育休給付金は「育休期間中はずっともらえる」と思っていませんか?実は、同じ育休期間中でも月によって支給される月と支給されない月が発生することがあります。その境界線を決めるのが、「就業日数」と「就業時間」という2つの判定基準です。
厚生労働省の雇用保険制度では、育休給付金の支給対象を月単位で判定しており、その基準は法令で厳密に定められています。この記事では、育休給付金の支給月・不支給月がどのように決まるのかを、法的根拠・具体的な計算例・ケース別シミュレーションとともにわかりやすく解説します。育休中に少しだけ職場に出勤した月がある方や、部分就労を検討中の方は、ぜひ最後までお読みください。
育休給付金はなぜ「月によって支給されない」のか?制度の基本を理解する
育休給付金の支給判定が「月単位」になっている理由
育休給付金(育児休業給付金)は、雇用保険制度の一環として支給される給付金です。その法的根拠は雇用保険法第61条の4に定められており、支給の要件・計算方法・判定基準の詳細は雇用保険法施行規則第101条の8~第101条の22によって規定されています。
この制度が「月単位」で判定される最大の理由は、育休中の就業状況を月ごとに確認しながら給付の必要性を判断するという仕組みにあります。育児休業は「仕事を休んでいる期間」に対して生活保障を行う制度です。そのため、就労実態がある月については支給対象から外すというルールが設けられています。
重要なのは、「育休期間全体がまるごと不支給になるわけではない」という点です。例えば12ヶ月の育休を取得した場合、そのうち10ヶ月が支給対象月、2ヶ月が不支給月という結果になることもあります。月ごとに個別に判定されるため、1ヶ月分が不支給になっても残りの月の給付には影響しません。
同じ育休期間でも支給月・不支給月が生まれるケース
育休中に支給されない月が発生するのは、主に以下のような状況です。
ケース①:職場復帰に向けた「ならし就業」をした月
育休終了前に段階的に職場復帰するため、週数日だけ出勤するケースがあります。この期間の就業日数や就業時間が一定以上になると、その月が不支給月となります。
ケース②:繁忙期に会社から臨時で呼ばれて出勤した月
「どうしても人手が足りないから数日だけ」という形で出勤した月も、日数・時間が基準を超えると不支給月になります。
ケース③:育休中の短時間就労(テレワーク・在宅業務を含む)が積み重なった月
在宅勤務や軽易な業務を担当した月でも、就業時間の合計が基準を超えれば不支給の対象です。
ケース④:出生時育児休業(パパ育休)との組み合わせで就業した月
2022年10月に創設された出生時育児休業制度では、一定範囲内の就業が認められています。ただし、通常の育休期間中は制度が異なる点に注意が必要です。
支給月・不支給月を決める2つの判定基準【就業日数と就業時間】
育休給付金の支給・不支給を決める判定基準は、次の2つです。
【支給される月の条件】
– 条件① 就業日数 ≤ 10日以下
– かつ
– 条件② 就業時間 ≤ 80時間以下
– → 両方を同時に満たす月が「支給対象月」
【支給されない月の条件】
– 条件① 就業日数 ≥ 11日以上
– または
– 条件② 就業時間 ≥ 80時間超
– → どちらか一方でも超えると「支給対象外」
この「AND条件」と「OR条件」の違いが重要です。支給されるためには両方の条件を満たす必要があり、支給されなくなるのはどちらか一方でも超えれば十分です。
判定基準① 就業日数は「月10日以下」が境界線
就業日数の上限は月10日以下です。11日以上出勤した月は、就業時間がどれだけ少なくても支給対象外になります。
「1日」のカウント方法で押さえておくべきポイント
| 状況 | カウント |
|---|---|
| 終日出勤(8時間勤務) | 1日 |
| 半日出勤(4時間勤務) | 1日 |
| 2時間だけ出勤 | 1日 |
| 在宅で1時間だけ作業 | 1日 |
| 出勤ゼロ(育児のみ) | カウントなし |
半日出勤であっても1日としてカウントされます。「午前だけ出て午後は帰った」という日も1日の就業日数に含まれるため、細かい出勤が積み重なると意外に早く10日の上限に到達します。
具体例
- 週2日×4週=8日出勤 → 就業時間次第では支給対象
- 週3日×4週=12日出勤 → 就業日数オーバーで支給対象外
- 月に10日きっかり出勤 → 就業時間が80時間以下であれば支給対象
判定基準② 就業時間は「月80時間以下」が境界線
就業時間の上限は月80時間以下です。就業日数が10日以下でも、1日あたりの労働時間が長ければ合計80時間を超えて支給対象外になるケースがあります。
就業時間のカウントに含まれるもの・含まれないもの
| 含まれるもの | 含まれないもの |
|---|---|
| 実際に業務を行った時間 | 通勤時間 |
| テレワーク・在宅業務の時間 | 休憩時間 |
| 会議・研修の参加時間 | 待機時間(業務なし) |
| 残業時間 | 育児・家事の時間 |
注意すべきは「就業時間80時間」のイメージ
80時間というと多く感じますが、例えば1日8時間勤務なら10日でちょうど80時間になります。「就業日数10日・就業時間80時間」は、フルタイム勤務でいえば「週2.5日ペースで働く状態」に相当します。これを超えると支給対象外です。
支給判定の全体フロー
以下のフローで自分の月ごとの状況を確認できます。
STEP 1:その月の就業日数を数える
↓
就業日数が11日以上?
