育休中に親族死亡|喪休(忌引)取得と育休継続の手続き方法

育児休業制度

育休中に突然の訃報が届いたとき、「喪休(忌引休暇)は取得できるのか」「育休はどうなるのか」と頭が真っ白になる方も多いでしょう。実はこの問題、法律で明確に定められていないため、対応を誤ると給付金に影響が出たり、職場とトラブルになったりするリスクがあります。

この記事では、育休中に親族が亡くなった場合の喪休の取り方・育休継続の可否・必要書類・給付金への影響を、法的根拠を交えながらわかりやすく解説します。予期しない事態に直面した際の最初の対応から、ハローワークへの報告まで、実務的なポイントを網羅しました。


育休中に親族が亡くなった場合、喪休(忌引休暇)は取れるのか?

「育休中なのだから休暇の概念は関係ない」と思われがちですが、実際はそれほど単純ではありません。まずは喪休制度の法的な立ち位置を正確に理解しましょう。

喪休(忌引休暇)の法的位置づけ

喪休(忌引休暇)は、労働基準法では義務付けられていない任意の特別休暇です。

民間企業において喪休を設けるかどうか、何日付与するか、どの親族を対象とするかは、すべて企業が就業規則で自由に定められます。法的義務がないため、制度がない企業では年次有給休暇(年休)を使うか、欠勤扱いになる場合もあります。

一方、公務員の場合は人事院規則で忌引休暇が明確に規定されており、配偶者死亡で10日、父母・子の死亡で7日など具体的な日数が定められています(人事院規則15-14第22条)。民間企業の規定とは性格が大きく異なるため、公務員の情報をそのまま民間企業に当てはめないよう注意が必要です。

区分 法的根拠 日数の決定
民間企業 なし(任意) 就業規則で任意設定
国家公務員 人事院規則15-14 人事院規則で規定
地方公務員 各自治体の条例・規則 自治体ごとに規定

関連法令: 育児・介護休業法第2条(育児休業の定義)、労働基準法第89条(就業規則の記載事項)

育休中に喪休を取れるかどうかは企業の就業規則で決まる

育休中の喪休取得については、就業規則の規定内容によって対応が3パターンに分かれます。最初に自社の規定を確認することが何より重要です。

パターン①:育休を中断→喪休を取得→育休を再開(最多パターン)

就業規則に「育休中であっても喪休を適用する」旨の規定がある場合、いったん育休を中断して喪休を取得し、喪休終了後に育休を再開します。この場合、喪休期間は就業規則に基づく有給の特別休暇となり、育休期間としてはカウントされません。

パターン②:育休を継続したまま、喪休は取得しない

「育休は労働義務が免除されている期間であり、そこに別の休暇は重複適用しない」とする企業もあります。この場合、育休が継続されるため手続きは不要ですが、喪休として別途給与や手当が支給されることはありません

パターン③:年次有給休暇で対応

喪休制度がない企業や、育休中は喪休不適用とする企業では、年次有給休暇を使用するよう案内されるケースがあります。ただし育休中は労働義務が停止しているため、年休の取得自体に疑義が生じる場合もあります。実際の運用は企業の人事部に確認が必要です。

最初に確認すること: 手元にある就業規則・特別休暇規程の「忌引(慶弔)休暇」の項目を開き、「育休中の適用の有無」「対象親族の範囲」「日数」を確認してください。規程がなければ人事部へ問い合わせましょう。


喪休の対象となる親族の範囲と取得日数の目安

次に、どの親族が亡くなった場合に喪休の対象となるのか、日数の目安とともに整理します。

一般的な親族区分と忌引日数の早見表

以下は民間企業で広く採用されている目安の日数です。繰り返しになりますが、法律上の規定ではなく、企業ごとに異なります

亡くなった方 続柄 一般的な忌引日数の目安 備考
配偶者 1親等(配偶者) 5〜7日 喪主となる場合が多く日数多め
父母 1親等(直系) 3〜5日 実父母・養父母いずれも対象が多い
子(育休対象児以外) 1親等(直系) 3〜5日 対象児の場合は別途後述
義父母(配偶者の父母) 1親等(配偶者側) 3〜5日 同居有無で変わる企業も
祖父母 2親等(直系) 1〜3日 同居の有無で異なる場合あり
兄弟姉妹 2親等(傍系) 1〜3日
義兄弟姉妹(配偶者の兄弟姉妹) 2親等(配偶者側) 1〜2日
2親等(直系) 1〜2日
曾祖父母 3親等(直系) 1日 対象外の企業も多い
叔父・叔母 3親等(傍系) 0〜1日 対象外が多い
いとこ 4親等 0日 ほぼ対象外

