは厚生労働省の公式サイトで確認してください。
具体的な計算例
育休前の月収が30万円の場合を例に試算します。
- 休業開始時賃金日額:300,000円 ÷ 30日 = 10,000円
- 育休開始〜6ヶ月:10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円/月
- 6ヶ月経過後:10,000円 × 30日 × 50% = 150,000円/月
この金額に、親族からの援助金が加わっても、給付金の計算には影響しません。あくまで「育休前の賃金」と「就業状況」に基づいて算出されます。
受給要件を満たしているか確認するチェックリスト
自分が育児休業給付金を受け取れるかどうか、以下のチェックリストで確認してみましょう。
- [ ] 雇用保険に加入している(正社員・パート・派遣社員なども対象)
- [ ] 育休開始前2年間に、11日以上働いた月が12ヶ月以上ある
- [ ] 有期契約の場合、子が1歳6ヶ月になる日までに契約満了の予定がない
- [ ] 育休中に就業する日数が月10日以下(または就業時間80時間以下)である
- [ ] 育児休業を会社に申請し、適切に取得している
上記をすべて満たしていれば、親族からの援助の有無に関わらず、給付金を受給できます。
援助の形態別|給付金への影響が「ある場合」と「ない場合」を徹底比較
ここが本記事の核心です。「援助金の内容・形態」によって、育児休業給付金への影響が変わります。以下の表で整理してみましょう。
| 援助の形態 | 給付金への影響 | 主な理由 |
|---|---|---|
| 親からの生活費援助 | なし | 私的な金銭授受で就業に該当しない |
| 配偶者からの家計補助 | なし | 家族内の家計管理の範囲 |
| 祖父母からの仕送り | なし | 扶養・援助目的の私的援助 |
| 親族経営企業からの給与 | あり(就業とみなされる) | 労働の対価としての報酬 |
| 親族への手伝いに対する謝礼(実費以上) | 要注意 | 就業とみなされる可能性がある |
| 親族からの贈与・相続 | なし(ただし税務申告の可能性あり) | 給付金とは無関係だが贈与税が発生する場合がある |
影響なし|生活費・仕送り・家計補助に該当するケース
親族からの援助が「生活費」や「家計の補助」を目的とした私的な金銭授受である場合、育児休業給付金には一切影響しません。
影響がない主な理由は、育児休業給付金の減額条件が「就業状況」のみに基づいているからです。
雇用保険法上、給付金の支給額が調整されるのは、育休中に「就業した日数・時間が一定水準を超えた場合」に限られます。親族から受け取るお金は、労働の対価ではなく私的な贈与や援助であるため、就業とはみなされません。
具体的に問題ないとされるケースの例を挙げます。
- 実家に帰省中に両親が食費・日用品代を負担してくれた
- 義両親が孫の養育のために毎月一定額を振り込んでくれている
- 配偶者の収入から生活費を受け取っている(通常の家計管理)
- 祖父母が孫の誕生祝いや節句のお祝いとして現金を渡してくれた
これらはいずれも、育児休業給付金の受給に影響しません。安心して受け取ってください。
影響あり・要注意|就業とみなされる可能性があるケース
一方、以下のような形で親族からお金を受け取る場合は注意が必要です。
親族が経営する会社・店舗での勤務
両親や配偶者の親族が経営する法人・個人事業に雇用される形で「給与」を受け取る場合は、たとえ短時間であっても就業とみなされます。
育休中は就業日数が「1支給単位期間(原則1ヶ月)あたり10日以下、または就業時間80時間以下」でなければなりません。この条件を超えた場合、その月の給付金は全額不支給となります。さらに、就業による収入が一定以上ある場合は給付金が減額されることもあります。
実態が「労働の対価」となっている援助
「援助」という名目であっても、実際には以下のような実態がある場合は注意が必要です。
- 親族の店舗・事業を手伝い、その報酬として「お礼」や「謝礼」を受け取っている
- フリーランス・個人事業として親族から業務を受注し、報酬を得ている
- 育休中に親族の事業の一部を担い、成果に応じて支払いを受けている
これらは形式が「援助」であっても、実態は「就業」に当たると判断される可能性があります。ハローワークや会社の担当者に事前相談することをお勧めします。
申告が必要なケースと注意すべき手続き
「給付金への影響がない」と分かっても、別の側面から申告や手続きが必要なケースがあります。ここでは、育休中の援助金に関連する申告義務について整理します。
育児休業給付金の継続申請における就業報告
育児休業給付金は、2ヶ月ごとにハローワークへ継続申請が必要です(企業経由で申請するケースが多い)。この申請書類の中には、「育休中の就業日数・時間」を報告する欄があります。
