育休と時短勤務の併用で給付金と給与は同時受給できる?計算ルールと申請手続き完全ガイド

育休と時短勤務の併用で給付金と給与は同時受給できる?計算ルールと申請手続き完全ガイド 育児休業制度

育休中に少し働きたいけれど、給付金はどうなるのか——そう悩む方は少なくありません。「時短勤務に切り替えれば育休給付金ももらい続けられる」という誤解も根強く残っており、実際には制度の仕組みを正確に理解しておかないと、思わぬ給付金の不支給や返還請求につながる恐れがあります。

本記事では、育休給付金と時短勤務の給与を同時受給できる条件・計算ルール・申請手続きを、労働者と企業の人事担当者の両方の視点から詳しく解説します。2024年の制度改正で新設された「育児時短就業給付金」の内容も含め、最新情報を網羅的にお届けします。


育休と時短勤務の併用は実際のところどうなっている?

結論からお伝えします。

育休給付金と時短勤務の給与を”完全に同時”に受け取ることは、原則できません。 ただし、「育休期間中の部分就労」という形で、限定的に給付金と就労賃金を同時に受け取ることは可能です。

ここで混乱が生じやすい理由は、「育休期間」と「時短勤務期間」が法律上まったく別の制度だからです。

状態 就労 給付金 給与
育休中(就労なし) ✅ 全額支給
育休中(部分就労あり・月80時間以下) ✅(一部) ✅ 減額調整あり ✅(部分)
育休中(就労・月80時間超) ✅(多め) ❌ 不支給
育休終了後の時短勤務 ❌(育休給付金は終了)
育休終了後の時短勤務(育児時短就業給付金) ✅ 新給付金あり

つまり「給付金をもらいながら時短で働く」という状態は、育休中の部分就労(月80時間以下) か、2025年4月から新設の育児時短就業給付金 という形でのみ実現できます。それぞれの仕組みを順番に整理していきましょう。


育児休業と時短勤務は別制度——法律上の位置づけを理解する

育児・介護休業法における「育児休業」の定義と期間

育児休業は、育児・介護休業法第9条に基づく権利です。「休業」という性質上、育休中は労働義務が免除され、原則として給与は発生しません。その代わりに雇用保険から育児休業給付金が支払われます。

育休を取得できる期間は子どもの年齢によって異なり、以下のとおりです。

育休の種類 対象期間
原則育休 子が1歳になるまで
延長(保育所未入所等) 最大1歳6ヶ月まで
再延長 最大2歳まで
パパ・ママ育休プラス 両親ともに取得時、最大1歳2ヶ月まで(各自の取得上限)

育休期間中は「休業中」という法的ステータスのため、給与の支払い義務は事業主にありません。一方で社会保険料(健康保険・厚生年金)は育休期間中は免除されます(申請が必要)。

2022年の法改正では、産後パパ育休(出生時育児休業)が新設され、子の出生後8週間以内に4週間まで、2回に分けて取得できるようになりました。また、育休の分割取得(2回まで)も可能となり、より柔軟な取得が実現しています。

時短勤務制度の法的根拠と適用対象者

時短勤務(所定労働時間の短縮措置)は、育児・介護休業法第23条に基づく制度です。育休が「休む権利」であるのに対して、時短勤務は「短い時間で働く権利」であり、法的性質がまったく異なります。

時短勤務の主な要件は以下のとおりです。

  • 対象期間:子が3歳に達するまで
  • 短縮後の所定労働時間:1日6時間以下(法定の標準的な短縮幅)
  • 義務化の範囲:常時雇用する労働者が10人以下の事業主は努力義務、それ以外は義務
  • 適用除外となる労働者:日雇い労働者、所定労働時間が6時間以下の労働者、労使協定により除外された一定の労働者

