育休給付金 標準報酬月額なしの算定方法【2025年最新版】

育休給付金 標準報酬月額なしの算定方法【2025年最新版】 育休給付金

育児休業給付金(育休給付金)を受け取るとき、「標準報酬月額がない」と言われて困惑した経験はありませんか?入社直後や雇用保険の加入期間が短い方は、通常とは異なる「代替算定」という方法で給付額が計算されます。本記事では、標準報酬月額がない状態の定義から、代替算定の計算式・具体例・申請書類・ハローワーク手続きまでを体系的に解説します。育児に専念できるよう、正確な手続きと事前準備を整えるためのガイドです。


育休給付金における「標準報酬月額なし」とはどういう状態か?

育休給付金の算定において「標準報酬月額がない」という状態は、決して珍しいケースではありません。特に入社後まもなく妊娠・出産を迎えた方や、転職直後に育休取得が必要になった方に多く見られます。まずは「標準報酬月額なし」がどういう状態なのかを正確に理解しましょう。

標準報酬月額が確定しない主な原因

標準報酬月額とは、社会保険(健康保険・厚生年金保険)の保険料や給付額を計算するための基準値です。実際の月給を一定の等級に当てはめたもので、毎年4〜6月の給与実績をもとに算定される「定時決定」や、入社時に届け出る「資格取得時決定」などによって確定します。

ここで重要な点があります。育休給付金は雇用保険制度の給付であり、標準報酬月額(社会保険の指標)とは直接連動していません。 育休給付金の算定基準は「休業開始時賃金日額」であり、これは育休開始前の賃金支払い実績から算出します。

「標準報酬月額なし」という表現が用いられるのは、主に次の状況です。

  • 雇用保険加入期間が短く、賃金支払いの実績月数が少ない(例:入社3〜6ヶ月)
  • 給与の受取実績が不十分で、休業開始時賃金日額を算出するための賃金集計ができない
  • 社会保険の標準報酬月額がまだ届け出・算定されていない

雇用保険法第61条の4では、育児休業給付金の額は「休業開始時賃金日額×支給日数×67%(または50%)」と定められています。この「休業開始時賃金日額」を算出するために、原則として育休開始前6ヶ月間の賃金を用います。しかし、賃金支払い実績が6ヶ月に満たない場合は、代替となる算定方法が必要になります。

【通常の賃金日額算出の流れ】
育休開始前6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180日 = 休業開始時賃金日額

入社から育休開始まで6ヶ月に満たない場合、この計算の分母(180日)に対して実績賃金が不足するため、特別な取り扱いが必要になります。

該当するケース・しないケースの早見表

自分が「標準報酬月額なし」の代替算定の対象になるかどうか、以下の表で確認してください。

状況 育休開始前賃金実績 算定方法 代替算定の適用
入社3ヶ月で育休開始 3ヶ月分のみ 代替算定 あり
入社5ヶ月で育休開始 5ヶ月分のみ 代替算定 あり
入社6ヶ月ちょうどで育休開始 6ヶ月分あり 通常算定 なし
入社1年以上経過後に育休 6ヶ月以上 通常算定 なし
試用期間中(雇用保険未加入) 実績なし 給付対象外
育休前に長期欠勤・休職あり 実績が断続的 ハローワーク判断 場合あり
前職から転職直後(加入移行あり) 前職分は原則不算入 代替算定の可能性 確認要

ポイント: 雇用保険の加入期間と賃金の支払い実績は別の概念です。加入はしていても給与支払月が少ない場合は代替算定になることがあります。不明な場合はハローワークまたは社労士に確認しましょう。


標準報酬月額がない場合の給付額算定の仕組み

標準報酬月額(正確には「賃金支払い実績が6ヶ月未満」)の状態で育休を取得した場合、ハローワークは代替算定方法を用いて給付額を計算します。このセクションでは、通常算定との違いと、代替算定の具体的な計算方法を解説します。

通常算定との比較——何が違うのか

まず、通常算定と代替算定の違いを整理しましょう。

比較項目 通常算定 代替算定(賃金実績6ヶ月未満)
算定基礎 育休開始前6ヶ月の賃金総額 実際に受け取った賃金の合計
計算の分母 180日(固定) 実際の賃金支払い日数
賃金日額上限(2025年度) 15,190円 同上
賃金日額下限(2025年度) 2,869円 同上
主な対象者 勤続6ヶ月以上の被保険者 入社6ヶ月未満で育休開始した被保険者
確認書類 賃金台帳(6ヶ月分) 賃金台帳(全期間分)・雇用契約書
手続きの複雑さ 標準的 やや複雑(ハローワーク確認要)

