月額上限廃止で育休給付金はいくら増える?2025年改正を完全解説

月額上限廃止で育休給付金はいくら増える?2025年改正を完全解説 育休給付金

2025年4月、育休給付金に関する重要な制度改正が施行されました。「月額上限廃止」という変更により、特に高収入の方が育児休業中に受け取れる給付金の額が大幅に増加します。

「自分の受取額はいくら変わるの?」「申請手続きに変更はある?」——そんな疑問を持つ育休取得予定の方や企業の人事担当者に向けて、改正の背景から具体的な計算方法・申請手続きまで、この一記事で完全に解説します。


2025年4月「育休給付金の月額上限廃止」とは何か?改正の全体像

年収 改正前(月額上限あり) 改正後(月額上限廃止) 増加額(月額)
400万円 上限額(28.6万円程度) 約23万円 変動なし
600万円 上限額(28.6万円程度) 約33万円 +4~5万円
800万円 上限額(28.6万円程度) 約44万円 +15~16万円
1000万円 上限額(28.6万円程度) 約55万円 +26~27万円

育休給付金の月額上限廃止とは、これまで給付金の支給額に設けられていた「1ヶ月あたりの受取上限額」を撤廃するという制度改正です。

法的根拠は「育児・介護休業法等一部改正法(令和5年法律第28号)」であり、2025年4月1日より施行されています。改正の正式な根拠となる雇用保険法の条文は第61条〜第67条に定められており、施行規則第101条〜第118条も合わせて整備されました。

一言で表すと、「これまで上限額に縛られて給付が頭打ちになっていた高収入層が、実際の賃金に見合った給付金を受け取れるようになる」改正です。

なぜ月額上限が廃止されることになったのか?

改正の背景には、高収入層が育休取得を経済的理由で躊躇してしまうという現実的な課題がありました。

たとえば年収800万円以上の方が育休を取得しようとすると、育休給付金には月額上限があるため、実際の賃金の67%が丸ごと受け取れるわけではありませんでした。月収が高いほど「受取額÷月収」の比率が低下し、育休中の収入ダウンが大きく感じられます。これが特に男性の育休取得を阻む要因の一つとして指摘されていました。

政府が掲げる少子化対策の柱の一つは「男性育休の取得率向上」です。2025年までに男性育休取得率50%、2030年までに85%という目標を達成するためには、高収入層を含むすべての働き手が収入面の不安なく育休を取得できる環境整備が不可欠です。

月額上限の廃止は、この政策目標に直結した措置であり、「育休を取ると損をする」という経済的ハードルを取り除くための改革といえます。

改正前の上限額はいくらだったか?

廃止前の育休給付金には以下の支給上限額が設定されていました(2025年3月31日以前の制度)。

給付率 適用期間 1日あたりの上限日額 月額上限の目安(30日換算)
67% 育休開始〜180日目 約15,190円 約305,721円
50% 181日目以降 約11,335円 約228,150円

※上限日額は雇用保険の「休業開始時賃金日額の上限」に依存するため、年度ごとに改定されます。上記は2024年度時点の参考値です。

この上限が実際に影響を及ぼす年収の目安は、おおむね年収540万円(月収45万円)以上の方でした。月収45万円を超える場合、計算上は67%相当の給付金が発生しますが、上限額でカットされていたわけです。

年収が高ければ高いほど「上限カット率」は大きくなり、年収1,000万円の方が受け取れる給付金は、本来もらえる67%相当のわずか半分以下になるケースもありました。


【金額比較】月額上限廃止で受取額は具体的にどう変わる?