時短勤務期間中は、短縮された時間に応じた給与が支払われます。社会保険料は通常どおり発生しますが、標準報酬月額が下がることで保険料負担も軽減されるのが一般的です。


育休給付金の基本ルールと部分就労の関係

育児休業給付金の支給要件

育児休業給付金は、雇用保険法第61条の4に基づいて支給されます。受給するには以下の要件をすべて満たす必要があります。

  1. 雇用保険の被保険者であること
  2. 申し出日において同一事業主に1年以上継続雇用されていること(有期雇用の場合、子が1歳6ヶ月までの間に労働契約が終了しないことが明らかな場合に限る)
  3. 育休期間中の就労が月80時間以下であること
  4. 育休前2年間のうち、賃金支払基礎日数が11日以上の月が12ヶ月以上あること

育児休業給付金の支給額計算

給付金の金額は、育休前の賃金(休業開始時賃金日額)をもとに計算します。

休業開始時賃金日額 = 育休開始前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180

支給額の基本計算式

育休期間 給付率 計算式
育休開始から180日目まで 67% 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
181日目以降 50% 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

支給額の上限(2024年度)

期間 上限額(月額)
開始から180日 310,143円
181日以降 231,450円

ポイント:賞与は給付金の計算対象外です。あくまで月々の賃金(基本給・各種手当など)が基礎となります。

部分就労による給付金の減額ルール(月80時間ルール)

育休中に就労(部分就労)をした場合、就労した賃金と給付金の合計額が、休業前賃金(賃金月額)の80%を超えないよう調整が行われます。

減額計算の考え方

就労賃金 + 給付金 ≦ 休業開始前賃金月額 × 80%

具体的には以下の4つのパターンに分かれます。

パターン①:就労賃金が休業前賃金の13%以下
→ 給付金は全額支給(減額なし)

パターン②:就労賃金が休業前賃金の13%超〜80%以下
→ 「休業前賃金の80%から就労賃金を差し引いた額」が給付金として支給

パターン③:就労賃金が休業前賃金の80%超
→ 給付金は不支給(その月は給付金ゼロ)

パターン④:就労時間が月80時間超
→ 就労賃金の金額に関わらず給付金は不支給

具体的な計算例

前提条件
– 休業前の月収:30万円
– 育休開始から100日目(給付率67%)
– 月の所定日数:30日
– 休業開始時賃金日額:10,000円

給付金の基準額:10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円

就労賃金が5万円(月30時間就労)の場合

  • 就労賃金5万円は休業前賃金30万円の約16.7%(13%超・80%以下)
  • 支給給付金 = 30万円 × 80% - 5万円 = 19万円

合計受取額:5万円(給与)+19万円(給付金)= 24万円

就労賃金が3万円(月20時間就労)の場合

  • 就労賃金3万円は休業前賃金30万円の10%(13%以下)
  • 支給給付金 = 全額 201,000円

合計受取額:3万円(給与)+201,000円(給付金)= 231,000円


2025年4月新設:育児時短就業給付金のしくみ

2025年4月1日から、育休終了後に時短勤務に移行した労働者向けの新しい給付金「育児時短就業給付金」が創設されました(雇用保険法改正)。これにより、育休終了後の時短勤務期間においても、一定の給付金を受け取ることができるようになりました。

育児時短就業給付金の概要

項目 内容
対象者 時短勤務中の雇用保険被保険者(子2歳未満)
給付率 時短勤務中の賃金の10%(当面の間)
対象期間 子が2歳に達するまで
支給主体 ハローワーク(公共職業安定所)
申請者 事業主経由で申請

育児休業給付金との違い

比較項目 育児休業給付金 育児時短就業給付金
就労状況 休業中(部分就労あり) 時短で就労中
給付率 67%または50% 10%
対象年齢の上限 子1歳〜2歳まで 子2歳まで
給与との関係 減額調整あり 給与に加えて支給

給付率10%は育児休業給付金と比べると低く見えますが、給与をフルに受け取りながらさらに上乗せされるという点が大きな違いです。育休から時短勤務に移行するタイミングで「どちらが有利か」を検討することが重要になります。


