育休中に上の子が保育園・幼稚園を利用しているとき、「幼保無償化の給付は続くのか」「育休給付金と両方もらえるのか」と疑問を感じる方は多くいます。結論から言えば、育児休業給付金と幼保無償化は原則として同時受給できます。しかし実務上は「育休中は認定区分が変わる」「保育必要性の要件が変わる」など、知っておかないと損をするポイントが複数存在します。
本記事では、2つの制度の法的関係から給付額の計算方法、必要書類、申請タイミングまで、一連の手続きを体系的に解説します。
育休給付金と幼保無償化は同時受給できるのか
2つの制度は法的に独立している
育児休業給付金と幼保無償化は、根拠法・主管庁・給付方式がまったく異なる独立した制度です。
| 比較項目 | 育児休業給付金 | 幼保無償化 |
|---|---|---|
| 根拠法 | 雇用保険法 第61条の4 | 子ども・子育て支援法 第58条〜65条 |
| 主管庁 | 厚生労働省(ハローワーク) | 文部科学省・厚生労働省(実施は市区町村) |
| 給付対象 | 育休取得中の労働者本人 | 子どもが通う施設の利用料 |
| 給付方式 | 雇用保険口座への振込 | 施設への直接補助(保護者の支払い免除) |
| 所得制限 | 3歳未満は原則なし | 0〜2歳は住民税非課税世帯のみ |
この表のとおり、2つの制度は受給者も給付ルートも完全に別物です。育休給付金は「休業中の労働者の生活保障」、幼保無償化は「子どもの教育・保育費用の負担軽減」という目的が異なるため、一方の受給がもう一方に影響を与える仕組みにはなっていません。
同時受給が可能な理由と仕組み
たとえば、第2子の育休中に第1子(3〜5歳)が認可保育園を利用しているケースを想定します。この場合:
- 育児休業給付金:第2子の育休期間中、雇用保険から毎月口座に振り込まれる
- 幼保無償化:第1子の保育料(月額上限3.7万円)が無償化され、利用料の支払いが免除される
この2つは同時に発生し、互いに干渉しません。国の制度設計として「両方受け取ってはいけない」というルールは存在しないため、要件を満たす限り両方の恩恵を受けることができます。
よくある誤解:給付制限があるのか
「育休中は収入がないから幼保無償化の計算が変わるのでは?」という質問をよく受けます。これは所得判定のタイミングに関する誤解が原因です。
幼保無償化の所得判定(0〜2歳児の住民税非課税判定)は、前年の住民税の課税状況を基準とします。育休で当年収入がゼロになっても、翌年度の認定まで影響しません。つまり、育休を開始した年度は前年の所得で判定されるため、多くのケースで給付内容は変わりません。
ただし、育休期間が長引いて翌年度の認定に前年の低収入(育休中)が反映されると、0〜2歳児の対象要件が緩和されて対象になるというプラスの変化が生じることもあります。
育休給付金の仕組みと給付額の計算方法
給付金の算出基準(支給対象月額と給付率)
育児休業給付金の額は、次の計算式で算出されます。
育休開始〜180日目:休業開始前6か月の平均賃金 × 67%
181日目以降 :休業開始前6か月の平均賃金 × 50%
「休業開始前6か月の平均賃金」は、完全月(賃金締切日ベースで1か月フルに勤務した月)の賃金合計を6で割った額です。通勤交通費・残業代などの手当も含みます(ただし臨時的な賞与は除外)。
具体的な計算例
月収30万円(手当込み)の場合:
| 期間 | 給付率 | 月額給付金 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日 | 67% | 約201,000円 |
| 181日〜1年(子が1歳) | 50% | 150,000円 |
なお、1か月あたりの上限額が設定されています(2024年時点):
- 67%期間の上限:305,721円(賃金日額上限から算出)
- 50%期間の上限:228,150円
育休開始から終了までの給付パターン(1年・1年半・2年)
育休の取得期間によって給付パターンが異なります。
パターン①:子が1歳で復帰(標準)
