育休中に自分や子どもがコロナに感染したとき、「育児休業給付金が止まってしまうのでは?」と不安に感じる方は少なくありません。しかし、結論から言えば、育休中のコロナ感染・隔離が原因で給付金が停止されることはありません。本記事では、給付金継続の法的根拠から申請手続き・必要書類まで、2024年時点の最新情報をもとに、厚生労働省の通知に基づいて実務的にわかりやすく解説します。
育休中にコロナ感染・隔離になっても給付金はもらえる?結論を先に解説
育児休業給付金には「月10日以上就業してはならない」という就業要件があります。この要件を聞いて、「隔離中に在宅ワークをしてしまったらどうなる?」「そもそも隔離期間はどう扱われる?」と疑問を持つ方もいるでしょう。
厚生労働省は、育休中にコロナに感染して隔離指示を受けた場合、その期間は就業日数のカウントから除外されるという特別取扱いを定めています。本人の感染であれ、子どもの感染であれ、育児休業はそのまま継続するものとして扱われ、給付金は満額支給が続きます。
パターン別に整理すると、次のとおりです。
| 状況 | 給付金 | 備考 |
|---|---|---|
| 育休中の本人が感染・隔離 | 継続支給 | 保健所等の隔離指示が必要 |
| 育休中に子どもが感染・隔離 | 継続支給 | 子の看護のため就業できない状態 |
| 自主的な外出自粛のみ | 対象外 | 法的根拠のある隔離指示が必要 |
| 濃厚接触者認定だが陰性 | 原則対象外 | 隔離指示がない場合は対象外 |
支給継続の根拠となる厚生労働省通知(職発0911第1号)とは
給付継続の法的裏付けは、2021年9月11日に発出された厚生労働省職業安定局長通知「職発0911第1号」です。この通知は、雇用保険法第61条の4(育児休業給付金の支給要件)の運用上の解釈を示したものであり、全国のハローワークに周知されています。
通知の骨子は以下のとおりです。
- 育休中の本人または子がコロナに感染し、隔離措置が必要になった場合、その期間は育児休業の継続として取り扱う
- 月10日以上の就業要件の判定においても、隔離期間中の就業(テレワーク等)は特別な事情として考慮される
- 子の看護休暇(育児・介護休業法第16条の2)の取得を同時期に行っても二重給付にはならない
この通知が発出された背景には、「コロナ禍における特例的な保護措置」という政策的意図があります。育休中の労働者が感染リスクにさらされたとき、経済的不安を最小化するための行政的配慮です。
なお、雇用保険関係業務取扱要領の別紙においても同様の運用基準が明記されており、ハローワーク窓口でも統一的な取扱いが行われています。
月10日就業要件との関係——隔離期間はどう扱われるか
育児休業給付金が支給されるためには、支給単位期間(1ヶ月ごと)中に就業している日数が10日以下(就業時間が80時間以下)であることが原則です。10日を超えて就業した月は、その月分の給付金が不支給となります。
では、隔離期間中はどうカウントされるのでしょうか。
【通常月の就業カウント例】
支給単位期間(30日)のうち、就業した日:9日
→ 10日以下 → 給付金支給〇
【コロナ隔離があった月の例】
支給単位期間(30日)のうち
・隔離期間:7日(就業不可)
・就業した日:9日
→ 合計9日(隔離期間は除外) → 給付金支給〇
【注意:就業日が多かったケース】
・隔離期間:3日
・就業した日:12日
→ 就業日12日 > 10日 → 給付金不支給✕
(隔離期間は除外されるが、就業日数自体は正確に集計される)
つまり、隔離期間が就業可能日数を実質的に圧縮するため、結果として就業要件を満たしやすくなる、というのが正確な理解です。隔離期間をゼロカウントにするのではなく、「隔離中は就業できなかった」という事実を考慮した上で給付要件が判定されます。
【対象者別】給付金継続が認められるケースを整理
育休中のコロナ感染をめぐる給付金継続は、「誰が感染したか」「法的な隔離指示があるか」の2軸で判断されます。以下では、代表的な3つのケースに分けて詳しく説明します。
ケース①——育休中の本人がコロナに感染した場合
給付金:継続支給(満額)
育休中の労働者本人がコロナに感染し、保健所等から隔離指示を受けた場合、その隔離期間中も育児休業は継続しているものと扱われます。
具体例:育休2ヶ月目に5日間の隔離指示を受けたケース
育休開始:2024年4月1日
感染・陽性判定:2024年5月10日
隔離期間:2024年5月10日〜5月15日(5日間)
就業実績:なし(育休中のため)
