育休中の収入が大幅に下がることへの不安から、育休取得をためらう方は少なくありません。しかし、一定の条件を満たすことで育休給付金の給付率が通常の50%から最大67%に引き上げられる制度があることをご存知でしょうか。
この記事では、令和5年4月施行の改正内容をもとに、給付率67%を受けるための条件・申請手順・必要書類・計算方法を詳しく解説します。「自分は給付率引き上げの対象になるのか」「どうすれば67%を受け取れるのか」をこの記事一本で理解できるよう、具体的なシミュレーションや書類の記入ポイントまで網羅しています。月収40万円の場合で試算すると、67%と50%の差額は1ヶ月あたり約68,000円。この制度をきちんと活用することで、育休期間中の経済的な不安を大きく軽減できます。
育休給付金の給付率とは?50%と67%の違いを整理
育児休業給付金は、雇用保険の被保険者が育休を取得した場合に、休業前の賃金月額の一定割合を受け取れる給付金です。給付金は雇用保険から支給されるため、社会保険料の免除と合わせると実質的な手取り確保率はさらに高まります。
給付率早見表:50%と67%の違い
| 項目 | 通常給付(50%) | 引き上げ後(67%) |
|---|---|---|
| 給付率 | 50% | 67% |
| 月収30万円の場合の受取額 | 約15万円 | 約20.1万円 |
| 月収40万円の場合の受取額 | 約20万円 | 約26.8万円 |
| 月収50万円の場合の受取額 | 約25万円 | 約33.5万円 |
注意: 育児休業給付金には上限額があります。2025年時点では、賃金日額の上限が設定されており、高収入の方は上限額による制限が生じる場合があります。最新の上限額はハローワークの公式サイトでご確認ください。
月収別シミュレーション(手取りベース)
育休中は社会保険料(健康保険・厚生年金)が免除されます。そのため、給付率50%でも手取りベースでは休業前の約8割を確保できるとよく言われますが、67%ならさらに手取り確保率が上がります。
| 月収(額面) | 社会保険料免除額(目安) | 50%給付時の実質収入 | 67%給付時の実質収入 |
|---|---|---|---|
| 30万円 | 約4.5万円 | 約19.5万円 | 約24.6万円 |
| 40万円 | 約6.0万円 | 約26.0万円 | 約32.8万円 |
| 50万円 | 約7.5万円 | 約32.5万円 | 約41.0万円 |
※社会保険料免除額は月収・加入保険組合等によって異なります。上記はあくまで目安です。
給付率はいつ・どれくらい変わった?改正の経緯
育休給付金の給付率引き上げは、段階的に整備されてきました。以下の時系列で経緯を確認しましょう。
改正の時系列
| 時期 | 改正内容 |
|---|---|
| 2014年(平成26年) | 育休開始から180日間の給付率を50%→67%に引き上げ(現行の「前半67%」の仕組みの始まり) |
| 2022年(令和4年)10月 | 育児・介護休業法改正により「産後パパ育休(出生時育児休業)」が新設。配偶者との重複育休取得による給付率引き上げの対象が拡大 |
| 2023年(令和5年)4月施行 | 申請要件の簡素化・給付金支給月の前倒しが実施。配偶者が育児目的休暇を取得した場合も対象に追加。手続きの一本化が進む |
| 2025年(令和7年)現在 | 令和5年改正が定着。申請書類の電子化対応が拡充 |
給付率引き上げの背景
この改正は、男性育休の取得促進と、夫婦が協力して育児をしやすい環境づくりを目的としています。「育休中の収入が不安」という理由で育休取得を諦めるケースを減らすため、配偶者も育休や育児目的休暇を取得することで世帯全体の給付水準が上がる仕組みが設計されました。
給付率67%が適用される期間の計算方法
給付率67%は「永続的に」適用されるわけではなく、条件が満たされている期間のみに適用されます。具体的な計算方法を確認しましょう。
基本的な計算ロジック
育休給付金は「支給単位期間(原則2ヶ月ごと)」ごとに計算・支給されます。67%が適用されるのは以下の期間です。
- 配偶者が育休を重複取得している期間: 夫婦双方の育休期間が重なっている日が1日以上ある支給単位期間
- 配偶者が育児目的休暇を取得している期間: 就業規則に定められた育児目的休暇を配偶者が取得した日が含まれる支給単位期間
具体例で確認
【例】妻が4月1日から育休開始、夫が4月10日〜5月10日に育休取得
| 期間 | 夫の状況 | 妻の給付率 |
|---|---|---|
| 4月1日〜4月9日 | 就業中 | 50% |
| 4月10日〜5月10日 | 育休取得(重複期間) | 67% |
| 5月11日以降 | 育休終了・就業復帰 | 50% |
このように、重複している期間のみ67%が適用される点がポイントです。支給単位期間をまたぐ場合は、日数按分で計算されます。
給付率67%を受けるための3つの対象条件