– 育休期間:0〜365日
– 67%給付:約180日分
– 50%給付:約185日分
– 合計受給額(月収30万円の場合):約150万円
パターン②:保育所入所待ちで1歳6か月まで延長
– 延長要件:保育所等に入所を申し込んだが入所できなかった(不承諾通知が必要)
– 1歳〜1歳6か月の給付率:50%を継続
パターン③:さらに2歳まで再延長
– 再延長要件:1歳6か月時点でも保育所に入所できない(再度不承諾通知が必要)
– 上限:子が2歳になる前日まで
– 2024年度以降の法改正で、申請書類・タイミングの要件が一部変更されているため、事前にハローワークに確認してください
給付金は非課税だが社会保険料は控除される
育児休業給付金は所得税・住民税が非課税です。確定申告の対象外であり、年末調整にも影響しません。一方、雇用保険料の控除はありません(給付金は賃金ではないため)。
社会保険料(健康保険・厚生年金)については、育休期間中は本人負担分・会社負担分ともに免除されます(申請不要で自動的に免除)。この免除は将来の年金計算でも「納付済み」とみなされるため、年金額への不利益はありません。
結果として、手取りベースでは給付率67%でも実質的な手取り相当は約80%程度になるケースが多いといわれています。
育休中に微額給与を得た場合の給付調整ルール
育休中に短時間勤務や臨時出勤などで給与が発生した場合、育児休業給付金の額が調整されます。
| 支給月の賃金額 | 給付への影響 |
|---|---|
| 支給単位期間中の賃金が休業前の13%以下 | 給付金は満額支給 |
| 13%超〜80%未満 | 給付金が減額(80%に達するまで補填する形) |
| 80%以上 | 給付金は不支給(ただし育休は継続可能) |
たとえば、月収30万円の方が育休中に月3万円(10%)の賃金を受け取った場合は、13%以下なので給付金は満額支給されます。月5万円(約16.7%)の場合は一部減額されます。
幼保無償化制度の対象者と給付内容
3〜5歳児は全員無償(施設種別を問わない)
幼保無償化の大原則は、3〜5歳児(年齢は4月1日時点)は全員、保育料が無償という点です。所得制限はありません。対象施設と無償化の上限額は以下のとおりです。
| 施設種別 | 無償化の内容 |
|---|---|
| 認可保育所 | 保育料(利用者負担額)が全額無償 |
| 認定こども園 | 保育料が全額無償 |
| 幼稚園(新制度移行済み) | 保育料が全額無償 |
| 幼稚園(新制度未移行) | 月額2.57万円まで無償 |
| 認可外保育施設・ベビーシッター等 | 月額3.7万円まで無償(保育認定が必要) |
0〜2歳児は住民税非課税世帯のみ
0〜2歳児については、住民税非課税世帯に限定されています。目安となる年収は以下のとおりです(子ども1人の場合):
- 単身世帯:年収100万円以下
- 夫婦のみ世帯:年収155万円程度以下
- 夫婦+子1人世帯:年収211万円程度以下
この「住民税非課税」の判定は毎年4月1日時点の前年分の住民税を基準にします。育休中に収入が下がっても、当年度の判定には反映されません(翌年度の判定から反映されます)。
育休中の子どもが在園を続ける場合の注意点
育休中に下の子の育休を取りながら上の子を保育園に通わせ続けるケースでは、保育の必要性認定(2号・3号認定)の維持が重要です。
通常、保育所の「保育認定(2号・3号認定)」は「保護者が就労等で保育を必要とする状態」であることが前提です。育休中は就労していないため、自治体によっては育休中の継続在園を制限している場合があります。
ただし、育休明けに確実に職場復帰する場合は、多くの自治体が一定期間(育休終了予定日まで)の継続在園を認めています。自治体によって異なるため、役所の保育担当窓口に事前に確認してください。
育休中の在園継続で幼保無償化が適用される条件:
1. 保育認定(2号・3号認定)が継続して有効であること
2. 市区町村が育休中の継続在園を認めていること
3. 3〜5歳児の場合は認定継続が不要なケースもある(自治体による)
