育児休業(育休)を検討しているとき、「自分は取得できるのか?」「子どもが何歳までなら育休を取れるのか?」という疑問を持つ方は多いでしょう。特に「年齢制限」という言葉を聞くと、取得者本人の年齢のことだと誤解しがちです。
本記事では、育休の「対象年齢」が何を意味するのかを法律の条文に基づいて明確にしたうえで、出生日からの計算方法、対象外になるケースの判定フロー、2022年法改正後の最新ルールまでを体系的に解説します。人事担当者にとっても、従業員への説明資料として活用できる内容になっています。
育休の「対象年齢」とは何を指すのか?法律上の定義を確認
多くの方が「育休の年齢制限」と聞いて最初に想像するのは、「40代・50代でも取れるの?」という取得者本人の年齢についての疑問です。しかし、育児・介護休業法が定める「対象年齢」は、あくまでも養育する子どもの年齢を指します。
育児・介護休業法(平成3年法律第76号)第5条第1項は次のように規定しています。
「労働者は、その養育する一歳に満たない子について、その事業主に申し出ることにより、育児休業をすることができる。」
つまり法律が年齢制限として定めているのは「子が何歳か」という点であり、取得者である労働者本人の年齢について、育児・介護休業法はいかなる制限も設けていません。この点を冒頭ではっきり整理しておくことが、制度を正しく理解するうえでの出発点となります。
「子が何歳まで」取得できるか——原則1歳・延長で最大2歳
育休の取得期間は、原則として子の1歳の誕生日の前日までです。1歳の誕生日当日は育休の対象期間外となるため、注意が必要です。
ただし、以下の要件を満たす場合は、子が1歳6か月(1歳半)、さらには2歳に達するまで延長できます。
| 延長の段階 | 延長後の上限 | 主な要件 |
|---|---|---|
| 第1回延長 | 子の1歳6か月到達日の前日まで | 保育所等に入所申込みをしたが、入所できない場合など |
| 第2回延長 | 子の2歳到達日の前日まで | 1歳6か月時点でも同様の事情が継続している場合 |
延長申請のタイミングは厳密に定められており、1歳到達日(または1歳6か月到達日)の2週間前までに事業主へ申し出ることが必要です。この期限を過ぎると延長が認められないケースがあるため、事前のスケジュール管理が欠かせません。
育休給付金(育児休業給付金)の支給も延長期間に合わせて継続されますが、給付には雇用保険の被保険者資格が維持されていること、就業日数の条件を満たしていることなどの要件があります。
「取得者本人」の年齢制限は法律上存在しない
前述のとおり、育児・介護休業法の条文には、育休取得者本人の年齢(たとえば「40歳未満に限る」など)を制限する規定は一切ありません。したがって、40代・50代の労働者が育休を申請しても、年齢を理由に拒否することは法律上認められません。
ここで注意すべきは、企業の就業規則です。一部の企業では「育休取得者は満◯歳未満に限る」という独自ルールを設けているケースがあります。しかし、育児・介護休業法第6条は、法律で認められた取得要件を満たす労働者からの育休申請を事業主が拒否することを原則として禁止しています。就業規則による独自の年齢制限は、法律の趣旨に反するものとして違法と判断される可能性が高い点を、企業の人事担当者はとくに認識しておく必要があります。
厚生労働省も、就業規則が育児・介護休業法の定める基準を下回る内容であれば、その部分は無効とする解釈を示しています。
出生日を起点にした「対象期間」の計算方法と図解
「自分はいつからいつまで育休を取れるのか」——これは育休を検討するすべての方にとって最も実務的な疑問です。ここでは出生日を起点にした具体的な計算方法を解説します。
出生日当日から起算する期間の数え方
育休の対象期間は子の出生日当日を1日目(起算日)として計算します。民法の「初日不算入の原則」とは異なり、育休においては出生日を含めて計算するため、この点を混同しないよう注意が必要です。
【計算例:2024年4月15日生まれの場合】
出生日:2024年4月15日(起算日)
1歳到達日:2025年4月15日
→ 育休取得可能な最終日:2025年4月14日(前日まで)
1歳6か月到達日:2025年10月15日
→ 第1回延長後の最終日:2025年10月14日(前日まで)
2歳到達日:2026年4月15日
→ 第2回延長後の最終日:2026年4月14日(前日まで)
「到達日の前日まで」という表現は「誕生日の前日」に相当しますが、1歳の誕生日の前日は1歳に達する日の前日、すなわち「誕生日の前々日ではなく前日」です。
たとえば2024年4月15日生まれの場合:
– 1歳の誕生日=2025年4月15日
– 育休最終日=2025年4月14日
この計算を誤ると、給付金が正しく支給されない、または事業主との認識齟齬が生まれる可能性があります。手続き時には年月日を必ず確認しましょう。
【月をまたぐケースの注意点】
