育児休業中に「月の途中から仕事を再開したいけれど、給付金はどうなるの?」と不安に感じていませんか。育休給付金は就業した日数によって支給が止まる場合とそうでない場合があり、「月途中で少し働いただけで全額もらえなくなった」という誤解や見落としが後を絶ちません。
この記事では、月途中就業開始による支給停止の判定ルール・日数計算の方法・申請手順・必要書類を、2026年最新の法令情報をもとにわかりやすく解説します。
育休給付金が月途中就業開始で止まる?まず確認すべき基本ルール
| 判定ルール | 基準 | 判定結果 |
|---|---|---|
| 所定労働日数 | 月の所定労働日数の50%以下 | 給付金支給継続 |
| 所定労働日数 | 月の所定労働日数の50%超過 | 給付金全額支給停止 |
| 就業時間 | 月80時間以下 | 給付金支給継続 |
| 就業時間 | 月80時間超過 | 給付金全額支給停止 |
育休給付金の支給停止とは何か
育休給付金の「支給停止」とは、その月の給付金が一切支払われない状態を指します。重要なのは、「一部だけ支給される」という中間的な選択肢は存在しないという点です。
育休給付金の支給結果は次の2パターンしかありません。
| 結果 | 内容 |
|---|---|
| 全額支給 | その月の給付金が100%支払われる |
| 全額停止 | その月の給付金が0円になる |
「少しだけ働いたから少しだけ減額される」という仕組みではないため、判定ラインを正確に把握しておくことが非常に重要です。なお、就業日数の多寡にかかわらず、就業による賃金が育児休業給付金の基礎賃金日額×80%を超えた場合にも支給停止となるルールが別途設けられています(詳細は後述)。
月途中就業開始が「支給停止」の判定対象になるケース
育休中に就業した場合、その月に就業があった時点で必ず支給停止の判定が行われます。「月の途中から始めたから判定されない」ということはなく、1日でも就業があれば判定の対象です。
ただし、「就業=即支給停止」ではありません。就業日数が所定の基準以内であれば、その月の給付金は全額支給されます。つまり重要なのは「就業の有無」ではなく「就業日数が何日か」という点です。
月途中就業が発生する代表的なシーンは次のとおりです。
- 育休からの段階的な職場復帰(試し出勤、慣らし復帰)
- 育休終了日が月末ではなく月の途中に設定されている
- 育休中に一時的・臨時的な業務を依頼されて対応した
いずれの場合も、その月の支給対象期間における就業日数が判定に使われます。
支給停止の判定基準|「所定労働日数50%ルール」の読み方
所定労働日数の50%を超えると全額停止になる
育休給付金の支給停止は、雇用保険法第61条の8および雇用保険法施行規則第104条~第109条に基づいて運用されており、2026年現在の判定ルールは次のとおりです。
【判定ルール(2026年現在)】
就業日数 ≦ その月の所定労働日数 × 50%
→ 全額支給
就業日数 > その月の所定労働日数 × 50%
→ 全額停止
「所定労働日数」とは、育休前に適用されていた労働契約上の所定労働日数(会社カレンダー等で定められた出勤すべき日数)を指します。実際の出勤日数や変形労働時間制における稼働日数ではない点に注意が必要です。
具体例で確認する
ケース①:所定労働日数が月20日の場合
| 就業日数 | 50%との比較 | 判定結果 |
|---|---|---|
| 9日 | 20日×50%=10日 以内 | 全額支給 |
| 10日 | 10日ちょうど(以内) | 全額支給 |
| 11日 | 10日を超える | 全額停止 |
「50%を超える」とは「50%より多い」という意味です。ちょうど50%(10日)は支給停止になりません。
ケース②:月途中就業で所定労働日数の端数が出る場合
月途中就業の場合、「その月の支給対象期間」が1ヶ月に満たないことがあります。このとき、分母となる所定労働日数もその期間に応じて按分計算されるのが原則ですが、ハローワークの実務では育休前の雇用契約上の月間所定労働日数を基準として取り扱うケースが多いため、管轄のハローワークまたは事業所の社会保険担当者に確認することを強く推奨します。
就業時間でも判定される|もうひとつのルール
日数だけでなく、就業時間でも支給停止が判定される場合があります。具体的には次のとおりです。
就業による賃金額(所定内賃金)が
「基礎賃金日額 × 支給対象日数 × 80%」を超えた場合
→ 超えた月は支給停止
