育児休業(育休)中に「せっかく時間があるから、スキルアップや資格取得に挑戦したい」と考えるパパ・ママが増えています。しかし、「オンライン講座を受講すると育児休業給付金が減るのでは?」「教育訓練給付金と併用できるの?」といった不安から、一歩踏み出せない方も多いのではないでしょうか。
この記事では、育休中の学び直しが給付金に与える影響を正確に整理し、安心してキャリアチェンジ・スキルアップに取り組むための情報を2025年最新の制度情報をもとに解説します。
育休中に学び直しを始めたい人が最初に知るべき3つのポイント
| 給付金の種類 | 学び直し活動中の受給 | 減額・不支給の条件 | 併用可否 |
|---|---|---|---|
| 育児休業給付金 | 通常通り受給可能 | 就業日数が多い・育児と両立できない場合 | ◎併用可 |
| 教育訓練給付金 | 受給要件確認が必須 | 指定講座以外・要件不満たしの場合 | ◎併用可 |
| 失業給付 | 受給不可 | 育休中は受給要件外 | ✕併用不可 |
なぜ育休中の学び直しが注目されているのか
近年、「リカレント教育」や「人的資本投資」という言葉が政府・企業の両面から注目を集めています。岸田政権以降の経済政策でも、社会人の学び直しへの支援は大きな柱のひとつとして位置づけられており、2024〜2025年にかけて関連制度の拡充が続いています。
育休中は、職場の業務から離れた貴重な時間です。育児の合間にオンライン講座を受講してIT・語学・医療・法律などの資格を取得し、復職後のキャリアアップや職種変更(キャリアチェンジ)を目指す動きは、特に30代の育休取得者を中心に広がっています。
また、パパ育休(出生時育児休業・産後パパ育休)の普及により、男性が育休中に学び直しをするケースも増加しています。育休は単なる「休み」ではなく、次のキャリアへの助走期間として積極的に活用できる制度です。
学び直しで「給付金が減る」は本当か?結論から先に伝える
結論を先にお伝えします。
育休中にオンライン講座を受講するだけでは、育児休業給付金は減額されません。
育児休業給付金が減額・不支給になる主な条件は、育休中に就労して月80,000円を超える収入を得た場合です。オンライン講座の「受講」自体は就労に該当しないため、給付金への直接的な影響はありません。
ただし、以下のようなケースでは注意が必要です。
- オンライン講座の受講が業務委託・副業収入を伴う場合
- 講座の課題として有償の成果物を納品するケース
- 講座修了後に即座に復職が求められる状況
これらの詳細は後述しますが、まずは「受講=減額」という誤解を解消したうえで、正確な条件を確認していきましょう。
育児休業給付金の基本ルール|学び直しに関わる条件を整理
育児休業給付金の受給要件チェックリスト
育児休業給付金を受け取るには、以下の要件をすべて満たしている必要があります。申請前に必ず確認してください。
☑ 雇用保険に加入している
雇用保険の被保険者であることが大前提です。週20時間以上の労働者が対象となります。
☑ 育休開始前の2年間に「みなし被保険者期間」が12カ月以上ある
育休開始日前の2年間を遡り、1カ月のうち11日以上働いた月が12カ月以上あることが必要です。出産前の産前休業・産後休業期間もカウントの対象外となりますが、その分はさらに遡ることができます。
☑ 育休中に就労(就業)している日数が一定以内
育休期間中に働いた日数が月10日以内(10日を超える場合は就労時間が80時間以内)であれば、育休・給付金を継続できます。
☑ 職場に育休取得を申請し、育休開始から2週間以内に申請手続きを行っている
申請は事業主(会社)を通じてハローワークへ行います。個人で直接申請するケースはほとんどありません。
☑ 育休の対象となる子の年齢が条件内
原則として子が1歳に達するまで。保育所不承諾などの特定事情があれば最長2歳まで延長可能。2025年4月以降の新制度では最長3歳まで対応可能となります(後述)。
給付金が「減額・不支給」になる3つのケース
育休中の学び直しにかかわる「減額・不支給リスク」を、具体的な数字とともに整理します。
ケース① 月80,000円を超える就労収入がある場合
育休中に就労して得た賃金が、育休前の賃金の80%以上、または月額80,000円(具体的な基準額)を超えた場合、給付金は以下のように変動します。
| 就労収入の水準 | 給付金への影響 |
|---|---|
| 月80,000円未満 | 原則として給付金は全額支給 |
| 月80,000円以上〜賃金の80%未満 | 給付金が一部減額(差額分を補填する形で調整) |
| 就労収入+給付金の合計が賃金の80%以上 | 超えた分だけ給付金が減額 |
