育児休業給付金(以下、育休給付金)は、2025年4月から給付率が段階的に引き上げられます。「出生後6ヶ月間は実質100%給付」という大きな変更があり、育休取得を検討している方にとって非常に重要な改正です。
本記事では、いつから・誰が・どの対象月に・何%もらえるのかを出生日パターン別に整理し、具体的な計算方法・申請手続きまでわかりやすく解説します。
育休給付金の給付率「段階引き上げ」とは?2025年改正の全体像
| 改正時期 | 出生後0~6ヶ月 | 出生後6~12ヶ月 | 主な変更点 |
|---|---|---|---|
| 2022年10月改正 | 67% | 50% | 基本給付率の引き上げ |
| 2025年4月改正 | 100%(実質) | 80% | 段階的給付率引き上げ開始 |
| 2026年4月以降 | 100%(実質) | 段階引き上げ継続予定 | さらなる給付率向上見込み |
なぜ今、給付率が引き上げられるのか(少子化対策との関係)
日本の合計特殊出生率は2023年に過去最低の1.20を記録し、政府は「次元の異なる少子化対策」として育児支援の抜本的強化に乗り出しました。その中核をなすのが育休給付金の給付率引き上げです。
従来の制度では、育休取得中の手取り収入が大幅に下がることが育休取得の大きなハードルになっていました。特に男性の育休取得率は依然として低く、「経済的に育休が取れない」という声が多く聞かれました。
2024年の雇用保険法・育児介護休業法改正により、育休中の所得保障を強化して育休取得の経済的障壁を取り除くことを目的として、以下の方針が定められました。
- 育休給付金の給付率を出生後6ヶ月間は実質100%に引き上げ
- 社会保険料免除との組み合わせで手取り水準を最大化
- 男女ともに育休を取得しやすい環境を整備
2022年改正・2025年改正の違いを比較表で確認
育休給付金の給付率はこれまでにも段階的に改善されてきました。現在の制度は2022年10月改正をベースにしており、2025年4月改正はその次の大きなステップです。
| 時期 | 出生後6ヶ月以内 | 出生後6ヶ月超〜1歳 | 1歳〜最長2歳 |
|---|---|---|---|
| ~2022年9月(旧制度) | 67% | 50% | 50% |
| 2022年10月〜2025年3月 | 80%(両親同時取得時) 67%(単独) |
50% | 50% |
| 2025年4月〜(新制度) | 100%(両親同時取得時) 67%(単独) |
80% | 67% |
ポイント:2022年10月改正では「産後パパ育休(出生時育児休業)」の創設と同時に、育休中の社会保険料免除が拡充されました。2025年改正ではさらに踏み込み、夫婦同時取得の場合は出生後6ヶ月の手取りが育休前とほぼ同水準になる設計です。
2025年4月以降の給付率スケジュールと対象月一覧
出生日による適用パターンの違い(2025年4月1日以降生まれ vs 以前生まれ)
段階引き上げの対象になるかどうかは、子どもの誕生日によって決まります。育休の開始日ではない点に注意が必要です。
| 子どもの誕生日 | 適用制度 | 給付率の基準 |
|---|---|---|
| 2025年4月1日以降 | 新制度(段階引き上げ適用) | 本記事の新レートが適用 |
| 2025年3月31日以前 | 現行制度(旧レート継続) | 2022年10月改正後の率が継続 |
経過措置の注意点:2025年3月31日以前に生まれた子どもに関して育休を取得している場合、途中から新制度に切り替わることはありません。現行の給付率(最大80%/67%)が育休終了まで適用されます。
標準パターン(1歳まで)の月別給付率一覧
2025年4月1日以降に生まれた子どもに対して育休を取得した場合、以下の給付率が対象月ごとに適用されます。
夫婦で一定期間同時取得した場合(最大活用パターン)
| 対象月 | 子の月齢 | 給付率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月目〜6ヶ月目 | 出生〜生後6ヶ月 | 100% | 両親いずれかが同時取得期間を含む場合 |
| 7ヶ月目〜12ヶ月目 | 生後6ヶ月〜1歳 | 80% | 同上 |