→ 5月の支給単位期間における就業日数:0日
→ 就業要件(10日以下)を満足
→ 給付金:5月分満額支給
給付金額のイメージ(月給30万円の場合):
| 育休期間 | 支給率 | 月額給付金(概算) |
|---|---|---|
| 開始〜180日目 | 67% | 約201,000円 |
| 181日目以降 | 50% | 約150,000円 |
注意点:「保健所等による隔離指示」が前提です。自己判断のみで外出を控えている場合は対象となりません。陽性判定後は必ず保健所または医療機関への連絡・記録を残しておきましょう。
ケース②——育休中に子どもがコロナ陽性になった場合
給付金:継続支給(満額)
育休中の親が看護している子どもがコロナに感染した場合も、給付金は継続されます。子の隔離期間中、親が育児・看護を担うことで就業できない状態が続いても、育児休業の継続として取り扱われるからです。
子の看護休暇との違い
混同されやすいのが、育児・介護休業法第16条の2に定める「子の看護休暇」との関係です。
| 制度 | 対象 | 給付金 | 育休との関係 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 育休中の親 | 休業中に支給 | 育休継続中に支給 |
| 子の看護休暇 | 就業中の親が一時的に休む | 原則無給(会社によって有給もあり) | 育休中には基本的に使用しない |
育休中はすでに「就業していない状態」であるため、子の看護休暇を別途取得する必要はなく、育休給付金がそのまま継続支給されるのが正しい取扱いです。子の看護休暇と育休給付金の二重取得にもなりません。
具体例:育休中に子(1歳)が陽性判定を受けたケース
育休中の親(育休開始5ヶ月目)
子の陽性判定:2024年7月3日
子の隔離期間:2024年7月3日〜7月10日(7日間)
親の就業実績:なし(育休中)
→ 7月の支給単位期間における就業日数:0日
→ 就業要件を満足
→ 給付金:7月分継続支給
ケース③——給付金が継続されない対象外のケース
感染・隔離に関連するケースであれば必ず給付が継続されるわけではありません。以下は対象外となる主なケースです。
| ケース | 理由 | 対処法 |
|---|---|---|
| 自主的な外出自粛のみで感染なし | 保健所等の法的指示なし | 特別対応なし(通常の育休扱い) |
| 濃厚接触者認定だが陰性・隔離指示なし | 法的根拠のある隔離なし | 2022年9月以降は濃厚接触者の待機不要 |
| 育休終了後に感染 | 給付金の支給基礎がない | 傷病手当金(健康保険)を検討 |
| 月10日超の就業実績がある | 就業要件を満たさない | 就業日数の見直しが必要 |
| パートナーのみ感染・本人は就業可能 | 自身に隔離義務なし | 通常の就業要件が適用 |
特に注意が必要なのが「自主的な自粛のみ」のケースです。行政機関(保健所・医師)からの指示に基づかない外出自粛は、法的に認められた隔離とはみなされません。給付金の扱いを変えるためには、公的な記録(陽性判定書、保健所の連絡記録など)が必要です。
申請手続きと必要書類
給付金の支給はハローワークへの申請を通じて行われます。コロナ感染・隔離が発生した場合も、基本的な申請の流れは通常の育休給付金と同じですが、感染・隔離の事実を証明する書類が追加で必要になることがあります。
申請の流れ(事業主経由が原則)
育児休業給付金の申請は、原則として事業主(会社)を通じてハローワークへ提出します。感染が発生した場合は、速やかに会社の人事・労務担当者に連絡し、状況を共有してください。
STEP 1:感染・陽性判定
↓
STEP 2:保健所または医療機関へ連絡・記録を取得
↓
STEP 3:会社(人事・労務担当)へ連絡
↓
STEP 4:支給申請書類の準備(事業主と協力)
↓
STEP 5:事業主がハローワークへ申請(支給単位期間終了後2ヶ月以内)
↓
STEP 6:ハローワーク審査・給付金振込
必要書類一覧
通常の育休給付金申請に加え、コロナ感染・隔離が関係する期間については、以下の書類の提出を求められる場合があります(ハローワークの窓口によって異なる場合があります)。
【通常の育休給付金申請に必要な書類】
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク所定様式 |
| 賃金台帳・出勤簿のコピー | 就業日数の確認用 |
| 母子健康手帳(子の生年月日確認) | 初回申請時のみ |