月の末日に生まれた場合、「1か月後の末日」が存在しないケースがあります。たとえば1月31日生まれの場合、2月は28日(または29日)までしかないため、「1歳半到達日」の計算には注意が必要です。こうしたケースでは、厚生労働省の計算ツールや、社会保険労務士・会社の人事部門に確認することをお勧めします。
産後パパ育休(出生時育児休業)の対象期間と特徴
2022年10月1日に施行された改正育児・介護休業法により、産後パパ育休(出生時育児休業)が新設されました。これは従来の育休制度とは別に設けられた制度で、主に父親の早期育休取得を促進することを目的としています。
産後パパ育休の主な特徴:
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 子の出生後8週間以内 |
| 取得日数 | 最大28日間(2回に分割して取得可能) |
| 申請期限 | 取得希望日の2週間前まで(原則) |
| 就業の可否 | 労使協定がある場合、一定条件のもとで就業可能 |
| 給付金 | 出生時育児休業給付金(給与の67%相当) |
通常の育休(原則1歳まで)と産後パパ育休は同時に、あるいは組み合わせて取得することが可能です。たとえば、産後パパ育休を4週間取得し、その後通常の育休に切り替えるという取得パターンが選択できます。
対象外になるケース——判定フローで確認する
育休の申請資格があるかどうかは、雇用形態・在籍期間・契約期間などによって異なります。以下の判定フローを活用して、自分(または自社の従業員)が対象外に該当するかを確認してください。
有期雇用契約者の対象外判定
2022年4月施行の法改正により、有期雇用契約者に対する育休の取得要件が大幅に緩和されました。改正前は「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件がありましたが、改正後は労使協定がある場合を除き、この在籍期間要件は撤廃されています。
ただし、育休取得後も雇用継続が見込まれるかどうかという観点は依然として重要です。
【有期雇用契約者の判定フロー】
ステップ1:育休開始予定日において有期雇用契約者か?
│
├─ NO(無期雇用)→ 原則として取得可能(次の対象外要件へ)
│
└─ YES(有期雇用)→ ステップ2へ
ステップ2:子が1歳6か月に達する日までに労働契約が満了することが
明らかか?(更新されないことが明らか)
│
├─ YES → 対象外
│
└─ NO(契約が続く見込みがある)→ 取得可能
重要ポイント: 「契約が満了することが明らか」とは、単に契約期間が定められているというだけでなく、使用者から更新しない旨の通知がある、または過去の更新実績がなく更新が見込めないなど、客観的に判断される状況を指します。単に有期契約であるというだけで対象外にすることはできません。
法的根拠: 育児・介護休業法第5条第1項ただし書き、同法施行規則第5条
日雇い労働者・在籍期間が極めて短い労働者
法律上、以下のカテゴリに該当する労働者は育休の対象外とされています。
対象外となる労働者の種類:
| カテゴリ | 根拠 | 具体的な状況 |
|---|---|---|
| 日雇い労働者 | 育児・介護休業法第2条第1号 | 日々雇い入れられる労働者 |
| 労使協定で除外された有期雇用者 | 同法第6条第1項ただし書き | 継続雇用1年未満で労使協定がある場合 |
| 週の所定労働日数が2日以下の労働者 | 同法施行規則第5条 | 労使協定による除外が認められる |
なお、雇用保険の被保険者でない場合は育児休業給付金を受け取ることはできませんが、育休自体の取得権利と給付金の受給資格は別物です。育休を取得できても給付金を受け取れないケースがある点は覚えておきましょう。
労使協定による除外——企業ごとの注意点
育児・介護休業法は、労使協定(過半数組合または過半数代表者との協定)が締結されている場合に限り、一定の労働者を育休の対象外とすることを認めています。
労使協定によって育休対象外とできるのは以下のケースです:
- 継続雇用期間が1年未満の有期雇用労働者(2022年改正で無期雇用には適用不可)
- 申出の日から1年以内(産後パパ育休は6か月以内)に雇用が終了することが明らかな労働者
- 1週間の所定労働日数が2日以下の労働者
人事担当者は、自社の就業規則・育児休業規程に労使協定の内容が正確に反映されているかを定期的に確認する必要があります。
2022年法改正で何が変わったか——改正前後の比較
2022年は育児・介護休業法の改正が段階的に施行された年であり、制度の内容が大きく変わりました。
2022年法改正の主要な変更点
【施行スケジュール】
| 施行時期 | 主な変更内容 |
|---|---|
| 2022年4月1日 | 有期雇用者の取得要件緩和(在籍1年要件の廃止) |
| 2022年4月1日 | 育休取得状況の公表義務化(1,000人超の企業) |