一人のみ育休取得した場合(単独取得パターン)
| 対象月 | 子の月齢 | 給付率 | 備考 |
|---|---|---|---|
| 1ヶ月目〜6ヶ月目 | 出生〜生後6ヶ月 | 67% | 単独取得 |
| 7ヶ月目〜12ヶ月目 | 生後6ヶ月〜1歳 | 80% | 単独取得(旧制度より改善) |
社会保険料免除との組み合わせ効果:育休中は健康保険料・厚生年金保険料が免除されます。給付率100%の期間は、社会保険料免除も合算すると手取り収入が休業前の賃金の概ね100%になる計算です(所得税・住民税の扱いによって若干異なります)。
延長パターン(最大2歳・パパ育休併用)の対象月と給付率
保育所に入所できないなどの事情がある場合、育休は最長2歳まで延長できます。また、産後パパ育休(出生時育児休業)との組み合わせも可能です。
1歳〜最長2歳の延長期間
| 対象月 | 子の月齢 | 給付率 |
|---|---|---|
| 13ヶ月目〜24ヶ月目 | 1歳〜2歳 | 67% |
産後パパ育休(出生時育児休業)との組み合わせ
産後パパ育休は、出生後8週間以内に最長4週間取得できる制度です。育休とは別枠で取得できるため、以下のような組み合わせが可能です。
| 取得形態 | 取得可能期間 | 給付率 |
|---|---|---|
| 産後パパ育休(父親) | 出生後8週間以内・最長4週間 | 100%(両親同時取得要件を満たす場合) |
| 通常育休(父親)との併用 | 産後パパ育休後に続けて取得可 | 100%(6ヶ月以内)→80%→67% |
| 母親の産休・育休 | 産後8週間の産休+育休 | 産休は産前産後給付、育休は育休給付が適用 |
段階引き上げ後の給付金額の計算方法と具体的シミュレーション
給付金額の基本計算式
育休給付金の金額は「休業開始時賃金日額」を基準に計算します。
【STEP 1】休業開始時賃金日額の算出
育休開始前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180日 = 賃金日額
【STEP 2】月額給付金の算出
賃金日額 × 30日 × 給付率(%) = 月額給付金
ただし、支給額には上限(支給限度額)があります。2025年度の支給限度額は以下の通りです(変更の可能性があるため、最新情報はハローワークで確認してください)。
| 給付率 | 月額上限(目安) |
|---|---|
| 67% | 約305,319円 |
| 80% | 約364,595円 |
| 100% | 約455,700円 |
上限の根拠:賃金日額の上限額(2024年度:15,190円)に30日・給付率を乗じた金額が上限目安です。毎年8月に改定されるため、実際の申請時にハローワークまたは雇用保険のホームページで最新値を確認してください。
具体的な計算シミュレーション(3パターン)
パターン①:月収30万円・夫婦同時取得(2025年4月以降生まれの子ども)
【前提】
月収:300,000円
育休開始前6ヶ月合計:1,800,000円
賃金日額:1,800,000円 ÷ 180日 = 10,000円
【出生後6ヶ月(給付率100%)】
10,000円 × 30日 × 100% = 300,000円/月
(社会保険料免除分も合算すると実質的な手取りはほぼ同水準)
【出生後6ヶ月〜1歳(給付率80%)】
10,000円 × 30日 × 80% = 240,000円/月
【1歳〜2歳(延長・給付率67%)】
10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円/月
パターン②:月収50万円・単独取得(上限額が適用されるケース)
【前提】
月収:500,000円
賃金日額:500,000円 × 6ヶ月 ÷ 180日 ≒ 16,667円
→ 日額上限(約15,190円)が適用される
【出生後6ヶ月(給付率67%・単独取得)】
15,190円 × 30日 × 67% ≒ 305,319円/月(上限適用)
【出生後6ヶ月〜1歳(給付率80%)】
15,190円 × 30日 × 80% ≒ 364,560円/月(上限適用)
パターン③:有期契約労働者・月収20万円
【前提】
月収:200,000円
