育休を取得しながら認定こども園に子どもを通わせたい場合、「給付金はどうなるの?」と心配される方は多いです。育児休業給付金と認定こども園の施設型給付(保育料の無償化)は、それぞれ異なる法律に基づく別々の制度であり、条件によっては両方を受け取ることができます。一方で、「保育の必要性の認定」という壁があり、育休中は認定を受けられないケースもあります。
この記事では、育休中に認定こども園を利用した場合の給付金への影響を制度の仕組みから丁寧に整理し、2022年の法改正で変わったポイント・申請手続きの流れ・必要書類まで網羅的に解説します。
育休中に認定こども園を利用すると給付金はどう変わるのか?
| 制度 | 根拠法律 | 育休中の受給可否 | 主な条件 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 雇用保険法 | 受給可能 | 要件を満たせば育休中でも継続支給 |
| 認定こども園の施設型給付(無償化) | 子ども・子育て支援法 | 条件付きで受給可能 | 「保育の必要性認定」が必須 |
| 両制度の併用 | 別々の制度 | 両方の要件を満たせば可能 | 各制度の条件をそれぞれクリア |
まず大前提として、育休中に関わる代表的な給付金は次の2種類です。
| 給付制度 | 支給元 | 概要 |
|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 雇用保険(ハローワーク経由) | 育休中に賃金の67%相当を給付 |
| 施設型給付(無償化) | 市区町村 | 認定こども園・保育所等の保育料を補助 |
この2つは別々の制度であり、受給要件を満たしていれば原則として同時に受け取ることができます。ただし、施設型給付を受けるには「保育の必要性の認定」を市区町村から受けなければならず、育休中はこの認定が得られないケースがあるため、「給付金がもらえなくなるのでは?」という不安につながっています。
要点をひとことで言えば、育休中でも条件を満たせば保育の必要性の認定は受けられ、施設型給付(無償化)も継続できます。特に2022年の育児・介護休業法改正以降は認定継続できるケースが拡大しました。次節から詳しく解説します。
まず確認!育児休業給付金の受給要件と金額の基本
受給できる人の4つの条件
育児休業給付金は雇用保険法第61条の4に基づく給付です。受給するには以下の4要件をすべて満たす必要があります。
- 雇用保険に加入している労働者であること
-
正社員・契約社員・派遣社員・パートタイム労働者を問わず、週20時間以上勤務し雇用保険に加入していれば対象です。
-
育休開始前の2年間に被保険者期間が12か月以上あること
-
産前産後休業期間はこの12か月に含めることができます。
-
育休中に就業していないこと(または就業日数が制限以内であること)
-
支給単位期間(原則1か月)中に就業した日数が10日以下、または就業した時間が80時間以下であれば受給可能です。
-
育児休業の対象となる子が満2歳未満であること
- 保育所等に入所できないなど特定の理由がある場合は、最長2歳まで延長可能です。
注意点: 会社役員や個人事業主は雇用保険に加入できないため、原則として育児休業給付金の対象外です。
給付金額の計算方法(月額上限含む)
育児休業給付金の支給額は、育休開始前6か月間の賃金を基に算出した「休業開始時賃金日額」を基準にします。
計算式
月あたりの給付金額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 給付率
- 育休開始から6か月間:給付率67%
- 育休開始から6か月経過後:給付率50%
2024年度の月額上限・下限(参考)
| 期間 | 給付率 | 月額上限額 | 月額下限額 |
|---|---|---|---|
| 開始〜6か月 | 67% | 310,143円 | 51,579円 |
| 6か月経過後 | 50% | 231,450円 | 38,490円 |
上限・下限額は毎年8月1日に見直されます。最新額はハローワークまたは厚生労働省の公式サイトでご確認ください。
社会保険料の免除によるメリット
育休中は健康保険・厚生年金保険の保険料が免除されるため、手取りベースでは育休前賃金の約8割相当が確保できるとも言われています(給付率67%の期間)。これにより、育休中の家計負担が大きく軽減されます。
認定こども園の給付(無償化)を受けるには「保育の必要性認定」が鍵
保育の必要性認定とは何か
子ども・子育て支援法第19条に基づき、市区町村は子どもを「教育・保育給付認定」として次の3区分に認定します。
| 認定区分 | 対象 | 主な利用施設 |
|---|---|---|
| 1号認定(教育標準時間認定) | 満3歳以上で保育の必要性なし | 認定こども園(幼稚園部分) |