→ YES → 【支給対象外】
→ NO(10日以下)→ STEP 2へ
↓
STEP 2:その月の就業時間を合計する
↓
就業時間が80時間超?
→ YES → 【支給対象外】
→ NO(80時間以下)→ 【支給対象月】
具体的な計算例とケース別シミュレーション
判定例一覧
| 事例 | 就業日数 | 就業時間 | 判定 | 理由 |
|---|---|---|---|---|
| 事例A | 8日 | 60時間 | ✅ 支給対象 | 両条件を満たす |
| 事例B | 10日 | 80時間 | ✅ 支給対象 | 上限ぴったりでOK |
| 事例C | 12日 | 70時間 | ❌ 支給対象外 | 就業日数が11日以上 |
| 事例D | 5日 | 90時間 | ❌ 支給対象外 | 就業時間が80時間超 |
| 事例E | 11日 | 85時間 | ❌ 支給対象外 | 両条件とも超過 |
| 事例F | 10日 | 79時間 | ✅ 支給対象 | 両条件を満たす(時間は1時間余裕あり) |
| 事例G | 0日 | 0時間 | ✅ 支給対象 | 完全に就業なし |
事例Bと事例Fのポイント:上限ぴったり(10日・80時間)は支給対象です。「10日を超えてから不支給」「80時間を超えてから不支給」という基準であるため、境界値は支給側に含まれます。
ケース別シミュレーション
ケース1:育休復帰に向けて「ならし出勤」をした月
前提条件
– 育休中の女性、復帰前月にならし出勤
– 週2日×4週(計8日)、1日6時間勤務
– 就業時間合計:6時間 × 8日 = 48時間
判定
– 就業日数:8日 ≤ 10日 ✅
– 就業時間:48時間 ≤ 80時間 ✅
– → 支給対象月
この月の育休給付金は支給されます。ただし、就業によって賃金が支払われた場合は、支給額が減額される可能性があります(後述)。
ケース2:繁忙期に週3日出勤した月
前提条件
– 育休中の男性、会社からの依頼で臨時出勤
– 週3日×4週(計12日)、1日4時間勤務
– 就業時間合計:4時間 × 12日 = 48時間
判定
– 就業日数:12日 ≥ 11日 ❌(就業日数オーバー)
– 就業時間:48時間 ≤ 80時間 ✅
– → 支給対象外月(就業日数の条件に引っかかる)
就業時間は基準内でも、日数が11日以上になっただけで支給対象外です。
ケース3:在宅テレワークで少しずつ仕事した月
前提条件
– 育休中のパパが在宅で軽易な業務を担当
– 週5日×4週(計20日)、1日1時間
– 就業時間合計:1時間 × 20日 = 20時間
判定
– 就業日数:20日 ≥ 11日 ❌(就業日数オーバー)
– 就業時間:20時間 ≤ 80時間 ✅
– → 支給対象外月
「1日1時間だけだから大丈夫」と思っていても、日数でカウントされるため注意が必要です。毎日少しでも働いた日がある場合、月の就業日数はすぐに10日を超えます。
ケース4:月の後半に就業ゼロで前半だけ出勤した月
前提条件
– 月の前半(1日~15日)に週2日ペースで出勤(計6日)
– 1日8時間勤務、就業時間合計:48時間
– 月の後半は完全に育休
判定
– 就業日数:6日 ≤ 10日 ✅
– 就業時間:48時間 ≤ 80時間 ✅
– → 支給対象月
就業が月の一部に集中していても、月全体のトータルで判定されます。月の半分だけ出勤しても、合計が基準以内なら支給されます。
支給額が減額される「賃金支払いがあった月」の扱い
支給対象月と判定されても、育休中に賃金が支払われた場合は支給額が減額されます。減額の仕組みは以下のとおりです。
減額の判定基準
育休給付金の支給額と受け取った賃金の合計が「休業開始時賃金月額の80%」を超えた場合、超えた分だけ給付金が減額されます。
計算式
支給額 = 休業開始時賃金月額 × 給付率 − 賃金支払い額(調整後)
【調整ルール】
賃金支払い額が「休業開始時賃金月額の80%」を超える部分
→ その分を給付金から控除
賃金支払い額が「休業開始時賃金月額の80%」以下
→ 減額なし(給付率どおり支給)
賃金支払い額が「休業開始時賃金月額の80%」以上
→ 給付金は支給されない
給付率について
| 育休開始からの期間 | 給付率 |
|---|---|
| 育休開始から180日目まで | 67% |
| 181日目以降 | 50% |
賃金減額シミュレーション
前提:休業開始時賃金月額=30万円、育休開始180日以内(給付率67%)
ケース①:賃金なし
– 育休給付金 = 30万円 × 67% = 20万1,000円
ケース②:賃金5万円支払われた場合
