育休を取りたいパパに朗報です。2022年の育児・介護休業法改正で誕生した「出生時育休」と、従来からある「通常育休」を組み合わせると、最大1年3ヶ月の育休取得が可能になります。
この記事では、二つの制度の違いや申請手続き、給付金の計算方法まで、図表を交えてわかりやすく解説します。2026年時点の最新情報をもとに、パパ育休を最大限活用するための完全ガイドとしてご活用ください。
出生時育休と通常育休の「併用制度」とは
| 制度名 | 最大取得期間 | 分割取得 | 給付金(育児休業給付金) | 主な対象者 |
|---|---|---|---|---|
| 出生時育休 | 4週間(2回分割可) | 可能(2回に分割) | 給付金あり(賃金の80%) | 出生直後の男性労働者 |
| 通常育休 | 1年 | 分割可能 | 給付金あり(賃金の50~67%) | 男女問わず |
| 併用した場合 | 最大1年3ヶ月 | 出生時育休2回+通常育休1回 | 両方の給付金対象 | パパ・ママ |
「パパ育休」と一口に言っても、現在の制度は大きく2種類に分かれています。出生時育休(法律上の正式名称:出生時育児休業)と、以前から存在する通常育休(育児休業)です。この2つは別々の制度であり、それぞれの要件を満たせば両方を組み合わせて連続して取得できます。
まず全体像を図で整理します。
子の出生
│
├─[0日〜56日(8週間)]── 出生時育休の取得可能期間
│ ↑合計4週間(28日)、2回まで分割可能
│
├─[生後57日〜1歳到達日前日]── 通常育休の取得可能期間
│ ↑最大1年(延長含め最大2年〜3年)
│
└─[出生時育休(最大4週)+通常育休(最大1年)=最大約1年3ヶ月連続取得も可能]
この制度の背景には、男性育休取得率の向上という政策目標があります。政府は2025年までに男性育休取得率50%、2030年までに85%を目指しており、出生時育休は「子が生まれた直後に取りやすい、短期集中型の育休」として2022年10月に施行されました。通常育休との併用を前提に設計されているため、うまく組み合わせることでパパが長期にわたって育児に関わることができます。
出生時育休の基本要件(2026年版改正ポイント)
出生時育休の法的根拠は育児・介護休業法第9条の2です。以下の5つの要件をすべて満たす労働者が対象となります。
| 要件 | 詳細 |
|---|---|
| 雇用形態 | 正社員・契約社員・派遣社員・嘱託(有期雇用含む) |
| 勤続期間 | 申出時点で勤続1年以上(※中小企業は経過措置あり) |
| 週所定労働時間 | 週20時間以上 |
| 契約満了日 | 出生予定日以降まで雇用契約が続いている |
| 雇用継続見込み | 出生時育休終了後も継続して雇用される見込みがある |
中小企業(従業員数300人以下)の経過措置:令和8年(2026年)3月31日までは、勤続6ヶ月以上であれば対象となる特例があります。ただし2026年4月以降は原則通り1年以上が必要になる見通しです。現在2026年3月以前に取得を検討している中小企業勤務の方は、この経過措置が適用されるか人事部門に確認しましょう。
なお、2025年4月施行の改正育児・介護休業法では、従業員1,000人超の企業に対して育休取得率の公表義務化が拡大されています。企業側の意識も高まっているため、取得申請を躊躇せずに行うことが大切です。
通常育休との違いと「併用」のメリット
出生時育休と通常育休は、申出期限・取得可能期間・分割の方法など、様々な点で異なります。
| 比較項目 | 出生時育休 | 通常育休 |
|---|---|---|
| 法的根拠 | 育児・介護休業法第9条の2 | 育児・介護休業法第5条・第6条 |
| 取得可能期間 | 出生後8週間以内に最大4週間 | 子が1歳になるまで(最大2〜3年) |
| 分割取得 | 2回まで可能 | 2回まで可能(2022年改正) |
| 申出期限 | 原則取得の2週間前まで | 原則取得の1ヶ月前まで |
| 就業の可否 | 労使協定があれば一部就業可 | 原則不可(特定日を除く) |
| 給付金 | 育児休業給付金(同率) | 育児休業給付金 |
併用の最大のメリットは、子が生まれた直後の最も手のかかる時期(出生時育休)から、その後の成長期(通常育休)まで、仕事復帰直前まで継続的に育児に専念できることです。出生時育休だけでは最大4週間しか取れませんが、通常育休と組み合わせることで1年以上の取得が実現します。
出生時育休と通常育休を併用した最大取得パターン
