育休給付金の申請手続きを進めるなかで、「賞与(ボーナス)って計算に含まれるの?」と疑問を持つ方は少なくありません。結論からお伝えすると、育休給付金の賃金月額計算において、前年度賞与は原則として含まれません。月々の給与(月例賃金)のみを基に計算されます。
この記事では、賃金月額の定義・計算ステップ・給付金シミュレーション・申請書類・ハローワークでの手続きの流れを、法的根拠をふまえながら分かりやすく解説します。2025年時点の最新ルールに基づいた情報をまとめていますので、ぜひ最後までお読みください。
育休給付金の「賃金月額」とは何か?賞与との関係を整理
まず「賃金月額」とは何か、賞与とどう違うのかを整理しましょう。ここを押さえることで、給付金計算の全体像がグッとわかりやすくなります。
賃金月額の法的定義(雇用保険法第61条の4)
育児休業給付金の給付額は、雇用保険法第61条の4に基づいて算定されます。同条では、給付金の基準となる金額を「休業開始時賃金日額」として定義しており、これは雇用保険法第17条に規定する賃金日額の算定方法に準じて計算されます。
具体的には、育休開始前の一定期間内に支払われた賃金の総額を対象期間の日数で割った日額を算出し、それに30をかけることで「賃金月額」を求めます。
賃金月額 ≒ 賃金日額 × 30
ここでいう「賃金」とは、毎月定期的に支払われる月例給与を指します。賞与・一時金など臨時的・不規則に支払われる手当は、雇用保険法上の「賃金日額」の算定対象から原則として除外されます。
前年度賞与が賃金月額に含まれない理由
賞与が除外される理由は、雇用保険法の制度設計そのものにあります。雇用保険法第17条第4項では、「3か月を超える期間ごとに支払われる賃金」は賃金日額の算定対象から除くと規定されています。一般的な賞与(夏・冬の年2回支給など)はこの「3か月超の間隔で支払われる賃金」に該当するため、計算から外されます。
制度の趣旨としては、育休中の生活保障として機能することが育休給付金の目的であるため、「毎月の生活費の基盤となる月例賃金」を基準にするのが合理的とされています。賞与は臨時的な収入であり、毎月の生活費の算定には馴染まないと考えられているわけです。
| 賃金の種類 | 賃金月額への算入 | 備考 |
|---|---|---|
| 基本給 | ✅ 含まれる | 毎月定期支給 |
| 固定残業代・みなし残業 | ✅ 含まれる | 毎月定期支給 |
| 通勤手当(月額固定) | ✅ 含まれる | 毎月定期支給 |
| 賞与・ボーナス(年2回等) | ❌ 含まれない | 3か月超の間隔で支給 |
| 決算賞与・臨時一時金 | ❌ 含まれない | 臨時・不規則な支給 |
| 年4回以上支給の賞与 | ⚠️ 含まれる場合あり | 毎月支給に準じる場合 |
賞与が”間接的に”影響するケースとは?(例外・注意点)
賞与は賃金月額の計算に直接は含まれませんが、以下のケースでは間接的に影響することがあります。
① 年4回以上支給される賞与の場合
賞与が年4回以上(つまり3か月以内の間隔)で支給されている場合は、雇用保険法上の「定期的賃金」とみなされ、賃金月額に含まれる可能性があります。会社の賃金規程や実態によって判断が異なるため、不明な場合はハローワークに確認しましょう。
② 社会保険(健康保険・厚生年金)との混同に注意
「育休中は社会保険料が免除される」という制度がありますが、この標準報酬月額には賞与は別途「標準賞与額」として管理されており、育休中の保険料免除にも賞与分が含まれます。
育休給付金(雇用保険)と社会保険は全く別の制度です。社会保険では賞与も計算対象に含まれますが、育休給付金ではそれを採用していません。この違いが混乱を招きやすいため、しっかり区別しておきましょう。
③ 育休開始時期によっては賃金月額が変動する
賞与月の直後に育休を開始した場合と、数か月前に開始した場合とでは、基準期間に含まれる月給の合計が変わる可能性があります。賞与そのものは除外されますが、賞与支給月の残業代や手当が影響する場合があります。
賃金月額の具体的な計算方法【ステップ別解説】
賃金月額は、育休開始前の一定期間の月例賃金を積み上げて算出します。以下のステップで順番に確認していきましょう。
計算対象期間はいつからいつまで?