| 2号認定(保育認定・満3歳以上) | 満3歳以上で保育の必要性あり | 認定こども園(保育所部分)・保育所 |
| 3号認定(保育認定・満3歳未満) | 満3歳未満で保育の必要性あり | 認定こども園(保育所部分)・保育所 |
施設型給付(無償化)を最大限受けるには、2号または3号認定を取得し「保育の必要性あり」と認められることが必要です。1号認定の場合、幼稚園部分の利用は月額25,700円の無償化上限の範囲で給付を受けられますが、保育所的な長時間保育への給付は受けられません。
「保育の必要性」を認める事由は主に以下の通りです(内閣府令で規定)。
- 就労(フルタイム・パートタイム・自営業等)
- 妊娠・出産
- 保護者の疾病・障害
- 同居または長期入院している親族の介護・看護
- 求職活動
- 就学
- 育児休業取得中(条件あり) ← ここが重要
育休中は「保育の必要性なし」になるのか
改正前と現行制度の違いを整理します。
| 時期 | 制度の運用 | 影響 |
|---|---|---|
| 2021年以前(改正前) | 原則として育休中は「保育の必要性なし」とされることが多かった | 上の子が認定こども園に通っていても2号・3号認定が失効し、施設型給付を受けられないケースが発生 |
| 2022年以降(現行) | 育休中でも一定の条件を満たす場合は保育の必要性が認定される | 認定継続・新規認定できるケースが拡大 |
つまり、「育休をとったら自動的に保育の必要性がなくなる」というのは誤解です。現在は条件次第で認定を継続・取得できます。次章で3つの具体的なケースを確認しましょう。
【2022年改正】育休中でも認定こども園を継続利用できる3つのケース
2022年10月の育児・介護休業法改正によって、育休の分割取得や産後パパ育休(出生時育児休業)が創設されました。それに合わせて、育休中の保育の必要性認定についても運用が整理されています。
ケース①:分割育休取得時に配偶者が育休を取得していない期間
育児・介護休業法の改正により、育休は分割して2回まで取得できるようになりました。この分割期間中に配偶者が育休を取得していない場合、育休中の当人について保育の必要性が認定されます。
具体的なシナリオ
母親が第1子の育休を取得中(下の子を妊娠・出産後に育休取得)、父親は通常勤務を継続している場合。父親が就労しているため「保護者の就労」という事由を満たし、上の子・下の子ともに保育の必要性認定が継続できます。
ポイント: 夫婦が同時に育休を取得している期間は「どちらも就労していない」状態となり、保育の必要性認定の要件を満たさない場合があります。市区町村により運用が異なるため、事前に確認が必要です。
ケース②:復職準備・慣らし保育のタイミング
育休終了後に認定こども園への復帰をスムーズに行うため、復職予定月の前月から慣らし保育として通園させるケースがあります。この場合、市区町村が「近い将来の就労開始」を保育の必要性として認め、施設型給付を継続・適用できます。
具体的なシナリオ
育休を8月末まで取得し、9月1日に職場復帰予定の場合、8月から慣らし保育を開始する。このとき「復職予定」を事由として8月分から保育の必要性認定を受けられる。
手続き上の注意点:
– 市区町村の窓口に「復職予定証明書(会社発行)」を提出して認定変更申請を行う必要があります。
– 復職後に実際に就労しなかった場合は認定が取り消される可能性があります。
ケース③:上の子と下の子の並行利用(最重要)
育休・産休を取得する最も多いシナリオが「上の子がすでに認定こども園に通っているところに、下の子が生まれて育休を取得する」ケースです。これが多くの保護者にとって最も身近な問題です。
現行制度のルール
| 子ども | 認定 | 施設型給付 |
|---|---|---|
| 上の子(すでに通園中) | 継続利用可能(一定期間) | 継続受給可能 |
| 下の子(育休対象) | 保育の必要性を満たす場合に認定可能 | 認定を受ければ給付対象 |
上の子の継続利用について
子ども・子育て支援法の運用指針では、下の子の育休取得を理由に上の子の認定が直ちに取り消されることはないとされています。ただし市区町村によって取り扱いが異なり、「育休中は保育短時間(1日8時間未満)に認定変更」 を求められる場合があります。
具体的なシナリオ
4歳の長女が認定こども園に通っている(2号認定)。第2子が生まれ、母親が育休を取得した場合。
- 長女(上の子):原則として2号認定は継続。ただし「保育短時間」への変更が求められる可能性あり。
- 第2子(下の子):父親が就労していれば「就労」事由で3号認定を取得できる。
注意: 育休の開始・終了に伴い、市区町村への認定変更申請が必要になる場合があります。申請を怠ると施設型給付が遡って打ち切られるリスクがあります。
申請手続きの流れ
育児休業給付金の申請手順