ここでは実際の取得スケジュールを具体的なパターンで解説します。給付金の概算計算も合わせて確認しましょう。
【給付金計算の前提知識】
育児休業給付金は雇用保険から支給されます。支給額は休業開始前の賃金日額をもとに計算され、休業開始から6ヶ月目まで:賃金の67%相当、7ヶ月目以降:賃金の50%相当が支給されます(社会保険料が免除されるため、手取りベースでは概ね80%前後になるケースが多い)。
パターン①:出生直後から出生時育休を2回に分割して取得
このパターンは、産後直後の妻のサポートと新生児ケアを最優先にしたい場合に最適です。
【スケジュール例:給与月収40万円のパパの場合】
出生
↓
[生後0〜2週間] 出生時育休①(2週間)
[生後2〜4週間] 仕事復帰(通常勤務)
[生後4〜8週間] 出生時育休②(2週間)
[生後2ヶ月〜11ヶ月] 通常勤務
[子の生後11ヶ月〜1歳到達日前日] 通常育休(1ヶ月)
合計育休期間:出生時育休4週間 + 通常育休1ヶ月
このように出生時育休を「飛び石」で使うことができるのが大きな特徴です。1度仕事に戻ってから再び育休を取得することも認められています。通常育休は子が1歳になる前日まで取得可能なので、妻の育休が終わるタイミングや保育園の入園時期に合わせて取得開始日を調整する使い方も有効です。
給付金の概算(月収40万円の場合):
– 賃金日額の計算:40万円 ÷ 30日 = 約13,333円
– 出生時育休(4週間=28日):13,333円 × 67% × 28日 = 約250,000円
– 通常育休(1ヶ月=30日):13,333円 × 67% × 30日 = 約268,000円
パターン②:出生時育休を「前半4週間まとめ取り」+通常育休1年で最大化
最も取得期間を長くしたい場合のパターンです。出生直後から4週間連続で出生時育休を取得し、そのまま続けて通常育休に移行します。
【スケジュール例:給与月収40万円のパパの場合】
出生
↓
[生後0〜4週間(28日)] 出生時育休(4週間・まとめ取り)
[生後4週間〜1歳到達日前日(約11ヶ月)] 通常育休
※子が1歳になる前日まで
合計育休期間:4週間 + 約11ヶ月 = 約1年3ヶ月
(保育園入園待機で延長すると最大2年3ヶ月も可能)
このパターンでは出生時育休と通常育休を「シームレスに」つなぐことができます。出生時育休終了の翌日から通常育休を開始すれば、途中に職場復帰する期間を設けることなく、子が1歳になるまで連続して育休を取得できます。
給付金の概算(月収40万円の場合):
| 期間 | 給付率 | 概算支給額 |
|---|---|---|
| 出生時育休(4週間) | 67% | 約250,000円 |
| 通常育休 前半6ヶ月(育休全体通算) | 67% | 約804,000円 |
| 通常育休 後半5ヶ月 | 50% | 約500,000円 |
| 合計(約1年3ヶ月分) | — | 約1,554,000円 |
注意:育児休業給付金の「6ヶ月」の起算点は出生時育休の開始日です。出生時育休と通常育休を合わせた休業期間が通算6ヶ月を超えると、7ヶ月目以降は50%に下がります。
パターン③:妻と交互に取得する「リレー育休」
妻の育休終了に合わせてパパが通常育休を開始する方法も広く使われています。
【スケジュール例】
出生
↓
[出生〜生後8週間] パパ:出生時育休(最大4週間) + 妻:産後休業
[生後8週間〜1歳] 妻:通常育休 / パパ:仕事復帰
[子が1歳〜2歳] 妻:職場復帰 / パパ:通常育休(最大1年)
このパターンでは家族全体として子が2歳になるまで、どちらかが育休を取得している状態を維持できます。保育園の入園時期との兼ね合いで、パパの育休延長(最大2歳まで)も検討できます。
申請手続きと必要書類の完全リスト
育休を取得するには、正確な書類を期限内に提出することが必要です。手続きを誤ると給付金が受け取れない場合もあるため、ここで確実に確認してください。
出生時育休の申請フロー
【STEP 1】妊娠・出生予定日確定
↓
【STEP 2】出生予定日の2週間前(緊急時:1週間前)までに職場へ申出
→ 「出生時育児休業申出書」を人事担当者に提出
↓
【STEP 3】出生後、取得期間・日程を確定・連絡
↓
【STEP 4】育休開始(出生後8週間以内)
↓
【STEP 5】育休開始後、ハローワークへ給付金申請
→ 「育児休業給付金支給申請書」を事業主経由で提出
必要書類一覧
出生時育休の申請時に必要な書類
| 書類名 | 発行元・入手先 | 提出先 | 提出期限 |
|---|---|---|---|
