給付率80%経過措置とは?育休給付金の申請手続き完全ガイド

給付率80%経過措置とは?育休給付金の申請手続き完全ガイド 育休給付金

育児休業給付金(育休給付金)の給付率が最大80%になる制度をご存じですか?2022年10月の法改正により、育休開始から最初の6か月間の給付率が引き上げられました。しかし「経過措置」や「適用条件」が複雑で、どう申請すればよいか迷っている方も多いはずです。

この記事では、給付率80%が適用される仕組み・対象者・経過措置の注意点・申請手続きに必要な書類まで、実務レベルでわかりやすく解説します。


育休給付金の給付率80%とは?制度改正の背景と概要

改正前後の給付率の違い

育児休業給付金は、雇用保険法第61条の4に基づき支給される給付金です。育休中の収入減を補うために設けられており、2022年10月1日施行の雇用保険法改正によって給付率が大幅に見直されました。

以下の表で改正前後の違いを確認してください。

項目 改正前(〜2022年9月30日) 改正後(2022年10月1日〜)
育休開始〜6か月の給付率 67% 80%
育休6か月以降の給付率 50% 50%(変更なし)
適用対象 雇用保険被保険者全般 雇用保険被保険者全般
法的根拠 雇用保険法第61条の4 雇用保険法第61条の4(改正後)
施行日 2022年10月1日

ポイントは、休業開始日が2022年10月1日以降かどうかが判定の基準になる点です。同じ日付に育休を開始しても、9月30日開始と10月1日開始では適用される給付率が大きく変わります。

なお、給付率80%という数字は「賃金月額の80%を現金で受け取れる」という意味ではありません。正確な計算式は後述しますが、社会保険料の免除分(約14〜16%相当)を合わせると、手取りベースでは実質的に育休前収入の100%近くを確保できる設計になっています。

80%引き上げの目的は男性育休の取得促進

給付率の引き上げは、単なる給付額の増加にとどまりません。その背景には、男性の育休取得率の抜本的な底上げという政策目標があります。

厚生労働省の「雇用均等基本調査」によると、女性の育休取得率が約80%台を維持する一方で、男性の取得率は2022年度時点でも17.13%でしたが、2023年度には30.1%と大きく上昇傾向にあります。男性が育休を取りにくい主な理由のひとつが「育休中の収入減」です。

改正前の給付率67%では、手取りで考えると「育休を取ると収入が3割以上減る」という印象を与え、取得をためらわせる大きな要因になっていました。給付率を80%に引き上げることで、育休中でも手取りが実質ほぼ変わらない状況を作り出し、育休取得を経済的な理由で断念しなくて済むようにする狙いがあります。

また、2022年10月の改正では同時に「産後パパ育休(出生時育児休業)」制度も創設されました。子どもの出生直後8週間以内に、最大4週間取得できる新たな休業区分で、こちらも育休給付金の対象となります。制度全体として「男性が育休を取りやすい仕組み」へのシフトが図られた改正です。


給付率80%が適用される対象者と条件

適用の大前提「休業開始日が2022年10月1日以降」

給付率80%の適用を受けるための最初にして最も重要な要件が、休業開始日です。

  • 2022年10月1日以降に育休を開始した方 → 最初の6か月間は給付率80%が適用
  • 2022年9月30日以前に育休を開始した方 → 給付率67%のまま(旧ルール適用)

「途中から80%に切り替えられるのでは?」と思う方もいますが、経過措置は設けられておらず、旧制度下で育休を開始した場合は最後まで67%が適用されます。逆に、2022年10月1日以降に新たに育休を取り直した場合(たとえば育休期間を一度終了し再取得した場合など)は、新ルールが適用される可能性があります。

判定に使う「休業開始日」とは、育児休業の初日を指します。育休申出書に記載した開始日ではなく、実際に休業を開始した日(初日)が基準です。

対象となる休業の種類(母親・父親・有期雇用者)

給付率80%が適用される育休の種類は以下のとおりです。

母親の育休
– 産後8週の産後休業終了後に続けて取得する育児休業
– 子どもが1歳(延長の場合は最大2歳)に達するまでが対象期間
– 産後休業中は「出産手当金」が適用されるため、育休給付金との二重支給はありません

父親の育休(産後パパ育休含む)
– 子どもの出生日から、子どもが1歳になるまでの育児休業
– 出生後8週間以内に取得できる「産後パパ育休」(最大28日・2回まで分割可)も対象
– 配偶者の出産予定日の6週間前から休業可能