育休中の幼保無償化手続きの実務
育休開始前後にやるべき手続き一覧
育休に入る前後で、幼保無償化に関して確認・手続きが必要な項目をまとめます。
育休開始1〜2か月前:
– 市区町村の保育担当窓口に「育休中の在園継続が可能か」を確認
– 継続可能な場合、必要な届出書類(育休証明書・復帰予定証明書など)を確認
育休開始後(速やかに):
– 職場から「育児休業取得証明書」を入手
– 市区町村に保育認定の継続申請(または状況変更の届出)を提出
– 提出書類:育児休業取得証明書、復職予定日を明記した書類
育休終了(職場復帰)後1か月以内:
– 市区町村に「育児休業終了・就労再開の届出」を提出
– 就労証明書(会社発行)を提出し、保育認定を更新
必要書類と提出先まとめ
| 手続き | 提出先 | 主な必要書類 |
|---|---|---|
| 育休中の在園継続申請 | 市区町村保育担当 | 育児休業取得証明書、復職予定日証明書 |
| 保育認定の更新 | 市区町村保育担当 | 就労証明書(復帰後)、育休終了証明書 |
| 幼保無償化給付申請 | 施設経由または市区町村 | 施設利用証明書(認可外の場合) |
| 育休給付金の受給申請 | 事業主経由→ハローワーク | 育児休業給付受給資格確認票・申請書 |
復帰後に変わる可能性がある給付内容
職場復帰後は、幼保無償化の認定内容が変わる場合があります。
- 就労証明書の再提出により、保育認定(2号・3号認定)が更新される
- 収入が回復することで、翌年度以降の住民税が変わり、0〜2歳児の無償化対象要件が変わる可能性がある
- 延長保育・一時保育など、育休中とは異なる利用形態に切り替えが必要な場合がある
育休給付金の具体的な申請手続き
申請フローと提出タイミング
育児休業給付金の申請は、事業主(会社)経由でハローワークに提出するのが基本です。本人がハローワークに直接申請する方法もありますが、多くの企業では総務・人事部門が代行します。
【出産予定日の1か月前〜】
育児休業申出書を会社に提出
【育休開始後】
会社が「育児休業給付受給資格確認票」を作成・提出
【最初の支給申請(育休開始〜2か月後)】
育児休業給付金支給申請書(最初の2か月分をまとめて)
【以降2か月ごと】
育児休業給付金支給申請書を継続提出
【延長の場合(1歳到達時)】
保育所等の不承諾通知書を添付して延長申請
必要書類一覧
| 提出タイミング | 書類名 | 取得先 |
|---|---|---|
| 受給資格確認時 | 育児休業給付受給資格確認票 | 会社(ハローワーク書式) |
| 受給資格確認時 | 雇用保険被保険者証(写し) | 本人保管または会社 |
| 受給資格確認時 | 母子健康手帳(写し)または出生証明書 | 本人 |
| 各支給申請時 | 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク(書式) |
| 各支給申請時 | 賃金台帳・出勤簿(写し) | 会社 |
| 延長申請時 | 保育所等入所不承諾通知書 | 市区町村 |
| 延長申請時 | 育児休業期間変更申出書 | 会社(ハローワーク書式) |
支給のタイミングと振込
ハローワークが申請書を受理してから通常2〜3週間程度で指定口座に振り込まれます。初回申請は最初の2か月分まとめて支給されるため、育休開始から最初の振込まで2〜3か月かかることを念頭に置いてください。
育休中の生活費計画を立てる際は、この「給付金が後払いになること」を考慮し、育休開始前に貯蓄等の手当てをしておくことが重要です。
育休と幼保無償化の相互影響:シミュレーション事例
事例:第2子育休中に第1子(4歳)が認可保育園を利用
家族構成: 母親(育休中)、父親(就労中)、第1子(4歳・認可保育園)、第2子(0歳・育休取得理由)
育休給付金:
– 母親の育休前月収:25万円
– 育休開始〜180日:25万円 × 67% = 167,500円/月(非課税)
– 181日目〜1歳:25万円 × 50% = 125,000円/月(非課税)