| 出生時育児休業申出書 | 勤務先の書式または自作 | 人事・労務担当者 | 取得予定日の2週間前まで |
| 母子健康手帳(写し) | 産院・市区町村 | 会社 | 申出時に添付 |
| 出産予定日証明書(医師発行) | かかりつけ産院 | 会社 | 必要に応じて |
育児休業給付金の申請時に必要な書類
| 書類名 | 発行元・入手先 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク・会社 | 事業主経由でハローワーク | 育休開始から約2ヶ月後 |
| 育児休業給付受給資格確認票 | ハローワーク | 事業主経由でハローワーク | 初回申請時 |
| 母子健康手帳(写し) | 産院・市区町村 | 事業主経由でハローワーク | 初回申請時 |
| 賃金台帳・出勤簿(写し) | 会社 | 事業主が保管・提出 | 初回申請時 |
| 雇用保険被保険者証 | ハローワーク・会社 | 確認用 | — |
実務ポイント:給付金申請は通常「事業主経由」で行います。労働者本人がハローワークに直接申請するのではなく、会社の担当者に「育児休業給付金の申請をお願いします」と依頼する流れが一般的です。給付金の振込先口座は本人名義の口座を会社に伝えておきましょう。
通常育休の申請時に必要な書類
| 書類名 | 発行元・入手先 | 提出先 | 期限 |
|---|---|---|---|
| 育児休業申出書 | 勤務先の書式 | 人事・労務担当者 | 取得予定日の1ヶ月前まで |
| 出生届受理証明書(または戸籍謄本) | 市区町村役場 | 会社 | 申出時または出生後速やかに |
給付金を最大化するための計算方法と注意点
育児休業給付金の計算式
【基本計算式】
賃金日額 = 休業前6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180
支給額(1日あたり)
├ 育休開始〜通算180日目まで:賃金日額 × 67%
└ 181日目以降:賃金日額 × 50%
月額の概算 = 賃金日額 × 67%(または50%) × 30日
月収別・給付金の月額早見表
| 休業前の月収(額面) | 開始〜6ヶ月(67%) | 7ヶ月目以降(50%) |
|---|---|---|
| 20万円 | 約134,000円 | 約100,000円 |
| 30万円 | 約201,000円 | 約150,000円 |
| 40万円 | 約268,000円 | 約200,000円 |
| 50万円 | 約335,000円 | 約250,000円 |
| 60万円 | 約365,055円(上限) | 約272,430円(上限) |
2026年度の給付金上限額(目安):賃金日額の上限は毎年8月に改定されます。最新の上限額はハローワークのウェブサイトまたは会社の担当者にご確認ください。
社会保険料免除による実質的な手取り
育休中は健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されます(申請不要・自動適用)。給付金67%に加えてこの免除効果を加算すると、実質的な手取りは休業前の約80〜85%相当になるケースが多く、育休中の家計への影響は思ったより小さいことがほとんどです。
また、出生時育休期間中の社会保険料免除は月単位(月末時点)で判定されます。月末をまたぐ形で育休を取得すると免除期間が長くなるため、取得開始日・終了日の設定はカレンダーを確認しながら行いましょう。
企業の担当者が知っておくべき対応義務
2022年改正および2025年改正により、企業側にも様々な義務が課されています。
| 義務の内容 | 対象企業 | 施行時期 |
|---|---|---|
| 育休取得意向確認の個別面談義務 | 全企業 | 2022年4月〜 |
| 育休取得率の公表義務 | 従業員1,000人超 | 2023年4月〜 |
| 育休取得率の公表義務(拡大) | 従業員300人超 | 2025年4月〜 |
| 育休取得推進計画の策定義務 | 従業員100人超(予定) | 検討中 |
人事担当者は、出産予定を申し出た男性労働者に対して、個別に育休取得の意向確認を行う義務があります。この確認を怠ると行政指導の対象になりますので、必ず書面や面談で確認し、記録を残しましょう。
また、就業規則に出生時育休の規定が盛り込まれていない場合、就業規則の改訂が必要です。2022年10月以降に未改訂の企業は速やかに対応してください。
よくある質問(FAQ)
Q1. 出生時育休と通常育休は同じ子について両方取れますか?