パート・有期雇用契約者
従来「有期雇用労働者は育休が取りにくい」とされてきましたが、2022年4月施行の改正育児・介護休業法により、有期雇用労働者の育休取得要件が緩和されました。現在の取得要件は次のとおりです。

要件 内容
雇用継続見込み 子どもが1歳6か月になるまでに労働契約が満了することが明らかでない
被保険者期間 育休開始前2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就労時間80時間以上)の月が通算12か月以上

パートや派遣労働者でも、上記要件を満たせば給付率80%の対象になります。

給付を受けられないケース(給付制限の要件)

以下のいずれかに当てはまる場合は、育休給付金が支給されないか、減額される場合があります。

①離職している・離職が決まっている
育休給付金は「育休終了後に職場復帰することを前提」とした給付です。育休中に退職した場合や、離職が確定している場合は受給できません。

②支給単位期間中の就業日数が一定以上
育休中に就業した場合、支給単位期間(1か月単位)で就業日数が10日以下(10日を超える場合は就業時間が80時間以下)であれば給付が継続されます。これを超えると給付対象外になります。

③育休中に賃金を受け取っている(一定額以上)
就業して賃金を受け取った場合、その賃金額によって給付金が減額・不支給になります。

  • 賃金額が「休業開始時賃金日額×支給日数×13%以下」の場合 → 全額支給
  • 賃金額が「休業開始時賃金日額×支給日数×13%超〜80%未満」の場合 → 減額支給
  • 賃金額が「休業開始時賃金日額×支給日数×80%以上」の場合 → 不支給

④育休前の被保険者期間が不足している
育休開始前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就労時間80時間以上)の月が12か月未満の場合は、受給資格を満たしません。


経過措置の仕組みと注意ポイント

「経過措置」が設けられている理由

育休給付金制度の改正では、施行日(2022年10月1日)をまたいで育休を取得しているケースへの対応が必要となりました。たとえば「2022年8月から育休を取っていて、10月以降も継続している」という方は旧制度・新制度のどちらが適用されるのでしょうか。

結論から言えば、育休給付金に関しては、法改正時点での給付率の「切り替え」を認める一般的な経過措置は存在しません。改正前(2022年9月30日以前)に育休を開始した方には、最後まで旧給付率(67%)が適用されます。

これは「既に開始した育休について途中から遡って適用を変えると、事務処理が複雑になる」という実務上の理由と、「休業開始時点での見通しをもとに経済的な判断をした労働者・企業の法的安定性を保護する」という趣旨によるものです。

育休の再取得・延長時の注意事項

経過措置がないことで特に注意が必要なのが、育休の延長・再取得のケースです。

ケース1:育休の延長(1歳→1歳6か月→2歳)
一度開始した育休を延長した場合、延長前の休業開始日が判定基準となります。2022年9月以前に育休を開始し、10月以降に延長した場合でも、給付率は67%のままです。

ケース2:父母交替取得(パパ・ママ育休プラス)
父母が交替で育休を取得するパパ・ママ育休プラス制度を利用する場合、それぞれの「休業開始日」が判定基準になります。父親の育休開始日が2022年10月1日以降であれば、父親分は80%が適用されます。

ケース3:同一の子についての再取得
1歳時点で保育所に入所できず育休を延長していた方が、いったん職場復帰後に再度育休を取得した場合(再取得)は、再取得した育休の「開始日」が2022年10月1日以降であれば80%が適用される可能性があります。ただし、再度の受給資格確認が必要なため、ハローワークへの確認を忘れずに行ってください。

給付率80%の正しい計算方法

給付率80%の計算は、以下の式で行います。

【育休給付金の1か月あたり支給額(育休開始〜6か月)】

支給額 = 休業開始時賃金日額 × 支給日数 × 80%

休業開始時賃金日額 = 育休開始前6か月の賃金合計 ÷ 180日
支給日数 = 支給単位期間の日数(原則30日)

具体的な計算例

育休開始前6か月の賃金合計が180万円(月30万円)の場合:

  • 休業開始時賃金日額:180万円 ÷ 180日 = 10,000円/日
  • 支給日数:30日
  • 支給額(80%適用):10,000円 × 30日 × 80% = 240,000円/月

なお、賃金日額には上限・下限があります(毎年8月に改定)。2024年8月1日改定後の上限は15,190円/日、下限は2,869円/日です(適用期間により変動するため、最新値はハローワークへご確認ください)。