幼保無償化(第1子・4歳):
– 3〜5歳は所得制限なしで認可保育所の保育料が全額無償
– 母親が育休中でも第1子の保育認定が継続していれば無償化は適用継続
– 育休中に市区町村への継続在園届出を忘れると、保育認定が切れる可能性があるため要注意
世帯の月次収入(育休前期):
– 父親の手取り:28万円(仮定)
– 育休給付金:167,500円
– 第1子保育料:0円(無償化)
– 合計手取り相当:約447,500円
このように、2つの制度を適切に活用することで、育休中でも一定の経済水準を維持しやすくなります。
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制度を賢く活用するためのポイントまとめ
- 同時受給はできる: 育休給付金と幼保無償化は法的に独立した制度であり、同時受給を禁止するルールは存在しない
- 保育認定の継続が鍵: 育休中に上の子の保育認定(2号・3号認定)が切れると、保育料の無償化が途切れる可能性がある
- 事前確認を必ずする: 育休中の在園継続可否・届出書類は自治体によって異なるため、育休開始前に窓口で確認する
- 所得判定のタイミングを理解する: 幼保無償化の所得判定は前年の住民税ベースであり、育休中の収入減少が翌年度以降に有利に働くことがある
- 給付金は後払い: 育休給付金は2か月分まとめて後払いのため、初回振込まで2〜3か月かかることを資金計画に織り込む
- 延長には不承諾通知が必要: 1歳・1歳6か月時点で延長するには、保育所の入所申込と不承諾通知書の取得が必須
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休中でも上の子の保育園は通わせ続けられますか?
多くの自治体では、育休期間中も「育休明けに確実に復帰する」という条件付きで継続在園を認めています。ただし育休の取得証明書や復職予定証明書などの書類を市区町村に提出する必要があります。自治体によってルールが異なるため、育休開始前に必ず確認してください。
Q2. 育休給付金は確定申告が必要ですか?
育児休業給付金は非課税所得のため、確定申告の対象外です。年末調整にも影響しません。ただし、育休中に何らかの副収入や他の収入があった場合は、別途申告が必要なケースもあります。
Q3. 幼保無償化の上限額を超えた部分はどうなりますか?
認可外保育施設の場合、月額3.7万円(3〜5歳)または月額4.2万円(0〜2歳・住民税非課税世帯)が無償化の上限です。これを超えた部分は自己負担となります。認可保育所・認定こども園は上限なしで全額無償です。
Q4. パパが育休を取った場合も同じ計算方法ですか?
はい、育児休業給付金の計算方法(休業前賃金×67%/50%)は、母親・父親を問わず同じ計算式が適用されます。父母どちらが取得しても、雇用保険の被保険者であれば同条件で受給できます。
Q5. 育休中に引越しや転居があった場合、手続きは変わりますか?
転居した場合、育休給付金はハローワークへの住所変更届(事業主経由)が必要です。幼保無償化については、転居後の市区町村で改めて保育認定の申請が必要になります。認可保育所を利用している場合は、転居先の保育所の空き状況も確認してください。
Q6. 育休給付金が振り込まれるまでの期間の生活費はどうすればいいですか?
育休開始から最初の振込まで2〜3か月かかるのが一般的です。会社によっては産休・育休前に給与の前払いや特別手当を支給する制度がある場合もあります。また、出産育児一時金(42万円)や出産手当金(産前産後休業中に健康保険から支給)を育休前に受け取っている場合は、これらを生活費の一部に充てる計画を立てることをおすすめします。
育休と幼保無償化の制度は複雑に見えますが、「2つの制度は独立しており同時受給できる」「保育認定の継続手続きを忘れない」という2点を押さえれば、多くの疑問は解消されます。制度の詳細や自治体独自のルールについては、ハローワーク・市区町村の窓口、または社会保険労務士に相談することをおすすめします。