このルールは、育休中の就業によって得られた賃金が一定水準を超えた場合に、給付金との二重取りを防ぐために設けられています。日数上は50%以内でも、高賃金の就業があるとこちらのルールで引っかかることがあるため、賃金面の確認も忘れないようにしましょう。
月途中就業開始の日数計算|具体的な計算方法とよくある誤解
「就業日数」のカウント方法
支給停止判定に使われる「就業日数」のカウントルールは次のとおりです。
- 就業日数にカウントされる日: 実際に就業した日(勤務実績がある日)
- カウントされない日: 所定休日、有給休暇を取得した日(ただし有給休暇の取り扱いは注意が必要)
- 半日就業の場合: 1日としてカウントされるのが原則(時間単位ではなく日単位)
有給休暇の取り扱いに注意
育休中に有給休暇を取得した場合、その日が「就業日」としてカウントされるかは、育休と有給休暇が同時に成立しているかどうかによります。育休期間中に有給休暇を取得することは原則として認められないため(育休と有給休暇は法的に併存しない)、有給休暇を取得した日は育休が一時中断している扱いとなり、就業日数に含まれる可能性があります。この点は事業所の労務担当者またはハローワークに事前確認することをお勧めします。
月途中復帰の場合の日数計算シミュレーション
以下のシナリオで具体的に計算してみます。
シナリオ設定
– 所定労働日数:月20日(週5日勤務)
– 育休終了日:2026年4月15日(月途中に育休終了)
– 4月の出勤日:4月16日〜4月30日の間で実際に就業
4月の所定労働日数(月全体):20日
50%ライン:20日 × 50% = 10日
4月16日以降の就業日数が10日以内 → 全額支給
4月16日以降の就業日数が11日以上 → 全額停止
4月16日〜4月30日の営業日(祝日なし想定)は約11日程度であるため、このケースでは11日就業すると全額停止のリスクがあります。月途中復帰の場合は復帰後の就業日数を事前に把握し、ハローワークに申告する前に日数を確認しておくことが重要です。
「就業していない日」と「育休期間」の考え方
月途中で育休が終了した場合、育休終了日までの期間が支給対象期間になります。育休終了後の就業は「育休中の就業」ではなく「通常の就業」であるため、その期間については育休給付金ではなく通常の賃金が発生します。
混同しがちなポイントをまとめます。
| 期間 | 給付金の扱い |
|---|---|
| 育休開始〜育休終了日 | 育休給付金の支給対象期間 |
| 育休終了日の翌日以降 | 育休給付金の対象外(通常の賃金が発生) |
| 育休期間中に就業した日 | 支給停止判定の対象となる |
申請手続きの流れと必要書類
申請の基本的な流れ
育休給付金の申請は、原則として2ヶ月ごとにハローワークへ行います。月途中就業が発生した月も、この2ヶ月ごとの申請サイクルに含まれます。
STEP 1|育休開始前〜開始時
───────────────────────────────
・雇用保険の被保険者資格を確認する
・所定労働日数を労働契約書で確認する
・育児休業給付受給資格確認票をハローワークに提出する
(事業主経由が原則)
STEP 2|育休中(2ヶ月ごと)
───────────────────────────────
・育児休業給付金支給申請書を事業主経由でハローワークへ提出
・就業した日数・賃金を正確に申告する
STEP 3|月途中就業が発生した月
───────────────────────────────
・その月の実際の就業日数を記録・集計する
・50%ルールに照らして支給・停止の見通しを確認する
・申請書の「就業日数」欄に正確に記入する
STEP 4|ハローワークによる審査・支給決定
───────────────────────────────
・ハローワークが支給停止の判定を行う
・支給決定通知書(または不支給決定通知書)が届く
・支給の場合は指定口座に振り込まれる
必要書類一覧
月途中就業が発生した場合を含めた申請に必要な書類は次のとおりです。
| 書類名 | 誰が用意するか | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | 事業主が作成・提出 | 被保険者も内容確認が必要 |
| 育児休業給付受給資格確認票 | 初回申請時に事業主が提出 | 2回目以降は不要 |
| 母子健康手帳(出生ページ)の写し | 被保険者が準備 | 初回のみ |
| 賃金台帳・出勤簿の写し | 事業主が準備 | 就業日数・賃金の確認に使用 |
| 労働者名簿 | 事業主が準備 | 必要に応じて |
| 雇用保険被保険者証 | 被保険者が保管 | 番号確認のため |