– 賃金5万円 + 給付金(67%)= 5万円 + 20万1,000円 = 25万1,000円
– 賃金月額の80% = 24万円
– 超過額:25万1,000円 − 24万円 = 1万1,000円
– 支給額 = 20万1,000円 − 1万1,000円 = 18万9,000円(一部減額)
ケース③:賃金15万円支払われた場合
– 賃金15万円 + 給付金(67%)= 15万円 + 20万1,000円 = 35万1,000円
– 賃金月額の80% = 24万円を大幅超過
– 賃金15万円だけで、30万円 × 80% = 24万円を超えているため → 給付金は0円(支給停止)
賃金が休業開始時賃金月額の80%以上になると、給付金は支給停止となります。日数・時間の条件を満たしていても、賃金が高額だと給付金がゼロになる点に注意してください。
支給単位期間とハローワークへの申請手続き
支給単位期間の考え方
育休給付金は2ヶ月分まとめて申請するのが原則です。ただし、月ごとの支給判定は個別に行われます。
支給単位期間とは、育休開始日を起点として1ヶ月ごとに区切られた期間のことです。例えば4月15日に育休を開始した場合、支給単位期間は以下のようになります。
| 期間 | 内容 |
|---|---|
| 第1期:4月15日〜5月14日 | 1ヶ月目の判定期間 |
| 第2期:5月15日〜6月14日 | 2ヶ月目の判定期間 |
| 第3期:6月15日〜7月14日 | 3ヶ月目の判定期間 |
「暦月(1日〜末日)」ではなく、育休開始日を起点とした1ヶ月単位で区切られる点が重要です。
ハローワークへの申請手順
育休給付金の申請は、原則として会社(事業主)がハローワークに行います。ただし、個人で申請することも可能です。
申請の流れ
STEP 1:育休開始(事業主または本人がハローワークに育休開始を届け出)
↓
STEP 2:初回申請(育休開始から2ヶ月経過後)
↓
STEP 3:2回目以降の申請(2ヶ月ごとに申請)
↓
STEP 4:育休終了・職場復帰で給付終了
必要書類(初回申請時)
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク所定の様式 |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 賃金月額を証明する書類 |
| 賃金台帳・出勤簿 | 就業日数・就業時間の確認に使用 |
| 母子健康手帳等(育児対象児童の確認書類) | 子の出生日・年齢の確認 |
2回目以降の申請書類
| 書類 | 内容 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | ハローワーク所定の様式 |
| 賃金台帳・出勤簿 | 申請対象期間の就業実績 |
申請期限:支給対象となる2ヶ月の期間終了後から2ヶ月以内に申請が必要です。申請が遅れると支給が受けられなくなる場合があります。
育休延長・パパ育休の場合の判定基準
育休延長(1歳以降)の場合
育休を1歳以降に延長した場合でも、同じ「就業日数10日以下・就業時間80時間以下」の基準が継続して適用されます。延長期間中も月ごとに就業実績を報告する必要があります。
最長支給期間
– 原則:子が1歳になるまで
– 延長:1歳6ヶ月まで(保育所未入所等の事情がある場合)
– 再延長:2歳まで(さらに入所不可の事情がある場合)
出生時育児休業給付金(パパ育休・産後パパ育休)の場合
2022年10月1日から新設された「出生時育児休業給付金」は、子の出生後8週間以内に取得できる最大28日間の育休に対する給付金です。
出生時育児休業給付金の特徴
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象期間 | 子の出生後8週間以内(最大28日間) |
| 給付率 | 67%(一律) |
| 就業の扱い | 労使協定があれば一定範囲内で就業可能 |
| 就業日数の上限 | 取得日数の半分以下(例:28日取得なら14日以下) |
通常の育休期間中と異なり、出生時育児休業中の就業可能日数は「取得日数の半分以下」という別基準になっています。ただし、就業した日数・時間数によっては給付金が減額・不支給になるため、詳細はハローワークに確認してください。
自分の月を確認する方法:チェックリスト
育休中の各月について、以下のチェックリストで支給対象かどうかを確認してください。
月ごとの確認チェックリスト
□ その月に出勤した日(在宅勤務・テレワーク含む)を数える
→ 10日以下か?