親族の事業で働いた場合は、ここに正確に記入する必要があります。虚偽の申告は不正受給とみなされ、給付金の返還命令や法的ペナルティの対象となります。
正しい対応の流れは以下のとおりです。
- 親族の事業で就業した日数・時間を正確に記録する
- 「育児休業給付金支給申請書」に就業実績を正直に記入する
- 就業日数が10日・80時間を超えた場合は、その月の給付金が不支給になることを確認する
- 不明な点はハローワークまたは会社の担当者に相談する
税務上の申告(贈与税・所得税)
育児休業給付金は非課税です(所得税・住民税の課税対象外)。しかし、親族からの援助金については、金額や内容によっては税務上の申告が必要になる場合があります。
贈与税が発生するケース
親族から受け取ったお金が「贈与」とみなされる場合、年間110万円を超えると贈与税が発生する可能性があります(基礎控除:年110万円)。
ただし、生活費や教育費として必要な範囲で援助を受ける場合は、贈与税の非課税枠が適用されます。国税庁の通達(相続税法第21条の3)では、「扶養義務者相互間において生活費または教育費に充てるためにした贈与により取得した財産のうち通常必要と認められるもの」は贈与税の対象外と定められています。
つまり、「生活費として必要な範囲での援助」であれば、年間110万円を超えていても贈与税はかかりません。
注意すべきは、受け取ったお金を生活費に使わず貯蓄した場合や、高額な財産の移転を伴う場合は課税対象となる可能性があることです。
確定申告が必要なケース
育休中は給与収入がほぼゼロになるため、多くの場合は会社の年末調整で処理が完結します。ただし、以下の場合は確定申告が必要です。
- 育休中に副業・フリーランスとして20万円以上の所得があった場合
- 親族の事業からの報酬が給与所得として計上される場合
- 医療費控除などを申請したい場合
親族からの「生活費援助」はそもそも所得に該当しないため、確定申告の対象にはなりません。
ハローワークへの相談と申請の流れ
育休中の援助金に関して不安がある場合は、ハローワークへ相談するのが最も確実です。以下に、育児休業給付金の申請フローをまとめます。
申請の全体的な流れ
【Step 1】会社へ育児休業の申請(休業開始の1ヶ月前が目安)
↓
【Step 2】育児休業給付金の受給資格確認(会社経由でハローワークへ)
↓
【Step 3】初回支給申請(育休開始から約2ヶ月後を目安に会社経由で申請)
↓
【Step 4】2ヶ月ごとに継続支給申請
↓
【Step 5】育休終了(復職または終了手続き)
初回申請に必要な書類
| 書類名 | 準備先 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク(会社が取得) | 会社が記入を支援してくれることが多い |
| 雇用保険被保険者証 | 本人(会社が保管している場合も) | 紛失時は会社またはハローワークで再発行 |
| 母子健康手帳(出生ページ)のコピー | 本人 | 育児事実の確認用 |
| 賃金台帳・出勤簿 | 会社 | 賃金額・就業実績の確認用 |
| 本人確認書類(マイナンバーカードなど) | 本人 | 個人番号確認のため |
| 振込先口座の通帳またはキャッシュカード | 本人 | 給付金の振込先 |
継続申請時のポイント
継続申請では、就業した日数・時間の報告が中心になります。親族の事業に少しでも関わった場合は、その実績を正直に申告してください。「少しくらいなら報告しなくてもいいだろう」という判断は、不正受給につながるリスクがあります。
不安な場合は、ハローワークの窓口に事前相談することを強くお勧めします。専門の担当者が、個別の状況に応じたアドバイスを提供してくれます。
育休給付金と援助金に関する法的根拠
育児休業給付金に関する主な法的根拠をまとめます。手続きに迷ったときや、詳細を確認したいときの参照先としてお役立てください。
| 法令・規則 | 内容 |
|---|---|
| 雇用保険法 第61条の4 | 育児休業給付金の支給要件・給付額の規定 |
| 雇用保険法施行規則 第101条の11〜101条の30 | 申請手続き・支給申請の詳細規定 |
| 育児・介護休業法 第5条〜第10条 | 育児休業の取得権利と手続きの規定 |
| 相続税法 第21条の3 | 生活費・教育費の贈与税非課税規定 |
| 国税庁 贈与税の非課税に関する通達 | 生活費援助の税務上の取扱い |
育休中の援助金に関するよくある疑問
育休中の援助金について、多くの方が疑問に思うポイントをQ&A形式で解説します。
Q1. 配偶者から毎月20万円の生活費をもらっています。給付金は減額されますか?