| 2022年10月1日 | 産後パパ育休(出生時育児休業)の創設 |
| 2022年10月1日 | 育休の分割取得(2回まで)の解禁 |
| 2023年4月1日 | 育休取得状況の公表義務化(300人超の企業へ拡大) |
2022年4月の改正により、有期雇用者が育休を取得する際の「在籍1年以上」という要件が廃止されました。これにより、入社直後の有期雇用労働者でも、子が1歳6か月に達するまでに雇用契約が終了することが明らかでない限り、育休の取得資格が得られるようになっています。
育休の分割取得——2回取得が可能に
改正前は原則として育休は1回しか取得できませんでしたが、2022年10月以降は子が1歳に達するまでの期間内に2回に分けて取得することが可能になりました。
これにより、たとえば以下のような柔軟な取得パターンが実現できます:
例:父親が育休を分割取得する場合
出生後すぐ:産後パパ育休(最大28日)
↓
通常業務に復帰(数か月間)
↓
子が8か月のとき:育休(第1回)2か月間
↓
業務復帰(繁忙期を考慮)
↓
子が11か月のとき:育休(第2回)1か月間
このように、仕事の繁閑に合わせて分散して取得できるようになったことで、育休取得のハードルが下がっています。
育休中の給付金——計算方法と申請手続き
育休中の経済的な不安を軽減するのが育児休業給付金(雇用保険から支給)です。給付金の計算方法と申請の流れを確認しておきましょう。
給付金の計算式と支給率
育児休業給付金の支給額は、育休開始前の賃金を基準に計算されます。
【支給率の仕組み】
| 育休開始からの期間 | 支給率 | 手取り換算の目安 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日目まで | 休業前賃金の67% | 手取りの約80%相当 |
| 181日目以降 | 休業前賃金の50% | 手取りの約60%相当 |
【計算例】
月給30万円(税・社会保険料控除前)の場合:
- 育休開始〜180日目:300,000円 × 67% = 201,000円/月
- 181日目以降:300,000円 × 50% = 150,000円/月
なお、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)の支払いが免除されるため、実質的な手取りは上記の数字よりも高くなります。
2025年度の制度改正動向: 政府は育休中の給付率を一定の要件(夫婦で育休を取得する場合など)のもとで引き上げる方向での検討を進めています。最新情報は厚生労働省の公式サイトで確認してください。
育休給付金の申請手続き
育児休業給付金の申請は、事業主を通じてハローワーク(公共職業安定所)に行うのが原則です。労働者が直接ハローワークに申請することは通常ありません。
【申請の流れ】
①労働者が事業主に育休取得を申し出る
↓
②事業主が「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」を準備
↓
③初回申請:育休開始日から数えて4か月を経過する日の属する月の末日までに申請
↓
④2回目以降:2か月ごとにハローワークへ申請(事業主経由)
↓
⑤審査・支給決定(支給は2か月分まとめて振込)
【申請に必要な主な書類】
- 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書
- 賃金台帳・出勤簿(賃金の確認用)
- 母子健康手帳(子の出生日確認用)
- 雇用保険被保険者証
申請期限を過ぎると不支給になるリスクがあります。事業主・労働者双方でスケジュールを共有し、育休開始前から手続きの段取りを確認しておくことが重要です。
人事担当者が確認すべき社内整備のポイント
企業側が法令を遵守し、従業員が安心して育休を取得できる環境を整えるには、以下の点を定期的にチェックする必要があります。
就業規則・育児休業規程の点検
✅ 育休の対象外規定が法令に違反していないか確認する
– 「◯歳未満に限る」などの年齢制限は違法の可能性がある
– 有期雇用者の除外要件が2022年改正後の規定に合致しているか確認する
✅ 産後パパ育休(出生時育児休業)が規程に盛り込まれているか確認する
– 2022年10月以降に創設された制度のため、古い規程には記載がないケースがある
✅ 育休の分割取得(2回)に対応した規程になっているか確認する
個別周知・意向確認の義務化への対応
2022年4月の法改正により、妊娠・出産の申出をした労働者に対して、個別に育休制度を説明し、取得の意向を確認することが事業主の義務となりました。
この「個別周知・意向確認」は、口頭だけでなく書面による実施が望ましいとされています。記録を残すことで、後日のトラブル防止にもなります。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休を取得できるのは出産後だけですか?養子縁組した子でも取得できますか?
