産休中に配偶者が育休取得|給付金の調整・申請手続き完全ガイド

産休中に配偶者が育休取得|給付金の調整・申請手続き完全ガイド 産前産後休業

妻が産休に入ったタイミングで、夫も育休を取りたい――そう考える家庭が増えています。しかし「同時に取得した場合、給付金はそれぞれもらえるの?」「手続きはどこに何を提出すればいい?」といった疑問を抱えたまま、申請を後回しにしてしまうケースは少なくありません。

本記事では、妻の産休中に夫が育休を同時取得した場合の給付金の仕組み・相互調整の意味・申請手続き・受給額の計算方法まで、ハローワーク申請で迷わないよう体系的に解説します。


産休中に配偶者が育休を同時取得すると給付金はどうなる?

給付制度 受給対象者 給付期間 給付率 相互調整の対象
産前産後休業手当 妻(産休取得者) 産前6週間+産後8週間 標準報酬日額の100% 対象外
育児休業給付金 夫(育休取得者) 最長2年間 67%(6ヶ月)→50% 対象(産休期間と重複時)
育児休業給付金(夫婦交互取得) 夫婦双方(交互取得) 最長4年間 67%(6ヶ月)→50% 対象(月単位で調整)

結論から言えば、妻の産休中に夫が育休を同時取得しても、それぞれが給付金を受け取ることは可能です。ただし、財源となる制度が異なるため、「相互調整」と呼ばれる確認プロセスが発生します。

まずは妻・夫それぞれが受け取れる給付金の種類と概要を整理しましょう。

妻が受け取る産前産後休業手当とは

妻(母親)が受け取るのは「出産手当金」です。一般的に「産休手当」と呼ばれますが、正式名称は出産手当金であり、健康保険(協会けんぽまたは健康保険組合)から支給されます。

項目 内容
支給元 健康保険(協会けんぽ/健保組合)
支給期間 産前42日(多胎妊娠は98日)+産後56日
支給額 標準報酬日額の3分の2相当額
申請先 加入している健康保険の窓口

支給額の計算式は以下の通りです。

出産手当金の日額 = 標準報酬月額 ÷ 30日 × 2/3

たとえば標準報酬月額が30万円の場合、1日あたりの出産手当金は約6,667円となり、産休期間全体(産前42日+産後56日=98日)で受け取れる総額は約65万3,000円になります。

なお、産休中は社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)が免除されるため、手取りベースでの恩恵はさらに大きくなります。

夫が受け取る育児休業給付金とは

夫(配偶者)が育休中に受け取るのは「育児休業給付金」です。こちらは雇用保険から支給されるもので、ハローワーク(公共職業安定所)が窓口になります。

項目 内容
支給元 雇用保険(ハローワーク)
支給率 育休開始から180日目まで:休業前賃金の67%/181日目以降:50%
支給期間 子が1歳になるまで(条件により最長2歳まで延長可)
申請先 会社経由でハローワークへ申請(原則)

支給額の計算式は以下の通りです。

育児休業給付金の日額 = 休業開始時賃金日額 × 支給率(67%または50%)

「休業開始時賃金日額」は、育休開始前6か月間の賃金総額を180で割った金額です。月収が30万円(賞与なし)の場合、賃金日額は約10,000円となり、67%の支給率なら1日あたり約6,700円、30日換算で月あたり約20万1,000円が支給されます。

2025年4月以降の制度改正により、一定の条件(夫婦ともに14日以上の育休取得など)を満たす場合は28日間に限り給付率が実質100%相当(手取りベース)に引き上げられる「育児休業給付の給付率の引上げ」が段階的に導入されています。最新情報はハローワークまたは厚生労働省の公式サイトで確認してください。

なぜ「相互調整」が必要なのか

「財源が異なるなら、そのまま両方もらえばいいのでは?」と思う方も多いでしょう。実際、妻の出産手当金(健康保険)と夫の育児休業給付金(雇用保険)は財源が完全に異なるため、制度上の「金額削減」は原則として発生しません

では、なぜ「相互調整」という言葉が出てくるのでしょうか。

理由は主に以下の2点です。

  1. 受給資格の重複確認:ハローワークは育児休業給付金を支給するにあたり、申請者が「同一の子」を養育しているかどうか、また妻が産休・育休を重複して取得していないかを確認します。これは給付金の不正受給を防ぐための行政手続きであり、夫の申請時に妻の産休情報が確認対象になります。

