育休中に流産・死産した場合の給付金請求権【手続き完全ガイド】

育休中に流産・死産した場合の給付金請求権【手続き完全ガイド】 育児休業制度

育休を申請した後に流産・死産が起きてしまった——そのような状況に直面した方が最初に抱く疑問は、「給付金はもう受け取れないのだろうか」という不安ではないでしょうか。

結論から言えば、育休申請後に流産・死産が発生しても、育児休業給付金の請求権は原則として喪失しません。 これは厚生労働省が公式に認める正規の制度運用です。

本記事では、その法的根拠・対象条件・申告義務・必要書類・ハローワークへの手続き手順を、実務に即した形でわかりやすく解説します。悲しみの中にいる方が、制度上の不安を少しでも取り除き、次の一歩を踏み出せるよう、できる限り具体的な情報をお届けします。


育休申請後に流産・死産が起きても給付金は受け取れるのか?

「育児休業給付金は、子どもが生まれた後に育てるための制度だから、流産・死産なら当然受け取れない」と思われがちです。しかし、これは正確ではありません。

育児休業給付金の支給要件のひとつに「子の養育」がありますが、妊娠中に育休申請を行った後に流産・死産が発生した場合、一定の条件を満たすことで給付金の請求権を継続できます。 これは例外的な救済措置ではなく、厚生労働省が公式に認める正規の制度運用です。

特に重要なのは、流産・死産の事実をハローワーク(公共職業安定所)に遅滞なく申告する義務があるという点です。この申告さえ適切に行えば、給付金請求権を失わずに済むケースが多くあります。

また、出産後に新生児が亡くなった(新生児死亡)の場合は、法律上「出生」が成立しているため、給付継続に関する条件はさらに明確です。多胎妊娠(双子・三つ子など)で一児が死産となったケースでも、生存している子どもについての給付は継続されます。

悲しい出来事の直後に制度手続きを調べるのは、心身ともに大きな負担です。しかし、知っているかどうかで受給できる金額が大きく変わるため、ぜひ本記事を参考に正確な情報を把握してください。


制度の法的根拠と厚労省の公式見解

育休申請後の流産・死産における給付金継続は、複数の法律と省令・通知によって支えられています。「なんとなく受け取れる気がする」という曖昧な理解ではなく、法律で明確に保護されているという認識を持つことが重要です。

雇用保険法上の「出生」要件とは何か

育児休業給付金の根拠法は雇用保険法第61条です。同条は、育児休業給付金の支給対象として「被保険者が、その養育する1歳未満の子について休業を取得している場合」と定めています。

ここで問題となるのが「子」の定義です。法律上、胎児は「子」ではなく、出生によって初めて法的な「子」となります。したがって、流産・死産の場合は「子の出生」という要件を形式的には満たしません。

しかし、だからといって給付金が自動的に消滅するわけではありません。育児・介護休業法第2条第1号は、育児休業の対象を「1歳に満たない子を養育する労働者」と定めつつ、省令や通達によって妊娠中申請の取り扱いを別途規定しています。

つまり、「出生」要件を欠く流産・死産の場合でも、別途の制度的根拠によって給付継続が認められる仕組みになっているのです。この点が、多くの方が「給付を受けられないと思い込んでしまう」原因でもあります。

厚生労働省Q&Aが示す継続可能の解釈

厚生労働省は、育児休業給付金に関するQ&Aを定期的に更新しており、流産・死産のケースについても明確な見解を示しています。

平成29年(2017年)1月1日付の厚労省通知では、育休申請後に流産・死産が発生した場合の取り扱いが整理されました。その要点は以下のとおりです。

状況 取り扱い
妊娠中に育休申請→流産・死産 条件付きで給付継続可能
出生後に新生児が死亡 出生済みのため給付継続
多胎妊娠で一児が死産 生存児について継続
育休延長中に流産・死産 申告義務履行後、継続審査

また、2022年版の厚生労働省Q&Aでは、「妊娠中に育児休業の申出を行い、その後流産・死産となった場合でも、事業主への届出を適切に行い、ハローワークへの申告義務を果たすことで、給付金請求権は継続される」という解釈が明示されています。

これは、「例外的な配慮」ではなく、正規の制度として認められた運用であることを意味します。制度を知らずに請求を諦めてしまうことのないよう、この点をしっかり覚えておいてください。