| 育児休業取扱通知書 | 会社が発行 |
【コロナ感染・隔離時に追加が求められる可能性がある書類】
| 書類 | 取得先 | 目的 |
|---|---|---|
| 陽性判定に関する記録(検査結果通知書・医療機関の証明等) | 医療機関・検査機関 | 感染の事実証明 |
| 保健所からの連絡記録(メール・通知等) | 保健所 | 隔離指示の記録 |
| 就業していないことを示す申立書 | 事業主作成 | 就業日数の確認 |
実務的なアドバイス:2023年以降、コロナの5類移行に伴い保健所からの個別連絡が廃止されたケースもあります。感染が判明した際は、自己検査キットの結果・医療機関の受診記録・医師の診断書など、感染の事実を示せる記録を手元に保管しておくことが重要です。
申請期限と支給タイミング
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 申請期限 | 支給単位期間(1ヶ月)終了後、2ヶ月以内 |
| 支給決定までの期間 | 申請受理後、概ね2週間〜1ヶ月 |
| 振込先 | 申請者(被保険者)の指定口座 |
| 支給頻度 | 2ヶ月ごとにまとめて申請することも可能 |
申請が遅れた場合でも、時効は2年です(雇用保険法第74条)。育休終了後に遡って申請することも可能ですが、書類の準備が複雑になるため、できる限り期限内に手続きを進めることをお勧めします。
給付金の計算方法と受取金額の目安
育児休業給付金の支給額は、「休業開始時賃金日額」に基づいて算出されます。
計算式
【育休開始〜180日目(6ヶ月間)】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
【181日目以降】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%
月給別の給付金目安(1ヶ月あたり)
| 月給(額面) | 開始〜180日(67%) | 181日目以降(50%) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約134,000円 | 約100,000円 |
| 25万円 | 約167,500円 | 約125,000円 |
| 30万円 | 約201,000円 | 約150,000円 |
| 35万円 | 約234,500円 | 約175,000円 |
| 40万円 | 約268,000円 | 約200,000円 |
※上記はあくまで概算です。実際の給付額は、雇用保険の被保険者期間・賃金の計算方法によって異なります。詳細はハローワーク窓口または「育児休業給付金支給申請書」の記載内容に基づいて算出されます。
上限額・下限額(2024年度)
| 区分 | 金額(1日あたり) |
|---|---|
| 上限額(180日まで) | 15,690円 |
| 上限額(181日以降) | 11,717円 |
| 下限額 | 2,746円 |
企業の人事担当者が知っておくべき対応ポイント
育休中の社員がコロナに感染した場合、人事・労務担当者はどのように対応すべきでしょうか。以下に実務上のポイントをまとめます。
社員への初動対応チェックリスト
□ 社員から感染の報告を受ける
□ 感染・隔離の状況(期間・保健所対応の有無)を確認する
□ 育休給付金の支給申請期限を確認・スケジュール管理する
□ 感染を証明する書類(検査記録・診断書等)の提出を依頼する
□ 支給申請書に「感染・隔離期間」を適切に記載する
□ 必要に応じてハローワークへの事前相談を行う
ハローワークへの事前相談を活用する
感染・隔離の状況が複雑な場合(例:月の中途で感染し就業日数の集計が難しい場合など)は、申請前にハローワークへ事前相談することを強くお勧めします。窓口では個別の事情に応じた取扱いを案内してもらえます。
「どの書類が必要か」「就業日数はどう集計するか」といった細かな点も含めて、事前に確認しておくことで申請の手戻りを防ぐことができます。
申請書類の記載上の注意点
支給申請書の「就業日数」の欄には、感染・隔離期間中の就業実態を正確に記載する必要があります。隔離中に一切就業していなかった場合は「0日」となりますが、事業主の署名・押印が必要な箇所については人事担当者が責任を持って記載・確認してください。
育休中のコロナ対応に関するよくある質問
育休中のコロナ感染に関して、多くの方から寄せられる質問をまとめました。
Q1. 保健所の隔離指示がなくなった現在(5類移行後)でも給付金は継続されますか?