給付率67%を受けるためのルートは、大きく3つの条件があります。自分がどの条件に当てはまるかを確認しましょう。
対象条件チェックリスト
□ 条件①:配偶者が育児休業を重複して取得している
□ 条件②:配偶者が育児目的休暇を取得している
□ 条件③:パパ・ママ育休プラスを利用して交代取得する
条件①:配偶者が育児休業を重複取得している場合
最も一般的な67%適用ルートがこの条件です。
要件の詳細
- 申請者本人と配偶者が、同一の子に対して同時期に育児休業を取得していること
- 重複期間は1日以上あれば対象(日数の長さは問わない)
- 配偶者が取得できる育休の種類は問わない(通常育休・産後パパ育休どちらでも可)
重要ポイント:産後パパ育休(出生時育児休業)も対象
令和4年10月に新設された産後パパ育休(出生時育児休業)も、配偶者の育休として認められます。子の出生後8週間以内に最大4週間取得できるこの制度を活用することで、出産直後の最も重要な時期に給付率67%を受けることが可能です。
注意点
- 配偶者が雇用保険非加入の場合(自営業・フリーランス等)でも、育児・介護休業法上の育休を取得していれば対象となります
- 配偶者の育休取得を証明する書類(勤務先発行の証明書等)が必要です
条件②:配偶者が育児目的休暇を取得している場合
令和5年4月の改正で追加されたルートです。配偶者が育休を取得しなくても、育児目的休暇を取得していれば給付率67%の対象になります。
育児目的休暇とは
育児目的休暇とは、各企業の就業規則に定められた育児のための特別休暇のことです。国が法律で定める育休とは異なり、各企業が独自に設ける制度ですが、以下の条件を満たすものが対象となります。
| 要件 | 内容 |
|---|---|
| 就業規則への明示 | 会社の就業規則に育児目的の休暇として明記されていること |
| 有給・無給は問わない | 有給・無給どちらでも対象 |
| 取得日数 | 特定の最低取得日数は設けられていない(1日以上の取得で対象) |
| 対象期間 | 子の出生日から起算して一定期間内(企業規定による) |
見落とされやすいポイント
- 通常の年次有給休暇は対象外です(育児目的であっても、年休として処理された場合は認められません)
- 配偶者の会社に「育児目的休暇」という名称の制度がなくても、実質的に育児目的の特別休暇制度であれば対象となる場合があります
- 配偶者の勤務先に就業規則の証明書または人事担当者による証明書を発行してもらう必要があります
条件③:パパ・ママ育休プラスで交代取得する場合
パパ・ママ育休プラスとは、父母が協力して育休を取得することで、育休の終了日を通常の1歳到達日から1歳2ヶ月到達日まで延長できる制度(育児・介護休業法第9条の2)です。
パパ・ママ育休プラスの仕組み
通常、育休は子が1歳になるまで取得できますが、以下の条件を満たすことで最長1歳2ヶ月まで延長可能です。
【適用条件】
1. 配偶者が子の1歳誕生日以前から育休を取得していること
2. 申請者本人の育休開始日が、配偶者の育休開始日以降であること
3. 申請者本人の育休開始日が、子の1歳誕生日以前であること
給付率との関係
パパ・ママ育休プラスを利用して育休を取得する場合、配偶者と育休期間が重複しているタイミングにおいて条件①と同様に67%が適用されます。
| 取得パターン | 給付率67%の適用 |
|---|---|
| 妻と夫が同時期に育休重複 | 重複期間は67% |
| 妻→夫と交代して取得(重複なし) | 50%(交代後の給付率) |
| 妻→夫が一部重複して交代 | 重複期間のみ67% |
実務上のアドバイス: 給付率67%を最大化するには、単純に交代するのではなく、数日〜数週間の重複期間を意図的に設けることが重要です。
申請手続きの流れ:ステップごとに解説
給付率67%を受けるための手続きは、通常の育休給付金申請に追加書類の提出が加わります。流れを順番に確認しましょう。
申請フロー全体図
【STEP 1】育休開始1ヶ月前〜
勤務先への育休申請・ハローワークへの準備開始
↓
【STEP 2】育休開始後10日以内(推奨)
勤務先が「受給資格確認票」を作成・ハローワークへ提出
↓
【STEP 3】受給資格確認(ハローワーク審査:約2週間)
↓
【STEP 4】67%引き上げ要件の証明書類を追加提出
(配偶者の育休証明書・育児目的休暇証明書等)
↓
【STEP 5】初回支給申請(育休開始から2ヶ月後が目安)
↓
【STEP 6】給付金振込(申請から約2週間後)
↓
【STEP 7】以降2ヶ月ごとに支給申請を繰り返す
STEP 1:育休開始前の準備(育休開始1ヶ月前〜)
本人がやること:
– 勤務先の人事・上司に育休取得の意向を伝え、育児休業申出書を提出
– 配偶者にも育休または育児目的休暇の取得予定を確認し、日程のすり合わせを行う
配偶者側でやること:
– 配偶者の勤務先に育休・育児目的休暇の申請を行う
– 後の証明書類発行に備え、人事担当者に証明書の発行依頼を事前に相談しておく
STEP 2:受給資格確認票の作成・提出(育休開始後10日以内推奨)
