親の介護費用で貯金減少|育休中の給付金申告と節税完全ガイド

親の介護費用で貯金減少|育休中の給付金申告と節税完全ガイド 育児休業制度

育児休業中に親の介護施設への入所が重なった場合、家計への打撃は想像以上に深刻です。育休で手取り収入が大幅に減る一方、毎月数万〜十数万円の介護施設費用が新たに発生する「ダブルケア」状態は、じわじわと貯金を削り取っていきます。

しかし、正しく制度を活用すれば、税負担の軽減や各種給付金の受給によって家計の悪化を食い止めることができます。本記事では、育児休業給付金の申告の注意点から、介護費用に関連する控除・給付制度まで、2025年の最新情報をもとに実用的な手続きを丁寧に解説します。

親の介護と育児の両立に必要な給付金申告・確定申告・扶養控除・医療費控除といった節税手続きを完全にガイドすることで、経済的な負担を大幅に軽減できるようになります。


育休中に親の介護費用が重なると家計はどう変わるのか?

育児休業給付金でどこまで生活費を賄えるか

育児休業給付金は、雇用保険法第61条の4に基づいて支給される給付金です。支給額の計算式は以下のとおりです。

休業開始から180日間(約6か月)

休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 67%

181日目以降

休業開始時の賃金日額 × 支給日数 × 50%

賃金日額は、育休開始前6か月間の総賃金を180で割った金額が基準となります。

休業前月収(額面) 最初の6か月(67%) 6か月以降(50%)
20万円 約134,000円/月 約100,000円/月
25万円 約167,500円/月 約125,000円/月
30万円 約201,000円/月 約150,000円/月
35万円 約234,500円/月 約175,000円/月

なお、育児休業給付金は所得税・住民税が非課税であるため、上記の金額がほぼそのまま手取り額となります(社会保険料も育休中は免除)。ただし上限額があり、2025年時点では67%支給期間の上限は約310,143円/月、50%支給期間は約231,450円/月です。

実際の生活費(住居費・食費・光熱費・育児費)を差し引くと、多くの世帯では給付金だけで収支をプラスにするのは容易ではありません。


介護保険施設の入所費用の相場と自己負担額

介護保険法第8条に定める介護保険施設には主に以下の種類があり、月額費用は施設の種類と地域によって大きく異なります。

施設の種類 月額費用の目安 介護保険自己負担 実質負担の目安
特別養護老人ホーム(特養) 8〜15万円 1〜3割 5〜10万円
介護老人保健施設(老健) 10〜18万円 1〜3割 7〜13万円
介護医療院 12〜20万円 1〜3割 8〜15万円
有料老人ホーム(介護付き) 15〜35万円 1〜3割 12〜30万円
グループホーム 10〜20万円 1〜3割 7〜15万円

自己負担割合(1〜3割)は親の所得・資産状況によって異なります。また、居住費・食費は原則自己負担ですが、所得が低い場合は「補足給付(特定入所者介護サービス費)」によって軽減される制度があります。

さらに月々の介護保険サービス費が一定額を超えた場合は、高額介護サービス費として超過分が払い戻されます(市区町村に申請が必要)。


ダブルケア世帯が直面する貯金減少の実態

育休前の月収30万円の方が育休に入り、同時に親が介護施設に入所したケースで試算してみましょう。

【試算例:月収30万円・育休6か月目以降のケース】

項目 金額
育児休業給付金(50%期間) +150,000円
配偶者の収入(パート想定) +80,000円
収入合計 230,000円
住居費(家賃・ローン) −80,000円
食費・光熱費・通信費 −60,000円
育児費(ミルク・おむつ等) −30,000円
親の介護施設費(老健・自己負担1割) −80,000円
支出合計 −250,000円
月々の収支 −20,000円

このケースでは毎月2万円の赤字が発生し、年間で約24万円の貯金が失われる計算になります。親の施設費用が高額な場合や、配偶者が無収入の場合はさらに赤字幅が拡大します。


育児休業給付金の申告で注意すべきポイント

育児休業給付金は課税対象?非課税?所得税の取り扱いを確認

育児休業給付金は、雇用保険法に基づく給付金であり、所得税法上は非課税です。所得税法第9条第1項に定める非課税所得に該当するため、給付金の金額がどれだけ高くても、それだけで所得税がかかることはありません。