月途中就業があった月については、とくに賃金台帳と出勤簿が重要な確認書類になります。就業日数と賃金額の両方がハローワークの審査対象となるため、記載漏れや誤りがないよう事業主の担当者と事前にすり合わせておきましょう。
申請期限と申請窓口
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請窓口 | 事業所の所在地を管轄するハローワーク(事業主経由が原則) |
| 申請サイクル | 2ヶ月に1回 |
| 申請期限 | 支給対象期間の末日の翌日から起算して2ヶ月以内 |
| 支給までの期間 | 申請から約2〜3週間程度(ハローワークの混雑状況による) |
支給停止になってしまった場合の対応と注意点
全額停止になっても育休を継続できる
支給停止になった月があっても、育休自体が終了するわけではありません。給付金の支給が止まるのはその月だけであり、翌月以降に就業日数が50%以内に戻れば再び支給対象になります。
ただし、育休中に就業した結果として「育児休業の実態が失われた」とハローワークが判断した場合は、育休給付金の受給資格そのものが問われる可能性があります。育休中の就業はあくまでも「一時的・臨時的なもの」であることが求められており、継続的・恒常的な就業は育休の趣旨に反するとみなされることがあります。
不支給決定に不服がある場合
ハローワークの支給停止(不支給)決定に納得できない場合は、次の手続きで不服申立てが可能です。
【不服申立ての流れ】
① 審査請求
→ 処分を知った日の翌日から3ヶ月以内に
都道府県労働局の雇用保険審査官に請求
② 再審査請求
→ 審査請求の決定に不服がある場合
労働保険審査会に再審査請求
③ 取消訴訟
→ 行政訴訟として裁判所に提訴
申告誤りがあった場合の対処法
就業日数や賃金を誤って申告してしまった場合は、速やかに事業主を通じてハローワークに訂正の申し出を行うことが重要です。意図的な虚偽申告は不正受給とみなされ、受給額の返還に加え最大2倍の追徴金が課せられる場合があります。誤りに気付いた時点で早期に申し出ることで、不正受給の認定を避けられるケースがほとんどです。
2026年時点の制度改正ポイントと今後の動向
令和5年(2023年)改正の主な内容
令和5年の法改正(育児・介護休業法の改正と連動した雇用保険法改正)により、次の点が整備・明確化されました。
- 産後パパ育休(出生時育児休業)における就業可能ルールの整備:産後パパ育休期間中の就業についても、50%ルールに準じた判定が行われることが明確化
- 就業日数・時間の算定基準の整備:厚生労働省告示の改正により、時間単位での育休取得時における就業日数カウントの取り扱いが整理された
- 育休給付金の給付率引き上げの検討:育休開始後28日間(産後パパ育休相当期間)の給付率を実質的に手取りの10割相当に近づける措置が導入
2025年以降に注意が必要な変更点
2025年以降も育児休業制度は段階的な改正が続いており、特に以下の点について最新情報を確認することをお勧めします。
- 時間単位育休の取得要件と給付金の取り扱い
- 育休給付金の財源強化に伴う制度設計の変更
- 育休取得の申出期限に関する規定の変更
制度改正の情報は厚生労働省の公式ウェブサイトやハローワークの窓口で随時確認してください。
月途中就業開始に関する実務上のポイント
事業主が注意すべきこと
事業主(人事・労務担当者)は、月途中就業が発生した従業員について次の点を管理することが求められます。
就業日数の管理
– 育休中の就業日を出勤簿・タイムカード等で正確に記録する
– 月の所定労働日数の50%を超えないよう、就業スケジュールを組む
– 就業日数が50%に近づいた場合は従業員に早めに連絡する
賃金の管理
– 育休中の就業に対して支払う賃金額を、基礎賃金日額×80%の上限と照合する
– 賃金台帳への記録を月ごとに確実に行う
申請サポート
– 育児休業給付金支給申請書の「就業日数」「賃金額」欄を正確に記入する
– 申請期限(支給対象期間の末日の翌日から2ヶ月以内)を管理する
育休取得者本人が確認すべきこと
育休中に就業する場合、次のことを事前に確認しておきましょう。
- その月の所定労働日数を確認する(雇用契約書・就業規則で確認)
- 50%ラインを計算する(所定労働日数 ÷ 2 の切り捨て)
- 就業日数が50%を超えないようにスケジュールを組む
- 就業日と賃金額を自分でも記録しておく(申請内容の確認に使用)
- 会社の労務担当者と連携して申請内容を確認する
よくある疑問と回答
Q1. 月途中で育休を終了して復帰した場合、その月の給付金はどうなりますか?