YES → 次へ / NO → その月は支給対象外
□ その月に就業した合計時間(休憩・通勤を除く)を計算する
→ 80時間以下か?
YES → 次へ / NO → その月は支給対象外
□ その月に会社から賃金が支払われたか確認する
→ 賃金が休業開始時賃金月額の80%以上か?
YES → 給付金は支給停止 / NO → 次へ
□ 以上をすべてクリア → 支給対象月(給付率に応じた金額を受け取れる)
記録しておくと便利な情報
- 出勤日・テレワーク実施日(カレンダーに記録)
- 1日あたりの就業時間(メモ・日報など)
- 会社から支払われた賃金の金額と支払日
記録が不明確な場合、ハローワークから「就業状況申告書」の提出を求められることがあります。会社の賃金台帳・出勤簿でも確認できますが、自分でも記録を持っておくと安心です。
よくある質問
Q1. 育休中にボランティア活動や副業をした場合も就業日数に含まれますか?
雇用関係に基づく就業(本業・副業のいずれも)は就業日数・時間のカウント対象です。ただし、無報酬のボランティア活動は原則として対象外とされています。副業・兼業がある場合は、事前にハローワークに確認することをおすすめします。
Q2. 育休中に出張や社外研修に参加した場合はカウントされますか?
業務命令に基づく出張・研修は「就業」とみなされ、就業日数・就業時間にカウントされます。「会社に行っただけ」「移動しただけ」であっても、業務を行った時間として算入されます。
Q3. 就業日数が10日を超えてしまった月はどうなりますか?
その月分の育休給付金は支給されません。ただし、前後の月が条件を満たしていれば、それらの月の給付金には影響しません。月ごとに独立した判定なので、1ヶ月不支給になっても育休全体が失効するわけではありません。
Q4. ハローワークへの申請は会社経由でないといけませんか?
原則として事業主を通じた申請ですが、「事業主が申請を行わない」または「事業主に申請を依頼できない事情がある」場合は、被保険者本人が直接ハローワークに申請することも可能です。この場合は、ハローワークに相談のうえ必要書類を確認してください。
Q5. 就業時間の記録が残っていない場合、どうすればいいですか?
就業時間の記録がない場合は、会社の賃金台帳・出勤簿・タイムカードなどの客観的な記録が判断材料になります。記録が存在しない場合はハローワークに相談し、申告内容に基づいて処理されることがあります。育休中の就業については、都度記録を取る習慣をつけておくことが重要です。
Q6. 給付金の支給は何日頃に振り込まれますか?
申請書がハローワークで受理・審査されてから、概ね1〜2週間程度で指定口座に振り込まれます。申請タイミングや審査の混雑状況によって多少前後しますが、通常は2ヶ月ごとの申請後1〜2週間が目安です。
まとめ:育休給付金の支給月判定で覚えておくべき3つのポイント
育休給付金の支給月・不支給月の判定について、最後に重要ポイントを整理します。
ポイント① 2つの条件を「両方」満たす月だけが支給対象
就業日数10日以下「かつ」就業時間80時間以下。どちらか一方でも超えると支給対象外です。この判定基準は雇用保険法施行規則で定められた厳密な要件であり、例外はありません。
ポイント② 半日出勤・在宅テレワークも「1日」としてカウントされる
わずかな就業でも就業日数に計上されます。毎日少しずつ仕事をすると、あっという間に10日を超えてしまいます。育休中に就業を検討する際は、日数を事前に計算して計画することが重要です。
ポイント③ 判定は月単位・独立して行われる
1ヶ月が不支給でも、他の月の給付金には影響しません。ただし、その月の賃金額によっては給付金が減額・停止になる場合もあるので、賃金と給付金の合計が休業開始時賃金月額の80%を超えないよう注意が必要です。
育休中に少しでも就業を検討している場合は、事前に就業日数・時間・賃金の見込みを計算し、ハローワークや会社の担当者に相談することをおすすめします。不明な点があれば、最寄りのハローワークに問い合わせると、個別の状況に応じたアドバイスを受けることができます。