通常算定では分母が「180日」で固定されています。これは育休開始前6ヶ月(約180日)で割るためです。代替算定では、実際に賃金が支払われた期間の日数を分母に使うことで、短期間の就労者に対して不当に低い給付額が算出されることを防いでいます。

代替算定の具体的計算式と計算例

代替算定における「休業開始時賃金日額」の計算式は以下のとおりです。

【代替算定における休業開始時賃金日額の計算式】

休業開始時賃金日額 = 育休開始前に受け取った賃金の合計額 ÷ 賃金の支払い対象となった日数

※上限:15,190円/日(2025年度)
※下限:2,869円/日(2025年度)

算出した賃金日額をもとに、給付額は次のように計算されます。

【育休給付金の支給額(1支給単位期間あたり)】

育休開始から180日目まで:
  賃金日額 × 支給日数(通常30日)× 67%

181日目以降:
  賃金日額 × 支給日数 × 50%

【計算例①:入社3ヶ月で育休を開始したケース】

  • 月給:25万円(固定)
  • 就労期間:入社日から育休開始日まで90日(3ヶ月)
  • 受け取った賃金総額:75万円(25万円×3ヶ月)
ステップ1:賃金支払い対象日数を確認
  → 90日間(就労した日数)

ステップ2:休業開始時賃金日額を計算
  75万円 ÷ 90日 = 8,333円/日
  ※上限(15,190円)以下 → そのまま適用

ステップ3:1支給単位期間(30日)の給付額を計算
  ・180日目まで:8,333円 × 30日 × 67% = 167,493円
  ・181日目以降:8,333円 × 30日 × 50% = 124,995円

【計算例②:入社5ヶ月で育休を開始したケース】

  • 月給:30万円(固定)
  • 就労期間:入社日から育休開始日まで150日(5ヶ月)
  • 受け取った賃金総額:150万円(30万円×5ヶ月)
ステップ1:賃金支払い対象日数を確認
  → 150日間

ステップ2:休業開始時賃金日額を計算
  150万円 ÷ 150日 = 10,000円/日
  ※上限(15,190円)以下 → そのまま適用

ステップ3:1支給単位期間(30日)の給付額を計算
  ・180日目まで:10,000円 × 30日 × 67% = 201,000円
  ・181日目以降:10,000円 × 30日 × 50% = 150,000円

注意: 上記の計算は簡略化した例示です。残業代・賞与・通勤手当の扱いなど、実際の賃金構成によって計算が変わる場合があります。正確な給付額はハローワークに確認してください。

給付額の上限・下限(2025年度)

育休給付金には、毎年8月1日に改定される上限・下限が設定されています。2025年度の金額は以下のとおりです。

区分 支給率 1支給単位期間(30日)の上限額 下限額
育休開始から180日目まで 67% 305,319円 57,726円
181日目以降 50% 227,850円 43,065円

2025年の注目ポイント: 「育児・介護休業法」の改正により、育休取得促進に向けた制度整備が続いています。また、2025年4月からの育児休業給付の「出生後休業支援給付金」(パパ・ママともに育休取得で最大28日間給付率を実質10割に引き上げる制度)との併用についても、ハローワークへ確認することを推奨します。


申請に必要な書類と準備のポイント

標準報酬月額がない(賃金実績が6ヶ月未満の)場合の申請では、通常の書類に加えて追加書類が必要になることがあります。企業の人事担当者と連携して、漏れなく準備しましょう。

必要書類一覧

書類名 作成者 備考
育児休業給付金支給申請書 事業主(企業) ハローワーク所定の用紙
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 事業主(企業) 賃金支払い実績を記載
賃金台帳(全期間分) 事業主(企業) 入社から育休開始日までの全賃金実績
出勤簿またはタイムカード 事業主(企業) 賃金支払い対象日数の確認用
育児休業取得確認通知書 事業主(企業) 育休開始・終了予定日を明記
母子健康手帳(出生届出済証明欄等) 被保険者(本人) 子の出生を証明するもの
雇用契約書または労働条件通知書 事業主または被保険者 入社日・月給の確認用
本人確認書類 被保険者(本人) マイナンバーカード等

追加書類について: ハローワークの担当者が「賃金実績が6ヶ月未満」と判断した場合、追加書類の提出を求めることがあります。事前にハローワークへ相談することで、書類の過不足を確認できます。

申請前に企業が確認すべきこと

  1. 雇用保険の加入日と育休開始日を照合する
    入社日と雇用保険資格取得日がずれている場合は要注意です。試用期間中は雇用保険に加入していないケースもあります。