はい、取得できます。同じ子について出生時育休(最大4週間)と通常育休(最大1年)の両方を取得することが法律上認められており、これが「併用」の核心です。ただし、それぞれの申出期限と要件を別々に満たす必要があります。
Q2. 有期雇用(契約社員)でもパパ育休は取れますか?
取得できます。育児・介護休業法は有期雇用労働者にも適用されます。ただし「申出時点で勤続1年以上(中小企業の経過措置期間中は6ヶ月以上)」かつ「育休終了後も引き続き雇用される見込みがあること」が条件です。契約期間の更新状況や上司との関係を確認した上で、早めに人事担当者へ相談しましょう。
Q3. 出生時育休中に少しだけ仕事をすることはできますか?
出生時育休中は、労使協定が締結されている場合に限り、本人が同意した日・時間に限って就業することが認められています(通常育休中の就業は原則不可)。ただし、就業した時間が一定水準を超えると育児休業給付金が減額または不支給になる場合があるため、就業する場合は事前に会社とハローワークに確認してください。
Q4. 育休給付金はいつ振り込まれますか?
初回の振込は、育休開始から約2〜3ヶ月後になるのが一般的です。会社がハローワークに申請してから振込まで2〜4週間程度かかります。2回目以降は2ヶ月に1回の申請・振込サイクルが標準的です。家計に余裕を持てるよう、育休取得前に3ヶ月分程度の生活費を蓄えておくことをおすすめします。
Q5. 保育園に入れなかった場合、育休を延長できますか?
はい、可能です。子が1歳になった時点で保育園に入れなかった(入園保留通知がある)場合、通常育休を子が1歳6ヶ月まで延長できます。さらに1歳6ヶ月時点でも入園できなかった場合は、2歳まで再延長できます。延長する際は「延長申出書」と「入園保留通知書」の提出が必要です。
Q6. 育休取得を理由に不利益な扱いをされた場合はどうすればよいですか?
育休取得を理由とした解雇・降格・減給・不利益な配置転換は育児・介護休業法第10条で禁止されており、違反した企業は行政指導・公表の対象になります。不当な扱いを受けた場合は、都道府県労働局の「雇用環境・均等部(室)」または「総合労働相談コーナー」に相談してください。相談は無料で、匿名での相談も可能です。
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まとめ:パパ育休は制度を「組み合わせる」ことで最大化できる
出生時育休と通常育休の併用制度のポイントをまとめます。
- 出生時育休:子の出生後8週間以内に最大4週間、2回まで分割可能
- 通常育休:子が1歳になるまで最大1年(延長で最大2〜3歳まで)
- 併用すると最大1年3ヶ月の連続取得が可能
- 給付金は休業前賃金の67%→50%で支給。社会保険料免除で実質手取り約80%
- 申出期限は出生時育休:2週間前、通常育休:1ヶ月前
- 中小企業の勤続6ヶ月経過措置は2026年3月末まで
制度を知っているかどうかで、取得できる育休期間は大きく変わります。子が生まれる前に早めに会社の人事担当者へ相談し、申出書類の準備を始めましょう。ためらう必要はありません。法律があなたの育休取得を守っています。
【参考法令・参考資料】
– 育児・介護休業法(育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律)
– 厚生労働省「育児・介護休業法 令和3年改正について」
– ハローワーク「育児休業給付の内容と支給申請手続き」
– 厚生労働省「男性の育児休業取得促進事業(イクメンプロジェクト)」