また、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)も免除されます(健康保険法第159条・厚生年金保険法第81条の2)。

ただし、以下のケースでは確定申告が必要または有利になる場合があります。

ケース 確定申告の要否
育休中に副業・フリーランス収入があった 必要(20万円超の場合)
年途中で育休開始し、年内に職場復帰した 年末調整で対応(不要なことが多い)
医療費控除・扶養控除など節税目的 申告することで還付の可能性あり
配偶者が高収入で配偶者控除を使いたい 配偶者側で申告が必要

育休中で給付金のみの収入であれば確定申告は原則不要ですが、介護費用の医療費控除や親を扶養に入れる場合は申告することで税金が戻ってくることがあります。


親が生活保護を申請する場合の給付金との関係

親が介護施設の費用を払えず、生活保護申請を検討するケースがあります。このとき、子(育休中の本人)の育児休業給付金が保護費の算定に影響を与えることがあります

生活保護法では、申請者の親族(扶養義務者)に扶養能力がある場合、まず親族による扶養が優先されます。ただし育休中で収入が大幅に減っている場合は、扶養能力がないと判断されるケースも多いです。

具体的には:

  • 福祉事務所が扶養照会を実施:ケースワーカーから育休中の本人に対して扶養意向の確認が届く場合があります。
  • 育児休業給付金は親の収入にはならない:あくまで子の収入であり、親の生活保護の資産計算に直接含まれるわけではありません。
  • 援助できる金額の申告が求められる:扶養照会に対し、実際の家計状況(貯金残高、月収、支出)を文書で示すことで、扶養困難を説明できます。

なお、扶養照会への回答は法的義務ではなく、無視しても直ちに保護が却下されるわけではありません。ただし、誠実に対応することが推奨されます。


ハローワークへの給付金申請で気をつける申告事項

育児休業給付金は2か月ごとにハローワークへ申請します。申請の際に就業状況の正確な申告が求められます。以下の点に注意してください。

就業日数の上限
– 育休中に就業した場合、1支給単位期間(2か月)内の就業日数が10日以下であること(または就業時間が80時間以下)が支給継続の条件です。

申告が必要な就業の例
– 副業・内職による収入
– 育休中の一時的な職場復帰(パパ育休の場合を含む)
– フリーランスとしての請負業務

虚偽申告は不正受給となり、支給額の2倍返還が求められる場合があります(雇用保険法第10条の4)。特に介護のために一時的に在宅ワークをしているケースでは、申告義務の有無を事前にハローワークに確認しておきましょう。


介護費用で家計が苦しいときに使える控除・給付制度

医療費控除で介護施設費用を取り戻す方法

医療費控除(所得税法第73条)は、1年間に支払った医療費が10万円(または所得の5%)を超えた場合に、超過分を所得から控除できる制度です。

介護施設費用の医療費控除の対象範囲

費用の種類 医療費控除の対象
介護老人福祉施設(特養)の介護費・食費 ○(2分の1が対象)
介護老人保健施設(老健)の介護費・食費 ○(全額対象)
訪問介護・訪問看護費用 ○(医療系サービスは全額)
有料老人ホームの介護費(介護保険適用分) ○(一定条件あり)
居住費・日常生活費 ✕(対象外)

申告方法は確定申告書に「医療費控除の明細書」を添付します。領収書の提出は不要ですが、5年間の保存が義務づけられています(税務調査に備えて必ず保管してください)。

計算例:年間介護費用80万円・所得200万円の場合

控除額 = 80万円 − 10万円 = 70万円の所得控除
税負担軽減額(所得税率10%の場合)= 70,000円の還付


扶養控除で親を扶養に入れる手続きと条件

親を税法上の扶養に入れることができれば、扶養控除(所得税法第84条)が適用されて税負担が減ります。

扶養控除が適用される主な条件

条件 内容
生計が同一であること 仕送りや施設費用の負担で認められる場合も
親の年間所得が48万円以下 年金収入のみなら158万円以下が目安
親の年齢 70歳以上は「老人扶養親族」として控除額が増加