月額上限廃止の影響を最もわかりやすく確認するために、実際の金額変化をシミュレーションで見ていきましょう。

育休給付金の基本的な計算式(給付率67%・50%の仕組み)

育休給付金は、以下の計算式に基づいて支給されます。

【育休開始〜180日目(最初の6ヶ月)】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%

【181日目以降】
支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 50%

休業開始時賃金日額は、育児休業開始前6ヶ月間の賃金総額を180で割った金額です。

休業開始時賃金日額 = 育休開始前6ヶ月間の賃金合計 ÷ 180

「支給日数」は原則30日(月ごとの申請)ですが、最終月は実際の日数に基づいて計算されます。

改正前は、この計算結果が「1日あたりの上限日額」を超える場合、上限額に制限されていました。改正後はこの上限が廃止されるため、計算式の結果がそのまま受取額になります。

年収別シミュレーション:改正前後の受取額比較

以下は、育休開始から180日以内(給付率67%)での月額給付金を年収別に比較した試算です(1ヶ月=30日として計算)。

年収(月収) 賃金日額 改正前の月額受取額 改正後の月額受取額 増加額
360万円(月30万円) 10,000円 201,000円 201,000円 変化なし
480万円(月40万円) 13,333円 268,000円 268,000円 変化なし
600万円(月50万円) 16,667円 上限適用:約305,700円 335,000円 +約29,300円
720万円(月60万円) 20,000円 上限適用:約305,700円 402,000円 +約96,300円
960万円(月80万円) 26,667円 上限適用:約305,700円 536,000円 +約230,300円
1,200万円(月100万円) 33,333円 上限適用:約305,700円 670,000円 +約364,300円

※上記はあくまで概算シミュレーションです。実際の支給額は、賃金支払基礎日数・就業日数・雇用保険の被保険者区分などによって異なります。正確な金額はハローワークへご確認ください。

このシミュレーションが示す通り、年収約540万円(月収45万円)以下の方には影響がありません。変化が生じるのは、それ以上の収入帯の方です。年収が高くなるほど増額幅は大きく、年収1,200万円の方は月に36万円以上も受取額が増える計算になります。

手取り換算での実感値:社会保険料免除との組み合わせ効果

育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)の本人負担分が免除される特例があります(育児休業等期間中の社会保険料免除制度)。この制度と月額上限廃止を組み合わせると、手取り換算での経済的メリットはさらに大きくなります。

たとえば月収80万円の方が6ヶ月育休を取得した場合:

  • 改正前の月次手取り相当額:給付金305,700円 + 社会保険料免除分(約10〜12万円)= 約42〜43万円
  • 改正後の月次手取り相当額:給付金536,000円 + 社会保険料免除分(約10〜12万円)= 約64〜65万円

通常勤務時の手取りと比較しても、改正後は実質的な手取り維持率が大幅に改善されます。これは高収入層における育休取得の経済的障壁を大きく軽減するものです。


申請手続きの流れ:育休給付金をもらうために何をすべきか

月額上限廃止による申請手続き自体の変更はありません。改正前と同じ手順で申請を行えば、自動的に改正後の計算式が適用されます。ただし、手続きの流れを正確に把握しておくことで申請漏れを防げます。

育休給付金申請の全体フロー

STEP 1:育児休業の開始
    ↓
STEP 2:受給資格確認(育休開始前〜開始後速やかに)
    ※事業主を通じてハローワークへ届出
    ↓
STEP 3:初回申請(育休開始から4ヶ月以内)
    ※「育児休業給付金受給資格確認票・支給申請書」を事業主経由で提出
    ↓
STEP 4:2ヶ月ごとの継続申請
    ※原則2ヶ月に1回、ハローワークへ申請
    ↓
STEP 5:給付金の振込
    ※申請月の翌月末を目安に指定口座へ振込
    ↓
STEP 6:育休終了・最終申請
    ※職場復帰後に必要書類を提出して手続き完了

重要なのは、育休給付金の申請は原則として事業主(会社)を通じて行う点です。個人が直接ハローワークに持ち込む形ではなく、会社の総務・人事担当者が窓口となります。

初回申請で必要な書類一覧

書類 準備する人 補足・注意点
育児休業給付金受給資格確認票・支給申請書(ハローワーク所定様式) 事業主 ハローワークの窓口またはオンラインで取得
母子健康手帳(写し) 被保険者本人 子の氏名・出生日が確認できるページ
育児休業開始日が確認できる書類 被保険者本人 育児休業申出書、勤務規則など
雇用保険被保険者証 事業主 被保険者番号の確認に使用
賃金台帳・出勤簿(写し) 事業主 直近6ヶ月分(賃金支払基礎日数の確認用)
預金通帳またはキャッシュカード(写し) 被保険者本人 振込先口座の確認用