育児・介護休業法は、実子だけでなく養子(法律上の親子関係がある子)の養育についても育休の対象としています。養子縁組した子については、縁組が成立した日を「出生日」に準じて計算します。ただし、特別養子縁組の場合と通常の養子縁組では扱いが異なる場合があるため、詳細はハローワークまたは社会保険労務士に確認することをお勧めします。
Q2. 育休の申請は何日前までに行う必要がありますか?
通常の育休(子が1歳まで)については、育休開始予定日の1か月前までに事業主へ申し出ることが原則です。産後パパ育休(出生時育児休業)は2週間前までが原則ですが、事業主が同意すれば1週間前でも可能な場合があります。なお、出産が予定より早まった場合など、緊急的な事情が認められるケースでは例外的な取り扱いも認められています。
Q3. 配偶者がすでに育休を取得中でも、自分も育休を取れますか?
はい、取得できます。2022年の法改正前は「パパ・ママ育休プラス」という制度のもとで一定の制限がありましたが、改正後は夫婦が同時に育休を取得することも、交替で取得することも自由に選択できるようになりました。夫婦で育休期間を分担することで、より柔軟な育児体制を組むことが可能です。
Q4. 育休中にアルバイト・副業をしても給付金は受け取れますか?
育休中の就労については、一定の条件のもとで認められています。ただし、就労日数や就労時間が一定の基準を超えると育児休業給付金が支給停止または減額されます。具体的には、支給単位期間(通常は1か月)の就労日数が10日以内、または就労時間が80時間以内であることが支給継続の条件です。これを超えた月は給付金が支給されない可能性があります。事前に事業主・ハローワークへ確認することを強くお勧めします。
Q5. 育休を拒否された場合、どこに相談すればよいですか?
事業主から違法に育休を拒否された場合は、以下の相談窓口を利用できます。
– 都道府県労働局 雇用環境・均等部(室)(育児・介護休業法の相談窓口)
– ハローワーク(公共職業安定所)
– 総合労働相談コーナー(各都道府県の労働局)
相談は無料で、匿名でも受け付けています。証拠として、拒否された際のやり取りをメール・チャット等で残しておくと、対応がスムーズになります。
まとめ
育休の「対象年齢」は、取得者本人ではなく養育する子の年齢(原則1歳、最大2歳)を指します。法律上、取得者の年齢による制限は存在せず、40代・50代であっても要件を満たせば取得できます。
対象外になる主なケースは、日雇い労働者、子が1歳6か月に達するまでに雇用契約が終了することが明らかな有期雇用者、労使協定による除外対象者です。有期雇用者については2022年4月の法改正で要件が大幅に緩和されており、在籍1年未満でも取得できるケースが増えています。
出生日の計算・給付金の申請手続き・分割取得のルールは、事前にしっかり確認しておくことで、スムーズな育休取得につながります。産後パパ育休(出生時育児休業)も2022年10月から利用可能になり、夫婦での育児体制の構築がより柔軟になりました。制度の最新情報は厚生労働省公式サイトやハローワークで定期的にチェックすることをお勧めします。
企業の人事担当者にとっては、古い就業規則の改正と従業員への個別周知が重要な課題となっています。法令遵守のうえ、個々の従業員の育児ニーズに対応する体制を整えることが、優秀な人材の確保・定着につながるでしょう。
参考法令・参考資料
– 育児・介護休業法(平成3年法律第76号)
– 雇用保険法(昭和49年法律第116号)
– 厚生労働省「育児・介護休業法のあらまし」
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」