また、育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されるため、手取りベースではさらに有利になります。


申請手続きの全体フロー

申請の主体と役割分担

育休給付金の申請は、原則として事業主(会社)がハローワークに対して行います。労働者本人がハローワークに直接申請する仕組みではないため、まず会社の人事・総務担当者と連携することが大切です。

ただし、事業主が申請を行わない場合や特別な事情がある場合は、被保険者本人が申請することも可能です。

手続きのタイムライン

【STEP 1】育休開始予定日の1か月前
 ↓
 会社へ育児休業申出書を提出
 (口頭申告可の場合もあるが、書面が望ましい)

【STEP 2】育休開始日〜1か月以内
 ↓
 会社が「受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書」と
 「休業開始時賃金月額証明書」をハローワークへ提出
 (初回申請)

【STEP 3】以降は2か月ごとに申請
 ↓
 会社が「育児休業給付金支給申請書」をハローワークへ提出
 (2回目以降の申請)

【STEP 4】支給決定・振込
 ↓
 ハローワークが審査・支給決定
 → 指定口座(労働者)へ振込

初回申請に必要な書類

初回申請(受給資格確認)には以下の書類が必要です。

書類名 作成者 備考
受給資格確認票・(初回)育児休業給付金支給申請書 事業主 ハローワーク所定様式
休業開始時賃金月額証明書 事業主 育休開始前6か月の賃金を証明
母子健康手帳(写し) 本人 → 会社経由 子どもの生年月日確認
育児休業申出書(写し) 本人 → 会社経由 休業期間の確認
被保険者の通帳・キャッシュカードの写し 本人 → 会社経由 支給口座の確認
賃金台帳・出勤簿 事業主 被保険者期間・賃金の確認用

産後パパ育休(出生時育児休業)の場合は、上記に加えて出生を確認できる書類(出生届の受理証明など)が必要になる場合があります。

2回目以降の申請(継続申請)

2回目以降の申請は、原則として2か月ごとに行います。提出期限は支給単位期間の末日翌日から起算して4か月以内ですが、実務上は支給単位期間末日の翌日から2か月以内に提出するのが一般的です。

提出が遅れると支給が遅れるため、会社の人事担当者は申請スケジュールをあらかじめ管理しておくことが重要です。

必要書類は「育児休業給付金支給申請書」のみとシンプルになりますが、就業実績がある場合は就業記録の添付が求められます。

電子申請(e-Gov)の活用

2020年以降、ハローワークへの申請はe-Govを使った電子申請が可能になっています。電子申請を利用すれば、窓口への来所が不要になり、人事担当者の負担を大幅に削減できます。

電子申請の流れ:
1. e-Govアカウント登録(事業主側)
2. 申請書データの作成・入力
3. 電子署名・送信
4. ハローワーク側で審査・支給決定

なお、電子申請を行う場合も、紙の書類(賃金台帳・出勤簿など)は保管しておく必要があります。


企業の人事担当者が知っておくべき実務ポイント

申請漏れ・申請遅延を防ぐ管理方法

育休給付金の申請漏れは、労働者に経済的損害を与えるだけでなく、会社への信頼低下にもつながります。以下の管理方法を参考にしてください。

育休取得者管理台帳の作成
– 休業開始日・終了予定日
– 初回申請期限(休業開始後1か月以内)
– 2回目以降の申請期限(2か月ごと)
– ハローワーク提出確認欄

チェックリストの活用
ハローワークが提供している「育児休業給付金申請チェックリスト」を活用すると、書類の不備を防ぎやすくなります。

育休給付金の課税・非課税の扱い

育休給付金は所得税・住民税ともに非課税です(雇用保険法第12条)。また、社会保険料も育休中は免除されるため(健康保険法第159条、厚生年金保険法第81条の2)、手取り収入に対する負担は最小限に抑えられます。

年末調整や確定申告において育休給付金を収入として申告する必要はありません。

育休終了後の職場復帰と給付の終了

育休給付金は、育休が終了した月の翌月から支給が止まります。また、以下のいずれかに該当した場合も支給が終了します。

  • 育休期間中に就業日数・時間が支給要件を超えた
  • 子どもが死亡・離縁等により育休対象から外れた
  • 育休中に別の雇用主のもとで雇用保険被保険者になった

2025年以降の制度改正:出生後休業支援給付金との関係

給付率をさらに引き上げる新制度

2025年4月から、育休給付金制度はさらに大きく変わります。「出生後休業支援給付金」が新たに創設され、一定の条件を満たす場合に給付率が実質的に100%近くになる仕組みが導入される予定です。