基本ルール:育休開始前の直近2年間から、賃金支払基礎日数が11日以上ある月を12か月分さかのぼって抽出します。
賃金支払基礎日数が11日以上の月=出勤した日数(有給休暇・育休前の休業日も含む)が11日以上ある月
計算対象期間の流れ
育休開始日
↑
【直近2年間をさかのぼる】
・賃金支払基礎日数が11日以上の月を探す
・12か月分集まったところで計算に使用
注意点
– 賃金支払基礎日数が11日未満の月(産休期間中・病気休職中など)はスキップします
– 産前産後休業の直前に育休が始まる場合、産前産後休業期間も対象外となります
– 12か月分の対象月が揃わない場合(入社から間もない等)、揃っている月数で計算します
賃金月額の計算式と早見表
ステップ1:対象12か月の賃金合計を算出
賃金支払基礎日数が11日以上の月を12か月分選び、その月例賃金(基本給+固定手当等、賞与除く)の合計を計算します。
ステップ2:賃金月額を計算
$$賃金月額 = \frac{12か月の賃金合計}{180日} \times 30$$
厳密には「賃金日額 = 賃金合計 ÷ 180日」と求め、それに30をかけるので「賃金合計 ÷ 180 × 30 = 賃金合計 ÷ 6」と計算することもできます。
ステップ3:上限・下限を確認
2025年度時点の賃金月額の上限・下限は以下の通りです(毎年8月に改定されます)。
| 区分 | 金額(2024年8月改定値) |
|---|---|
| 賃金月額の上限 | 477,600円 |
| 賃金月額の下限 | 79,710円 |
※2025年8月以降の値は変更される場合があります。最新値はハローワークまたは厚生労働省サイトでご確認ください。
月収別・賃金月額早見表(目安)
以下は月例賃金(固定給+手当)の月収から賃金月額を概算した早見表です(賞与除外済み)。
| 月収(月例賃金) | 12か月合計 | 賃金月額(÷6の概算) | 備考 |
|---|---|---|---|
| 20万円 | 240万円 | 約20万円 | 下限超 |
| 25万円 | 300万円 | 約25万円 | 一般的な水準 |
| 30万円 | 360万円 | 約30万円 | 一般的な水準 |
| 35万円 | 420万円 | 約35万円 | やや高め |
| 40万円 | 480万円 | 約40万円 | 一般的な水準 |
| 45万円 | 540万円 | 約45万円 | 上限付近 |
| 50万円以上 | — | 上限477,600円 | 上限適用 |
※月収が変動する場合(残業代など)は実際の支給額の合計を使って計算します。
育休給付金の給付率と実際の支給額
賃金月額が算出できたら、給付率をかけて実際の支給額を求めます。
給付率67%と50%の使い分け
育休給付金の給付率は、育休開始からの期間によって異なります。
| 育休期間 | 給付率 | 対象 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日目まで | 67% | 全員 |
| 育休181日目以降 | 50% | 全員 |
| パパ育休(産後パパ育休含む) | 67% | 28日以内の取得なら67%固定 |
2025年施行の改正ポイント: 2025年4月から「育児休業給付の給付率引き上げ」の検討・段階的実施が政府方針として示されています。法改正の最新情報は厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
支給額の計算式
$$育休給付金(月額)= 賃金月額 \times 給付率(67\%または50\%)$$
ただし、育休中に一部就業している場合は、就業した日数・時間に応じて支給額が調整されます。
就業調整のルール
- 育休中の就業日数が月10日以下であれば、育休給付金は全額支給されます
- 就業日数が10日超・80時間以下の場合は一部支給
- 就業時間・日数に応じた減額計算が適用されます
給付金シミュレーション例
例①:月収30万円・育休開始から6か月以内
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月例賃金 | 300,000円 |
| 賃金月額 | 300,000円 |
| 給付率 | 67% |
| 月額支給額 | 201,000円 |
例②:月収30万円・育休181日目以降
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月例賃金 | 300,000円 |
| 賃金月額 | 300,000円 |
| 給付率 | 50% |
| 月額支給額 | 150,000円 |
例③:月収50万円(賞与除く)・育休6か月以内
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 月例賃金 | 500,000円 |
| 賃金月額 | 上限477,600円を適用 |
| 給付率 | 67% |
| 月額支給額 | 約320,000円 |
賞与が月収の大部分を占める方(例:月給20万+賞与年200万)は、賞与が除外されるため、実際の年収に比べて給付金が少なく感じることがあります。事前に計算しておくことが重要です。
申請に必要な書類一覧と準備のポイント
