育休中に「やっぱり復帰日を変えたい」と思ったとき、真っ先に頭をよぎるのが「給付金はどうなるの?」という不安ではないでしょうか。
復帰予定日の変更は、育児休業給付金の支給期間・支給額の両方に直結します。正しい知識がないまま手続きを進めると、受け取れるはずだった給付金を逃したり、逆に過払いによる返還を求められるリスクもあります。
この記事では、復帰予定日の変更が給付金に与える影響を計算式・具体例・手続きフローとともに徹底解説します。厚生労働省の2024年法改正情報を踏まえ、2026年現在の最新ルールに対応しています。
復帰予定日の変更が育児休業給付金に与える影響とは?
育児休業給付金は、「支給単位期間」ごとに計算・支給される仕組みです。支給単位期間とは、育休開始日から1ヶ月ごとに区切られた期間のことを指します。
復帰予定日を変更すると、この支給単位期間の終了時点が前後にずれるため、給付金の支給月数・合計額・振込タイミングがすべて連動して変わります。
図解イメージ:支給単位期間と復帰予定日の関係
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【変更前】育休開始 ──────────────────────── 復帰予定日(10ヶ月後)
支給単位期間①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩ → 10ヶ月分の給付金【延長後】育休開始 ──────────────────────────────── 復帰予定日(12ヶ月後)
支給単位期間①②③④⑤⑥⑦⑧⑨⑩⑪⑫ → 12ヶ月分の給付金【早期復帰】育休開始 ─────────── 復帰予定日(7ヶ月後)
支給単位期間①②③④⑤⑥⑦ → 7ヶ月分の給付金
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支給対象月の数え方と変更による増減のしくみ
支給対象月として認められるには、その月に育休以外の就労日が10日以下(または就労時間が80時間以下)であることが条件です。
復帰予定日を変更すると、以下のように支給対象月が増減します。
| 変更の方向 | 支給対象月の変化 | 給付金への影響 |
|---|---|---|
| 延長(復帰日を遅らせる) | 増加する | 支給期間が延び、受取総額が増える |
| 早期復帰(復帰日を早める) | 減少する | 支給期間が短縮され、受取総額が減る |
| 変更なし | 変化なし | 影響なし |
重要なポイント:復帰した月は「就労した日がある」ため、その月は支給対象外になるケースがほとんどです。早期復帰を検討している場合は、月の初日に復帰するか月末に復帰するかで1ヶ月分の差が生じることを必ず確認しましょう。
早期復帰・延長それぞれのケースで何が変わるか
早期復帰の場合(例:10ヶ月→7ヶ月に短縮)
- 支給単位期間が3ヶ月分減少
- 最終支給月が前倒しになる
- 支給申請書の提出スケジュールも前倒し対応が必要
- 復帰月の給付金が日割り計算される場合あり
- 既受取分に返還対象がないか企業と確認が重要
延長の場合(例:1歳→1歳6ヶ月に延長)
- 支給単位期間が最大6ヶ月分追加
- 延長には保育所不承諾通知書などの証明書類が必須
- 1歳以降は給付率が80%から67%に変更
- 1歳6ヶ月から2歳までのさらなる延長も可能
- 延長申請に手数料や追加費用は不要
育児休業給付金の基本計算式と給付率【2026年最新】
育児休業給付金の計算式は以下の通りです。
【基本計算式】
支給額 = 賃金月額 × 給付率 × (支給単位期間の日数 ÷ 30)
賃金月額 = 休業開始前6ヶ月の賃金合計 ÷ 180 × 30
賃金月額は、育休取得直前6ヶ月間の給与実績から算出されます。ボーナスは含まれず、基本給と諸手当のみが対象です。
賃金月額の上限・下限(2026年度目安)
– 上限:約48万円(毎年度8月に改定)
– 下限:約8万円
– 改定スケジュール:年1回、年度初め(8月)に厚生労働大臣告示で発表
給付率80%が適用される期間と条件(2023年法改正の内容)
2023年4月の法改正により、育休開始から180日(約6ヶ月)までは給付率が67%から80%へ引き上げられました(手取りベースではほぼ10割相当)。