育休給付金と時短勤務の申請手続き

育児休業給付金の申請手続き

育児休業給付金の申請は、事業主を通じてハローワークへ行います(雇用保険被保険者本人が直接申請することも可能ですが、通常は事業主経由)。

申請の流れ

  1. 育休開始前:育休の申し出を事業主に書面で行う(遅くとも1ヶ月前まで)
  2. 育休開始後2週間以内:事業主が「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」をハローワークに提出
  3. 以降2ヶ月ごと:事業主が継続して支給申請書を提出(育休終了まで)
  4. 部分就労があった月:就労日数・就労時間・就労賃金を正確に申告

必要書類(初回申請時)

書類名 入手先・備考
育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 ハローワーク書式
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 事業主が作成
母子健康手帳の写し(出生を証明するページ) 自分で用意
育児休業申出書の写し 社内書類
賃金台帳・出勤簿の写し 事業主が用意

申請期限:各支給対象期間(2ヶ月)の終了翌日から起算して4ヶ月以内に申請(期限超過は不支給になる場合があります)

育児時短就業給付金の申請手続き

申請の流れ

  1. 育休終了後、時短勤務を開始
  2. 事業主が「育児時短就業給付金支給申請書」を作成
  3. 2ヶ月ごとにハローワークへ申請(育児休業給付金と同様のサイクル)

必要書類

書類名 内容
育児時短就業給付金支給申請書 ハローワーク書式(2025年4月以降)
賃金台帳・出勤簿の写し 時短勤務中の就労実績を確認
母子健康手帳の写し 子の年齢確認用
時短勤務に関する労働条件の変更通知書 所定労働時間が確認できる書類

育休から時短勤務へ移行する際の社内手続き

企業の人事担当者が対応すべき手続きも整理しておきましょう。

Step 1:移行申し出の受理
従業員から時短勤務の申し出を書面で受け取ります(育休終了日の1ヶ月前が目安)。

Step 2:労働条件の変更通知
時短勤務開始に伴い、所定労働時間・給与・手当の変更内容を書面で通知します(労働条件通知書または雇用契約書の更新)。

Step 3:社会保険の随時改定の確認
時短勤務による給与の大幅な変動がある場合、社会保険の標準報酬月額の随時改定(月額変更届)が必要です。育休中の社会保険料免除は育休終了月の翌月から終了します。

Step 4:ハローワークへの給付金申請切り替え
育児休業給付金の最終支給申請を行った後、育児時短就業給付金の初回申請に切り替えます。


給与計算担当者が押さえるべきポイント

時短勤務中の給与計算方法

時短勤務中の給与は、法律で計算方法が定められているわけではなく、就業規則や賃金規程に基づいて算定します。一般的な計算方式は以下の2パターンです。

パターンA:時間比例方式

時短勤務中の月給 = フルタイム時の月給 × (時短後の所定労働時間 ÷ フルタイムの所定労働時間)

例:月給30万円・フルタイム8時間→時短6時間の場合
30万円 × 6/8 = 22万5,000円

パターンB:日給・時給換算方式

実際に就労した時間数に時間単価を乗じる方式。変動の大きい勤務形態に対応しやすいです。

社会保険料と育児時短就業給付金の関係

育児時短就業給付金は、社会保険の標準報酬月額の計算対象には含まれません(給与ではなく保険給付のため)。ただし、時短勤務中の給与については通常どおり社会保険料が発生します。

標準報酬月額が下がることで、将来の厚生年金給付額に影響が出る可能性があります。この点は従業員に対してあらかじめ説明しておくことが人事担当者の重要な役割です。

なお、育休期間中(育児休業給付金受給中)の社会保険料は引き続き免除されます。育休終了月の翌月分から社会保険料の支払いが再開します。


育休と時短の切り替えタイミングの判断基準

「育休をいつ終了して時短勤務に移行すべきか」は、給付金の総受給額に直結する重要な判断です。以下のポイントで比較・検討してください。

比較の軸

①給付金の総額
育休給付金(最大67%)は、育児時短就業給付金(10%)より給付率が高いため、可能な限り育休を延長したほうが総給付額は増える傾向があります。ただし、育休中は社会保険料が免除される一方、長期の育休はキャリアへの影響もある点を踏まえて判断が必要です。