控除額の目安

区分 所得税の控除額
一般の扶養親族(70歳未満) 38万円
老人扶養親族(70歳以上) 48万円
同居老親等(同居70歳以上) 58万円

介護施設に入所中でも、施設の費用を子が負担している場合は「生計を一にする」とみなされ、扶養控除が適用されるケースが多いです(国税庁の解釈によります)。

育休中の本人の所得は給付金のみ(非課税)なので控除の恩恵は少ないですが、配偶者が申告することで世帯全体の税負担を下げられます。


障害者控除・特別障害者控除の活用

要介護認定を受けた親は、税法上の「障害者」に該当する場合があります。

  • 要介護1・2 → 一般の障害者控除(控除額:27万円)
  • 要介護3〜5 → 特別障害者控除(控除額:40万円)

これは障害者手帳がなくても、市区町村が発行する「障害者控除対象者認定書」を取得することで適用できます。介護施設のケアマネージャーや市区町村の窓口に相談してみましょう。


高額介護サービス費の申請で介護費用を取り戻す

介護保険サービスの1か月あたりの自己負担額が一定の上限を超えた場合、超過分が高額介護サービス費として払い戻されます。

2025年時点の自己負担上限額(月額)

区分 上限額
現役並み所得者(年収520万円以上など) 140,100円
一般(住民税課税世帯) 44,400円
住民税非課税世帯(年金収入80万円超) 24,600円
住民税非課税世帯(年金収入80万円以下) 15,000円
生活保護受給者 15,000円

申請先は市区町村の介護保険担当窓口で、初回申請後は自動的に振り込まれるケースが多いです。まだ申請していない場合は、過去1年分(最大3年分)の遡及申請も可能な場合があります。


世帯分離で介護費用の自己負担を減らす方法

住民票上の世帯を親と子で分離(世帯分離)することにより、親の世帯収入が低く算定され、介護保険の自己負担割合や居住費・食費の補足給付(特定入所者介護サービス費)が軽減されるケースがあります。

世帯分離の注意点

  • 市区町村の住民課窓口に届け出るだけで手続きは簡単
  • 実態として生計が同一でも届け出自体は可能
  • ただし扶養控除の適用判断(税法上の「生計を一にする」)には影響しない
  • 健康保険の扶養に入れている場合は別途確認が必要

世帯分離は合法的な手続きですが、施設によってはサービス内容や加算に影響が出る場合もあるため、施設のケアマネージャーや市区町村の窓口に事前に相談することを強くおすすめします。


育休中の介護費用負担を支える追加の支援制度

介護休業給付金との併用は可能か?

育児休業と介護休業は別々の制度であり、原則として同時に取得することはできませんが、期間をずらして取得することは可能です。

介護休業給付金は、雇用保険法第61条の6に基づき、対象家族1人につき通算93日・3回まで分割取得が認められており、給付率は休業開始時賃金日額の67%です。

育休終了後に復職し、その後介護休業に入ることで、介護休業給付金を受給できます。育休中に親の介護を担っている場合は、職場復帰後の介護休業取得についても人事担当者と事前に相談しておきましょう。


家族介護慰労金・自治体独自給付金の活用

自治体によっては、介護保険サービスをほとんど利用せずに在宅介護を行っている家族に対して「家族介護慰労金」を支給しているところがあります。支給条件や金額は自治体によって異なりますが、年間10万円程度を支給する自治体もあります。

また、育休中の経済的支援として、以下の自治体独自サービスも確認してみてください。

  • 子育て支援給付金(自治体によって異なる)
  • 保育所入所の特例措置(求職中・育休中の利用)
  • フードバンクや食料支援(生活困窮者支援)

お住まいの市区町村の福祉担当窓口や、社会福祉協議会に相談することで、利用可能な制度を教えてもらえます。


確定申告の実務:育休×介護費用の申告手順

申告に必要な書類チェックリスト

確定申告で介護費用に関する各種控除を申請する際に必要な書類をまとめます。

共通書類
– [ ] マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
– [ ] 源泉徴収票(復職後・配偶者分を含む)
– [ ] 銀行口座情報(還付先)