雇用保険の受給資格確認は、育休開始から速やかに申請することが重要です。
勤務先(事業主)がハローワークに提出する書類:
| 書類名 | 様式番号 | 備考 |
|---|---|---|
| 育児休業給付受給資格確認票(初回)・育児休業給付金支給申請書 | 様式第101号 | 勤務先が作成・提出 |
| 母子健康手帳(写し)または出生証明書 | ― | 子の出生日確認用 |
| 雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書 | 様式第10号の3 | 賃金月額の算定に使用 |
STEP 3:給付率67%引き上げのための追加書類提出
これが通常申請と異なる最大のポイントです。 給付率引き上げを受けるためには、以下の証明書類を追加で提出する必要があります。
条件別の必要追加書類
| 条件 | 必要書類 | 発行元 |
|---|---|---|
| 条件①:配偶者が育児休業取得 | 配偶者の育児休業取得証明書(事業主発行) | 配偶者の勤務先 |
| 条件②:配偶者が育児目的休暇取得 | ①就業規則の写し(育児目的休暇の規定箇所)+②取得証明書 | 配偶者の勤務先 |
| 条件③:パパ・ママ育休プラス | 配偶者の育児休業取得証明書+取得期間が確認できる書類 | 配偶者の勤務先 |
実務ポイント: 配偶者が自営業・フリーランス等で会社発行の証明書が取得できない場合は、育児・介護休業法上の育休取得を示す自己申告書で代用できる場合があります。ハローワークに事前に確認することをおすすめします。
STEP 4:育児休業給付受給資格確認票の書き方のポイント
「育児休業給付受給資格確認票(様式第5号系)」の記入時に、給付率引き上げ申請に関連する箇所を正確に記入することが重要です。
記入時の主なチェックポイント
- 配偶者の育休取得予定期間:開始日・終了予定日を正確に記載
- 重複取得の有無:該当するチェックボックスに必ずチェック
- 育児目的休暇の取得有無:条件②の場合はここにチェック
記入漏れや誤記があると、67%が適用されず50%での支給が確定してしまうため、提出前に勤務先の担当者と必ず確認しましょう。
STEP 5〜7:初回支給申請と継続申請
初回支給申請
受給資格確認後、初回の支給申請は育休開始から2ヶ月後が目安です。令和5年4月の改正により、支給開始が従来より前倒しされました。
提出書類(支給申請時):
| 書類 | 備考 |
|---|---|
| 育児休業給付金支給申請書 | 勤務先が作成 |
| 賃金額等が確認できる書類 | 給与明細等 |
| 67%要件の証明書類(追加) | 初回申請時に未提出の場合のみ |
2回目以降の継続申請
2回目以降は原則2ヶ月ごとに申請します。67%の適用期間が終了した後は自動的に50%での支給に切り替わりますが、配偶者が再度育休・育児目的休暇を取得した場合は再び67%が適用される場合があります。
給付金の計算方法:実際の支給額を確かめよう
育休給付金の計算式は以下のとおりです。
基本計算式
【休業開始時賃金日額の計算】
賃金日額 = 育休開始前6ヶ月間の賃金総額 ÷ 180
【1ヶ月あたりの給付金(標準)】
支給額 = 賃金日額 × 30日 × 給付率(50% or 67%)
具体的な計算例
【例】月収40万円(賞与なし)の場合
1. 賃金日額 = 2,400,000円(40万円×6ヶ月)÷ 180 = 13,333円
2. 月額給付(50%の場合)= 13,333円 × 30日 × 0.5 = 200,000円
3. 月額給付(67%の場合)= 13,333円 × 30日 × 0.67 = 268,000円
差額:1ヶ月あたり約68,000円、6ヶ月重複取得なら約40万円以上の差
この差額は非常に大きく、配偶者に育休や育児目的休暇を1日でも取得してもらうことの経済的価値が分かります。
申請期限と注意点:遅れると受給できないケースも
申請期限の整理
| 手続き | 申請期限 | 超過した場合 |
|---|---|---|
| 受給資格確認申請 | 育休開始後2年以内 | 原則として受給不可 |
| 初回支給申請 | 育休開始から2ヶ月後の翌月末まで | 支給が遅れる(遡及可能な場合あり) |
| 継続支給申請 | 各支給単位期間終了後1ヶ月以内 | 支給が遅れる |
| 67%要件証明書類 | 初回支給申請時(遅くとも育休終了前) | 50%のみで確定する場合あり |
よくある失敗パターン
- 配偶者の証明書類の取得が遅れる: 配偶者の勤務先との調整に時間がかかることが多いため、育休開始前から手配しておくことが重要です
- 育児目的休暇が就業規則に明記されていないことに気づかない: 配偶者の勤務先の就業規則を事前に確認しましょう
- ハローワークへの申請を勤務先任せにしている: 最終的な書類確認・申請は本人も把握しておく必要があります
よくある質問(FAQ)
Q1. 配偶者が自営業でも67%の給付率は受けられますか?