②保育園の入園時期
多くの場合、0歳や1歳での入園が可能な4月に合わせて育休を終了するケースが多く、その後に時短勤務へ移行するパターンが現実的です。

③職場復帰の準備状況
時短勤務への移行は事業主との調整が必要なため、早めに復帰の意向・日程・勤務形態を相談しておくことが円滑な移行のカギとなります。


よくある質問(FAQ)

Q1. 育休中に月80時間以内で少し働いた場合、給付金は自動的に減額されますか?

いいえ、自動的に減額されるわけではなく、就労賃金の額によって決まります。就労賃金が休業前賃金の13%以下であれば給付金は全額支給されます。13%を超えた分から減額調整が始まります。重要なのは「就労時間が月80時間以下」という条件を守ることで、80時間を超えるとその月は給付金が全額不支給となります。

Q2. 育休中の「部分就労」は事業主に申告が必要ですか?

はい、必須です。部分就労した日数・時間・支払われた賃金をハローワークへの支給申請書に正確に記載する必要があります。虚偽の申告は不正受給となり、給付金の返還命令(最大3倍返還)の対象となります。

Q3. 育休給付金の受給中に時短勤務制度を利用することはできますか?

法律上、育休期間と時短勤務期間は別の状態です。育休中は「休業」の状態のため、正式に時短勤務制度を利用するには育休を終了させる必要があります。育休中に一部就労することは可能ですが、それは「時短勤務制度の適用」ではなく「部分就労」という扱いになります。

Q4. 育児時短就業給付金は育休給付金と同時に受け取れますか?

受け取れません。育児時短就業給付金は「育休終了後に時短勤務をしている期間」が対象です。育休給付金の受給期間とは重複しません。育休を終了して時短勤務に移行してから申請する形になります。

Q5. 有期雇用(契約社員)でも育休給付金は受け取れますか?

受け取れます。ただし、申し出日において「子が1歳6ヶ月に達する日までの間に労働契約が終了することが明らかでない」という条件が必要です。雇用契約の更新実績や、契約終了日の確認が必要になります。

Q6. 育休中に副業・兼業で別の会社で働いた場合も80時間ルールに含まれますか?

原則として、育休給付金の80時間ルールは「育休を取得している事業主での就労時間」が対象です。ただし、副業・兼業を行っている場合は、事業主への申告義務がある場合があります。就業規則や副業に関する社内ルールを確認したうえで、ハローワークにも相談することをおすすめします。

Q7. 育休中の部分就労で得た賃金は、所得税の対象になりますか?

はい、就労して得た賃金は給与所得として課税対象です。一方、育休給付金は非課税(所得税・住民税ともに課税されない)です。年末調整や確定申告の際に確認してください。


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まとめ

育休と時短勤務の制度をめぐる給付金ルールは、複数の法律が絡み合う複雑な仕組みになっています。重要なポイントを最後に整理しておきます。

確認事項 内容
育休中の部分就労 月80時間以下であれば給付金との同時受給が可能(ただし減額あり)
時短勤務への移行 育休終了後に時短勤務制度が正式適用される
育児時短就業給付金 2025年4月〜。時短勤務中の賃金の10%を追加給付
給付金の減額 就労賃金が休業前賃金の13%超〜80%以下で段階的に減額
申請手続き 原則、事業主経由でハローワークへ2ヶ月ごとに申請

育休の取得計画や時短勤務への移行タイミングは、給付金の総受給額・キャリア・育児の状況などを総合的に踏まえて検討することが大切です。不明な点があれば、最寄りのハローワークや社会保険労務士に相談することを強くおすすめします。


参考法令・公的情報源
– 育児・介護休業法(厚生労働省)
– 雇用保険法 第61条の4、第61条の4の2
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続について」
– 厚生労働省「2025年度雇用保険法改正(育児時短就業給付金)」

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