  2. パパ・ママ育休プラス制度との関係:夫婦が同時または順番に育休を取得する場合、「パパ・ママ育休プラス制度」を活用することで通常は子が1歳になるまでの育休期間が、1歳2か月まで延長されます。この延長申請においては、配偶者の育休・産休の取得状況が確認事項となります。

つまり「相互調整」とは給付金が削られることではなく、適正な受給のためにハローワークが双方の情報を照合する手続きを指します。この点を誤解しているケースが多いため、しっかり押さえておきましょう。


同時取得できる対象者の条件と要件チェックリスト

給付金を確実に受け取るために、妻・夫それぞれが満たすべき要件を確認しましょう。

妻(母親)が満たすべき要件

出産手当金を受け取るための要件は以下の通りです。

  • [ ] 健康保険の被保険者である(協会けんぽ・健保組合いずれも対象)
  • [ ] 産前42日(多胎は98日)から産後56日の産休期間中に仕事を休んでいる
  • [ ] 休業中に給与(報酬)が支払われていない、または出産手当金より少ない
  • [ ] 産休開始日時点で継続して1年以上の被保険者期間がある(退職後の受給の場合)

注意:産休中に会社から賃金が支払われた場合、出産手当金と賃金の差額のみが支給されます(賃金が出産手当金以上の場合は不支給)。

夫(配偶者)が満たすべき要件

育児休業給付金を受け取るための要件は以下の通りです。

  • [ ] 雇用保険の被保険者である
  • [ ] 育休開始日前の2年間に、賃金支払基礎日数が11日以上(または就業時間が80時間以上)の月が12か月以上ある
  • [ ] 妻(配偶者)の産休中に、同じ子について育児休業を取得する
  • [ ] 育休期間中の就業日数が月10日以下(または就業時間が80時間以下)である
  • [ ] 配偶者関係にある(法律婚に限定。事実婚・内縁関係は対象外)

重要:「同じ子」についての育休であることが必須です。別の子の育休では給付対象外となります。

共通の確認事項

  • [ ] 育休・産休の取得目的が同一の子の養育である
  • [ ] それぞれが異なる企業に勤めていても対象(別々に手続きが必要)
  • [ ] 育休中の副業・アルバイト収入が一定限度(月10日以内の就業)を超えていない

給付金額の計算方法と受給シミュレーション

実際にどれくらいの給付金が受け取れるのか、具体的な数字で確認しましょう。

計算に使う基本数値

妻の出産手当金

1日あたりの出産手当金 = 支給開始日前12か月の標準報酬月額の平均 ÷ 30 × 2/3

夫の育児休業給付金

1日あたりの給付金額 = 休業開始前6か月の賃金総額 ÷ 180 × 67%(または50%)

モデルケースでシミュレーション

前提条件
– 妻:標準報酬月額 30万円 / 産前42日+産後56日の産休取得
– 夫:月収 35万円 / 産後8週間(56日)を産後パパ育休として取得

妻の出産手当金

日額:300,000 ÷ 30 × 2/3 = 6,667円
総額:6,667円 × 98日(産前42日+産後56日)= 約65万3,000円

夫の育児休業給付金(産後パパ育休28日間)

賃金日額:350,000 × 6か月 ÷ 180 = 11,667円
給付金日額:11,667 × 67% = 7,817円
28日間の給付金:7,817 × 28 = 約21万9,000円

このモデルケースでは、産休・育休の重複期間に夫婦合計で約65万3,000円+約21万9,000円=約87万2,000円の給付金を受け取れる計算になります(社会保険料免除分を含めると実質的な受取額はさらに増加します)。


申請手続きの流れと必要書類

全体の手続きフロー

【STEP1】出産予定日の6週間以上前
妻が勤務先の人事部・総務部へ「産前産後休業取得の届出」を提出
夫が勤務先へ「育児休業取得の意向」を伝える

        ↓

【STEP2】出産後すみやか(遅くとも産後8週間以内)
妻が健康保険窓口(協会けんぽ等)へ「出産手当金支給申請書」を提出
夫が勤務先へ「育児休業申請書」を正式提出