| 就労収入が育休前賃金の80%以上 | 給付金は不支給 |
具体例:
育休前の月収が30万円だった場合、休業前賃金日額は約10,000円、2カ月分の給付額は約36万円が目安です。この期間に副業などで4万円を得ても8万円の基準を下回るため給付金は変わりません。しかし、9万円の収入があれば差額1万円分が減額されます。
⚠️ 注意:オンライン講座の「受講費用の支払い」は支出であり、収入ではないため影響しません。ただし、講座の一環でフリーランス案件を受注して報酬を得た場合は就労収入として計上されます。
ケース② 育休中に復職(就労日数・時間が超過)した場合
育休中に職場からの依頼で業務を行い、就労日数が月10日超かつ就労時間が月80時間超となった場合、その月の育児休業は「取得されていない」とみなされ、給付金は支給されません。
学び直しとの関連で注意が必要なのは、オンライン講座の修了をきっかけに職場から早期復職を求められるケースです。本人が望まなくても職場の意向で復職扱いになってしまうことがありますので、会社とのコミュニケーションを事前に整えておくことが重要です。
ケース③ 申請漏れ・期限超過
育児休業給付金の申請は、事業主を通じて支給単位期間(原則2カ月ごと)の末日翌日から起算して2カ月以内に行う必要があります。この期限を過ぎると受け取れなくなる場合があります。
学び直しや育児で忙しくなるほど申請管理がおろそかになりがちです。会社の担当者と連携し、申請スケジュールを事前に共有しておきましょう。
2025年以降の改正ポイント
2025年(令和7年)4月以降、育児・介護休業法および雇用保険法の改正により、育休制度はさらに使いやすくなります。主な改正点は以下のとおりです。
① 給付対象期間が「最長3歳まで」に延長
従来は最長2歳までだった育児休業給付金の支給期間が、2025年4月1日以降に育休を取得した場合、最長子が3歳になるまで延長される方向で整備が進んでいます(保育所不承諾などの要件あり)。学び直しにあてられる時間が長くなることを意味します。
② 出生後休業支援給付金の創設(2025年4月〜)
子の出生直後(産後14週間以内)に両親ともに育休を取得した場合、給付率が一時的に最大手取りの実質100%相当(給付金67%+社会保険料免除の合算)となる新給付が開始されます。これにより、パパも安心して育休と学び直しを両立しやすくなります。
③ 育休取得の柔軟化
分割取得・連続取得の選択肢が拡充され、育休の取り方のバリエーションが増えます。「学び直し期間に合わせて育休を計画的に活用する」という戦略が立てやすくなります。
教育訓練給付金との併用|育休中でも使える?
教育訓練給付金とは何か
教育訓練給付金は、雇用保険に加入している(または加入していた)労働者が、厚生労働大臣指定の教育訓練講座を受講・修了した際に、受講費用の一部を支給してもらえる制度です(雇用保険法第60条〜第64条)。
主に以下の3種類があります。
| 種類 | 給付率 | 上限額 | 対象講座の例 |
|---|---|---|---|
| 一般教育訓練給付金 | 受講費用の20% | 年10万円 | 簿記、英語、ITパスポートなど |
| 特定一般教育訓練給付金 | 受講費用の40% | 年20万円 | 介護職員初任者研修、大型免許など |
| 専門実践教育訓練給付金 | 受講費用の50〜80% | 年40〜56万円 | 看護師、社会福祉士、MBA、ITエンジニア養成など |
育休中に教育訓練給付金は受け取れるか?
結論:育休中でも、条件を満たせば教育訓練給付金を受け取ることができます。
ただし、以下の点に注意が必要です。
条件① 受講する講座が「指定教育訓練機関の認定講座」であること
厚生労働省が指定した機関が提供する講座でなければ、給付の対象になりません。講座を選ぶ際は、必ずハローワークの「教育訓練講座検索システム」で認定の有無を確認してください。オンライン講座であっても、指定を受けていれば対象になります。
条件② 受給資格を確認する手続きが必要
「教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票」をハローワークに提出し、受給資格の確認を受ける必要があります。講座開始の1カ月前までに手続きを行ってください。
条件③ 育休中であっても雇用保険の被保険者資格を有していること
育休中は雇用保険の被保険者資格を失いません。したがって、在職中と同様に教育訓練給付金の申請資格があります。ただし、育休の終了後(復職後または退職後)に給付を申請するケースと、育休中に申請するケースで手続きの流れが異なる場合があるため、ハローワークへ事前に確認することを強く推奨します。
育児休業給付金と教育訓練給付金は同時に受け取れるか?