育休終了日(復帰日の前日)まで育休給付金の支給対象期間となります。復帰後の就業は「育休中の就業」ではなく通常の就業であるため、支給停止判定の対象外です。ただし、育休中(復帰前)に一部就業していた日がある場合は、その日数が支給停止判定に用いられます。
Q2. 半日だけ出勤した場合、就業日数は0.5日でカウントされますか?
原則として、就業日数は1日単位でカウントされます。半日出勤であっても1日としてカウントされる場合がほとんどです。ただし、会社の所定労働時間の設定や労働協約の内容によって異なるケースもあるため、ハローワークまたは事業主の担当者に確認してください。
Q3. 育休中にテレワーク(在宅勤務)で就業した日も就業日数に含まれますか?
はい、テレワークによる就業も就業日数に含まれます。就業の形態(出社・テレワーク)にかかわらず、実際に労働を行った日は就業日としてカウントされます。
Q4. 就業日数が50%以内でも、もらえる給付金の額が減ることはありますか?
就業による賃金が「基礎賃金日額×支給対象日数×80%」を超えた場合は支給停止になります。50%ルールをクリアしていても、賃金の基準を超えた月は全額停止となるため、高賃金の就業がある場合は賃金面の確認も必要です。
Q5. 支給停止になった月の給付金は、後から受け取ることができますか?
支給停止と決定された月の給付金は後から受け取ることはできません。支給停止はその月限りの措置であり、翌月以降に就業日数が基準以内に戻れば、その月から支給が再開されます。
Q6. 育休中に副業(他社での就業)をした場合も判定されますか?
育休中の副業については、育休を取得している主たる事業所での就業日数が判定の基準となります。副業先での就業は原則として就業日数のカウント対象にはなりませんが、副業の賃金が加算されることで賃金基準を超える可能性があります。副業を検討する場合は事前にハローワークに相談することを強くお勧めします。
Q7. ハローワークへの申請は自分でできますか?
育休給付金の申請は事業主(会社)経由で行うことが原則です。被保険者が個人でハローワークに申請することも制度上は可能ですが、事業主の証明が必要な書類があるため、実務上は会社の労務担当者を通じて手続きするのが一般的です。
まとめ
月途中就業開始による育休給付金の支給停止判定について、重要なポイントを整理します。
制度の核心ルール
– 育休給付金は「全額支給」か「全額停止」の2択のみ
– 判定基準は「就業日数がその月の所定労働日数の50%を超えるかどうか」
– 賃金額が「基礎賃金日額×支給対象日数×80%超」の場合も全額停止
日数計算のポイント
– 分母は育休前の契約上の月間所定労働日数
– 50%ちょうど(イコール)は停止対象外
– 半日就業も1日としてカウントされる原則
申請の実務
– 2ヶ月ごとにハローワークへ事業主経由で申請
– 申請期限は支給対象期間末日の翌日から2ヶ月以内
– 就業日数・賃金は出勤簿・賃金台帳で正確に記録する
月途中での復帰や就業を検討している方は、事前に会社の労務担当者とハローワークの両方に相談することで、思わぬ給付金の支給停止を防ぐことができます。制度は定期的に改正されているため、最新の情報は厚生労働省の公式サイトや管轄のハローワークで必ず確認してください。
参考法令・資料
– 雇用保険法 第61条の8(育児休業給付金の支給要件)
– 雇用保険法施行規則 第104条〜第109条
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き」(令和6年版)
– ハローワークインターネットサービス(育児休業給付金)
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