育児休業給付金は、会社(事業主)がハローワークに申請するのが基本的な流れです。
【ステップ1】育休開始の1か月前までに
└─ 会社に育休取得の申出を書面で行う
【ステップ2】育休開始後10日以内に
└─ 会社が「育児休業給付受給資格確認票・
育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出
【ステップ3】初回支給申請(育休開始から約2か月後)
└─ 会社がハローワークに申請書を提出
※自分で申請する場合はハローワークへ直接提出可
【ステップ4】以後2か月ごとに支給申請を繰り返す
└─ 支給認定された場合、申請から約2週間で口座に振り込まれる
必要書類(育児休業給付金)
| 書類名 | 取得先 |
|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク(会社が取得) |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 会社が作成 |
| 育休対象の子の出生証明書・母子手帳の写し | 自身で用意 |
| 育児休業取扱通知書の写し | 会社が作成・交付 |
| 賃金台帳・出勤簿(タイムカード等) | 会社が用意 |
認定こども園の施設型給付(保育の必要性認定)の申請手順
【ステップ1】育休取得が決まったら
└─ 市区町村の子ども・子育て窓口に相談
※現在の認定状況と、育休後の認定見込みを確認
【ステップ2】認定変更が必要な場合は申請書類を準備
└─ 認定変更の申請期限(育休開始前・開始後1か月以内等)を確認
【ステップ3】申請書類を市区町村窓口に提出
└─ 通常1〜2週間で認定通知書が届く
【ステップ4】復職時にも認定変更申請が必要
└─ 就労証明書を提出して保育の必要性を再確認
必要書類(認定こども園・保育の必要性認定)
| 書類名 | 備考 |
|---|---|
| 教育・保育給付認定変更申請書 | 市区町村の窓口またはウェブサイトでダウンロード |
| 育児休業取得証明書(会社発行) | 育休開始日・終了予定日の記載が必要 |
| 就労証明書(配偶者分) | 配偶者が就労している場合に必要 |
| 復職予定証明書(会社発行) | 慣らし保育・復職準備の場合に必要 |
| マイナンバーカードまたは通知カード | 本人確認書類として |
| 子どものマイナンバー書類 | 上の子・下の子それぞれについて |
自治体によって書類の名称・様式・申請期限が異なります。 必ず居住地の市区町村窓口またはウェブサイトで最新情報を確認してください。
申請時のスケジュール目安
| タイミング | やること |
|---|---|
| 出産予定日の2か月前 | 会社に産前産後休業・育休の取得申出。市区町村に認定継続の見込みを相談 |
| 産前休業開始時 | 会社が社会保険料免除手続きを開始 |
| 出産後8週間(産後休業終了後)〜育休開始 | 育児休業給付金の受給資格確認申請(会社経由) |
| 育休開始後1か月以内 | 市区町村に認定変更申請(必要な場合) |
| 育休終了1か月前 | 復職予定証明書を提出し、保育の必要性認定の継続・変更申請 |
| 復職後1か月以内 | 就労証明書を市区町村に提出し、認定内容を確定 |
注意すべき給付金への影響と陥りがちなミス
育休中の一時的な就業と給付金の関係
育休中に就業した場合、一定日数・時間を超えると育児休業給付金が支給停止・減額されます。認定こども園の保護者会・役員活動などの「ボランティア的な活動」は一般的には就業に含まれませんが、報酬が発生する場合は要注意です。収入が発生した場合はハローワークに報告し、給付金への影響を事前に確認することが重要です。
認定区分の変更を忘れた場合のリスク
育休取得・終了の際に認定変更申請を忘れると、次のリスクが生じます。
- 保育短時間の認定を受けないまま保育標準時間で通園し続けると、差額分の保育料を後から請求される場合があります。
- 逆に認定が失効したまま通園していると、施設型給付が遡って取り消され、全額自己負担を求められることがあります。
このため、育休の開始・終了のタイミングでは必ず市区町村窓口に認定変更申請の要否を確認することをお勧めします。
「育休中は無償化を受けられない」という誤解
3歳以上の子どもが1号認定(幼稚園的利用)の場合は、保護者が育休中であっても月額25,700円の無償化上限の範囲で給付を受けられます。「育休中は一切無償化を受けられない」という誤解が広まっていますが、これは正確ではありません。1号認定のまま幼稚園部分を利用し続ける場合は、育休の取得は無償化に影響しません。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休中に上の子が認定こども園を利用しているが、下の子の育休を取ると上の子の保育料も変わる?