⚠️ 注意: この表はあくまで目安です。喪主(葬儀の主宰者)か否か、同居しているかどうかによって日数が変わる企業も多くあります。自社の就業規則で必ず確認してください。

いとこ・叔父叔母など3親等以上の場合

叔父・叔母(3親等傍系)以遠の親族は、喪休の対象外としている企業が大半です。該当する訃報があった場合、以下のいずれかで対応することになります。

  • 年次有給休暇を取得する(育休中の適用については前述のとおり要確認)
  • 育休を継続しながら訃報対応を行う(育休中は就労義務なし)
  • 欠勤扱い(年休も適用されない場合の最終手段)

「就業規則に記載がないから対象外」と思い込まず、不明点は人事部へ事前に問い合わせることが重要です。「特別の事情」として個別対応してもらえるケースも実際にあります。

育休の対象児自身が亡くなった場合の特別対応

育休取得の直接の対象となっているお子さんが亡くなられた場合は、単なる喪休の問題を超えた、育休制度の根本に関わる重大な事態です。

育児・介護休業法上の「育休廃止事由」に該当する可能性があります。

育児・介護休業法施行規則では、育休を取得している子が死亡した場合、育児休業の申出が効力を失う旨が定められています(育児・介護休業法第9条第1項、同法施行規則第7条)。

状況 法的扱い 必要な対応
育休対象の子が死亡 育休廃止事由に該当 速やかに会社へ届出。職場復帰の時期を協議
育休対象の子以外が死亡 育休廃止事由には該当しない 喪休の取得可否を就業規則で確認

育休対象児が亡くなった場合、育休を継続することはできません。この場合は会社と協議のうえ、職場復帰の時期や各種手続きについて速やかに対応する必要があります。

この非常につらい状況においても、育児休業給付金の返還義務は原則として発生しません(既に支給済みの分は返還不要)。ハローワークへの届出のみ必要となります。


申請手続きの流れと必要書類

実際に育休中に親族が亡くなった場合、どのような順序で手続きを進めるべきかをフローで説明します。

手続きフロー全体像

STEP 1:企業(人事部・直属上長)への速報連絡
         ↓
STEP 2:就業規則の喪休規定確認・喪休申請
         ↓
STEP 3:育休の「中断」または「継続」の確認
         ↓
STEP 4:喪休申請書類の提出(忌引き証明書など)
         ↓
STEP 5:葬儀・弔事対応
         ↓
STEP 6:育休再開手続き(中断していた場合)
         ↓
STEP 7:育児休業給付金への影響確認(ハローワーク経由)

必要書類一覧

申請に必要な書類は企業によって異なりますが、一般的に以下が求められます。

書類名 取得先 提出先 備考
忌引き(喪休)申請書 会社所定様式 人事部・上長 企業によって様式が異なる
忌引き証明書(死亡診断書のコピーなど) 病院・市区町村 人事部 葬儀社発行の会葬礼状でも可とする企業多い
会葬礼状 葬儀社 人事部 葬儀社から受け取れる
死亡届受理証明書 市区町村窓口 人事部(要求があれば) 続柄証明が必要な場合
続柄確認書類(戸籍謄本など) 市区町村窓口 人事部(要求があれば) 義父母などわかりにくい続柄の場合
育休中断・再開届(社内書類) 会社所定様式 人事部 中断する場合のみ

💡 実務のポイント: 葬儀は突然の事態であるため、書類の事後提出を認めている企業がほとんどです。まずは口頭またはメール・電話で速報を入れ、書類は後日提出という流れで問題ありません。

育休中断・再開の手続き詳細

育休を中断して喪休を取得し、その後育休を再開する場合の手続きは以下のとおりです。

1. 育休中断の届出

就業規則に「育休中に別の特別休暇を取得できる」旨の規定がある場合、社内所定の「育休中断届」または「育児休業変更届」を提出します。書式がない場合は人事部に口頭確認のうえ、メールなどで記録を残しましょう。

2. 喪休申請書の提出

就業規則上の喪休(慶弔休暇)申請書を通常の申請フローに沿って提出します。育休中断の届出と同時に行うとスムーズです。

3. 育休再開の届出

喪休終了後、育休を再開する場合も「育休再開届」を提出します。この手続きを忘れると、育休期間が正確にカウントされず、育児休業給付金の支給に影響が出る可能性があります。


育児休業給付金への影響と注意点

育休中の最大の関心事のひとつが「給付金はどうなるのか」という点です。以下、給付金の仕組みと喪休取得時の影響を整理します。

育児休業給付金の基本計算式(復習)