なお、育児休業給付金支給要領(別紙様式第13号)には、流産・死産時の届出様式が含まれており、ハローワーク窓口でも対応可能な正式書類として整備されています。


給付金継続が認められる3つの条件

流産・死産が発生した場合に育児休業給付金の請求権を継続するためには、以下の3つの条件を満たす必要があります。これらはすべて重要であり、どれか一つでも欠けると継続が認められない可能性があります。

条件1:育休申請時に妊娠していたことが証明できる

育休申請が「妊娠を前提とした正当な申請」であることを証明する書類が必要です。具体的には以下のものが該当します。

  • 母子健康手帳(妊婦健診の記録が記載されているもの)
  • 医師または助産師が作成した診断書・証明書(妊娠の事実と週数が記載されているもの)
  • 産婦人科の通院記録(レセプト情報等)

育休申請書に記載された「出産予定日」と、医療機関が証明する妊娠事実が一致していることが確認できれば、通常は証明として認められます。

条件2:流産・死産の事実を適切に申告している

これが最も重要な条件です。流産・死産が発生した場合、事業主(会社)とハローワークの双方に対して、遅滞なく申告する義務があります。

「遅滞なく」とは、法的には「合理的な理由なく遅延させないこと」を意味します。身体的・精神的な回復が必要な期間は考慮されますが、目安として流産・死産後おおむね2週間以内に事業主への届出を行い、その後速やかにハローワークへの手続きを進めることが推奨されます。

申告を怠ると、給付金の不正受給とみなされるリスクがあるため、注意が必要です。

条件3:育休期間中に就業していないこと(または就業日数が所定の範囲内であること)

育児休業給付金の支給条件として、休業期間中の就業日数が「支給単位期間(1か月)ごとに10日以下、または就業時間が80時間以下」でなければなりません。この条件は流産・死産の有無にかかわらず適用されます。

流産・死産後に体調が安定し、職場に復帰したいと考えた場合でも、育休期間中に就業した日数・時間によっては給付金が支給されなくなる可能性があるため、職場復帰のタイミングはハローワークや社会保険労務士に相談しながら検討することをお勧めします。


申告義務の具体的な内容と期限

育休申請後に流産・死産が発生した場合に果たすべき「申告義務」は、2段階に分けて考える必要があります。

事業主(会社)への届出

まず、勤務先の会社(事業主)に対して、流産・死産の事実を速やかに報告してください。

この届出は、育児・介護休業法に基づく育児休業の取り扱いを変更するために必要です。事業主は、この届出を受けて育休の状況をハローワークに報告する義務があります。

届出の際には、以下の書類を準備することが一般的です。

  • 流産証明書または死産証明書(医師・助産師が発行)
  • 死産届の写し(妊娠22週以降の死産の場合は法的に死産届の提出が必要)
  • 母子健康手帳

なお、妊娠22週未満の流産の場合、法的には死産届の提出義務はありませんが、医師から発行される「流産証明書」または「診断書」が代替書類として機能します。この証明書は保険証を使って医療機関で発行してもらえます。

ハローワークへの申告

次に、管轄のハローワーク(公共職業安定所)に対して流産・死産の事実を申告します。

ハローワークへの申告は、事業主を通じて行うケースが多いですが、本人が直接窓口を訪れることも可能です。申告に必要な書類は以下のとおりです。

書類名 入手先 備考
育児休業給付金に関する届出書 ハローワーク 所定様式(別紙様式第13号)
流産証明書または死産証明書 医療機関 医師・助産師が発行
死産届の写し 市区町村(提出後に交付) 22週以降の死産に必要
母子健康手帳 本人所持 妊娠の事実確認のため
雇用保険被保険者証 会社または本人 被保険者番号の確認
本人確認書類(マイナンバーカード等) 本人所持 窓口申告時に必要

申告期限については、育児休業給付金の支給申請期間(各支給単位期間の末日から2か月以内)が基準となります。ただし、流産・死産直後は精神的・身体的に申告が困難な状況も考えられるため、できる限り早期に事業主または社会保険労務士に相談することをお勧めします。


給付金の計算方法と受け取れる金額

育休申請後に流産・死産が発生した場合でも、給付継続が認められている期間については、通常の育児休業給付金と同じ計算式が適用されます。

基本の計算式

育児休業給付金の支給額は、休業開始時の賃金日額を基準として計算されます。

【育休開始から180日目まで】
支給額 = 賃金日額 × 支給日数 × 67%

【育休開始181日目以降】
支給額 = 賃金日額 × 支給日数 × 50%

「賃金日額」は、育休開始前6か月間の賃金合計額を180で割った金額です。

計算例

たとえば、育休開始前6か月の賃金合計が180万円(月30万円)だった場合:

  • 賃金日額:180万円 ÷ 180日 = 10,000円
  • 開始180日以内(1か月30日とした場合):10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円/月
  • 開始181日以降:10,000円 × 30日 × 50% = 150,000円/月

上限額・下限額(2024年度)

給付金には国が定める上限額と下限額があります。

区分 67%期間(開始〜180日) 50%期間(181日〜)
上限額 約313,000円/月 約233,000円/月
下限額 約50,000円/月 約37,000円/月

※上限額・下限額は毎年8月1日に改定されます。最新の金額はハローワークまたは厚生労働省のウェブサイトでご確認ください。

流産・死産後の給付期間について

給付金継続が認められる期間は、あくまで「育休期間として認められた範囲内」に限られます。 流産・死産が発生した後に、追加的に育休を延長することは原則として認められません。

ただし、産前産後休業(産休)との関係では注意が必要です。出産予定日の42日前(多胎の場合98日前)から始まる産前休業期間は、育休とは別の制度(健康保険の出産手当金の対象)であるため、流産・死産の時期によっては異なる給付が適用されることがあります。この点は、会社の人事担当者または社会保険労務士に個別に確認することをお勧めします。


ハローワークでの手続きの流れ

流産・死産後にハローワークで行う手続きは、以下のステップで進めます。具体的な流れを把握しておくことで、精神的な余裕が少しでも生まれるはずです。

ステップ1:医療機関で証明書類を取得する(流産・死産後すみやかに)

産婦人科または産科病院で、以下の書類を発行してもらいます。

  • 流産証明書(妊娠22週未満の場合)
  • 死産証明書(妊娠22週以降の場合)

妊娠22週以降の死産の場合は、市区町村への死産届の提出が法的に義務付けられています(戸籍法86条)。死産届を提出する際に、死産証明書の写しを取得しておくと後の手続きがスムーズです。

ステップ2:事業主(会社)に報告する(おおむね2週間以内を目安に)

勤務先の人事・総務部門に流産・死産の事実を報告し、育休の取り扱いについて相談します。会社側は、この事実をもとにハローワークへの雇用保険関係の届出を行います。

精神的につらい時期に職場への連絡は大きな負担です。もし直接連絡が難しい場合は、家族や代理人を通じた報告も可能です。また、紙面やメールによる報告を活用することも検討してください。

ステップ3:ハローワークへの申告書を準備する

ハローワークに提出する書類は、事業主経由で提出するか、本人が直接持参するかの2パターンがあります。

  • 事業主経由の場合: 人事担当者が代行して提出します。担当者に必要書類を渡し、手続きを委ねることができます。
  • 本人が直接申告する場合: 管轄のハローワーク窓口に「育児休業給付金に関する変更届」(別紙様式第13号)と証明書類一式を持参します。

ステップ4:ハローワーク窓口での審査・確認(申告後1〜2週間程度)

ハローワークで申告内容の確認が行われます。不明点があれば窓口の担当者から連絡が入ります。審査が完了し、給付継続が認められれば、通常の支給スケジュールにしたがって振り込みが行われます。

審査の結果、給付継続が認められなかった場合は、不支給通知書が届きます。不服がある場合は、都道府県労働局または労働保険審査官への審査請求を行うことができます(処分を知った日の翌日から3か月以内)。

ステップ5:必要に応じて社会保険労務士に相談する

手続きが複雑に感じられる場合や、会社との関係で対応に不安がある場合は、社会保険労務士(社労士)への相談を強くお勧めします。社労士は、雇用保険・社会保険の手続きを代行できる専門家です。

都道府県社会保険労務士会のウェブサイトから、最寄りの社労士を検索できます。また、総合労働相談コーナー(各都道府県労働局)や、よりそいホットライン(0120-279-338)のような支援窓口も活用できます。


流産・死産の種類別・具体的な対応表

流産・死産にはさまざまな状況があり、それぞれで手続きや適用される制度が異なります。以下に代表的なケース別の対応をまとめます。

ケース 法律上の扱い 給付金継続の可否 必要な主な書類
妊娠12週未満の流産 出生なし(流産) 条件付きで継続可 流産証明書、母子手帳
妊娠12〜21週の流産 出生なし(流産) 条件付きで継続可 流産証明書、母子手帳
妊娠22週以降の死産 死産届が必要 条件付きで継続可 死産届写し、死産証明書
出生直後の新生児死亡 出生済み 継続可(条件なし) 出生届・死亡届の写し
多胎で一児が死産 生存児について出生 生存児について継続 死産証明書+出生届
育休延長中の流産・死産 延長事由の確認要 申告後に審査 各種証明書+届出書