マイナポータルを活用した電子申請にも対応しています。企業によってはオンラインで完結できる場合があります。

申請期限:遅れると給付を受け取れなくなる

育休給付金の申請には期限があります。

  • 初回申請の期限:育児休業を開始した日から起算して4ヶ月を経過する日の属する月の末日
  • 継続申請(2ヶ月ごと):支給単位期間終了日の翌日から起算して2ヶ月を経過する日

期限を過ぎると時効(2年)が適用され、受給権が失われる可能性があります。特に初回申請の4ヶ月という期限は意外と短いため、育休開始と同時に会社の担当者へ申請手続きの依頼を伝えることが重要です。


企業の人事担当者が対応すべきこと

2025年4月以降に育休を開始する従業員については、月額上限廃止の新しい計算ロジックが自動的に適用されます。企業側の手続き自体に大きな変更はありませんが、以下の点を確認・整備しておく必要があります。

社内規程・育休申請フォームの見直し

一部の企業では、社内の育休規程や申請フォームに「給付金の上限額」を記載している場合があります。これらの記載が古いままだと従業員に誤情報を提供することになるため、2025年4月以降の改正内容を反映した情報更新を行ってください。

給付金額の試算サポート

改正後は高収入の従業員ほど給付金額が増加します。特に年収600万円以上の従業員から「実際にいくらもらえるか」という問い合わせが増えることが予想されます。人事担当者として以下を準備しておくと対応がスムーズです。

  1. 賃金日額の計算方法の確認(直近6ヶ月賃金 ÷ 180)
  2. 育休給付金の計算シートの用意(給付率67%・50%・支給日数を入力すれば計算できるExcelシートなど)
  3. ハローワークへの問い合わせ窓口案内(複雑なケースは専門機関に委ねる)

男性育休取得推進の文脈での周知

月額上限廃止は、男性育休の取得促進を後押しする改正でもあります。特に管理職や高収入の男性従業員に対して「育休中の給付金が改正で大幅に増える」という情報を積極的に周知することが、取得率向上につながります。社内報やイントラネットへの掲載など、具体的な啓発活動を検討してみてください。


月額上限廃止と合わせて知っておきたい関連制度

2025年の改正は月額上限廃止だけではありません。育休給付金に関連する他の制度についても確認しておきましょう。

出生時育児休業給付金(産後パパ育休)

2022年10月に創設された「産後パパ育休」に対応する給付金です。子の出生後8週間以内に、最大4週間(28日)の休業を2回に分割して取得できます。

  • 給付率:休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 67%
  • 対象:主に父親(母親も要件を満たせば利用可)
  • 月額上限:2025年4月改正により廃止(育休給付金と同様)

パパ・ママ育休プラス(両親育休特例)

両親ともに育休を取得する場合、子が1歳2ヶ月になるまで育休を取得できる特例です(通常は1歳まで)。

  • 父親が育休を取得することが条件
  • 1人あたりの取得上限は1年間のまま(延長されるのは終了期限のみ)

延長申請:1歳6ヶ月・2歳まで

保育所への入所が叶わなかった場合などには、育休を1歳6ヶ月または2歳まで延長することができます。延長後も育休給付金(給付率50%)の受給が継続されます。

延長には期限と手続きが必要です。1歳の誕生日の前日までに延長申請を行う必要があり、保育所の不承諾通知書などが必要書類として求められます。


受給資格を確認する際の注意点

月額上限廃止によって給付金額が増える一方で、受給資格の要件に変更はありません。以下の要件を満たしているか、事前に確認することが重要です。

要件 内容
雇用保険の加入 育休開始時点で雇用保険の被保険者であること
加入期間 育休開始日まで継続して12ヶ月以上の加入
就業実績 直近2年以内に「賃金支払基礎日数が11日以上」の月が12ヶ月以上あること
休業期間 連続して1ヶ月以上の育児休業取得
育休中の就業時間 月10時間以下(または月10日以下)であること