育児休業給付金は以下の計算式で支給されます(雇用保険法第61条の4)。

【育休開始から180日目まで】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%

【181日目以降】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

支給は「支給単位期間(原則1か月)」ごとに行われ、就労日数が1支給単位期間中に10日(または80時間)を超えると給付金が減額または不支給になります。

喪休取得による給付金への影響

喪休取得と育児休業給付金の関係は、喪休が「就業」とみなされるかどうかによって変わります。

ケース別の影響整理

ケース 就業扱い? 給付金への影響
育休を継続しながら喪休を取得しない なし 影響なし
育休を中断・喪休を取得(有給特別休暇) なし(就業はしていない) 原則影響なし
育休中断し出社して事務処理などを行った あり(就業扱い) 就労日数・時間に応じて減額・不支給の可能性あり

⚠️ 重要: 喪休中は職場に出勤・就労していないため、原則として「就業日数」にはカウントされません。ただし、「喪主の都合で会社に立ち寄って事務作業をした」「リモートで業務を行った」などの場合は就業とみなされる可能性があるため注意が必要です。

育児休業給付金の支給単位期間への影響

育休を中断・再開した場合、支給単位期間の算定がリセットされないかを確認することが大切です。

一般的に、数日程度の喪休取得であれば支給単位期間の継続性に影響はありませんが、喪休の期間が長期に及ぶ場合や、喪休中に一定の就労が発生した場合は給付金の支給額が変わる可能性があります。

不安な場合はハローワーク(公共職業安定所)に直接確認することを強くおすすめします。育休取得者を担当する企業の人事・労務担当者が代わりに確認してくれる場合もあります。

パパ・ママ育休プラス制度を利用している場合の注意点

両親がともに育休を取得する「パパ・ママ育休プラス(育児・介護休業法第9条の2)」を利用している場合、どちらかが喪休を取得したとしても、もう一方の育休への直接的な影響は原則としてありません。ただし、喪主となった側の育休・給付金の取り扱いについては前述のとおり個別に確認が必要です。


会社への連絡と心構え

法的手続きと並行して、人間的・実務的な側面も重要です。職場との円滑なコミュニケーションを図るため、以下のポイントを押さえましょう。

連絡する際のポイント

速報は電話またはメールで行う

書類が整っていなくても、まず第一報は速やかに入れましょう。「○月○日に父が亡くなりました。喪休について確認をお願いしたいです」という簡単な連絡で構いません。

確認すべき5点を準備しておく

  1. 喪休の対象親族に該当するか
  2. 取得できる日数(喪主かどうかで変わる企業もある)
  3. 育休は中断扱いになるか、継続扱いになるか
  4. 必要書類と提出期限
  5. 育児休業給付金への影響はあるか

記録を残す

口頭でのやり取りは後日トラブルになることがあります。メールや書面で確認内容を記録しておくことを強くおすすめします。「先ほどお電話で伺った内容のご確認です」という形でメールを送っておくだけで十分です。

職場復帰を迫られた場合の対応

稀に、「親族が亡くなったのだから育休を終了して早く復帰してほしい」と言われるケースがあります。しかし、育休の終了事由は育児・介護休業法で厳格に定められており、会社が一方的に終了させることはできません(育児・介護休業法第9条)。

もし職場復帰を強く求められた場合は、都道府県労働局雇用環境・均等部(室)に相談することができます。これは労働者の法的権利であり、遠慮なく相談して構いません。


企業の人事担当者向け:育休中の喪休申請への対応ガイド

企業の人事・労務担当者が適切に対応するためのチェックポイントも整理します。

就業規則の整備ポイント

現行の就業規則に「育休中の喪休適用の有無」が明記されていない場合、今後トラブルが生じる可能性があります。以下の文言例を参考に、規則の整備を検討してください。

規定例(参考):

「育児休業取得中の従業員が慶弔休暇(特別休暇)の事由に該当する事態が生じた場合、本規定を適用し、当該期間は育児休業を中断したものとして取り扱う。慶弔事由消滅後は速やかに育児休業を再開するものとする。」

育休中の喪休申請を受けた際の対応手順

1. 従業員からの連絡受理
   ↓
2. 就業規則の慶弔休暇規定を確認(対象親族・日数)
   ↓
3. 育休の中断・継続いずれの扱いにするか社内決定
   ↓
4. 従業員へ方針を書面(メール可)で通知
   ↓
5. 喪休申請書・証明書類の受理
   ↓
6. ハローワークへの育休給付金への影響確認(必要に応じ)
   ↓
7. 育休再開届の受理・保管
   ↓
8. 給与・給付金の調整処理

育休給付金の支給申請への影響反映

育休を中断・再開した場合、雇用保険の育児休業給付金の支給申請にも影響が出る場合があります。管轄のハローワークに「育休の中断事由と期間」を説明し、支給単位期間の取り扱いを確認してから申請書類を作成してください。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に義父が亡くなりました。喪休は取れますか?