        ↓

【STEP3】育休開始日から10日以内
夫の勤務先がハローワークに「育児休業給付受給資格確認票」を提出
(初回申請。以降は2か月ごとに「育児休業給付金支給申請書」を提出)

        ↓

【STEP4】ハローワークによる照合・審査
妻の産休情報と夫の育休申請内容を確認(相互調整)

        ↓

【STEP5】給付金の支給
妻:健康保険から出産手当金が振り込まれる(申請後約1〜2か月)
夫:ハローワークから育児休業給付金が振り込まれる(2か月ごと)

妻(出産手当金)の必要書類

書類名 取得先・備考
出産手当金支給申請書 協会けんぽ・健保組合の窓口またはウェブサイト
医師または助産師の証明 申請書の所定欄に記載
被保険者証のコピー 本人が用意
振込先口座情報 本人名義の口座

申請書は産前・産後で分けて提出することも、産後まとめて提出することも可能です。産後まとめて提出する場合は産後56日経過後に申請します。

夫(育児休業給付金)の必要書類

書類名 取得先・備考
育児休業給付受給資格確認票(初回) ハローワーク所定の様式/会社経由で提出
育児休業給付金支給申請書(2回目以降) ハローワーク所定の様式/2か月ごとに提出
雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 会社が作成・提出
母子健康手帳(子の出生ページのコピー) 本人が用意
出生証明書または戸籍謄本のコピー 本人が用意
育児休業申請書(会社への提出) 会社所定の様式

ポイント:夫の育児休業給付金の申請は、原則として会社(事業主)がハローワークに代わりに行います。個人が直接ハローワークに行く必要は基本的にありません。ただし、会社が手続きを委任している場合は本人申請も可能です。

申請期限に関する注意点

育児休業給付金の申請には支給単位期間ごとに申請期限(原則として支給単位期間終了日の翌日から起算して2か月以内)が設けられています。期限を過ぎると不支給になる場合があります。会社の担当者と連携し、申請漏れがないよう注意しましょう。


パパ・ママ育休プラス制度との関係

「パパ・ママ育休プラス制度」とは、夫婦どちらも育休を取得した場合に育休期間を子が1歳になるまでから1歳2か月になるまでに延長できる制度です(育児・介護休業法第9条の2)。

適用条件は以下の通りです。

  • 配偶者(妻または夫)が、子が1歳になるまでの間に育休を取得していること
  • もう一方の育休開始日が、配偶者の育休開始日以降であること
  • もう一方の育休開始日が、子の1歳誕生日以前であること

妻が産休後そのまま育休に入り、夫も産休期間中から育休を取得するケースは、この「パパ・ママ育休プラス」の典型的な活用例です。ただし、延長後も給付金の支給率は変わらず(1歳以降も50%)、延長できる期間は原則として2か月分であることに注意が必要です。


産後パパ育休(出生時育児休業)との違いと活用方法

2022年10月の法改正により創設された「産後パパ育休(出生時育児休業)」は、子の出生後8週間以内に4週間(28日)まで取得できる制度です。通常の育休と異なる主な特徴は以下の通りです。

比較項目 産後パパ育休 通常の育休
取得可能期間 子の出生後8週間以内 子が1歳になるまで
最大日数 28日 原則1年間
分割取得 2回まで可能 2回まで可能
申請期限 休業開始予定日の2週間前まで 休業開始予定日の1か月前まで
就業の可否 労使協定がある場合に限り一部可能 原則不可(月10日以内は可)

妻が産休中(産後8週間以内)に夫が産後パパ育休を取得するのは、この同時取得の最も一般的なパターンです。産後パパ育休期間中も育児休業給付金(67%)が支給されます。


社会保険料の免除について

育休・産休期間中は、本人負担分だけでなく会社負担分の社会保険料(健康保険料・厚生年金保険料)も全額免除されます。

対象者 免除条件 免除期間
妻(産休中) 産前産後休業期間中 産前42日〜産後56日
夫(育休中) 月末時点で育休中 or 同月内14日以上の育休取得 育休取得月から職場復帰月の前月まで

社会保険料の免除を受けるためには、会社が「産前産後休業取得者申出書」または「育児休業等取得者申出書」を日本年金機構(または健保組合)に提出する必要があります。この手続きは会社側が行うため、本人は勤務先の担当者に育休・産休の取得を適切に申し出ることが最重要です。


よくある疑問と注意点

Q1. 妻が産休中でも、夫は育休を取れますか?