| 育休期間 | 給付率 | 実務的な影響 |
|---|---|---|
| 育休開始〜180日目まで | 80% | 月給の約80%が給付されるため、生活への影響が最小限 |
| 181日目以降〜最長2歳まで | 67% | 月給の約67%が給付されるため、復帰後の家計計画が重要 |
適用条件の注意点
– 両親ともに育休を取得する「パパ・ママ育休プラス」の場合は、最長2歳2ヶ月まで延長可能(ただし計算基準の変更あり)
– 同一の子について2回目以降の育休は、1回目の期間と通算して180日のカウントになります
– 育休開始日が2023年4月1日以降であれば適用対象
復帰日を1ヶ月ずらすと給付金はいくら変わる?計算例
【月給30万円モデルケース】
賃金月額の計算:
30万円 × 6ヶ月 ÷ 180 × 30 = 30万円
給付率80%期間(1〜6ヶ月目)の月額:
30万円 × 80% = 24万円
給付率67%期間(7ヶ月目以降)の月額:
30万円 × 67% = 20万1,000円
| 復帰予定月 | 給付期間 | 受取総額の試算 | 変更による差額 |
|---|---|---|---|
| 6ヶ月目(変更なし) | 6ヶ月 | 24万円 × 6 = 144万円 | 基準額 |
| 7ヶ月目(1ヶ月延長) | 7ヶ月 | 144万円 + 20万1,000円 = 164万1,000円 | +20万1,000円 |
| 10ヶ月目(4ヶ月延長) | 10ヶ月 | 144万円 + 20万1,000円 × 4 = 224万4,000円 | +80万4,000円 |
| 5ヶ月目(1ヶ月短縮) | 5ヶ月 | 24万円 × 5 = 120万円 | −24万円 |
▶ まとめると、1ヶ月の延長・短縮で約20〜24万円の差が生じます。
給付率67%期間への移行月を含むかどうかで、実際の差額は大きく変動することに注意が必要です。
復帰予定日を変更できる条件とタイミング
変更申出の期限と企業への伝え方
育児・介護休業法では、復帰予定日の変更は原則として1ヶ月前までに企業(事業主)に申し出ることが義務付けられています(育児・介護休業法第7条)。
| 申出タイミング | 内容 | 手続き方法 |
|---|---|---|
| 復帰予定日の1ヶ月前まで(原則) | 変更申出の期限 | 書面で企業人事部へ提出 |
| 変更後すみやかに | 企業から「育児休業取扱通知書(変更版)」を受け取る | メール・郵送で受領 |
| 次回支給申請時 | ハローワーク届出(企業経由) | 企業の給与・人事部が対応 |
企業への伝え方のポイント
- 書面で残す:口頭だけでなく「育児休業申出(変更)書」を提出し、控えを保管する
- 記入例:会社指定様式がなければ、復帰予定日の新旧を記載した届出書を作成
- 人事・給与担当者へ直接連絡:ハローワークへの届出は企業が行うため、担当部署の漏れ防止が重要
- メールで送付し、受領確認を取ることが推奨
- 変更理由を明確に:延長の場合は保育所不承諾通知書など証明書類の準備を同時進行する
- 記載例:「子が保育所に入所できなかったため、1歳6ヶ月まで延長を申し出ます」
延長が認められるケース・認められないケースの違い
延長が認められる主なケース
| 延長の種類 | 必要な証明書類 | 延長後の育休終了日 | 提出期限 |
|---|---|---|---|
| 1歳6ヶ月まで(1回目延長) | 保育所不承諾通知書 等 | 子が1歳6ヶ月に達する日の前日 | 1歳到達日の前日まで |
| 2歳まで(2回目延長) | 保育所不承諾通知書 等(再申請) | 子が2歳に達する日の前日 | 1歳6ヶ月到達日の前日まで |
対象となる証明書類には、自治体の保育所不承諾通知書のほか、育児休業中であることを証明する書類(事業主の署名・押印が必要)が含まれます。
延長が認められないケース
- 保育所への申し込み自体をしていない(不承諾通知が取得できない)
- 子が2歳を超えている、またはすでに2歳育休を終了している
- 雇用保険の被保険者資格を喪失している
- 育休期間中に就業日数・時間が規定を超えた(月10日超、月80時間超)
- 企業の雇用継続の見込みが立たない場合(ただし企業の都合による場合を除く)