原則として、同時受給は可能です。
育児休業給付金は「育休中の所得保障」であり、教育訓練給付金は「スキルアップのための受講費用補助」という位置づけのため、両者は性質が異なります。一方が他方の受給を妨げるという規定は現行制度にはありません。
ただし、以下の点を押さえておきましょう。
- 専門実践教育訓練給付金(長期講座)の場合:受講期間中に「訓練対応キャリアコンサルティング」を受けることが給付要件に含まれているため、育休中のスケジュールに組み込む必要があります。
- 教育訓練支援給付金(専門実践と連動):離職者向けの追加給付のため、育休中の在職者には適用されません。
- 受講開始後の申請タイミング:給付金の申請は受講修了後が基本です。育休終了前後で申請のタイミングを調整しておくとスムーズです。
育休中の学び直し・キャリアチェンジに向けた具体的な手続き
STEP 1:育児休業給付金の手続きを会社と確認する
育休開始から2週間以内に、事業主が「育児休業給付受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出します。この手続きは原則として会社(事業主)が代行します。
| 書類名 | 準備者 | 提出先 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票 | 事業主 | ハローワーク |
| 育児休業給付金支給申請書 | 事業主(従業員情報を取得して作成) | ハローワーク |
| 母子健康手帳の写し(出生確認) | 本人 | 事業主経由 |
| 雇用保険被保険者証 | 本人保管 | 確認用 |
育休開始後は2カ月ごとに支給申請を繰り返します。学び直しが忙しい時期でも申請期限を見落とさないよう、会社の担当者(人事・総務)と締め切りを共有しておきましょう。
STEP 2:学びたい講座が「給付金対象かどうか」を確認する
オンライン講座を選ぶ前に、以下の確認フローを実行してください。
- ハローワークの講座検索システム(https://www.hellowork.mhlw.go.jp/)にアクセスする
- 受講したい講座名・分野・実施機関で検索する
- 「指定番号」が付与されている講座であれば給付対象
- 給付の種類(一般・特定一般・専門実践)を確認する
指定外の講座でもスキルアップ・資格取得の価値は変わりませんが、費用負担の面では大きく異なります。できるだけ指定講座の中から選ぶことをおすすめします。
STEP 3:受給資格の確認手続きをハローワークで行う
教育訓練給付金を使いたい場合は、講座開始1カ月前までに最寄りのハローワークへ以下の書類を持参して受給資格確認を受けます。
必要書類:
– 教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票(ハローワーク窓口で入手またはダウンロード)
– 雇用保険被保険者証
– マイナンバーカードまたは通知カード+本人確認書類
– 写真(縦3cm×横2.5cm)1枚
– 受講する講座の「受講申込書」または「受講予定証明書」(施設発行)
育休中の場合、ハローワークの窓口で「育休中である旨」を伝えると、担当者が適切に対応してくれます。
STEP 4:受講中・修了後の給付申請
一般・特定一般教育訓練給付金の場合:
講座の受講修了日から1カ月以内に支給申請書・修了証明書・領収書をハローワークへ提出します。
専門実践教育訓練給付金の場合:
受講中は6カ月ごとに在籍確認の申請が必要です。修了後は修了証明書と資格取得証明書(取得した場合)を提出し、追加給付(合計70〜80%)を受け取ります。
育休中の学び直し、こんな場合はどうする?よくある疑問と注意点
育休中に学び直しを行う方が実際に悩みやすいポイントをまとめます。
副業・フリーランス案件と学び直しを並行する場合
学び直しの延長でフリーランス案件を受注した場合、その収入は「就労収入」として育児休業給付金の計算対象になります。月8万円を超えないよう収入管理を行い、事業主にも就労事実を報告する義務があります。申告せずに収入を得ていた場合、給付金の返還を求められるリスクがあるため、必ず適切に申告してください。
職場から「育休中に業務メールに答えてほしい」と言われた場合
就労日数・時間の基準(月10日以内、または80時間以内)の範囲内であれば育休・給付金は継続します。ただし、就労実績として記録されるため、会社の担当者が正確に申告できるよう記録を残しておくことが重要です。
認定外のオンライン講座(YouTubeやUdemyなど)で学ぶ場合
教育訓練給付金の対象にはなりませんが、育児休業給付金への影響もまったくありません。自己負担での受講は自由です。スキルアップ目的であれば、月額数千円で受講できる講座を活用する方法も有効です。
専門実践教育訓練給付金の講座は育休中から受講を始められるか
開始時期に制限はなく、育休中から開始することも可能です。ただし、長期講座(2〜4年)の場合、復職後も受講を継続するスケジュール調整が必要です。会社の上司・人事とキャリアプランを共有しておくとスムーズです。
よくある質問(FAQ)
Q1. 育休中にオンライン講座を受講しても、育児休業給付金は減りませんか?