育休給付金の申請は、基本的に事業主(会社)を通じてハローワークに提出します。本人が直接ハローワークに申請することも可能ですが、必要書類の多くは会社が準備するものです。
必要書類一覧
| 書類名 | 準備者 | 詳細・備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | 会社(本人と連名) | ハローワーク所定書式。初回と2か月ごと更新時に提出 |
| 母子健康手帳(コピー) | 本人 | 出生日・子の氏名の確認に使用 |
| 雇用保険被保険者証 | 本人 | 雇用保険加入の確認 |
| 賃金台帳(過去2年分) | 会社 | 賃金月額計算の基礎資料。賞与と月例賃金が分けて記録されていること |
| 出勤簿・タイムカード | 会社 | 賃金支払基礎日数の確認 |
| 育休期間中の就業状況確認書 | 会社+本人 | 更新申請のたびに提出。就業日数・時間を記録 |
| 本人確認書類 | 本人 | 運転免許証・マイナンバーカード等 |
| 振込先口座の通帳コピー | 本人 | 初回申請時に提出 |
賃金台帳の記載で注意すべきポイント
賃金月額計算を正確に行うために、賃金台帳には以下の項目が明確に区別されて記載されている必要があります。
- 月例賃金(基本給・手当) の金額
- 賞与・一時金 の金額(別欄で記録)
- 賃金支払基礎日数(出勤日数・有給休暇等を含む)
- 賃金の支払日と対象期間
賞与が月例賃金と同じ欄に混在している場合、ハローワークの審査で確認が求められることがあります。人事担当者は書類準備の段階で区別して整理しておきましょう。
ハローワークでの申請手続きの流れ
育休給付金の申請フローをステップ形式で確認しましょう。
申請フロー全体像
STEP 1:育休開始
↓
STEP 2:育休開始届を会社に提出
(育休開始の1か月前までが目安)
↓
STEP 3:初回支給申請
(育休開始から約2か月後が目安)
・必要書類を会社が取りまとめ、ハローワークに提出
↓
STEP 4:審査・支給決定通知
(審査期間:申請から約2〜4週間)
↓
STEP 5:給付金振込
(指定口座に入金)
↓
STEP 6:2か月ごとに更新申請
(就業状況報告書を提出しながら継続申請)
↓
STEP 7:育休終了・復職または育休延長手続き
申請タイミングと期限
| 申請の種類 | タイミング | 期限 |
|---|---|---|
| 初回申請 | 育休開始から約2か月後 | 育休開始日から4か月を経過する日の属する月の末日まで |
| 2回目以降(更新) | 2か月ごと | 支給対象期間末日の翌日から4か月以内 |
| 育休延長時の申請 | 延長事由が発生した時 | 1歳到達日前に手続き完了が必要 |
初回申請が遅れると受給できなくなるケースもあります。育休開始後は早めに会社の人事担当者に連絡し、申請準備を開始しましょう。
よくある申請ミスと対策
ミス①:賃金台帳に賞与が含まれたまま提出してしまう
対策:提出前に月例賃金と賞与が明確に分けられているかを確認する
ミス②:賃金支払基礎日数が11日未満の月を誤って算入してしまう
対策:育休前の2年間を月ごとに確認し、対象月を正確にリストアップする
ミス③:就業状況の報告漏れ(育休中に少し働いた場合)
対策:育休中に少しでも就業した場合は日数・時間を正確に記録し、報告書に記載する
2025年の法改正で何が変わる?育休給付金への影響
給付率引き上げの動向
政府は育休取得促進の観点から、育休開始後28日間の給付率を実質10割相当(給付金67%+社会保険料免除分を合わせて手取りほぼ同額)に引き上げる方向で制度整備を進めています。2025年以降の法改正内容は随時更新されるため、厚生労働省の公式サイトや最寄りのハローワークで最新情報を確認してください。
パパ育休(産後パパ育休)の給付拡充
2022年10月に導入された産後パパ育休(出生時育児休業)では、子の出生後8週間以内に最大4週間取得できます。夫婦で同時期に育休を取得した場合でも給付金が支給される仕組みが整備されており、2025年以降もさらなる拡充が検討されています。
賃金月額計算への影響
現時点では、賃金月額の計算方法(賞与除外ルール)に関する大きな変更はありませんが、上限額・下限額は毎年8月に改定されます。申請前に必ず最新の上限額を確認しましょう。
人事担当者向け:企業が準備すべき実務チェックリスト
育休給付金の申請手続きは、従業員本人だけでなく、会社(人事・総務担当者)の対応が非常に重要です。以下のチェックリストを活用して、漏れなく対応しましょう。
□ 育休開始日・終了予定日を従業員と確認した
□ 過去2年分の賃金台帳を準備した
└ 月例賃金と賞与が分けて記録されているか確認
□ 賃金支払基礎日数が11日以上の月を12か月分特定した
□ 出勤簿・タイムカードのコピーを準備した
□ 育児休業給付金支給申請書をハローワークから取得した
□ 初回申請の提出期限(育休開始から4か月以内)を把握した
□ 2か月ごとの更新申請スケジュールをカレンダーに登録した
□ 育休中の就業が発生した場合の報告ルールを従業員に説明した
□ 給付金の振込先口座情報を従業員から取得した
□ 申請書類の進捗状況を定期的に確認・催促する体制を構築した
よくある質問(FAQ)
Q1. 賞与の多い会社に勤めています。育休給付金は少なくなりますか?