はい、取得できます。妻の産前産後休業期間中に夫が育児休業を取得することは、育児・介護休業法上も雇用保険法上も認められています。子の出生後8週間以内であれば「産後パパ育休」として最大28日間取得できます。

Q2. 夫婦が同時に育休・産休を取得した場合、給付金は減額されますか?

原則として減額されません。妻の出産手当金は健康保険から、夫の育児休業給付金は雇用保険から、それぞれ独立した制度として支給されます。ただし、育休中に一定以上の賃金が支払われた場合は給付金が減額・不支給となる場合があります。

Q3. 事実婚(内縁関係)の場合は夫も育休を取得できますか?

育児・介護休業法上の育休取得は事実婚の配偶者も対象となります(同居・養育の実態があること)。ただし、育児休業給付金の申請においては戸籍等で確認できる法律婚の配偶者と扱いが異なる場合があるため、勤務先とハローワークへの事前確認を強くお勧めします。

Q4. 夫の育休取得の申請はいつまでにすればよいですか?

産後パパ育休(出生時育児休業)の場合は休業開始予定日の2週間前まで、通常の育休の場合は1か月前までに会社へ申請する必要があります。出生前に申請することも可能(出産予定日を基準として手続き)なので、早めに勤務先の人事部へ相談しましょう。

Q5. 育児休業給付金はいつ振り込まれますか?

初回の支給申請後、審査が完了してから約1〜2か月後に振り込まれるのが一般的です。2回目以降は支給単位期間(2か月)ごとに申請・支給されます。産後すぐに収入が途切れる期間が生じないよう、貯蓄の準備や育休前の申請スケジュール確認を事前に行っておきましょう。

Q6. 育休中にアルバイト収入があると給付金はどうなりますか?

育休中に就業した場合、就業日数が支給単位期間(2か月間の日数)の50%を超えると育児休業給付金は不支給となります。また、賃金額と給付金を合わせた金額が休業前賃金の80%を超える部分については給付金が減額されます。副業・アルバイトを検討する際は必ず事前にハローワークに確認してください。


まとめ:夫婦同時取得で押さえるべき5つのポイント

産休中に配偶者が育休を同時取得する場面では、制度を正確に理解した上で手続きを進めることが大切です。最後に重要ポイントを整理します。

  1. 給付金は原則として減額されない:妻の出産手当金(健康保険)と夫の育児休業給付金(雇用保険)は財源が異なるため、同時取得しても双方が受け取れる。

  2. 「相互調整」は金額削減ではなく資格確認の手続き:ハローワークが双方の取得状況を照合するプロセスであり、適正受給のための行政手続きである。

  3. 申請は会社経由が基本:夫の育児休業給付金の申請は原則として勤務先の担当者がハローワークに行うため、早めに人事部・総務部へ相談する。

  4. 申請期限を厳守する:産後パパ育休は2週間前、通常育休は1か月前に申請が必要。期限切れは不支給リスクにつながる。

  5. パパ・ママ育休プラス制度を活用する:夫婦双方が育休を取得すれば育休期間を子が1歳2か月になるまで延長できる。制度の活用を事前に検討しよう。


手続きを進める際の相談窓口

制度の詳細や最新情報については、以下の公式窓口にご確認ください。

ハローワーク(公共職業安定所)
育児休業給付金の申請・相談の第一窓口。各都道府県に設置されており、電話・来所での相談が可能です。夫の育休申請に関する疑問は、管轄のハローワークへの問い合わせが最も確実です。

加入健康保険の窓口(協会けんぽ・健保組合)
妻の出産手当金申請はこちらが窓口となります。事業所の人事部を通じて問い合わせることもできます。

厚生労働省の公式サイト
制度改正の最新情報や申請書類のダウンロードが可能です。「育児休業給付」「産後パパ育休」などで検索すれば、詳細な説明資料が入手できます。

都道府県労働局雇用環境・均等部(室)
育休・産休に関する職場でのトラブルや、制度活用に関する相談が必要な場合はこちらへ。労働基準法や育児・介護休業法に関する法的な問い合わせにも対応しています。

事前の準備と正確な手続きを通じて、夫婦での育休・産休の同時取得をスムーズに進めることができます。

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