減額されません。配偶者からの生活費の援助は家族内の家計管理の範囲であり、育児休業給付金の受給要件(就業日数・時間)とは無関係です。金額の多寡も影響しません。
Q2. 実家に帰省して両親の家業を少し手伝いました。申告は必要ですか?
手伝いの実態によります。「就業(労働)」に当たると判断される場合は、育児休業給付金の支給申請書に就業日数・時間を記入する必要があります。実質的な作業であったなら、正直に申告してください。「少し手伝っただけ」と判断が難しい場合は、ハローワークに相談するのが安全です。
Q3. 親から100万円の援助を受けました。贈与税はかかりますか?
生活費として使うための援助であれば、金額が110万円を超えていても贈与税はかかりません(相続税法第21条の3)。ただし、受け取ったお金を貯蓄・投資に回した場合は贈与税の対象になる可能性があります。不安な場合は税理士や税務署に相談してください。
Q4. 育休中に親族の会社から「役員報酬」を受け取る場合はどうなりますか?
役員報酬は給与・報酬に相当するため、就業とみなされる可能性が高いです。育休中の就業扱いになると給付金に影響する場合があります。必ずハローワークおよび会社の担当者・社会保険労務士に事前相談することをお勧めします。
Q5. 育休中の収入がゼロなので、親からの援助を収入として確定申告する必要がありますか?
生活費目的の援助は所得には該当しないため、確定申告の必要はありません。ただし、副業収入や親族からの報酬(労働の対価)がある場合は申告が必要になることがあります。
Q6. 援助金の存在をハローワークに申告する義務はありますか?
生活費・仕送り・家計補助としての援助金は、育児休業給付金の申請書類に記入する項目がありません。したがって、原則として申告は不要です。ただし、就業を伴う場合(親族の事業での勤務など)はその実績を申告する義務があります。
Q7. 育休給付金の給付率は2025年でどう変わりますか?
2025年4月からの制度改正により、育児休業給付金の給付率を段階的に引き上げ、「手取り10割相当」を目指す動きが進んでいます。現在は育休開始から6ヶ月は67%、その後50%ですが、詳細な改正内容はハローワークまたは厚生労働省の公式サイトで最新情報をご確認ください。
まとめ|育休中の援助金は原則として給付金に影響しない
この記事の要点を整理します。
影響がないケース(安心して受け取れる)
– 親・祖父母・配偶者などからの生活費・仕送り・家計補助
– 出産祝いやお祝い金などの私的な金銭贈与
– 配偶者の収入による家族全体の生活費負担
影響があるケース(事前に確認・申告が必要)
– 親族が経営する会社・店舗での就業とそれに伴う報酬
– 実態が「労働の対価」となっている謝礼・報酬
– 役員報酬・業務委託料などの報酬形態での受け取り
育児休業給付金は、育休中の経済的な不安を軽減するための重要な制度です。親族からの援助と組み合わせることで、安心して育児に専念できる環境を整えることができます。
「自分のケースはどうなのだろう」と不安を感じたら、ハローワークや会社の担当者、社会保険労務士に遠慮なく相談してください。正確な情報をもとに、安心して育休を取得しましょう。
関連情報・参考資料
以下は、育児休業給付金に関する公式情報源です。手続きの詳細や最新の制度改正について確認する際にご活用ください。
- 厚生労働省「育児休業給付について」 — 制度の概要・変更点を確認
- ハローワークインターネットサービス「育児休業給付」 — 申請手続き・必要書類の確認
- 国税庁「贈与税がかかる場合・かからない場合」 — 税務上の取扱い
- 雇用保険法(昭和49年法律第116号) — 法的根拠
- 育児・介護休業法(平成3年法律第76号) — 育児休業の権利と義務
育休中に疑問が生じた際は、最寄りのハローワーク窓口や勤務先の人事部門に直接相談することで、個別の状況に即したアドバイスを受けることができます。