賃金日額:200,000円 × 6ヶ月 ÷ 180日 ≒ 6,667円
【出生後6ヶ月(給付率100%・同時取得)】
6,667円 × 30日 × 100% = 200,010円/月
【出生後6ヶ月〜1歳(給付率80%)】
6,667円 × 30日 × 80% = 160,008円/月
有期契約労働者が育休給付金を受け取るには、以下の要件を満たす必要があります。
- 育休開始時に同一事業主に引き続き雇用された期間が1年以上
- 子が1歳6ヶ月になる日まで労働契約が更新されることが明らかでないこと(この要件は2022年改正で緩和)
受給要件・申請手続きと必要書類
育休給付金を受け取るための要件チェックリスト
申請前に以下の要件をすべて満たしているか確認してください。
雇用保険の被保険者であること
雇用保険に加入していることが大前提です。週20時間以上・31日以上の雇用見込みがある方は通常加入しています。
被保険者期間の要件
育休開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就業時間が80時間以上)の月が通算12ヶ月以上あること。同一事業主でなくても通算できます。
休業中の賃金支払い条件
育休期間中に事業主から支給される賃金が、休業開始時賃金月額の80%未満であること。
育休の法的要件を満たすこと
育児・介護休業法に定める育児休業を取得していること(子が1歳になるまで、延長の場合は最長2歳まで)。
申請の流れと手続きタイムライン
【育休給付金の申請タイムライン】
① 育休開始の1ヶ月前
└─ 事業主へ育休取得申出(書面または口頭)
② 育休開始後すみやかに
└─ 事業主が「育児休業給付受給資格確認票・
(初回)育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出
(事業主経由が原則)
③ 初回支給申請(育休開始から4ヶ月後が目安)
└─ 第1回:育休開始から最初の2支給単位期間
(約2ヶ月分)をまとめて申請
④ 2回目以降の支給申請(2ヶ月ごと)
└─ 支給単位期間ごとに2ヶ月分をまとめて申請
(事業主経由またはオンライン申請)
⑤ 育休終了・職場復帰
└─ 最終支給申請は育休終了後に事業主が手続き
申請期限の注意:各支給申請には期限があります。支給単位期間の末日翌日から2ヶ月以内が申請期限です。期限を過ぎると給付金を受け取れなくなるため、事業主・担当者と連絡を密にしてください。
申請に必要な書類一覧
| 書類名 | 誰が準備するか | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | 事業主がハローワーク書式で作成 | 初回のみ |
| 育児休業給付金支給申請書 | 事業主が作成(2回目以降) | 2ヶ月ごと |
| 賃金台帳・出勤簿 | 事業主が準備 | 賃金日額の確認に使用 |
| 母子健康手帳(写し)または住民票 | 育休取得者が準備 | 子の出生日を確認 |
| 育児休業申出書(写し) | 育休取得者が作成し事業主保管 | 育休開始日の確認に使用 |
| 雇用保険被保険者証 | 事業主が保管 | 被保険者番号の確認 |
オンライン申請について:2023年度以降、事業主はe-Govを通じたオンライン申請が可能です。紙申請と電子申請のどちらでも受け付けています。個人での直接申請は原則として認められていませんが、事業主が申請を行わない場合などに限り、本人申請が可能な場合があります。
延長申請が必要なケースと手続き
1歳を超えて育休を延長する場合、追加の申請が必要です。
延長が認められる条件(1歳→1歳6ヶ月)
- 保育所等に入所できない場合(「保育所等の入所不承諾通知書」が必要)
- 配偶者が死亡・重病・離婚等の事情がある場合
延長の手続き書類
| 書類名 | 入手先 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書(延長分) | ハローワーク |
| 保育所等の入所不承諾通知書 | 市区町村役所 |
| 配偶者の死亡・疾病等の証明書(該当する場合) | 各機関 |
段階引き上げを最大限活用するための戦略的な育休取得プラン
夫婦同時取得で給付率100%を実現する方法