⚠️ 注意:保育所不承諾通知書は1歳到達日の直前に取得するよう自治体に確認を。期日を過ぎると延長手続き自体ができなくなるケースがあります。自治体によって通知書取得のルールが異なるため、子が1歳に近づいたら事前に問い合わせることを強く推奨します。
ハローワークへの届出手続きと必要書類
復帰予定日の変更手続きは、基本的に企業(事業主)が労働者に代わってハローワークへ届け出ます。以下のフローで進みます。
【復帰予定日変更の手続きフロー】
STEP1:労働者が企業へ変更申出
└─ 育児休業申出(変更)書を提出
└─ 延長の場合は証明書類を同時提出
└─ 企業への提出期限:復帰予定日の1ヶ月前
↓
STEP2:企業が書類を確認・準備
└─ 育児休業取扱通知書(変更版)を労働者に交付
└─ 変更内容の記録を給与・人事システムに入力
└─ ハローワーク提出書類を整備
↓
STEP3:企業がハローワークへ届出
└─ 育児休業給付受給資格確認票(変更事項を記載)
└─ 支給申請書(次回申請分から変更後の予定日を反映)
└─ 提出期限:次回の支給申請時(通常は毎月)
↓
STEP4:ハローワークが審査・給付金の支給
└─ 変更後の支給単位期間に基づいて給付金が計算・振込
└─ 振込は審査完了から約2週間後
企業が用意すべき書類
- 育児休業給付受給資格確認票(控除対象者全員分)
- 支給申請書(新旧の育休予定日が記載されたもの)
- 給与計算の根拠となる給与明細(直近6ヶ月分)
- 変更理由の説明書(延長の場合)
- 保育所不承諾通知書の写し(延長の場合)
育児休業給付受給資格確認票の変更記載ポイント
育児休業給付受給資格確認票(雇用保険法施行規則第102条の3)を変更申請する際、以下の項目を正確に記載することが必須です。
| 記載項目 | 記載内容 | 注意点 |
|---|---|---|
| 育児休業終了(予定)年月日 | 変更後の復帰予定日の前日 | 例:復帰日4月1日→記載は3月31日 |
| 変更理由 | 「延長」「早期復帰」など明記 | 詳細な理由があれば別紙で説明 |
| 子の生年月日 | 育児対象児の正確な生年月日 | 給付上限(2歳)計算の基準 |
| 就業予定日数 | 変更期間中の就業見込みを正確に記入 | 月10日以下であることを確認 |
| 企業の承認 | 事業主の署名・押印 | 押印漏れは受付不可 |
📋 人事担当者向けチェックリスト
– [ ] 変更申出書を労働者から受領済みか
– [ ] 変更日から1ヶ月以内のハローワーク提出可能か
– [ ] 育児休業取扱通知書(変更版)を労働者に交付済みか
– [ ] 確認票の変更記載に漏れ・誤りはないか(日付の前日指定など)
– [ ] 延長の場合、保育所不承諾通知書の原本確認済みか
– [ ] 次回支給申請書への反映スケジュールを確認済みか
– [ ] ハローワークへの提出書類一式が揃っているか
– [ ] 労働者に「ハローワーク届出完了予定日」を通知済みか
手続きが遅れた場合のリスクと対処法
手続きが遅延した場合、以下のリスクがあります。
リスク①:給付金の支給遅延
変更届出が遅れると、ハローワークの審査が次の支給申請に間に合わず、振込が1〜2ヶ月ずれ込むことがあります。遅延によって当初の受取予定月に給付金が入らず、家計計画に支障が出るケースも少なくありません。
リスク②:過払い・返還請求
早期復帰を届け出ずに復帰した場合、既払いの給付金の一部が過払いとなり、ハローワークから返還請求が届くことがあります。返還請求には利息(年3%程度)が加算される場合もあります。
リスク③:延長資格の喪失
1歳到達日を過ぎてから不承諾通知書を取得しようとしても、延長申請期限が過ぎているとして認められないケースがあります。この場合、給付金を受け取れる期間が6ヶ月で終了してしまい、最大18ヶ月分の給付機会を喪失することになります。
対処法:気づいた時点ですぐに企業の人事担当者へ連絡し、ハローワークの相談窓口に状況を説明することで、遡及対応ができる場合があります。各都道府県のハローワークには「育児休業給付専用窓口」が設置されており、電話・来所での相談が可能です。
復帰予定日変更に関するよくある質問まとめ
Q1. 復帰予定日を変更できる回数に上限はありますか?