はい、受講するだけでは減りません。給付金が減額されるのは、就労して月8万円を超える収入を得た場合や、就労日数が月10日を超えた場合です。受講費用を支払うことは「収入」ではないため、給付金に影響しません。
Q2. 教育訓練給付金と育児休業給付金は同時に受け取れますか?
原則として可能です。両制度は目的・性質が異なるため、一方の受給が他方を妨げる規定はありません。ただし、専門実践教育訓練給付金の一部メニュー(教育訓練支援給付金)は離職者向けのため、在職育休中には適用されない点に注意が必要です。
Q3. 指定を受けていないオンライン講座では教育訓練給付金は使えませんか?
使えません。教育訓練給付金は、厚生労働大臣が指定した機関・講座のみが対象です。受講前にハローワークの講座検索システムで必ず確認してください。なお、指定外の講座であっても育休の取得や育児休業給付金の受給には何ら影響しません。
Q4. 育休中に副業で収入を得た場合、どのように申告すれば良いですか?
育休中に就労した事実と収入額は、事業主を通じてハローワークへ正確に報告する義務があります。報告方法は「育児休業給付金支給申請書」の就労欄への記載です。意図せず記載漏れが生じないよう、就労の都度メモを残して事業主と情報共有しておくことをおすすめします。
Q5. 2025年4月以降に育休を開始する場合、何が変わりますか?
主な変更点は「出生後休業支援給付金(育休取得時の実質手取り100%相当の実現)」と「育休給付対象期間の最長3歳までへの拡充」です。いずれも2025年4月1日以降に育休を開始したケースが対象となる見込みです。最新情報は厚生労働省またはハローワークの公式サイトで確認してください。
Q6. パパ育休(出生時育児休業)中にも学び直しはできますか?
できます。出生時育児休業(産後パパ育休)は子の出生後8週間以内に最大28日間取得できる制度で、育児休業給付金も支給されます。就労制限や収入制限のルールは通常の育休と同様のため、受講のみ(収入を伴わない)であれば給付金への影響はありません。
まとめ|育休中の学び直しは正しく制度を理解すれば怖くない
育休中の学び直し・キャリアチェンジを検討するうえで、最も大切なポイントをまとめます。
| 確認事項 | ポイント |
|---|---|
| 給付金の減額条件 | 月8万円超の就労収入がなければ原則影響なし |
| 教育訓練給付金との併用 | 指定講座であれば同時受給が可能 |
| 受講する講座の確認 | ハローワークの検索システムで指定番号を確認 |
| 申請手続きの管理 | 会社担当者と2カ月ごとの申請スケジュールを共有 |
| 2025年の制度改正 | 給付期間延長・新給付金の追加に注目 |
育休中は「給付金が減るかもしれない」という不安から、本来できることに二の足を踏むケースが少なくありません。しかし、正しい制度の仕組みを理解すれば、オンライン講座での学び直しは育児休業給付金にほとんど影響しないことが分かります。
不明な点があれば、最寄りのハローワークや会社の人事担当者に相談することを躊躇わないでください。育児・介護休業法および雇用保険法で定められた権利を賢く活用して、育休後のキャリアを一歩先へ進める準備を今から始めましょう。
参考法令・公的情報源
– 育児・介護休業法(第5条・第9条)
– 雇用保険法(第60条〜第64条、第62条の7)
– 厚生労働省「育児休業給付の内容と支給申請手続き」
– ハローワークインターネットサービス「教育訓練講座検索」
– 厚生労働省「令和7年育児・介護休業法等改正について」
⚠️ 本記事の情報は2025年時点の制度に基づいています。制度は法改正により変更される場合があります。最新情報は必ず公的機関の公式情報でご確認ください。