はい、賞与は賃金月額の計算に含まれないため、年収に占める賞与の割合が高い方は、月例賃金ベースで計算された給付金が年収比では少なく感じることがあります。たとえば月給20万円・賞与年200万円という構成の場合、賃金月額は20万円をベースに計算されます。事前にシミュレーションして育休中の生活設計を立てておくことをおすすめします。
Q2. 育休中にフリーランスとして少し働いた場合、給付金はどうなりますか?
育休中の就業は、月10日以下(または80時間以下)であれば育休給付金の全額支給が維持されます。ただし、就業した事実は必ず就業状況報告書に記載して申告する必要があります。虚偽の申告は不正受給とみなされるため、必ず正確に報告しましょう。
Q3. 育休給付金の申請を自分でハローワークに行ってすることはできますか?
通常は会社(事業主)を通じて申請しますが、会社が手続きを行わない場合などは本人が直接ハローワークに申請することも可能です。その場合、賃金台帳・出勤簿などの書類を会社から取り寄せる必要がありますので、事前にハローワークに相談することをおすすめします。
Q4. 育休を2回に分けて取得した場合、賃金月額の計算はどうなりますか?
1回目の育休終了後に職場復帰し、2回目の育休を取得した場合は、2回目の育休開始前に新たに賃金月額が計算されます。ただし、1回目の育休開始時点の賃金月額を使い続けるケースもあるため、ハローワークまたは社会保険労務士に確認することをおすすめします。
Q5. 産前産後休業の期間は賃金月額の計算に含まれますか?
産前産後休業(産休)の期間は賃金支払基礎日数が11日以上にならないことが多く、計算対象から外れるのが一般的です。育休給付金の計算では産休期間をスキップして直前の就業期間をさかのぼる形で対象月を集計します。
まとめ:賞与除外のポイントと手続き確認事項
育休給付金の賃金月額計算に関する重要ポイントをまとめます。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 賞与の扱い | 原則として賃金月額に含まれない(雇用保険法第17条第4項) |
| 計算対象 | 育休開始前直近2年間の月例賃金(賃金支払基礎日数11日以上の月×12か月) |
| 給付率 | 育休開始〜180日:67%、181日以降:50% |
| 上限額(2024年度) | 賃金月額477,600円(給付金上限は約319,995円/月・67%時) |
| 申請主体 | 原則として事業主経由でハローワークに提出 |
| 更新頻度 | 2か月ごとに更新申請が必要 |
| 注意点 | 社会保険の標準報酬月額とは別制度。混同しないように注意 |
育休給付金の計算は一見複雑に見えますが、「賞与は除外・月例賃金が基準」というルールを押さえれば、シミュレーションはそれほど難しくありません。申請書類の準備・提出期限の管理を人事担当者と連携しながら進め、安心して育休を取得してください。
不明な点はお近くのハローワーク(公共職業安定所)または社会保険労務士にご相談ください。
免責事項: 本記事は2025年時点の情報に基づいています。法改正・通達の変更により内容が変わる場合があります。個別の申請については、ハローワークまたは社会保険労務士にご確認ください。