2025年4月以降に生まれた子どもについて、出生後6ヶ月間の給付率100%を受け取るには、夫婦が同時に育休を取得する期間が必要です。現時点で明らかになっている要件のポイントは以下の通りです。
- 両親ともに育休を取得していること
- 取得期間が重複していること(少なくとも一定期間)
- 父親が産後パパ育休を活用することで、母親の産休・育休と期間が重複しやすい
活用モデルケース
母親:出産後(産後休業8週間)→ 育休(〜1歳)
父親:産後パパ育休(0〜8週)→ 通常育休(2〜6ヶ月)
→ 0〜6ヶ月の期間、両親の育休が重なる
→ この期間の給付率が100%に(夫婦それぞれに適用)
育休給付金と他の給付金・手当の重複受給ルール
| 給付・手当 | 育休給付金との重複 | 注意点 |
|---|---|---|
| 出産手当金(健保) | 重複不可 | 産後休業中は出産手当金が優先、育休開始後に育休給付金へ切り替わる |
| 児童手当 | 重複可 | 育休中も受給可能 |
| 傷病手当金 | 原則不可 | 育休中の傷病手当金は支給停止 |
| 高年齢雇用継続給付 | 不可 | 育休中は支給されない |
よくある疑問と注意点
育休給付金に関する最新情報は、厚生労働省・ハローワークの公式発表を確認し、自身の状況に応じた申請を忘れずに行いましょう。
Q1. 2025年3月に生まれた子どもですが、4月から給付率は上がりますか?
いいえ、上がりません。段階引き上げの対象は2025年4月1日以降に生まれた子どもです。2025年3月31日以前に生まれた場合は、育休終了まで現行の給付率(最大80%/67%)が適用されます。
Q2. 父親が育休を取らなくても、母親は100%もらえますか?
給付率100%は、原則として夫婦が一定期間同時に育休を取得することが条件とされています。父親が育休を取得しない場合、母親の給付率は67%(出生後6ヶ月)となります(2025年4月以降生まれの場合)。
Q3. 育休給付金は確定申告が必要ですか?
育休給付金は非課税所得のため、原則として確定申告は不要です。ただし、育休中に副業収入がある場合や、他の所得との合算が必要な場合は確認が必要です。
Q4. 申請は会社を通さないと手続きできないのですか?
原則として、育休給付金の申請は事業主を通じてハローワークへ行います。しかし、会社が申請手続きを怠る場合は、労働者本人がハローワークに直接申請できる場合があります。会社が手続きに協力しない場合は、まずハローワークに相談してください。
Q5. 社会保険料の免除はいつまで続きますか?
育休中の社会保険料(健康保険・厚生年金)の免除は、育休取得期間中(最長2歳の誕生月の末日まで)適用されます。免除手続きは事業主が日本年金機構へ申請します。
Q6. 有期契約で雇用期間が育休中に終了する場合はどうなりますか?
雇用契約の終了日が育休期間中に到来する場合、その日以降は育休給付金は支給されません。ただし、「契約更新される見込みがある」と認められる場合は受給要件を満たします。雇用契約の状況についてはハローワークに事前相談することをお勧めします。
まとめ:2025年4月以降の育休給付金改正のポイント
2025年4月以降の育休給付金段階引き上げの要点を整理します。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象者 | 2025年4月1日以降に生まれた子どもの育休取得者 |
| 最大給付率 | 出生後6ヶ月間:100%(夫婦同時取得時) |
| 6ヶ月〜1歳 | 80% |
| 1歳〜2歳(延長) | 67% |
| 申請窓口 | ハローワーク(事業主経由が原則) |
| 手続き開始 | 育休開始後すみやかに事業主へ申出 |
育休給付金を最大限に活用するためには、育休開始前から会社の担当者・ハローワークと相談し、申請スケジュールをしっかり把握しておくことが重要です。特に2025年4月以降は制度が大きく変わるため、出産予定がある方は早めに情報収集を始めてください。
法改正の詳細や最新の給付率・支給限度額については、厚生労働省の公式ウェブサイトおよびお近くのハローワークで必ず確認してください。本記事は一般的な制度概要であり、個別のご質問については各地域のハローワークにお問い合わせいただくことをお勧めします。