A. 義父(配偶者の父)は多くの企業で喪休対象とされていますが、日数は実父母より少ない場合があります(2〜3日が目安)。ただし法律上の規定ではないため、まず就業規則の「慶弔休暇」規定と対象親族一覧を確認してください。明記されていなければ人事部に直接問い合わせましょう。


Q2. 育休中に喪休を取得した場合、育児休業給付金は減額されますか?

A. 喪休期間中に就業(出勤・リモートワークなど)を行っていなければ、原則として給付金は減額されません。育休中断→喪休取得→育休再開という流れであれば、喪休期間は「就労日数」にカウントされないためです。ただし支給単位期間の計算に影響する場合もあるため、不安な方はハローワークに直接確認することをおすすめします。


Q3. 就業規則に喪休の記載がありません。どうすればよいですか?

A. まず人事部に「育休中に喪休を取得できるか」を直接問い合わせてください。制度がない場合は、年次有給休暇の利用、または育休継続のままでの対応(育休中は就労義務なし)が選択肢となります。なお、就業規則に定めがなければ会社側も強制的な対応はできないため、落ち着いて交渉することが大切です。


Q4. 育休対象の子どもが亡くなってしまいました。育休はどうなりますか?

A. 育児・介護休業法の規定により、育休対象の子が死亡した場合は育休廃止事由に該当し、育休の効力が失われます。この場合は速やかに会社へ届け出てください。既に支給された育児休業給付金の返還は原則不要です。大変つらい状況ではありますが、ハローワークおよび会社の人事部が手続きをサポートしてくれます。


Q5. 育休中に親族が亡くなった場合、葬儀に参列するだけなら特別な手続きは不要ですか?

A. 育休中は就労義務が停止しているため、育休を継続したまま葬儀に参列すること自体は問題ありません。ただし、喪主として複数日拘束される場合や、喪休として有給の補償を受けたい場合は、就業規則に基づく申請が必要です。また、育休中に会社の業務を行わない限り、給付金への影響もありません。


Q6. 育休中に喪休を取得したことを、ハローワークに報告する必要はありますか?

A. 育休中断と再開が発生した場合、または支給単位期間の算定に影響が出る可能性がある場合は、育児休業給付金の支給申請時に事業主(会社)経由でハローワークへ報告する必要があります。特に喪休期間中に一定の就労があった場合は必ず報告が必要です。会社の人事・労務担当者と連携して対応してください。


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– 育休中に事業所閉鎖された場合の対応
– パパ・ママ育休プラスの申請手続き
– 育休から職場復帰する際の手続きと給与


まとめ:育休中の親族死亡時に確認すべき6つのポイント

育休中に親族が亡くなった場合、焦りや悲しみの中でも対応しなければならない手続きがあります。以下の6点を順番に確認することで、必要な対応が漏れなく行えます。

# 確認事項 確認先
1 就業規則に喪休(慶弔休暇)規定があるか 就業規則・人事部
2 亡くなった方は喪休の対象親族か、日数は何日か 就業規則の対象親族一覧
3 育休は中断扱いか継続扱いか 人事部へ確認・書面で残す
4 必要な書類(忌引き証明書など)と提出期限 人事部
5 育児休業給付金への影響はあるか ハローワーク・人事部
6 育休再開の届出を忘れずに行う 社内所定様式で人事部へ

育休制度は労働者の権利であり、突発的な家族の事情によって不当に制限されるものではありません。わからないことがあれば、会社の人事部や管轄のハローワーク、または都道府県労働局に遠慮なく相談してください。

📞 相談窓口
ハローワーク(公共職業安定所): 育児休業給付金の支給に関する問い合わせ
都道府県労働局 雇用環境・均等部(室): 育休取得に関するトラブル・相談
労働条件相談ほっとライン: 0120-811-610(無料、平日17時〜22時、土日祝10時〜17時)


参考法令・根拠

  • 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)第2条、第9条、第9条の2
  • 育児・介護休業法施行規則第7条
  • 雇用保険法第61条の4(育児休業給付金)
  • 労働基準法第89条(就業規則の記載事項)
  • 人事院規則15-14第22条(国家公務員の忌引き休暇)

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