現行制度との比較:

区分 現行(2022年10月〜) 新制度(2025年4月〜予定)
育休開始〜6か月(80%適用) 給付率80% 給付率80%(継続)
出生後休業支援給付(新設) なし 給付率10%加算=実質90%
育児時短就業給付金(新設) なし 時短勤務中の賃金差額を補填

出生後休業支援給付金の適用条件は、父母ともに14日以上の育休取得などが要件として検討されています(2025年時点での最新情報はハローワークへご確認ください)。

育児時短就業給付金も同時に創設

2025年4月からは「育児時短就業給付金」も創設される予定です。育休終了後に時短勤務に移行した際、時短前の賃金との差額の一部を補填する給付で、育休終了後のスムーズな職場復帰を支援する目的があります。

給付率は時短就業中の賃金の10%相当(暫定)とされており、育休給付金から時短就業給付金へのスムーズな移行が可能になります。


よくある質問(FAQ)

給付率80%の申請について、特に多い疑問をまとめました。

Q1. 産後パパ育休と通常の育休を両方取った場合、80%はどうなりますか?

産後パパ育休(出生後8週間以内・最大28日)と通常の育児休業をあわせて取得した場合、両方の期間を合算した最初の6か月間について80%が適用されます。産後パパ育休を28日取得し、その後育児休業を取得した場合、育児休業のうち6か月から28日を差し引いた期間が80%対象となります。

Q2. 育休給付金の申請を会社がしてくれない場合はどうすれば?

事業主が申請を怠っている場合は、本人がハローワークへ直接申請することができます。ハローワークの窓口に相談し、「事業主が手続きを行わない旨の申立書」を提出することで対応できます。また、事業主に対してハローワークから指導が入る場合もあります。

Q3. 育休中にアルバイトをしても給付金は受け取れますか?

一定の範囲内であれば就業しても給付金を受け取ることは可能です。支給単位期間に就業した日数が10日以下(10日超の場合は就業時間が80時間以下)であれば支給対象です。ただし、就業により得た賃金が一定額を超えると給付金が減額・不支給となるため、必ず事前にハローワークへ確認しましょう。

Q4. 2022年9月から育休を取っていますが、10月以降は80%になりますか?

なりません。育休給付金の給付率は休業開始日を基準に判定されるため、2022年9月30日以前に開始した育休には改正前の67%が最後まで適用されます。

Q5. 給付金の振込はいつ頃になりますか?

ハローワークが支給決定を行ってから、通常1〜2週間程度で指定口座に振り込まれます。初回申請はハローワークの審査に時間がかかることがあるため、余裕をもって申請することをお勧めします。

Q6. 有期雇用(パート・派遣)ですが、80%の対象になりますか?

要件を満たせば対象になります。①育休開始前2年間に雇用保険被保険者期間が12か月以上ある、②子どもが1歳6か月になるまで雇用契約が継続する見込みがある、の両方を満たせば、正社員と同様に給付率80%が適用されます。


まとめ:給付率80%を確実に受け取るために

育休給付金の給付率80%を確実に受け取るためのポイントを整理します。

  • 休業開始日が2022年10月1日以降であることを確認する
  • 育休開始から1か月以内に初回申請を行う(会社経由)
  • 2か月ごとの継続申請を漏らさない
  • 育休中の就業日数・賃金が支給要件に抵触しないよう管理する
  • 2025年4月以降の新制度(出生後休業支援給付金)にも注目する

育休給付金は、「会社が手続きを行うもの」という認識のもと、受給者本人が手続き状況を把握できていないケースが少なくありません。会社任せにせず、申請スケジュールや進捗を自分でも確認しておくことが、給付漏れを防ぐ最善策です。

申請に不安がある方は、最寄りのハローワーク(公共職業安定所)へ直接相談することをお勧めします。専門の相談員が無料でサポートしてくれます。

育休給付金の申請手続きや給付率について疑問や不安がある場合は、お気軽にハローワークへ相談してください。また、本記事の内容は一般的な情報です。ご自身の状況に応じた詳細なアドバイスを希望される場合は、厚生労働省の公式サイトや人事労務の専門家へのご相談をお勧めします。


本記事は2024年度の制度に基づいて執筆しています。給付率・上限額・申請要件は毎年改定される場合があります。最新情報は厚生労働省またはハローワークの公式情報をご確認ください。

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