法律上、回数に明確な上限はありません(育児・介護休業法第7条)。ただし、企業が就業規則で変更回数を制限している場合があるため、必ず社内規程を確認してください。変更のたびに企業への届出とハローワーク手続きが発生するため、実務的には「1〜2回」を想定した規程を設けている企業が多いです。
Q2. 復帰予定日を早めたら、すでに受け取った給付金を返さないといけませんか?
すでに支給された給付金は、適正な支給単位期間に基づいて支払われたものであれば返還不要です。ただし、復帰月に就労実績があるにもかかわらず給付金が支払われた場合は、過払い分の返還が求められます。早期復帰が決まった時点で速やかに企業へ届け出ることがトラブル防止の鉄則です。給付金の過払い返還請求は分割対応されることもあるため、返還請求を受けた場合はハローワークに相談できます。
Q3. 育休延長を申し出たら、企業に拒否されることはありますか?
保育所に入所できないなど育児・介護休業法が定める理由がある場合、企業は延長を拒否することができません(同法第5条第3項)。ただし、法定外の理由による延長は企業の判断に委ねられます。拒否された場合は、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に相談でき、不当な拒否と認められれば企業に是正勧告が行われます。
Q4. パートタイム・有期雇用でも復帰予定日の変更と給付金延長は可能ですか?
2022年10月の育児・介護休業法改正により、有期雇用労働者の育休取得要件が緩和されました。「引き続き雇用された期間が1年以上」という要件が撤廃され、雇用保険の加入要件を満たせば原則として延長も可能です。ただし、子が2歳に達する日を超えて雇用継続が見込まれることが条件になります。パート・契約社員の場合は、企業の雇用継続意思確認書類が求められることがあります。
Q5. ハローワークへの手続きは自分でしないといけませんか?
育児休業給付金の申請・変更届出は、原則として企業(事業主)が労働者に代わって行います。労働者が直接ハローワークへ出向く必要は基本的にありません。ただし、企業を通じた手続きが滞っている場合や、企業側での対応に不安がある場合は、労働者本人がハローワークに問い合わせることも可能です。その際は、雇用契約書・給与明細・育児休業取扱通知書などの書類を持参すると、スムーズに相談できます。
Q6. 復帰予定日の変更と同時に、育休の「分割取得」はできますか?
育児・介護休業法では、育休の分割取得について、2023年4月の改正で「最大3回まで分割可能」に拡大されました。ただし、復帰予定日の変更と分割取得は異なる手続きとなります。分割取得を予定している場合は、変更手続きと別に「育児休業申出書(分割)」を企業へ提出する必要があります。詳細はハローワークに相談してください。
まとめ:復帰予定日変更のポイントを押さえて給付金を確実に受け取ろう
復帰予定日の変更と育児休業給付金の関係を整理すると、以下の5点が重要です。
| ポイント | 内容 | 実行時期 |
|---|---|---|
| ① 変更は早めに | 復帰予定日の1ヶ月前までに企業へ申し出る | 決定したら即座 |
| ② 給付金への影響を試算する | 1ヶ月の延長・短縮で約20〜24万円の差が生じる(月給30万円モデル) | 申出前 |
| ③ 給付率80%の期間を把握する | 育休開始から180日目まで80%、以降は67% | 計画立案時 |
| ④ 延長には証明書類が必須 | 保育所不承諾通知書を1歳到達日前に取得する | 1歳到達1ヶ月前 |
| ⑤ 手続きは企業経由が原則 | 人事担当者への連絡が給付金受取の起点になる | 変更決定直後 |
育休中は何かと不安なことが多いですが、制度の仕組みを理解しておくことで「損をしない選択」ができます。変更を検討している場合は、まず企業の人事担当者に相談し、必要に応じてハローワークや社会保険労務士にも確認することをおすすめします。
各都道府県のハローワークでは、育児休業給付に関する無料相談窓口を設置しており、電話(ハローワークインターネットサービス)やオンライン相談も対応しています。気になることがあれば、遠慮なく活用してください。
【法的根拠一覧】
– 雇用保険法 第61条の4〜第61条の7(育児休業給付金)
– 育児・介護休業法 第5条・第7条(育児休業の申出・変更)
– 雇用保険法施行規則 第101条の11〜第101条の19
– 2023年4月施行 厚生労働大臣告示(給付率80%改定)
– 2022年10月施行 改正育児・介護休業法(有期雇用労働者の要件緩和)
– 厚生労働省 育児休業給付金ガイドブック(2024年版)