  2. 賃金台帳に全期間分の記載があるか確認する
    入社から育休開始日までの全ての賃金支払い月を記録した台帳を用意します。月途中の入社・欠勤がある場合も正確に記載してください。

  3. 賃金支払い対象日数の算出方法をハローワークに確認する
    月給制・日給制・時給制によって「賃金支払い対象日数」の計算方法が異なります。特に月給制の場合、所定労働日数と暦日数のどちらを使うかを事前に確認しましょう。

  4. 給与に通勤手当・残業代が含まれているか確認する
    育休給付金の算定賃金には通勤手当も含まれますが、賞与(臨時的に支払われるもの)は原則として除外されます。


ハローワークでの手続きの流れ

標準報酬月額がない(賃金実績6ヶ月未満)の場合、ハローワークへの事前確認が特に重要です。以下の流れに沿って手続きを進めてください。

手続きのステップ

ステップ1:育休開始前に企業が事前相談(推奨)

育休開始が決まった段階で、企業の人事担当者がハローワークに「賃金実績が6ヶ月未満の被保険者の育休給付申請について相談したい」と連絡します。電話での事前相談も可能です。この段階で必要書類・算定方法の確認を行っておくと、後の手続きがスムーズになります。

ステップ2:「休業開始時賃金月額証明書」の提出(育休開始後10日以内)

事業主は育休開始後、速やかに「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」をハローワークへ提出します。この書類に実際の賃金支払い実績を記載することで、ハローワークが代替算定の計算を開始します。

ステップ3:初回給付申請(育休開始から約2ヶ月後)

最初の支給申請は、育休開始から2ヶ月後が目安です(ハローワークから指定された申請期間内に申請)。申請書には支給単位期間中の就労日数(原則として10日以下または80時間以下であること)を記載します。

ステップ4:2回目以降の申請(2ヶ月ごと)

2回目以降は原則2ヶ月ごとに申請します。育休延長の場合(子が1歳を超えて育休を継続する場合)は、延長事由の書類(保育所の入所不承諾通知書等)も合わせて提出が必要です。

申請のタイムライン

育休開始日
  ├─ 【開始後速やかに】
  │   賃金月額証明書をハローワークへ提出(事業主)
  │
  ├─ 【開始から約2ヶ月後】
  │   初回給付申請(事業主がハローワークへ)
  │   ↓
  │   ハローワークが代替算定を確定・支給決定
  │   ↓
  │   被保険者の口座へ振込(決定から約1〜2週間後)
  │
  ├─ 【以降2ヶ月ごと】
  │   継続申請
  │
  └─ 【育休終了時】
      終了届の提出(事業主)

よくある手続きのつまずきポイント

つまずきポイント 対処法
賃金台帳の記載が入社月から始まっていない 入社日を起点に全月分を揃えて提出する
賃金支払い対象日数の計算が不明 ハローワーク担当者に月給制の場合の取り扱いを確認する
出産予定より早く育休を開始した(産前休業との連続) 産前休業と育休の開始日を正確に区別して申請する
育休中に短時間就労を行った 就労日数・時間数を正確に申告し、給付額の調整を確認する

社会保険料の免除との関係

育休中は雇用保険の給付(育休給付金)を受けながら、社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。この免除は、標準報酬月額がない場合でも適用されます。

  • 免除期間:育休開始月から育休終了日の翌日が属する月の前月まで
  • 申請窓口:年金事務所(事業主経由)
  • 手続き書類:「育児休業等取得者申出書」

注意: 社会保険料免除の手続きは、育休給付金の申請とは別の窓口(年金事務所)で行います。雇用保険の手続きはハローワーク、社会保険の手続きは年金事務所と窓口が異なる点を混同しないよう注意してください。


入社直後・短期加入者が育休給付金を受け取るための重要ポイント整理

ここまでの内容を踏まえ、入社直後・雇用保険加入期間が短い方が育休給付金を受け取るために特に押さえておくべきポイントをまとめます。

  1. 雇用保険の「被保険者期間12ヶ月要件」を確認する
    育休給付金を受けるには、育休開始前2年間に「月11日以上就労した月が12ヶ月以上」あることが原則です。加入期間が短い場合、この要件を満たせずに給付対象外となる可能性があります。ただし、疾病・負傷等による休業期間は例外的に2年を超えて遡ることができます。

  2. 賃金台帳・出勤簿は必ず保管する
    入社後の全ての賃金支払い実績が代替算定の根拠になります。企業側は書類の紛失がないよう、入社日から育休開始日までの記録を完全に保管してください。