特に注意が必要なのが「就業実績の要件」です。育休前2年以内に産前産後休業(産休)や傷病による休業があった場合は、その期間を除いた2年間で12ヶ月の実績が判定されます。このケースはハローワークへ個別に確認することをおすすめします。

また、有期雇用の契約社員やパートタイム労働者の場合は「子が1歳6ヶ月までの間に労働契約が満了することが明らかでないこと」という追加要件があります。


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よくある質問

Q1. 2025年4月より前に育休を開始した場合、月額上限廃止の恩恵を受けられますか?

2025年3月31日以前に育休を開始した方については、原則として改正前の上限額が適用されます。ただし、2025年4月1日以降に育休が継続中の場合、その時点以降の支給分に新しい計算方式が適用されるかどうかは、施行日における経過措置の詳細によります。正確な適用判定についてはハローワークまたは社会保険労務士へご相談ください。

Q2. 月額上限廃止による「給付金の増額分」に税金はかかりますか?

育休給付金は所得税・住民税の課税対象外です。これは金額が増加しても変わりません。改正後に受取額が増えても、その全額が非課税で受け取れます。ただし、翌年の住民税計算の基礎となる「前年所得」には算入されないため、育休取得翌年の住民税が下がることも多いです。

Q3. 夫婦が同時に育休を取得した場合、2人とも給付金をもらえますか?

2022年10月施行の「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度の改正により、一定期間は夫婦が同時に育休を取得することが可能になりました。ただし、同時取得の期間や要件によって給付金の支給可否が異なります。特に「産後パパ育休」期間(出生後8週間以内)は夫婦同時取得が認められており、双方が要件を満たせば両方が給付金を受け取れます。

Q4. フリーランスや自営業者は月額上限廃止の対象になりますか?

育休給付金は雇用保険制度に基づく給付のため、雇用保険に加入できないフリーランス・自営業者は対象外となります。ただし、国民健康保険に加入している方は市区町村独自の育児支援を活用できる場合があります。また、フリーランス向けの育児支援強化は政策課題として検討中であるため、今後の動向を注視してください。

Q5. 育休給付金の申請を忘れていた場合、後から請求できますか?

育休給付金の受給権には2年の時効があります。申請期限を過ぎてしまった場合でも、時効の範囲内(育休終了後2年以内)であれば遡って申請できる可能性があります。まずはハローワークへ現状を説明し、遡及申請の可否を確認してください。


まとめ:2025年改正で育休給付金はこう変わる

今回の月額上限廃止は、育休取得を経済面から後押しする歴史的な制度改正です。最後に要点を整理します。

ポイント 内容
施行日 2025年4月1日
法的根拠 令和5年法律第28号(育児・介護休業法等改正法)
変わること 育休給付金の月額上限が撤廃。賃金に応じた給付金が受け取れるように
影響を受ける人 年収540万円(月収45万円)以上の育休取得者
給付率 変更なし(180日以内67%、181日目以降50%)
申請手続き 変更なし(事業主経由でハローワークへ申請)
税務上の扱い 変更なし(引き続き非課税)

育休給付金の受取額が増えることで、「育休を取りたいけれど収入が心配」という不安は大幅に解消されます。特に高収入の方や管理職の男性にとって、今回の改正は育休取得の大きな後押しになるでしょう。

2025年4月以降に育休の申請を予定されている方は、本記事で説明した受給要件・計算方法・必要書類を確認のうえ、お勤め先の人事担当部門へお早めにご相談ください。制度の詳細や個別の受給要件については、お住まいの地域のハローワーク(公共職業安定所)や、社会保険労務士にご相談ください。


参考資料

  • 雇用保険法(第61条〜第67条)
  • 雇用保険法施行規則(第101条〜第118条)
  • 育児・介護休業法等一部改正法(令和5年法律第28号)
  • 厚生労働省「育児休業給付の概要」(職業安定局雇用保険課)
  • ハローワークインターネットサービス「育児休業給付」

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