2023年5月にコロナが5類感染症に移行し、保健所による個別の隔離指示は廃止されています。ただし、医療機関での陽性診断・医師の指示に基づく療養は引き続き「感染による就業不能状態」として認められる場合があります。詳細はハローワーク窓口でご確認ください。制度の適用については個別判断が必要なため、早めに相談することをお勧めします。
Q2. 育休を延長したいのですが、コロナ感染を理由に延長できますか?
コロナ感染そのものを理由とした育休の法的延長は認められていません。育休の延長が認められるのは、「保育園の入所申請をしたが落ちた場合」や「配偶者の死亡・離婚などの特別な事情がある場合」に限られます(育児・介護休業法第5条3項)。コロナ感染で育休期間が影響を受けた場合は、給付金の継続支給を活用しつつ、育休期間内で対応するのが基本的なアプローチです。
Q3. 育休中にテレワーク(在宅勤務)をしている場合、感染しても給付金は継続されますか?
育休中にテレワークを行った日数は「就業日数」としてカウントされます。感染・隔離期間中にテレワークが可能であった場合、その日数は就業日数に算入されます。月10日または80時間を超える就業が発生すると給付金が不支給となる可能性があるため、感染した月の就業状況を正確に把握しておくことが重要です。
Q4. 育休中に感染し、入院が長引いた場合はどうなりますか?
育休は継続しているものとして扱われるため、入院中も給付金は原則継続されます。ただし、入院期間が極端に長引き、当初の育休期間を超える場合は別途手続きが必要になることがあります。また、健康保険からの傷病手当金は育休給付金と同時期には支給されませんので注意が必要です。
Q5. 感染の証明書類を紛失してしまいました。どうすればいいですか?
受診した医療機関に再発行を依頼するか、保健所(感染届が提出されている場合)に問い合わせることで記録を取得できる場合があります。自己検査キットを使用した場合は記録が残りにくいため、陽性判定後はスクリーンショットや写真などで証拠を保存しておくことを推奨します。
Q6. 夫婦ともに育休中で、両方がコロナに感染した場合は?
夫婦それぞれが育児休業給付金を受給している場合、それぞれの感染・隔離に対して個別に給付継続の取扱いが適用されます。夫婦同時に感染した場合も、それぞれの申請を事業主を通じてハローワークへ提出することで、それぞれの給付金が継続されます。
まとめ——育休中のコロナ感染で覚えておくべき5つのポイント
育休中のコロナ感染・隔離と給付金の関係について、重要なポイントを整理します。
✅ ポイント① 本人感染でも子の感染でも給付金は継続支給される
✅ ポイント② 法的根拠は厚生労働省通知「職発0911第1号」
✅ ポイント③ 隔離期間は月10日就業要件の集計に影響しない
✅ ポイント④ 自主的な自粛のみでは対象外(公的記録が必要)
✅ ポイント⑤ 5類移行後は医師の指示による療養記録を保管しておく
給付金の手続きは原則として事業主経由でハローワークへ提出しますが、感染・隔離が発生した場合は早めにハローワークへ事前相談することが最も確実な対策です。制度の適用は個別事情によって異なるケースもあるため、窓口での個別確認を積極的に活用してください。
育休期間中の予期せぬ出来事に直面しても、正しい知識を持っておくことで冷静に対処できます。この記事が育休中の方、そして企業の人事担当者の皆さんにとって、実務上の助けになれば幸いです。不明な点は管轄のハローワークへの相談をお勧めします。
参考法令・通知
– 育児・介護休業法(第2条・第5条・第16条の2)
– 雇用保険法(第61条の4・第74条)
– 厚生労働省職業安定局長通知「職発0911第1号」(2021年9月11日)
– 雇用保険関係業務取扱要領(別紙)
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続」(2024年度版)
免責事項:本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の法的アドバイスを構成するものではありません。具体的な申請手続きについては、管轄のハローワーク窓口または社会保険労務士にご相談ください。