  3. 早めにハローワークへ相談する
    加入期間が短い場合は算定方法が通常と異なるため、育休開始前の事前相談が非常に重要です。ハローワークによっては、電話やオンラインでの相談にも対応しています。

  4. 給付額は通常より低くなる可能性がある
    賃金支払い実績が少ない場合、代替算定で算出される賃金日額も低くなることがあります(ただし下限額があります)。事前に概算給付額を計算し、育休中の生活設計に反映させることをお勧めします。

  5. 育休開始のタイミングを柔軟に検討する
    もし育休開始日を数ヶ月調整することで「6ヶ月の賃金実績」が揃い、通常算定が適用できる場合は、給付額が増加する可能性があります。体調や業務状況が許す範囲で、開始時期を人事担当者・主治医と相談するのも一つの選択肢です。


よくある質問

Q1. 入社4ヶ月で妊娠が発覚しました。育休給付金はもらえますか?

育休給付金を受け取るには「育休開始前2年間に月11日以上就労した月が12ヶ月以上」という要件があります。入社4ヶ月では、産前休業・産後休業・育休開始のタイミングによってはこの要件を満たせない場合があります。早急にハローワークへ相談し、自分の状況が要件を満たすかどうかを確認することをお勧めします。

Q2. 代替算定で計算すると、給付額が通常算定よりかなり低くなりますか?

月給が安定している場合は、代替算定でも通常算定とほぼ同等の賃金日額になることが多いです。月給が変動している場合(昇給・残業代の変動など)は差が生じることがあります。計算式(賃金合計÷賃金支払い対象日数)をもとに事前に試算してみましょう。

Q3. 雇用保険に加入してすぐに妊娠した場合、給付の対象になりますか?

加入してすぐに妊娠しても、育休開始時点で「被保険者期間要件(前2年間に12ヶ月以上)」を満たしていなければ給付対象外になります。ただし、前職でも雇用保険に加入していた場合は、空白期間が1年以内であれば前職の被保険者期間を通算できます。前職の加入期間も合わせてハローワークへ確認してください。

Q4. 標準報酬月額がないと社会保険料の免除は受けられないのですか?

社会保険料の免除は、育休取得の事実に基づき適用されるものです。標準報酬月額がある・ないに関わらず、育休中の社会保険料免除は受けられます。ただし、免除される保険料の額は「現在の標準報酬月額」を基準に計算されます。入社直後で標準報酬月額が確定していない場合の取り扱いについては、加入する健康保険組合や年金事務所へ確認してください。

Q5. パート・アルバイトでも代替算定で育休給付金を受け取れますか?

はい、雇用保険に加入していれば雇用形態にかかわらず育休給付金の対象になります。ただし、パート・アルバイトの場合も「月11日以上就労した月が12ヶ月以上」という被保険者期間の要件があります。時間給制の場合、賃金日額の計算方法が月給制とは異なるため、賃金台帳・タイムカードをもとにハローワークで確認することを強くお勧めします。

Q6. ハローワーク以外に相談できる窓口はありますか?

育休給付金の相談は、管轄のハローワーク(公共職業安定所)が主な窓口です。それ以外にも、社会保険労務士(社労士)への相談が有効です。特に入社直後の複雑なケースでは、専門家に依頼することで申請書類の作成ミスや漏れを防ぐことができます。また、厚生労働省の「育児・介護休業法のページ」や各都道府県の労働局にも相談窓口があります。


まとめ

育休給付金において「標準報酬月額がない」状態とは、主に育休開始前の賃金支払い実績が6ヶ月未満の場合に発生します。この場合、通常の算定に代わり、実際の賃金合計÷賃金支払い対象日数という代替算定方法が適用されます。

給付額の水準は月給に連動するため、入社直後であっても月給が安定していれば一定水準の給付が期待できます。一方で、被保険者期間の「12ヶ月要件」を満たさない場合は給付自体が受けられないため、育休開始前に必ずハローワークで要件確認を行うことが最重要です。

企業の人事担当者は、以下の3点を育休開始前に必ず確認・準備しましょう。

  1. 雇用保険加入日と賃金支払い実績月数の確認
  2. 入社から育休開始日までの賃金台帳・出勤簿の整備
  3. ハローワークへの事前相談(代替算定の可否・必要書類の確認)

育休制度は労働者の権利であり、入社直後であっても要件を満たせば給付を受ける権利があります。正確な手続きと事前準備で、育児に専念できる環境を整えましょう。


免責事項: 本記事は2025年時点の法令・制度情報をもとに作成しています。給付額の上限・下限は毎年8月に改定されるほか、法改正により制度内容が変更されることがあります。実際の申請にあたっては、必ずハローワークまたは社会保険労務士へご確認ください。

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