医療費控除用
– [ ] 医療費控除の明細書(国税庁ウェブサイトからダウンロード可)
– [ ] 介護施設の領収書(5年間保存)
– [ ] 介護保険負担割合証のコピー

扶養控除・障害者控除用
– [ ] 扶養親族の年金収入確認書類
– [ ] 障害者控除対象者認定書(市区町村発行)または障害者手帳
– [ ] 施設費用の支払い証明(振込明細など)

申告方法
1. 国税庁「確定申告書等作成コーナー」(e-Tax)での電子申告が最も簡便
2. 税務署の窓口(2〜3月の確定申告期間)に直接持参
3. 郵送での提出も可能

申告期間は原則として翌年2月16日〜3月15日ですが、還付申告(税金が戻ってくる場合)は1月1日から5年以内いつでも申請可能です。過去の申告もれに気づいた場合は遡及申告を検討してください。


家計を守るための優先順位:手続きのロードマップ

育休中に親の介護費用が重なっている場合、取るべき手続きの優先順位を整理します。

【STEP 1】まず確認・手続きすること(今すぐ)
1. 高額介護サービス費の申請(市区町村窓口)
2. 育児休業給付金の支給状況・給付率の確認(ハローワーク)
3. 世帯分離の検討(市区町村の住民課)

【STEP 2】確定申告シーズンに向けて準備すること
1. 介護施設の領収書を月ごとに整理・保管
2. 障害者控除対象者認定書の取得(市区町村)
3. 親の年金収入証明の収集(扶養控除の判断)

【STEP 3】職場復帰後に検討すること
1. 介護休業取得の検討(人事担当者に相談)
2. 介護休業給付金の要件確認(ハローワーク)
3. 企業の介護支援制度・見舞金制度の確認


よくある質問

Q1. 育休中でも親を扶養に入れることはできますか?

はい、可能です。育休中でも親の年間所得が48万円以下(年金収入のみなら158万円以下が目安)であれば、税法上の扶養親族にできます。ただし育休中の本人は所得税が非課税のため、控除の効果は配偶者の確定申告で活用するのが一般的です。

Q2. 介護施設の費用は全額医療費控除の対象になりますか?

施設の種類によって異なります。介護老人保健施設(老健)や介護医療院では介護費・食費の全額が対象になりますが、特別養護老人ホーム(特養)は介護費・食費の2分の1が対象です。有料老人ホームは介護保険適用サービス費のみが対象で、居住費や日常生活費は対象外となります。

Q3. 育児休業給付金を受給しながら親に仕送りをした場合、給付金に影響しますか?

仕送り自体は育児休業給付金の支給条件には影響しません。ただし、仕送りの原資となる収入(副業など)が就業扱いになる場合は申告が必要です。仕送りは支出であり収入ではないため、直接的な給付金への影響はありません。

Q4. 親の介護費用が高額で生活が苦しい場合、相談できる窓口はどこですか?

主な相談窓口は以下のとおりです。①市区町村の介護保険担当窓口(高額介護サービス費・補足給付の相談)、②地域包括支援センター(介護サービス全般の相談)、③社会福祉協議会(生活困窮・家計相談)、④ハローワーク(育休給付金・介護休業給付金の相談)。複数の窓口を並行して活用することをおすすめします。

Q5. 育休終了後に介護休業を取得できますか?その場合の給付金はどうなりますか?

はい、育休終了後に職場復帰し、その後介護休業を取得することは可能です。介護休業給付金は、雇用保険に加入しており、介護休業開始前2年間に被保険者期間が12か月以上あることなどが条件で、給付率は休業前賃金の67%です。対象家族1人につき通算93日・最大3回まで分割取得できます。


育休と親の介護が重なる「ダブルケア」の状況は、精神的にも経済的にも非常に厳しいものです。しかし、高額介護サービス費・医療費控除・扶養控除・障害者控除・世帯分離といった複数の制度を組み合わせることで、家計への打撃を相当程度やわらげることができます。

一人で抱え込まず、市区町村の窓口・地域包括支援センター・ハローワークといった公的機関を積極的に活用し、利用できる制度を一つひとつ確認していきましょう。本記事で紹介した手続きを順序立てて進めることで、育休中の親の介護費用負担は確実に軽減できます。

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