育休取得により保育の必要性認定が「保育短時間」に変更された場合、上の子の保育料は変わらないこともありますが、利用できる時間が短くなります(標準時間:最大11時間→短時間:最大8時間)。施設型給付(無償化の補助額)自体は変わらないことが多いですが、延長保育料等が発生するケースがあります。正確な試算については、利用先の認定こども園または市区町村窓口にお問い合わせください。
Q2. 配偶者と同時に育休を取得すると認定こども園は退園しなければならない?
直ちに退園が求められるわけではありませんが、夫婦ともに育休中で「就労」等の保育事由が消えた場合、市区町村から認定変更や退園の案内が届く可能性があります。ただし各自治体の裁量があり、一定期間の継続利用を認めているところもあります。事前に市区町村へ相談することを強くお勧めします。
Q3. 育休延長(保育所に入れなかった場合)の場合、施設型給付はどうなる?
育休の延長理由が「保育所等に入所できない」場合、子どもはそもそも保育施設を利用していないため、施設型給付は発生しません。育児休業給付金は最長2歳まで延長受給が可能です。
Q4. 認定こども園の申込みと育休取得のタイミングが重なったが、入園できる?
認定こども園の利用申込みにあたって、「入園後に育休が終了し就労する予定」であることを証明できれば、保育の必要性ありとして申込めます。ただし「育休中は利用不可」とする施設・自治体もゼロではないため、必ず個別に確認してください。
Q5. 育児休業給付金の申請は自分でもできる?
原則として会社(事業主)が代理申請しますが、事業主が申請しない場合は本人が直接ハローワークに申請できます。また、育休開始から4か月を超えても申請されない場合は、本人が申請できる旨がハローワークから通知されます。
まとめ
育休中に認定こども園を利用する際の給付金への影響を整理すると、以下のポイントに集約されます。
- 育児休業給付金と施設型給付(無償化)は別々の制度であり、要件を満たせば両方受け取ることができる。
- 施設型給付には「保育の必要性認定」が必要だが、育休中でも配偶者の就労・復職予定・上の子の継続利用など一定の条件を満たせば認定を受けられる。
- 2022年改正で認定できるケースが拡大されており、「育休中は認定を受けられない」という従来の誤解は現在の制度には当てはまらない場合が多い。
- 認定変更申請を忘れると施設型給付の遡及取り消しや差額請求のリスクがあるため、育休の開始・終了時には必ず市区町村窓口に確認する。
- 自治体ごとに運用が異なるため、居住地の市区町村への事前相談が最も確実な情報収集手段となる。
育休・産休に関わる手続きは複数の法律・窓口にまたがり複雑ですが、事前に流れを把握しておくことで不要なトラブルを避けられます。不安な点は会社の人事担当者・ハローワーク・市区町村の子ども・子育て窓口に積極的に相談してください。
参考法令・資料
– 雇用保険法第61条の4(育児休業給付金)
– 育児・介護休業法(令和4年改正)
– 子ども・子育て支援法第19条・第29条
– 内閣府「子ども・子育て支援新制度ハンドブック」
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き」