このように、同じ「流産・死産」でも妊娠週数・出生の有無によって手続きや給付の扱いが異なります。 自分がどのケースに該当するかを確認し、必要な書類を早めに用意しておきましょう。


精神的サポートとグリーフケアについて

流産・死産を経験された方は、身体的な回復だけでなく、深い悲しみ(グリーフ)の中にいることがほとんどです。制度手続きを進めながら、心のケアも並行して行うことが重要です。

以下のサポート窓口を参考にしてください。

  • よりそいホットライン(0120-279-338):24時間365日対応、悩みや不安を相談できる
  • 産後うつ・周産期メンタルヘルス相談窓口:各都道府県の保健センターが窓口
  • 流産・死産経験者のサポートグループ:「天使ママ」コミュニティや NPO法人グリーフサポートなどが運営
  • 社会保険労務士・産業カウンセラー:職場復帰のタイミングや制度利用の相談

制度の手続きに不安を感じる場合は、一人で抱え込まずに専門家に相談することを遠慮なく行ってください。あなたには、制度を正しく活用する権利があります。


よくある質問

Q1. 流産後、育休をそのまま継続して給付金を受け取れますか?

はい、条件を満たせば継続可能です。流産の事実を事業主とハローワークに遅滞なく申告し、育休申請時に妊娠していたことが証明できる書類を提出することで、すでに認められている育休期間の給付金は継続して受け取ることができます。ただし、流産後に新たに育休期間を追加・延長することは原則認められません。

Q2. 死産届は必ずしも必要ですか?

妊娠22週以降の死産の場合は、法律(戸籍法第86条)により市区町村への死産届の提出が義務付けられています。妊娠21週以前の流産には死産届の提出義務はありませんが、医師・助産師による流産証明書が必要になります。

Q3. 流産・死産後に職場復帰した場合、給付金はどうなりますか?

育休期間中に就業した場合、就業日数が1か月に10日を超えるか、就業時間が80時間を超えると、その月の給付金は支給されません。職場復帰のタイミングは、給付金の受給状況と合わせてハローワークや社労士に事前相談することをお勧めします。

Q4. 申告が遅れてしまいました。今から手続きできますか?

流産・死産後に精神的・身体的な理由で申告が遅れた場合でも、ハローワークに事情を説明することで、個別に判断してもらえる場合があります。まずは管轄のハローワークに相談してください。ただし、申告を全く行わないまま給付を受け続けることは不正受給とみなされる可能性があるため、早期の相談が重要です。

Q5. 流産後に次の妊娠・出産で再度育休を取る場合、給付金の被保険者期間の計算はどうなりますか?

次の育休申請の際には、育児休業給付金の被保険者期間の計算に関して、今回の育休期間中に保険料が免除されている期間の扱いが問題になる場合があります。原則として「休業開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12か月以上」あることが必要ですが、育休取得期間はこの2年間から除外されることがあります。詳細は加入している雇用保険の管轄ハローワークに確認してください。

Q6. 多胎妊娠で一人が死産、一人が生存した場合の給付金はどうなりますか?

生存している子どもについては、通常どおり育児休業給付金が支給されます。死産した子については給付対象から外れますが、生存児を養育するための育休として継続が認められるため、給付金の受給は維持されます。


まとめ

育休申請後に流産・死産が発生した場合の育児休業給付金について、重要なポイントを整理します。

ポイント 内容
給付金請求権の喪失 原則として喪失しない
申告義務 事業主・ハローワークへ遅滞なく報告
必要書類 流産証明書または死産証明書・母子手帳等
申告期限の目安 流産・死産後おおむね2週間以内に事業主へ
不明点の相談先 ハローワーク・社会保険労務士

最も重要なことは、「申告せずに放置しない」という点です。つらい状況の中でも、早めにハローワークや社労士に相談することで、制度を正しく活用し、経済的な不安を軽減することができます。

流産・死産を経験された方が、制度上の不利益を受けることなく、必要なサポートを受けられることを願っています。一人で抱え込まず、周囲の専門家や支援機関を積極的に活用してください。


免責事項

本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的・税務的アドバイスを提供するものではありません。具体的な手続きについては、管轄のハローワーク・社会保険労務士・または都道府県労働局にご相談ください。制度内容は法改正により変更される場合がありますので、最新情報は厚生労働省公式ウェブサイトをご確認ください。

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