A. 配偶者が自営業やフリーランスの場合は雇用保険の育休給付金を受給できませんが、育児・介護休業法の規定上の育休に相当する休業を取得していれば、条件①の対象として67%が適用される場合があります。ただし、証明書類の取り扱いについてはハローワークに事前に確認することを強くおすすめします。
Q2. 給付率67%の申請を忘れた場合、後から遡及申請はできますか?
A. 原則として、67%の要件証明書類は支給申請と同時または申請期間内に提出する必要があります。申請が遅れた場合、50%での支給が確定し、差額の遡及支給が認められないケースがあります。ただし、例外的な遅延事由がある場合はハローワークに相談することで救済される場合もあります。
Q3. パパ育休(産後パパ育休)と通常育休の両方を取得した場合、どちらの期間も67%の対象になりますか?
A. 産後パパ育休(出生時育児休業)と通常育休は別々の申請が必要ですが、いずれも配偶者(妻)との重複期間があれば67%の対象となります。特に産後パパ育休は出生後8週間以内という重要な時期をカバーするため、両制度を組み合わせることで67%の適用期間を最大化できます。
Q4. 育児目的休暇を1日だけ取得しても67%になりますか?
A. 法的には、就業規則に定められた育児目的休暇を配偶者が1日取得していれば、その日が含まれる支給単位期間については67%が適用される場合があります。ただし、支給単位期間全体への適用ルールはハローワークの判断によるため、事前に確認することをおすすめします。
Q5. 給付率67%と社会保険料免除は同時に受けられますか?
A. はい、給付率67%と社会保険料免除は別制度であり、同時に受けることができます。育休中は健康保険・厚生年金保険の保険料が本人・事業主分ともに免除されます(育児・介護休業法第16条の10)。この免除を加味すると、実質的な手取り確保率はさらに高くなります。
Q6. 給付率67%が適用される「配偶者の育休重複期間」はどのように証明しますか?
A. 配偶者の勤務先(事業主)に「育児休業取得証明書」を発行してもらい、ハローワークに提出します。書式は各社任意のものでも対応可能な場合がありますが、開始日・終了予定日・対象の子の情報が明記されているものを用意しましょう。
まとめ:給付率67%を確実に受け取るための3つのポイント
育休給付金の給付率を67%に引き上げるためには、以下の3点が重要です。
-
配偶者との育休・休暇日程を早期に調整する
育休開始前から配偶者と重複期間を意識した取得計画を立てることが、67%を確実に受け取るための第一歩です。 -
証明書類を育休開始前から準備する
配偶者の勤務先から証明書を取得するには時間がかかることがあります。育休開始前から手配しておくことで、申請遅延を防げます。 -
勤務先の担当者・ハローワークと密にコミュニケーションを取る
手続きは原則として事業主経由で行われますが、本人もフローを把握しておくことが大切です。不明点は早めにハローワークに相談しましょう。
月収40万円の場合で試算すると、67%と50%の差額は1ヶ月あたり約68,000円にもなります。制度をきちんと活用することで、育休期間中の経済的な不安を大きく軽減できます。この記事で解説した手続き・条件・計算方法を参考に、確実な申請手続きを進めてください。
参考法令・参考リンク
– 雇用保険法 第61条の4(育児休業給付)
– 育児・介護休業法 第9条の2(出生時育児休業)
– 厚生労働省:育児休業給付制度
– ハローワークインターネットサービス
免責事項: 本記事は2025年時点の情報をもとに作成しています。制度は改正される可能性があります。申請にあたっては最新情報をハローワークまたは管轄の公共職業安定所でご確認ください。

